湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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割とぶっつけ本番のような感じで書いてますので、後から読み直して「あ!これ前に書いたあれと矛盾してるじゃん!」って気づいて書き直すこともしばしばです。


act.4「憧れと、苦悩と」

 階がシルビアと激闘を繰り広げていた時間から、二時間ほど前。

 まだ5時ながら空が暗くなり始めている箱根の道を、蓮は走っていた。

 隣には輪が座っている。

 

 「う、うわああぁぁ、蓮、ハンドル捌き上手すぎいぃ。こんなコーナーばっかで、私、目が回っちゃうよぉぉぉ」

 「輪、お前、ロードスター乗りだろ?いかにもコーナリングマシンなロードスターに乗っといて、箱根で目が回っちゃいけないだろう」

 「でも、私、まだ、サーキットしかはし○▲■△◎●★……」

 「最後の方は聞き取れなかったが、大体言いたいことは分かった。それならお前も早くサーキットクリアして、こっちに来い」

 「は、……はーい」

 

 輪のロードスターは、箱根山道の入り口付近にある駐車場のひとつに停めてある。

 よく考えたら箱根を走ったことのない輪が蓮についていけるはずもなく、蓮の走りを見るためにはFDの助手席に乗るしかなかったという話だ。

 しかし、次々と迫り来るコーナーに輪は目を回してしまった。なんとも滑稽である。

 そんなこんなで往路、復路と何往復もし、時計は7時を回った。

 

 「よし、これで最後にするか……輪、この復路を下ったら、そのまま輪はロードスターに乗り換えて帰るぞ」

 「OK!」

 

 輪はどうやら蓮が走っている間に慣れたらしく、すっかり元気になっている。

 立ち直りも早ければ、慣れも早いのが輪だ。

 

 蓮はこの日最後の箱根復路へ。

 

 直線のセクションなどほぼないに等しく、うねうねと曲がりくねった道を、黄色いFDは軽やかに駆け抜けていく。

 毎日の練習の甲斐あってか、蓮はかなりブレーキングやコーナリングスピードの調節などが上手くなっている。峠道の中でもトップクラスだと言われる箱根を軽々とクリアしていく蓮の腕は、既にUHCを走るのに十分といえよう。

 

 そしてFDが中間セクションに差し掛かった頃、蓮はFDとは別のエンジン音を聞き取った。

 

 「ん……ロータリーサウンドがもう1つ。だけどFDとは少し違う。旧型か?輪、バックミラーを見てくれ」

 「うん。……これは…」

 「何だ?FCか?それともサバンナSAか?」

 「FCだよ。それもグリーン、ボンネットはカーボン、バンパーはオレンジ」

 「何……?それって……」

 「うん、私も初めて見たけど、これは《草薙竜》だよ……」

 

 《草薙竜》。

 三玖のライバルであり、なおかつ蓮の憧れであるFC。

 まさか箱根で出会おうとは。

 

 「向こうがどれくらい箱根を経験してるか知らないけど、少し挑んでみようかな……!」

 「…………」

 

 蓮が本気になった。

 輪から見て、いや、誰から見ても、その変化は感じ取れるだろう。

 いつもは冷静沈着、物事を客観的に見通す猫のような目が、今は、獲物を狩らんとする獅子の目だ。醸し出される雰囲気も、内に閉じ込めていた熱いものを解き放つように。周りの空気が震えている。

 

 後ろのFCも、そんな様子をFDから感じ取ったのか、しっかりと追尾してくる。

 

 2台は緩急のついた連続S字を巧みなハンドル捌きで抜けていく。

 

 離れもしないし、近付きもしない。一定の距離を保ったまま、峠を走り抜ける。

 

 2台は箱根最大のヘアピンカーブへ差し掛かる。

 

 ここでFCが仕掛けてきた。

 FDよりもブレーキングを遅らせ、距離を詰めてくる。

 FDがドリフトで車体を傾けたところに、ノーズをねじ込んできた。

 

 「っ!ここで来るのかッ!」

 

 蓮も燃え上がっている。FCを前に出すまいと、自分のラインを死守する。

 

 すると、ヘアピンを抜けきる少し前に、ドリフトとは違う甲高いスキール音が響く。

 蓮はその音に反応し、一瞬だけバックミラーを覗き――FCがスピンしているのを認識した。

 

 ヘアピンを抜けた後、蓮はブレーキを踏み、FDを路肩に停める。

 車を降りて、蓮はFCの方へ走っていく。

 

 スピンしたFCからは、すでに黒白のチェック柄が特徴的なジャケットを着た緑色の髪の女性と、もう一人、誰かが降りてきていた。

 

 「大丈夫ですか!?」

 

 蓮が駆け寄る。

 

 「ん?ああ、FDの方ですね。大丈夫です、ありがとう」

 

 緑髪の女性―――碧屋恵未は、駆けつけてきた蓮に深々と礼をした。

 

 「《草薙竜》の碧屋恵未さんですね?三玖さんから話は聞いています」

 「ええ。……三玖のお友達ですか?」

 「まあ、はい。友達というより、幼馴染み、というべきでしょうか……」

 「幼馴染み!なんだか羨ましいですね。それで、そちらのお名前は?」

 「山吹蓮と言います。それからこっちは……」

 「山吹輪、蓮の双子の妹です。はじめまして」

 「はじめまして、碧屋恵未です。……」

 

 恵未は、傍らに立つ長髪をポニーテール風に結んだ、切れ長の目の男性を見やる。

 

 「………俺にも自己紹介しろと?」

 「そりゃそうでしょ。空気読んでよ?」

 「……黒翅(くろはね)神居(かむい)という。よろしくな」

 「…………!は、はい」

 

 蓮は驚いている様子。隣の輪も目を丸くしている。

 

 「え、え!?黒翅神居さんって、あの、《黒蜻蛉》の!?」

 「……まあ、そうだな。鳴と階の知り合いであれば、そりゃあ俺の名を知ってるだろうし、驚くだろうな」

 

 《黒蜻蛉》。

 かつてサーキットレース界でその名を馳せたマットブラックの日産・180SX。

 階、鳴――《青獅子》《赤獅子》コンビのライバル。

 

 《草薙竜》に箱根であっただけでも驚きなのに、その助手席から名高き《黒蜻蛉》のドライバーが降りてくるなど、誰が想像できただろうか。

 

 「……ん?どうして神居さんは、僕らが鳴さんと階さんの知り合いって分かったんですか?」

 「あ、確かに。どうしてですか?」

 「……まず二人が恵未のライバルである初春三玖――《青桜》の知り合いであること。あとはただの勘だ」

 「勘………」

 「いや、勘というのは少し違うか。あの姉弟とは長年競い合ってきた中だからな、その車のエンジン音や、醸し出す雰囲気でなんとなく分かる」

 「あ……そういえば、今日ピットから蓮のFDが出てきたとき、鳴さん、音だけで分かってたよ」

 「ん…輪ちゃん、だったか?そう、その感じだ。同じエンジンでも、チューンする人やそのやり方によって音は微妙に違ってくる。長い間そういうの聞いてると、否が応でもその違いが分かるようになるんだよ」

 「へえ……」

 

 輪は心の底から感心している風だ。

 他方、蓮は怪訝な顔をしている。

 

 「……ひとつ、気になることがあるのですが」

 「ん?なんだ、できることなら答えるぞ」

 「その違いというのは、聞き慣れたエンジン以外でも分かるのですか?あなたがレーサーだった頃、鳴さん、階さんともにロータリーをいじったことはなかったと思いますが……」

 「………なるほど。鋭い質問だな。確かに、普通なら分からなかっただろう。分かる理由は、俺が恵未のFCの助手席に乗っているということからも推測ができるが?」

 「……まさか。《草薙竜》をチューニングしているのは、神居さん?」

 「ご名答だ。確かに、鳴、階の姉弟がチューンしたロータリーサウンドは初めて聞いたが、こちらもロータリーをいじっている身でな。自分が触れたことのあるエンジンなら、その音からチューナーの癖とかを感じとることができる。まあ、全チューナーができるというわけではないがな」

 「…なるほど。さすが、世に名を馳せたレーサーなだけはありますね。……そして、《青桜》と《草薙竜》――三玖さんと恵未さんだけに限らず、そのチューナーも、長きに渡るライバル同士なんですね。何かしらの縁を感じます」

 「む。それは大事な考え方だぞ、蓮くん。走り屋には、必ず縁も絡む。そういう縁は、大切にした方がいい」

 「は、はい。ありがとうございます」

 

 少し、蓮は照れているようだ。常にクールな蓮も、トップクラスのレーサーに誉められたら、照れもするだろう。

 

 「あ、蓮が照れてる!私の前ではこれっぽっちも照れたことなかったくせに!」

 「お前に誉められても別に嬉しくないからな」

 「え!?ひ、ひどいよ蓮、それはあんまりだよ!」

 

 輪は少し涙目。

 

 「まあまあ、輪ちゃん、そう悲観せずに。照れがないのは、双子の強い絆ゆえだと思うよ?」

 「!?ほ、本当ですか!?」

 「私はそう思うけどなぁ……。一人っ子だから、あまり分かんないんだけど、そういうものじゃないの?」

 

 恵未からのまさかのフォロー。

 輪はさっきまでとは真逆の意味で涙目だ。

 

 「め、恵未さん……ありがとう!」

 「う、うわぁぁっ!?」

 

 輪に突如抱きつかれ、恵未と輪は箱根峠の道の真ん中で倒れる。

 

 「ちょ、輪ちゃんは元気だなぁ。ここは公道だよ?」

 「他に誰もいないから良いじゃないですかっ!」

 「え?う、うん……まあ、いっか」

 

 二人の笑い声が既に暗くなった箱根の山々にこだまする。

 二人のあまりに早い仲良しっぷりに、取り残された冷静な男性二人は視線を交わして苦笑いするのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 階がシルビアに敗北を喫し、蓮が箱根で《草薙竜》と遭遇したその翌日。

 輪、蓮、鳴、階の一同は『ステップランブル』に会していた。

 

 「へぇ…。会っちゃったんだ、恵未に」

 「はい。というより、鳴さん、恵未さんとは知り合いですか?」

 「当たり前じゃない。三玖と神居、二人もあの子と知り合うパイプを持ってるんだもの。まあ、そんなに会うことはないんだけどね」

 

 四人は今、昨日の話をしている。

 

 「え~、ずるいですよ、教えてくれればいいのに!」

 

 輪は神居と恵未のことを知っていながらこれまで会わせてくれなかった鳴と階に不満げだ。

 

 「んー、それはちょっと、諸事情があってね」

 「なんですか諸事情って!?」

 「僕も知らないなぁ。教えてよ姉さん」

 「ヒミツ。教えてあげられないわ」

 「ぶ~~……」

 「え~~……」

 

 鳴が頭に浮かべているのは三玖のことだ。

 三玖の蓮への思いを看破したあの時よりずっと前から、鳴は三玖の思いに薄々気づいてはいた。

 もしも蓮が、他の子――つまり恵未に惹かれたりしたら嫌だろうから。

 そこには、蓮がロータリー好きであること、恵未がFC乗りであることも多分に影響している。

 同じロータリー遣いならば、必ず接点が増える――接触する機会も増える。

 そうして、蓮が恵未に惹かれていきはしないか――そう考えたのだ。

 

 この場にいるのが輪だけならば別に教えても問題ないのだが、今は蓮もいる。

 隠すのは仕方のないことだ。

 まあ、もともと、何かしらの会う機会が来るまで輪、蓮と恵未を会わせようなんて考えたこともなかったし、三玖からすれば余計なお世話なのかもしれないのだが。

 

 と、そんな話をしていると、四人の耳元に聞き覚えのあるロータリーサウンドが聞こえてきた。

 『ステップランブル』店内から外を覗くと、《草薙竜》が店の駐車場に入ってくるのが見えた。

 

 「あら、珍しいわね。一体何のようかしら?」

 怪訝に思いながら鳴は店の外に出る。残りの3人も続いて出てくる。

 

 果たして、《草薙竜》から降りてきたのは、恵未――そして、神居だ。

 

 「久しぶりだな。鳴、階」

 「ほんっと。いつ大阪から帰ってきたのよ?教えてくれれば良かったのに」

 「昨日さ。そのままこいつの具合を見に、箱根にな」

 

 そう言って神居は傍らのFC――《草薙竜》を見やる。

 

 「1か月前にブローしてから、ずっと調子が悪くて。色々試しては見たんですけど、治らないし。神居が帰ってきたので、そのまま隣に乗せて箱根の方へ」

 

 恵未が丁寧に説明を加える。それを聞いて、

 

 「……そうだ。《草薙竜》ともあろうものが、スピンするなんて不思議だったんです。なるほど、車の不調でしたか」

 

 蓮が納得の様相。

 

 「う~ん……不調と言うよりは、不和かな」

 「不和?」

 「うん。エンジン、タービン、シャシー、何もかもが互いに噛み合ってない感じ」

 

 恵未は言いながら頭を傾ける。よほどその原因が分からないのだろう。

 

 「……で、原因は分かったの、神居?」

 

 鳴が問いかける。

 

 「……二つ、主な原因がある。1つは、ボディフレームが少し歪んでいることだ。こいつは、直せば問題ない」

 「もうひとつは?」

 

 当事者である恵未が不安そうに問う。

 

 「………残念ながら、だ。恵未」

 「へ…………?」

 

 神居は悲痛な面持ちで続きを言う。

 

 「……昨日、音を聞いていて分かった。このエンジンは、もう寿命が近い」

 「………!そんな……」

 

 免許をとって、相棒となってからもう5年が過ぎた。

 5年間、共に走ってきた相棒の心臓部がもう持たないなどと、誰が受け入れられようか。

 

 「な…なんとかならないの、神居!?」

 「あのエンジンを使い続けることはもう不可能だ。新しいREは探すが、再び1からチューンしなければならないだろう。それに、出回っているREももうかなり少ない。場合によっては、エンジンのみならず、このFCともお別れだろう」

 「………いや……」

 

 恵未の目からは止めどなく涙があふれでている。

 

 「いやだ……いやだよぉ……私はまだ、FCと一緒にいたい………」

 

 悲痛な訴え。

 周りも沈黙して見ているしかない。

 

 「………だが、なんとかする。俺も、お前がFCと別れて悲しむのを見たくはない」

 「………神居ぃ……」

 「だから安心して待っていろ。《草薙竜》は、必ず生き返る」

 「…………うん」

 

 神居の力強い宣言に、恵未も少し落ち着いた模様。

 

 「………んと、そうだ。俺らがここに来た理由は、そこの二人とあったって話をしたかっただけだ」

 

 そう言って神居は輪と蓮を目で示す。

 

 「挨拶もすんだし、こんな状況で居続けるのも悪いからな。もう帰るとしよう」

 「へ?……あ、うん。それじゃあ、また」

 

 そうして恵未と神居は連れだって出口、その先のFCのもとへ向かう。

 出口を通る直前、神居はふりかえって、こう言った。

 

 「……そうだ。《青桜》にも伝えといてくれ。《草薙竜》は1度死ぬ。だが、必ずより強くなって甦ると」

 「……分かった」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 神居と恵未が『ステップランブル』を出てから15分ほどしたころ。

 

 「……恵未さん、大丈夫かな」

 

 輪がポツリと呟く。

 

 「大丈夫さ。神居さんが必ず甦らせるって言ったんだ。僕らはそれを信じよう」

 「…………うん」

 「………さーて、ずっと心配しててもどうにもならないわ。私たちは私たちのことをしましょう」

 

 そう鳴が言ったとき、再び聞き覚えのある音が聞こえた。

 敏感に鳴と階が反応する。

 

 「この音は………!」

 

 そう言って階が見た出入口の先の駐車場に入ってきたのは、

 

 「昨日の、シルビア…………!」

 

 昨日、階のスープラを湾岸エリアで抜いていった、桃色のシルビア。

 

 「一体、何の用だ……?」

 

 そう言った直後には階と鳴は疑問の表情を殺し、所謂ビジネススマイルでシルビアのドライバーを出迎えにいく。

 シルビアから出てきたのは、長身な、車と同じピンク色の髪をした女性。スタイルも抜群である。

 降りてきて階と鳴を見るや否や、突撃する勢いで二人に近づき、手を握ってブンブン振る。

 大きな胸も同調して揺れるために男性(主に階)は目のやり場に困っている。蓮は気にしていない模様。

 

 「あの、あの、赤青鳴さんと赤青階さんですよね!?ここにいると聞いてやって来ました!会えてすごく嬉しいです!」

 

 そう言いながら振る腕は止まらない。

 

 「……わ、分かったから、少し、落ち着いてくれないかな……」

 「……………ハッ!」

 

 階に言われて自分があまりにも勝手な行動をとっていたことに気づき、階、鳴から一歩離れる。

 

 「え、えーと、すみませんでした。改めて確認させてもらうと、赤青階さんと赤青鳴さんですよね?」

 「うん。そうですけど……あなたは?」

 「私は桃月(ももづき)留佳(るか)と言います。はじめまして」

 「はじめまして。それで、どんなご用件で?」

 「はい。私、お二人にすごく憧れてるんです。それで、私のシルビアを見ていただきたくて」

 「というのは、チューニングをかい?」

 「はい」

 

 言ったそばから留佳はシルビアのもとへ戻り、ボンネットを開ける。

 

 「お願いします!」

 

 ボンネットが開き、中枢部が丸見えになったシルビアのそばで、深々とお辞儀をする。

 

 階と鳴はシルビアのもとへ歩き、その中枢部をまじまじと覗く。

 

 「これは、誰がチューンしたんだい?」

 

 階が問いかける。

 

 「私が自分でやりましたけど……」

 「な………!」

 

 留佳の答えに階は絶句。鳴も呆然としている。

 

 「な……何か、おかしなところでもありましたか?」

 「……いや、その逆だよ」

 

 階は首を横に振る。まるで降参だとも言わんばかりに。

 

 「君のチューンはプロ級だよ。何も指摘するようなところはない。完璧だ」

 「ほ、本当ですか!?」

 「ああ、そして何より、それは昨日、君が僕を湾岸エリアで追い抜かしたことが証明している」

 「え!?」

 

 留佳は驚いている。

 傍らで聞いていた蓮と輪も驚愕の色を隠せない。

 

 「じゃあ、あの青いスープラは……」

 「ああ、僕だよ。そうだ、気になっていたんだが、このシルビア、エンジンは何馬力だい?」

 

 抜かれたときから気になっていた。階のスープラを抜くほどのシルビア。そのパワーや如何に。

 

 「800馬力ですが……」

 「!!」

 

 800馬力。

 鳴が提示した、階のスープラを抜く最低ラインだ。

 

 「何か、変でしょうか……?」

 「いや、別に、変ではない。僕のスープラは780馬力なんだけど、直線番長のスープラを湾岸エリアでああも華麗に抜き去るのに、20馬力の差では難しい気がしたんだ。でも、ここまで完成したチューニングなら、全然可能だよ。これからも、自信を持ってこのシルビアに乗ると良いよ」

 「……あ、ありがとうございます!」

 

 留佳の顔がパアッと明るくなる。

 

 「それじゃあ、これで私は失礼します。ありがとうございました!」

 

 笑顔でシルビアに乗り、運転席でもう一度深々と階たちに礼をしてから、エンジンをかける。

 

 嬉しそうな表情のまま、シルビアは『ステップランブル』を出ていく。

 

 「……世の中広いな。あんなすごいチューンを、独学でやってのけるなんて」

 「……ほんと、そのようね」

 

 シルビアを見送ると、入れ替わるようにシアン色のR33――《青桜》が入ってきた。

 中から出てきたのはもちろん三玖だ。

 

 「こんにちは、階さん、鳴さん。輪ちゃんも1日ぶりかな?蓮くんは久しぶり」

 「久しぶり、三玖さん」

 

 挨拶を終えて、三玖は鳴と階に問いかける。

 

 「鳴さん、階さん。さっきのピンク色のシルビアは?」

 「ん?ああ、……大雑把に言えば、僕たちの大ファンってところかな。自分でチューンした車を見てほしいってやって来た」

 「へえ……それで、どうだったんですか?」

 「いやぁ、あれはかなり完成されてる。僕らよりすごいかもね」

 「そうですか……」

 

 三玖は心配と言うような顔をしている。

 

 「………何か、あったのかい?」

 「いや、だって………」

 

 三玖は心配そうな顔のまま続ける。

 

 「あのシルビア、泣いてました……」

 「へ………?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 その頃、ピンクのシルビアの中。

 『ステップランブル』を出たときの笑顔とはうって変わって、その顔は曇っている。

 

 「誉められて、つい嬉しくなっちゃったけれど。結局、何も分からなかったわね―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――ねえ、シルビア。どうしてあなたは、泣いているの?」




 突然の急展開、お許しください。

 新キャラが二人、神居と留佳が出てきました。
 なので、これを機に以前紹介した三玖、恵未も詳細を加えてここで紹介します。

・初春 三玖
  ―――元ネタ:初音ミク
 使用車 日産スカイラインGT-R(BCNR33)
     カラー:シアン
     エアロセットC
     ウィングなし

・碧屋 恵未
  ―――元ネタ:GUMI
 使用車 マツダRX-7 GT-X(FC3S)
     カラー:ライトグリーン
        フロントバンパー部オレンジ
     エアロセットC
     GTウィング(ストレート)
     カーボンボンネット

・山吹 蓮
  ―――元ネタ:鏡音レン
 使用車 マツダRX-7 type-R Bathurst-R(FD3S)
     カラー:サンバーストイエロー
     エアロセットA
     車種別ウィングB

・山吹 輪
  ―――元ネタ:鏡音リン
 使用車 マツダユーノスロードスター(NA6CE)(修正しました)
     カラー:シルバーストンメタリック
     エアロセットB
     車種別ウィングA

・桃月 留佳
  ―――元ネタ:巡音ルカ
 使用車 日産シルビア(S15)
     カラー:ピンクメタリック
     エアロセットC
     GTウィング(3D)

 ※車のエアロ等はゲーム『湾岸ミッドナイト』を参考

  鳴、階、神居はまたの機会に書きます。お楽しみに!
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