湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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 5話まで書いて全然シンフォギアサイドが出てないことに気づきました。
 これからどんどん出していきますよー!


act.6「撃槍再来」

 とある夜。UHCのC1エリア。

 一台のベージュ色のRX-8が疾駆する。

 運転しているのは緑色の髪の女性。助手席には車の色よりさらに薄いベージュの髪をした小柄な少女が座っている。

 言うまでもなく、運転者はかの《草薙竜》の乗り手、碧屋恵未であり、助手席に乗っているのがこのエイトの所有者、六茶寧亜である。

 

 「うわぁ、さすがロータリー搭載車最終型……すごい簡単に曲がっていくよ」

 「…そのえいとで曲がりきれないのは、やっぱり私の腕のせい?」

 「いや、そういうわけじゃないよ。FCから2代後でこんなに変わるんだな~と思って」

 「……そっか」

 

 エイトのあまりにも良い操作感に感嘆しつつ、恵未は違和感を覚えていた。

 

 (よく曲がる……なのに、曲げづらい……この矛盾した感覚は一体何?)

 

 誰が聞いても矛盾を感じることを禁じ得ないが、運転している恵未本人がそう思うのだから、それ相応の違和感が彼女を襲っているのだろう。

 

 (妙にステアリングが重い?……そしてそれは、S字でより顕著になってる……?)

 

 1度曲げてしまえば驚くほど滑らかに曲がっていく―――外から見ればスムーズな走りにしか見えないが、運転している恵未本人はそれほど滑らかに運転している感覚が掴めていない。

 

 「………寧亜ちゃん」

 「う?」

 「寧亜ちゃんの言いたかったこと、なんとなく分かった気がする」

 「ん……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ベージュのエイトが海ノ上SAを出てから一時間ほど。

 そのエイトは再び海ノ上SAに戻ってきた。

 二人は車を降りてSAのラウンジスペースへ向かう。

 

 「あ、寧亜ちゃん、席取っといてもらって良い?私、なんか飲み物買ってくるけど」

 「わかった。私、ここあで」

 「OK」

 

 恵未がココアとストロベリーオレを持って寧亜の取っておいた席に座る。

 それぞれが飲み物を飲んで一息ついたところで恵未が本題に切り出す。

 

 「あのね、寧亜ちゃん」

 「う?」

 「エイト自体は、かなり曲がりやすいよ」

 「う……」

 「………でもね、"曲げづらい"んだ」

 「………?」

 

 寧亜はよくわからないという表情。無理もないだろう。

 パッと聞いただけでは違いがイマイチピンと来ない。

 

 「1回曲げちゃえば、ビックリするくらい曲がっていく。ただ、そこまでが、ね」

 「??」

 

 寧亜はいまだよくわからないという様子。

 

 「………ステアリングが必要以上に固いんだよ、このエイト」

 「…!」

 「神居が言っていた通り、車は好調だし、寧亜ちゃんの腕が原因なんてとんでもない。これは、ステアリング設定をやった人のミスだよ。神居に直してもらえば解決だと思う」

 「……う。よかった」

 「あとは寧亜ちゃんが自分自信の意思であのラインを走れるようになれば、完璧だね!」

 「……ん」

 

 寧亜は嬉しそうだ。

 

 話が済み、二人はエイトのもとへと戻る。

 すると、隣にシアン色のR33と黄色のFDが停まるのが見えた。

 R33からは三玖が、FDからは蓮と輪が出てきた。

 

 「あれ?恵未ちゃん」

 「ふふ。何日ぶりかな?三玖」

 「3日ぶりじゃないかな」

 「うん」

 

 「………恵未ちゃん、大丈夫なの?」

 「……何が?」

 「鳴さんに聞いたよ。FCのこと」

 「…………」

 

 はっきりと問われ、恵未はうつむく。

 その顔は、悲しげだった。

 しかし、しばらくして顔をあげた恵未は、ある種の決意を込めたような顔をしていた。

 

 「確かに、しばらくFCに乗れないのはさびしいよ。でも、立ち止まったままじゃいられない。神居は《草薙竜》を必ず復活させると約束してくれた。だから、私は神居を信じる。そして―――」

 「そして?」

 「―――私は、何よりFCを信じる。絶対、私のもとに戻ってきてくれるって」

 「恵未ちゃん………」

 「心配してくれてありがとう、三玖。大丈夫。また、FCが戻ってきたら一緒に走ろ?」

 「……うん。そうだね」

 

 悩みを振り切った恵未の顔を見て、三玖も安心したようだ。

 

 「……ねえ、恵未」

 「ん?」

 

 話が一段落したところに寧亜が話しかける。

 

 「……私、知らないよ、この人たち」

 「あ、そうか」

 

 寧亜と三玖たちが初対面であることを恵未は忘れていたらしい。

 

 「紹介するね。この子は初春三玖。私のライバルの《青桜》のドライバー」

 「ライバルなんて、少し恥ずかしいな……初春三玖です。よろしくね」

 「う。六茶寧亜って言います。よろしく」

 「で、こっちの二人が山吹蓮くんと山吹輪ちゃん。双子なんだよ」

 「山吹蓮です。よろしく、寧亜さん」

 「山吹輪だよ!よろしくね!」

 「う。よろしく、蓮、輪」

 「いきなり呼び捨て!すごい!」

 「う………」

 「ハハッ。寧亜ちゃんは、君付けやちゃん付けで人を呼ぶのが苦手なんだよ。私や神居にも最初から呼び捨てだったし」

 「むぅ。恵未、そういうこと言われると恥ずかしいよぉ………」

 「え?ああ、ゴメンね寧亜ちゃん」

 「ん……」

 

 寧亜の顔が少し紅潮している。

 小柄であることも相まって実に可愛らしい。

 

 「………そういえば三玖、鳴さんには聞いたの?あのエボ8の話」

 「……あ、そっか。まだ話せてなかったね」

 

 そう言って三玖は鳴から聞いた話を恵未に話す。

 

 「へえ………鳴さんの後輩かぁ。会ってみたいね」

 「うん。これからも走ってれば、会えるんじゃないかな」

 「一体何人いるんだろ、その、キャロルちゃんが車を手掛けてる子達って」

 「うーん、それは………」

 「「………これからのお楽しみ、だねっ!」」

 

 三玖と恵未は目を合わせて笑い合う。

 

 「………あ、そうだ。蓮くん、ついにUHCデビューしたんだ?」

 「はい。まださすがに、三玖さんに付いていくだけで精一杯ですが……」

 「付いていけるだけすごいよ!普通は、置いていかれるんだから。これからどんどん走り込んで、私たちに追い付いてみせてよ」

 「……はい。頑張ります」

 

 力をみなぎらせて頷く蓮の隣で、

 

 「………くうぅぅ~、蓮ばっか期待されて……」

 

 と輪が呟くのが聞こえたのかは定かではないが、

 

 「輪ちゃんも、早くUHCにおいでよ!みんなで一緒に走ろう?」

 

 と、恵未は言った。

 それは輪の心にかなり響いたらしく、

 

 「……うん!私、頑張るぞー!蓮、まずは箱根の走り方教えて!」

 「その前にお前はもう少しサーキット走らないとな?」

 「うっ………図星だ……」

 

 と、気合いが入りすぎて空回りしていた。

 

 「それじゃあ、私たちはこれから新環状エリア走りに行くけど、二人はどうする?」

 「寧亜ちゃんにアドバイスしたばかりだからね。少し緩めにC1走って、そのまま帰るつもり」

 「じゃあ、新環状からC1に入る分岐点までは一緒だね」

 「よし!じゃあ、走りに行こう!」

 

 そうして、R33、FD、エイトは海ノ上SAを出発した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 3台がランデブー走行し、新環状とC1の分岐点で別れた後、C1に向かった寧亜と恵未。

 

 フルアクセルまでには行かず、スピードを240㎞ほどに保ちながらラインをなぞる。

 スピードを落としているので車も曲げやすく、寧亜もリラックスしながらエイトを駆っている。

 

 「う。スピード落とすと、走りやすい」

 「そうだね。この感覚で、フルスピードでも走れると最高だね」

 「ん」

 

 そうして気楽にC1を走っていると、恵未の耳が聞き覚えのあるエンジン音をとらえた。

 

 「この音………」

 「う?」

 「どこかで聞いたような………まさか」

 

 恵未はサイドミラーを覗く。

 そこに映っていたのは、忘れようもない、それどころかついさっき、話題に上がったあの車。

 派手なドレスアップの、エボ8―――

 

 「――――《ガングニール》!」

 

 《ガングニール》は、すごい速さで二人の乗るエイトを抜き去っていった。

 

 「恵未、あのえぼ8が、三玖の言ってた」

 「うん。《ガングニール》。あの速さ、やっぱり只者じゃない」

 

 恵未がその速さに舌を巻いている間に、《ガングニール》は二人の視界から消えていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 一方、新環状エリアを走る三玖、蓮サイド。

 蓮がついてこれるように三玖も若干スピードを落とし、気楽に走っている。

 

 「蓮くん、相当箱根練習したのかな?初めてのUHCなのに、難なく走ってる。すごい………」

 

 蓮の走りの適応力に三玖は驚いていた。

 

 C1ほどコーナーが多くなく直線がちだが、しかしながら急カーブのコーナーが多いために、パワーとハンドリングのバランスを考えさせる新環状エリア。

 スピードを落としているとは言え、三玖のR33にしっかりついてくる蓮の腕はかなりのものだ。

 

 「後ろから私の走ってるラインをなぞってるにしても、しっかり離れずついてくる………こんな人、初めてだよ」

 

 三玖でさえ羨ましくなるまでの適応力。蓮の才能は、鳴や階が見込んでいる以上のものかもしれない。

 

 「うわあ………蓮、初めてにしては速すぎない?こんな簡単に三玖についていくなんて」

 

 蓮の乗るFDの助手席に座っている輪も驚いている。

 

 「そんなことはない。まだ三玖さんは手加減してるだろうし、こっちもついていくので精一杯だ」

 「でもでも、そのついていくのが難しいって恵未さん言ってたじゃん?」

 「まあな。……後ろから何か来る」

 「ん?………本当だ」

 

 250㎞程で走る2台の後ろから、猛スピードで何かが近づいてきている。

 それには三玖も気づいたようで、

 

 「……私のRと同じ、RB26の音。GT-Rなのは間違いない」

 

 鋳鉄製であることを示さんとばかりに鳴り響く重厚な音。

 近づいてきたのは――――

 

 「―――赤い、R34」

 

 日産・スカイラインGT-R(BNR34)。

 

 三玖が乗る青桜――R33の後継機。

 

 近づいてきたR34は、赤を基本色に、白のストライプが掛かっている。

 三玖、蓮双方が特徴を掴んでいる間に、そのR34は2台を抜いていった。

 

 そして、二人とも"それ"を見逃さなかった。

 右リアライトの下にあるGT-Rのロゴ―――――その下には、『Ichaibal』と刻まれていた。




 第6話、いかがだったでしょうか。
 ガングニールに次いで二番目のシンフォギアサイド、『Ichaibal』が登場しました。
 これ読めませんよね(笑)。なんでそう読むのか、僕も分かりません。
 引き続き、第7話をお楽しみに!
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