湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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 今回は少し短いです。


act.7「二人目の刺客」

 恵未が再び《ガングニール》に遭遇し、三玖と蓮が『Ichaibal』に出会った翌日。

 三玖、蓮、輪、恵未、寧亜、鳴、階は『ステップランブル』にて一同に介していた。

 

 「恵未ちゃん、また《ガングニール》に会ったんだ」

 「うん。あっさり視界から消えていったよ」

 「やっぱりかなり速いのかな?」

 「それは間違いないでしょ。あの速さ、本気の私たちを普通に抜いていくかもね」

 

 三玖と恵未の《ガングニール》に関しての会話が一通り済んだところで、

 

 「………で、三玖は?ここに来たからには、何かあったんでしょう?」

 

 と、鳴が三玖に話を振る。

 

 「はい。会いましたよ……二人目」

 「!!」

 

 二人目。

 そう言っただけで、鳴に限らず、階、恵未、そして昨日話を聞いたばかりの寧亜までもが、何の二人目かを察した。

 

 「………車は?」

 「R34。車名ロゴの下には、『Ichaibal』と」

 「………イチイバル、か」

 

 イチイバル。

 ガングニールを『撃槍』とするなら、イチイバルは『魔弓』と言ったところか。

 

 「《ガングニール》に負けず劣らず、速かったですよ」

 「へぇ………私も会ってみたいな」

 「そのうち会えるわよ。私の方も、今キャロルを探してるとこ。もしコンタクトが取れたら、みんなに会えるよう取り合ってみるつもりよ」

 「鳴さん…ありがとうございます」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 一方、響や未来が住まう家にて。

 

 「うーん、会えなかったな、《青桜》と《草薙竜》……」

 

 と、響が大げさに落胆していた。

 

 「まあ仕方ないよ。UHCは広いし」

 

 未来が慰める。

 

 「でもなあ……折角、未来にあの2台を見せてあげようと思って乗せたのに」

 「なかなか会えないからこそ楽しいんじゃないの?」

 「未来……」

 「私はいつまでも待ってるから。また乗せてね、響のエボ8」

 「………うん」

 

 すると、重厚なRB26のエンジン音が聞こえてきた。

 その音は家の前まで近づいて、止んだ。

 車のドアを開閉する音か聞こえたかと思うと、今度は家のドアを開く音が聞こえた。

 

 「ふぁぁ~、ただいま」

 「おかえり、クリスちゃん」

 

 帰ってきた白髪をアンダーツインテールでまとめた少女――《イチイバル》の乗り手――の名は、雪音(ゆきね)クリス。名前から分かる通り、ハーフである。

 

 「私は会えなかったよ。クリスちゃんはどうだった?」

 「………」

 

 クリスはなぜか勝ち誇ったような笑みで響を見る。

 

 「……な、何?」

 「…アタシはきっちり会ってきたぜ、《青桜》に」

 「ええ!?い、良いなぁ……」

 

 またまた大げさに驚き、大げさに落ち込み、大げさに膝からくずおれる響。

 

 「そんなに会いたいなら毎日走らないといけねぇだろうなぁ?UHCはだだっ広いんだからな」

 

 そう言ってクリスは冷蔵庫から牛乳を取りだし、コップに注ぐ。椅子に腰掛け、帰り道にコンビニで買ってきたと思われるあんパンといっしょに食べる。

 

 「あ、クリス。またその組み合わせなんだ」

 「そうだよ。アタシゃこれが好きなんだ。ダメなのか?」

 「いや、その……栄養とか、大丈夫かなって」

 「それは問題ねえよ。この組み合わせは朝飯だ。昼と夜で補ってるから心配は無用だぜ?」

 「そう。……なら別にいいんだけど」

 

 そう言いつつ、頭の中では本当に補っているのかどうか心配する未来であった。

 

 と、そこで部屋のドアが開く。

 

 「…揃ったか。目当てだという2台は見つけたのか?」

 

 入ってきたのは、長い金髪を三つ編みにまとめ、メリハリのいい体で、右目の下にはホクロがある女性―――キャロル・マールス・ディーンハイムだ。

 

 「アタシは《青桜》にあった。《草薙竜》は、どっちも見てねぇけどな」

 「……そうか。いつかはドライバーにも接触を図れよ?先輩に繋がってるかもしれないからな」

 「分かってる」

 「…………」

 「……どうした、クリス?」

 

 返事もせず真面目な顔で黙ってしまっているクリスに、キャロルは疑問を持った。

 

 「………いや、ひとつ気になってな」

 「…なんだ?」

 「アタシは確かに《青桜》に会った。ただ……1台じゃなかったんだよ」

 「………つまり?」

 「《青桜》がそいつにスピードを合わせたことは分かる。ただ……そのFDから、なんとなく感じたんだよ」

 「…………」

 「オーラってやつか?こいつは只者じゃない、今はまだまだだがこれからどんどん速くなっていく………そんな気がしたんだ」

 「………」

 「………」

 「………」

 

 クリスが感じたその勘に虚偽は感じられず、3人とも黙ってしまった。

 

 「……まあ、それが《青桜》や《草薙竜》を上回るかっていうと、微妙なとこだけどな」

 「……そうか」

 

 キャロルは真剣な表情でしばし考える。

 

 「………そろそろ、『S.O.N.G.』も本格的にUHCに進出する頃合いかもしれないな」

 

 『S.O.N.G.』。

 それが、キャロルの手掛ける車の乗り手たちが所属するチームの名である。

 

 「お!?じゃあ、これから毎晩走ってもいいのキャロルちゃん!?」

 「はしゃぐな。俺が言っているのは、他のメンバーもUHCに行かせるということだ」

 「え~、な~ぁんだ」

 「……まあ、毎晩走るのもそんなに遠くない話だろうけどな」

 「よぉっし痛たぁぁぁ!?」

 

 響は大げさにガッツポーズを取ってテーブルの角に拳をぶつけ悲鳴をあげた。

 

 「……まったく。お前ら、夜通し走ってきたんだから、二時間くらい寝てこい」

 「ああ。もう眠くて仕方ねぇ」

 「ではではキャロルちゃん、二時間と言わずたっぷり寝てくるね!」

 「ダメだよ響。昼夜逆転しちゃうよ?今日は走りにいっちゃダメだからね?仮眠は短めに抑えて、夜早めに寝る。わかった?」

 「むう。未来に言われたら逆らえないや。分かったよ、今日は早く寝る」

 

 仲良さげに部屋を出ていく3人。

 キャロルだけが部屋に一人残っている。

 

 「………さて。そろそろ、俺自身も動きださないといけないか……」

 

 赤青姉弟の後輩にして天才チューナー、キャロル・マールス・ディーンハイム。そして、彼女のチューニングした車の乗り手が結成したチームである『S.O.N.G.』。

 

 UHCに、新たな渦が巻き始めていた―――――。




 ついにキャロルが動き出すか!?
 続きをお楽しみに!
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