アメリカ、LA空港。
国際線の発着ゲートからロビーに出た俺は、迎えに来てくれているニールを探した。そして、スーツ姿の彼をすぐに見つけることができた。前世とは違い、俺の方から声をかける。
「ニール」
「ショウ! 久しぶりだね」
「すまない、時間がないんだ。ティムのところへ行こう」
「――オーケー、急ごう!」
ロビーを早足で駆け抜け、駐車場で待つティムの元へ急ぐ。空港を出るとロータリーに車を止めた車の横で、ティムを見つけた。
「ショウ!」
「ティム!」
「話は後だよ、早く乗って!」
挨拶も握手もする間もなく、ニールに急かされて車の後部座席に乗り込んだ。
「訳ありだな! 飛ばすぜっ!」
ティムの運転する車は、大学へ向けて猛スピードで走り出した。そして車内では前世と同じように、ニールによる質問攻めが始まった。
「そうか、未来から来たんだね」
「ああ、ラボの情報のおかげでね」
俺が未来から、“
「じゃあなんで
「ああ、そっちはな。今度は本題の方だよ」
本題と聞いて、ニールが難しい
「特殊能力の“消去"のことか......まだ時間は掛かるよ?
「わかってる、だから来たんだ」
今度は真剣な
「そう、いくつ見た?」
「九つだ。“瞬間移動"、“口寄せ"、“発火"、“念動力"、“電撃”、“空中浮遊"、“不可視"、“略奪"、“
「うわぁ~、レアな能力ばかりだね」
ティムはバックミラー越しに視線を俺に向けた。
「短時間でそんなに見つかるもんなのか?」
「居場所と能力を特定できる、精度の高い探知系の能力者がいるんだよ」
「へぇ、その能力の内容は?」
「実際に見てないからわからない」
「そっか~、ざんね~ん」
「んで? コレはできたのか?」
ティムが片手をハンドルから離して、おもむろに小指を立てた。前世とまったく同じ流れ。どうやら、これは変えられないらしい。
「親父か? お前は」
「挨拶みたいなもんだろ?」
「そうだね、オレも気になるなー」
――まったく、コイツらは......。
窓の外の風景を眺めながら彼女の笑顔と温もり、一緒に過ごした時間を思い出す。
「......“
「関係絶ち切って戻って来たのかよ!?」
「うっわ~、彼女かわいそー」
ティムは驚き、ニールは同情の声をあげる。
俺は視線を戻して、運転手に催促する。
「いいから、急いでくれっ!」
車を爆走させ、600kmと言う長い道のりを前世と同じ4時間ほどで大学のある都市に到着した。この日は近くのホテルに泊まり、翌日に備える。
「じゃあ検査を始めるよ」
「ああ、頼む」
そして翌朝、大学のラボへ出向き、前世と同じように様々な検査を受けた。
検査結果を待つ間、“消去"についての研究データに目を通す。最後にデータを見た去年と比べ、だいぶ進んでいるように感じたが、やはり完成にはほど遠い。
「感想は?」
データに目を通していると、ティムが俺の肩に腕を乗せて意見を訊いてきた。
「やっぱり
俺の率直な答えを聞いて、ティムはため息をついた。
「こればかりはな。探知系能力者がいれば、もう少し進むんだろうけど......」
「ああ、そうだな」
大学には、
「日本には、いつ戻る予定なんだ?」
「検査結果が出しだい帰るよ」
「そうか。じゃあすぐだな」
「ああ」
そう、明日には結果が出る。
俺の検査結果と、
* * *
翌日21時過ぎ、CA大学・遺伝子工学ラボ。
俺は、“消去”の投薬を作製するために実験と平行して日本へ持っていく資料を精査していた。
「やっぱり上手くいかないな......」
そう呟くと、隣で手伝いをしてくれているニールが励ましてくれた。
「焦っても仕方ないよ、気長に行こう」
「......でも、時間がない」
「大丈夫! まだ二年もあるし、それにいざとなったら、“
「“
俺たちの研究では、強力な特殊能力になればなるほど制約と代償が大きくなることがわかっている。
「そっか、そうだね。じゃあ一息ついて頑張ろう」
「ああ、そうだな。そうしよう」
実験を一時中断して、ラボを出る。
「資料の方は?」
「だいぶ進んでる」
「そう。上手く協力と得られるといいね」
「そうだな」
俺が今、作っている資料は、
「電話じゃない?」
「ん? ホントだ」
カフェエリアで、少し遅めの夕食を食べていると携帯に着信があった。俺は席を外し、携帯電話の通話ボタンを押す。
「はい、
『
「えっ?
『はい、そうですけど』
発信相手を確認せずに出たため、予想していなかった
『どうしました?』
「あ、いえ、なんでもないです」
『そうっすか。えっとですね、
――そうか、
「そうですか、よかった。上手くいったんですね」
『はい、未来で立てた作戦通りです。あの――』
「なんですか?」
『――未来で。あたしとあなたの間に、なにがあったんですか......?』
今、伝えてもよかった。でも、やっぱり直接会って伝えたい言う想いの方が強かった。
「
『――はい、待ってますっ』
通話を終え、カフェエリアへ戻る。
「なにかあった?」
「帰ることにした。日本で待ってる人がいる」
「そっか。じゃあこれ食べちゃって、すぐに帰国の準備をしよう」
冷めてしまった食事を食べて、ラボに戻り、日本へ帰るための準備を始める。
「ティムに伝えてくるね」
「ああ、頼むよ」
ニールがティムを呼んでくる間に、帰国の準備を済ませる。数分後ニールが戻ってきて、ティムが外に車を回してくれていると教えてくれた。
「じゃあ、行くよ」
「待って、オレも行くよ」
ファイルを持ったニールと一緒に外に出て、用意してくれた車に乗り込むとティムが出国時間を訊ねてきた。
「何時発の便だ?」
「出来れば0時50分発の便、間に合うかな?」
「無理だな」
「だよな......」
空港までは約600kmもある。車を飛ばしても4時以上かかる。今は21時半を過ぎた頃、到底間に合うわけがない。落胆しているとティムとニールがとんでもないことを言い出した。
「普通ならな」
「はあ?」
「ヘリを使うんだよ」
「ヘリ!? あるのかよ!?」
「ああ。お前が日本に帰国した後、大学が補助金で購入したんだ。ついでオレは免許も取った」
「ウソだろ......?」
呆気にとられている俺に対してニールは、あっけらかんに言う。
「うそじゃないんだな~、これが」
「ってことで、ヘリポートへ向かうぞ!」
大学に新たに設置されたヘリポートでヘリコプターに乗り換える。操縦席に座ったティムはエンジンに火を入れ、管制塔に連絡をし、操縦かんに手をかける。
「よっしゃ! いくぜッ!?」
「マジであったよ......」
「これなら二時間弱で空港に着けるよ」
空港へ向かう上空で、ニールはどこかむずかしい
「うーん......」
「どうしたんだ?」
ヘッドフォンを通じて訊ねる。
「“共鳴"、使った?」
「ん? ああ、“略奪"を防ぐのに使った」
「そっか、それでかな? ちょっと“共鳴"に変化がある」
「えっ?」
予想外の話だった。前世は異常なしと報告を受けていたからだ。そのことを伝えるとニールは、ひとつの仮説を出した。
「もしかしてだけど、無意識のうちに使ったのかもしれないね」
「無意識にか......」
「なにか心当たりない? 例えば、“
「いや、特になにも。“
「そっか。もっと詳しく調べてみるよ」
「もうすぐ着くぞっ!」
ティムのその言葉通り、空港の光が見えた。
「けど、よかったのか?」
「ん? なにがー?」
「俺のプライベートなことで、ヘリを使うなんて......。相当経費がかかるだろ?」
「なに言ってんだよ、いいに決まってるだろ!」
「ティムの言う通りだよ。今までのショウの功績からいったら誰も文句は言わないよ」
「そう言うこった。ショウが居なかったら、こんな短時間で研究は進まなかったからな! お前にとっては、永遠のように長かったろうけどな......」
「だね。当然の権利だよ」
「ニール、ティム......。ありがとう」
時刻は23時10分、空港に到着した。
「マジで二時間弱で来たな。ありがとう、助かった」
「いいってことよ!」
「“共鳴"の方は、もう一回調べてみて何かわかったら連絡するね」
「ああ、頼む」
二人に別れを告げ、急いで搭乗手続きを済まし、俺はアメリカを後にした。
* * *
日本帰国して、二時間後の午前7時過ぎ。俺は、
何か嫌な予感が、胸騒ぎがして、直接星ノ海学園併設マンションへ行くと、マンションの入り口には規制線が貼られいた。
何が起きているのか分からず立ち尽くしていると、携帯が鳴った。発信相手は
「はい、
『
震えるような声の
――奈緒が......