ナースコールで駆けつけた主治医による、名前などの簡単な受け答えで特に意識に問題がないことが確認され、最後に現在の体調を訊かれた。
「身体の方は、いかがですか?」
「大丈夫です」
鋭利なナイフで背中を刺され、緊急手術を受けてからまだ二週間。当然ながら、負った傷は癒えていない。声を発するだけでも、患部に激しい痛みが走る。ただ、麻酔のおかげで耐えられないほどの激痛ではないし、指先の感覚もある。神経系統には問題なさそう。不幸中の幸いだろう。
「今のところ、後遺症もなさそうだな。でも、意識が戻ったとはいえ、容態が急変する可能性はゼロじゃない」
「何かあったら、ナースコールで知らせて。すぐに駆けつけるわ」
「はい、ありがとうございました」
主治医と看護士の言葉に答えたのは俺ではなく、
「あ、そのまま横になっていてください」
体を起こそうとしたところを制止され、ややズレた掛け布団を丁寧に掛け直してくれた彼女は、ベッド脇のパイプ椅子に腰を下ろす。
「ありがとうございます」
「いえ」
そして、なぜか訪れる沈黙。
病室の冷房が効き過ぎているのではないかと疑ってしまいそうなほど、夏なのにまるで秋のようなひんやり冷たい空気が、俺たちの間に漂っている。このどことなく気まずい空気を払拭するため、改めてケガの具合を訊ねる。
「ケガは、大丈夫ですか?」
「この通り、もう平気です。あなたが、身を呈して守ってくれたおかげで大事に至りませんでした。ありがとうございました」
「それは、よかったです」
――よかった、本当に......。
あの場から無事に救い出せた、それだけで十分。
「あ、そうだ。
「そうなんですね。あの、ところで、コレは?」
目を覚ましてから、ずっと気になっていたこと。俺が今、横になっているベッドと隙間なく、ぴったりと横着けされている簡易式のベッドについて。 簡易ベッドの枕元のカゴの中には、女性物の小物や着替えらしき物が、綺麗に整頓して収納されている。
「看病のためです」
「ずっと、看病してくれていたんですか?」
「はい。ま、ここで寝泊まりするようになったのは、ここ数日ですけど」
そして、すっと目を細めた。
「何か問題がありますか?」
季節が、秋から冬へと急速に移り変わった。
有無を言わさない威圧感を放ち、若干不機嫌そうな声色。まだ起きたばかりの頭をフル稼働させて心当たりを探してみても、これといった理由は思い浮かばない。
正解を導き出そうと思考を巡らせていると、タイミングよく助け船が来てくれた。病室のドアをリズミカルにノックする音。この仕方のノックをする人物に心当たりがある。「どうぞ」と返事をすると、思った通りの人物が姿を現した。
「やあ、ショウ。無事に目覚めたんだね」
「ニール。どうして、
「彼女から、刃物で刺されて意識不明の重体だって聞いて、緊急来日したんだよ」
「すみません、無断で電話に出ちゃいました。知らせた方がいいと思って」
「いえ、構いませんよ。出てくれて助かりました」
「そうですか? でしたら、よかったです」
「そういうこと。んで、本命はこれ」
「これは――」
渡されたのは、一冊のファイル。
「例の検査結果」
帰国前のヘリの中で、変化があると言っていた“共鳴”についての詳しい検査内容の報告書。
「じゃあオレは、これで」
「帰国するのか?」
「ううん。今から、シュンスケたちの組織の科学者と面会することになったんだ。たぶん、しばらく滞在することになると思う」
どうやら、俺がアメリカで作ったプレゼン用の資料は必要なくなりそうだ。だけど、目的だった
「外に車を待たせてるから行くね。じゃあトモリ、ショウのことは任せたよ」
「はい、お任せください。責任を持って安静にさせますので、ご安心を」
「ダメです」
広げようとしたファイルを取り上げられてしまう。
「まだ起きたばかりなんです。安静にしていてください」
「もう大丈夫ですよ。痛み止めも効いてますし」
「ダメです。ファイルは逃げません、いつでも読めます。ですので今は、ゆっくり休んでください」
手を伸ばしても届かない位置にファイルを置くと、病室のカーテンを閉めた。病室内を明るく照らしていた夏の日差しが遮られて、少しだけ暗くなる。窓辺から戻った彼女は、ベッド脇のパイプ椅子に座り、スマホを取り出す。
「これでよし、と。意識が戻ったことと、お見舞いは明日以降にしてくださいと連絡しておきました。これで今日は、誰も来ません。ゆっくり休んでください」
と言われても、さっきまで眠っていたのだから眠気はない。
「眠れませんか?」
「ずっと寝ていたようなものですから」
「それもそっか。んー、あ、そうだ」
連絡をした後ポケットにしまったスマホを再び取り出した。
「こういう時は、音楽を聴くと眠れます。静かなバラード曲にしましょう」
スマホから静かな曲調の音楽が流れる。
ボーカルのサラ・シェーンの澄んだ歌声とバンドの洗礼された楽曲に合わせて、彼女は体を小さく左右に揺らしてリズムを取り、上機嫌で鼻歌を歌う。
心地良い歌声を目を閉じて聴いていると、いつの間にか眠りについていた。
翌朝、朝日が登り始める前に目を覚ました俺は、昨日渡された例にファイルに目を通してた。記載されているニールの見解は、まったく予想していない内容だった。
「“
すぐ隣に居る、
『――未来で。あたしとあなたの間に何があったんですか......?』
帰国前に聞かれた言葉が脳裏に浮かんだ。
「覚えてないんだよね?」
ファイルを置いて、そっと頭を撫でる。
少しウェーブのかかった細くて柔らかい艶やかな髪の感触が、手のひらに伝わる。撫でられてくすぐったかったのか、彼女は少し身じろぎをして、また小さな寝息を立て始めた。
起こさないように注意して、静かにファイルに目を戻す。
しばらくして、日の出の時間を迎え、清潔感のある真っ白なカーテンの隙間から射し込んだまばゆい光が、病室を明るく照らした。
夏の朝、早い朝。枕元に置かれたスマホのアラームが鳴る。その音で、彼女はゆっくりと重そうにまぶたを開いた。
「ん、んぅ......」
「おはようございます」
「んー? ん? はっ!?」
腕に抱きついていることに気付いて 、慌てて離れた。そして、なにごともなかったかのようにベッドの上で、ちょこんと座り直す。
「おはようございまーす。実は最近、抱き枕にこってましてつい抱きついちゃったんですよー。はっはっは~」
黙ったまま見ていると、訴えるような顔を向けてきた。
「なんか反応してくださいよ、気まずいじゃないっすか」
「朝ご飯、行きましょうか?」
「そうしましょう」
「外で待ってますね」
着替えをするであろう
「いえ、大丈夫っす。少しの間後ろを向いていていただければ」
「それは、さすがに――」
前世ならそれでもいい。けど今は、あの頃の関係はすべてリセットされてるわけで。
「ずっと、ここ着替えてましたのでお構いなく」
「そうだったんですか?」
「そうっす。と言うことですので、夏の青空でも見ていてください。それとも~、あたしが着替えているところを見たいんですか~?」
ベッドの上を四つんばいで近づいて来て、やや上目遣いでからかうような表情を浮かべる。俺は、すっと反対側を向いた。なにやら背中に刺すような視線を感じた気がしたけど、きっと気のせいだろうと言い聞かせて、冷静を保つためファイルに目を戻す。
「お待たせしましたー」
その言葉に振り向くと、星ノ海学園の夏の制服に袖を通した彼女が立っていた。なんとなく見入ってしまう。
「どうしたんすか?」
不思議そうに、小さく首をかしげた。
「あ、いえ、なんだか懐かしい気がして」
「うっわぁ~、もしかして制服フェチなんすか~?」
からかうように「ひくな」と、笑顔を見せてくれた。笑顔を見たのも久しぶりな気がする。ベッドの手すりを掴んで起き上がる。
「大丈夫ですか? 無理しないでください。今、車椅子を借りてきますので――」
慌てて病室のドアに手をかけた、
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。多少強引にでも体を動かないと良くなりませんから」
「ハァ、では、手をお貸します。掴まってください」
素直にうなづいて、手を借りる。片手を壁に、もう片方の腕と腰を
「食券を買ってきます。なににしますか? って言うか、そもそも食べられますか?」
「消化の良い
「わかりました。では、少し待っててください」
食券を買いに行ってくれた
「もしかして、歩いてきたのか?」
「はい。手を借りてですけど」
「昨日の今日で。スゴい回復力だ」
「身体の調子は、どう?」
「おかげさまで。思っていたよりも軽いです」
「そう。それは、あの子のおかげよ」
看護士は、カウンター越しに店員と話している
「
「ええ、そう。血行を良くするために毎日マッサージをしていたわ。リハビリ科の専門医の元を尋ねて、ケアの方法を一生懸命聞いて、関節の曲げ伸ばしとか、寝返りの頻度とか、本当にたくさんのことを聞いていたわ」
「そうだったんですか......」
「果報者だな。うらやましいよ」
「ふふっ、そうね」
「お待たせしましたー。あ、おはようございまーす」
おぼんを持って戻ってきた
「それは? お粥っぽいけど?」
「そんなメニュー、ここにあったかしら?」
「これは、お粥をフードプロセッサーにかけて流動食のようにしてもらったんです。これなら食べられるかと思いまして。色が赤いのは、梅干しです」
カウンターで店員と話していた理由が判明した。
眠っていた間のマッサージのことも、この食事のことも、本当に支えられている。どうすれば返せるのだろうか。だけど
「解せないわ」
今後の治療方針やリハビリについて話しながら朝食を食べていると突然、看護士はレンゲで掬った麻婆豆腐を見つめて、やや不愉快げに呟いた。
「なにがっすか?」
「ああー......気にしなくていいよ。ただ好物がないだけだから」
「ここでも東京の病院でも、毎日のように要望書を投函しているのに一向に採用されないのは、どうしてなのかしら?」
「今食べてる、普通のがあるからだろ。ほら、これ入れて我慢しておけ」
一味唐辛子の入った容器を、看護士に差し出した。
「納得いかないわ」
不服そうな顔で言いながらも、一味唐辛子を麻婆豆腐にこれでもかと振りかける看護士の姿に、日替わり定食のおかずに箸を伸ばす主治医は、若干呆れ顔でタメ息をついた。
* * *
「辛口が好きだったんですね、あの看護士さん」
「みたいですね」
とんでもない量の一味唐辛子を入れて食べていた。あの辛さを再現して提供するのは、病院ではちょっと無理がありそうだ。
「ところであの二人、とても親しげに見えたんすけど。もしかして――」
言いかけたところで、
車椅子に乗った
「よう」
「おはようございまーす」
「おはようございます」
「おはよー。起きたばかりなのに、もう歩けるの?」
「はい。こうして支えてもらえればですけど。辛そうですね」
患者服の袖や裾から治療の跡が目に入る。
「生死の境を彷徨っていたお前よりは遥かに軽症だ」
「あのー、とりあえず中に入りましょう」
背中に負担が掛からないように壁の間に枕を挟み、ベッドで足を伸ばす形で座る。膝の上に布団をかけてくれた
「ふぅ~ん」
「なんすか?」
「ちゃんと看病してるんだって思ってね」
「はい、とても助かっています」
「いえ、どういたしまして......」
少し照れくさそうに、
「それで、なにか?」
俺は、二人に問いかける。
「お前が起きたって知らせが入ったから礼を言いに来たんだ。助かった、礼を言う」
車椅子に座ったまま、
「いえいえ、どういたしまして」
「
「それはよかったです。それで、彼は?」
「今は、ご家族と一緒に組織の管理するマンションで生活している。ご家族の方は
「そうですか」
しかしどういう訳か、二人の表情が曇った。
「ただ、
家族が人質に取られていたとは言え、最悪のタイミングでの裏切り。事なきを得たが、当然の判断とも言える。ただ、組織立ち上げの当初から尽力していたこともまた事実。世話になっていた
「説得はしたんだけどね。せめて退職金をって、
「彼を呼んでもらえますか?」
「
「もちろん」
「それは......」
傷口をえぐる行為の要求に、
「辞めるにしても筋を通せと伝えて下さい」
「わかった。
「......うん、伝えてくる」
「お茶を入れますね」
「ありがとうございます。お願いします」
重い空気を察した
「そうだ。あいつ、ニールって言ったか?」
「ニールが、どうかしましたか?」
「施設の研究室を私物化しているらしいぞ。組織の科学者たちも未知の実験に興味深々らしいが、いろいろ好き勝手にイジるから冷や汗ものだそうだ」
研究室に招かれたと言うことは無事に協力関係を築けたと言うことだ。プレゼンの資料は無駄になったけど、これで大幅な前進を期待できる。
「きっと新しいおもちゃを見つけたんですね。長くなりますよ」
「能力者の
「ご存じなんですか?」
「ああ。お前たちの研究の内容を聞いて、俺が頼んだんだからな。組織の科学者と会ってくれって」
「そうでしたか」
「お待たせしました。どうぞー」
用意してくれた麦茶をいただき、話題を世間話に変えた。
「もうすぐ退院って聞きましたけど、いつっすか?」
「検査結果に問題がなければ今日の午後にも退院できる。歯も入れたし、入院していも爪はすぐに生えないからな」
「うわぁ、生々しいっすね~」
「施設にも医務室は完備されているから今後は、そっちでリハビリを始める予定だ。お前は、どうする? 転院を希望するなら、話しを通しておくぞ」
「主治医と相談して、ですね」
「それもそうだな」
コンッコンッとドアをノックする音が響く。おそらく
「どうぞ」
ドアへ向かって声をかける。予想通り
「早いですね」
「この病院まで、
「ああー、そうだったんですね」
当人はというと、黙ったままうつむいている。
「
「――すまない!」
声をかけると、深々と頭を下げて、いきなり謝罪の言葉を口にした。
「とりあえず、顔を上げてください」
うながしても顔を上げる気配はない。
「
「......組織は抜けるつもりだ。それだけのことをしでかした。責任は取る......」
「退職金を拒否してるらしいですね。せっかく助け出した家族を路頭に迷わすつもりですか?」
「お、おいっ!」
俺は、構わずに話を続けた。
「組織を辞めるという判断は正しいと思いますよ。組織存続のためにも、家族の安全のためにも。そして何より、あなた自身のためにも最善の判断だと思います。ですが――」
「......貯蓄はある」
言い終わる前に、絞り出すように言った。
「限りはあるでしょう。所属しているのは、裏世界の組織です。まともな企業ではありません。失業保険は下りませんよ。
所持品の入った箱から携帯を取り出して、手渡してくれた。
「はい、どうぞー」
「ありがとうございます」
携帯を開き、発信履歴から目的の名前を選択して、通話ボタンを押す。数回のコールで繋がった。
「あ、
『
電話の相手は、贔屓にしている証券会社の
「面倒をお願いしたい人がいるんですが」
『どう言った内容で?』
「生活面の方で。運転が出来る付き人を探していましたよね?」
『わっかりましたー、お伝えておきます。お任せください!』
「お願いします」
通話を切る。携帯を置いて、ベッド脇に置いてあるメモ帳を取り、氏名、住所、電話番号と一筆を添える。
「これを――」
彼は躊躇しながらも、メモを受け取った。
「その住所を訪ねてみてください。話は通してあります。そこなら、周囲に危険が及ぶことはありません」
仮に手を出そうものなら、情け容赦ない制裁が下る。
「どうして、ここまで......?」
「今回の件はもう、どうでもいいです。二人を助け出すことが出来ましたから」
「けど! キミも瀕死の大ケガを負って――」
「それに関しては、完全に俺の判断ミスです」
これに関していえば、俺自身の油断が招いた結果。
「ただ、あなたのつまらない意地でご家族に迷惑がかかるようなことがあれば、それは許しませんよ?」
「......すまない」
「聞き飽きました。別の言葉でお願いします」
「別の?」
「......ありがとう」
そういって、もう一度深く頭を下げた。
「どういたしまして」
「お茶です、どうぞー」
この話は、これでおしまい。そう言うように
「あっ、ありがとー。ちょうど喉が渇いていたの」
「悪いな」
「気を遣わせてしまって申し訳ない、いただきます」
「そうだ、
「麻雀ですか? いえ、やったことないです」
「そうか......」
――麻雀に、なにか特別な思い入れでもあるんだろうか?
「それが、なにか?」
「いや、なんでもない。そろそろ戻る。診察の時間だ」
誤魔化すように時計を見てそう言った。
「じゃあ私たちは戻るわね」
「ええ、お大事に」
「お前もな」
来たときと同じように
「騒がしかったっすね」
「そうですね」
そう言った彼女の
「あの、これ」
ポケットから取り出したのは、見覚えのあるカードキー。
「あなたの家のカギです」
「渡米前に預けていたんですよね」
「はい。このカギ、使ってもいいですか? あなたの着替えとかを用意したんですけど」
「あ、そうですね。お願いしてもいいですか?」
「はい、では今から行ってきますね」
「ひとつ持ってきていただきたい物があるんですけど、お願いできますか?」
「はい、なんでしょう?」
「ビジネスルームの机の引き出しの中にA4サイズの封筒があります。それを一緒に持ってきていただけますか?」
「わかりました、封筒ですね。持ってきます。では行ってきまーす」
「お願いします。お気を付けて」
「どうぞ」
「げんき~?」
「おかげさまで。何か忘れ物ですか?」
「うん、ちょっとね。座っていい?」
「どうぞ」
身体を起こすと、
「ありがとうございます」
「ううん、いいのよ」
さっきと同じ椅子に座る。
「それで?」
「ちょっと訊きたいことがあって、
「今、東京へ戻りました。いろいろと準備をして来てくれるそうです」
「そう。なら、ちょうどいいわ」
「
――未来での関係のことだろう。
「今は、こんな状態ですから」
「そう、そうよね。じゃあ、皆にも口止めしておくわ」
「お願いします」
「うん、ところで~」
目を少し細めて、顔を近づけてきた。
「どっちから告白したの?」
「えっと、俺です」
「ふぅ~ん」
「やっぱり、男子からよねっ」と腕を組んで頷きながら言う。
「
「う~ん、どこですかね」
改めて訊かれると困る。いつの間にか自然と目で追っていた。本当に自覚したのは、
* * *
「
「なんですか?」
「好きなの?
「ああ、はい、好きですよ」
「それは、女子の友だちとして? それとも、女の子として?」
――どっちなんだろう......友だち? だけど、
彼女と出会い過ごした、この短くも濃い日々を振り返る。
「たぶん――いえ、ひとりの女の子として、彼女に好意を寄せているんだと思います」
「そう。
「知っています。本人から聞きました」
「そう、きっと、あなたの想像以上に重いわよ、覚悟はあるかしら?」
「もちろんです」
「そっ、頑張りなさいっ! 男の子!」
そう、激励を貰った。
「そうですね。強いて言えば、とても女の子らしいところですね」
「具体的には?」
妙に突っ込んで聞いてくる。
「優しくて、笑顔が可愛くて、あとピンクとか、可愛いファッションとか、小物が好きだったり――」
ひとつ、またひとつ上げていく。いろいろなことが次々と出てくる。
そして、最後に......。
「あと、料理がすごく美味しいです」
「あっ! 胃袋を掴まれたんだー」
「そうかもしれませんね」
「そっか......」
「やっぱり、料理か......」と、小さく呟くのが聞こえた。二人の内、どっちだろうか。
「ありがと、参考になったわ。じゃあお大事に」
「いえ、頑張ってください」
告白した時は、向こう見ずで無茶をすることがある彼女を守りたいという思いが強かった。けど今は、
そして、その時は、もう一度ちゃんと――自分の言葉で、心からの想いを伝えようと思う。