東亰ザナドゥ ~蘇りし骸殻者ルドガー~   作:ロナード

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今回はルドガーの異界での初めての戦いが描かれます。ルドガーのソウルデヴァイスがどういうモノなのかは読んでのお楽しみ。それと、前回触れた通りにルドガーの住むと言うよりは居候する場所と職場?が一応決まります。


第2話 新たな戦いの火蓋

ヤバい、ヤバいぞ・・・タコライスを食べてから、スケボー大会で貰ったトロフィーを質屋に売ろうとしたが買い取って貰えずに、そのまま数時間は経った。今、俺は何とか現在の手持ちで泊まれる宿を探しているんだが、これがなかなか見付からない。そんな都合のよい宿が簡単に見つかる訳ないよな、どうしよう・・・もう暗いし、そろそろ泊まれる場所を見つけないと最悪野宿する事になるしな。それだけは絶対に避けたい。ホームレスだと思われたくないからな。俺は死に物狂いで手頃な宿を探している時だった。

 

「うわぁぁっー!?」

 

何処からか、悲鳴と思われる人の叫び声が聞こえたので宿を探すのを止めて、俺は悲鳴が聞こえた方向に向かった。着いた場所は人通りの少ない通路で、そこには一人の青年がいた。その青年の後ろには空間に赤いヒビが出ているという謎の現象が起きている。その空間に入った赤いヒビが広がっていくと、青年はその赤いヒビに吸い込まれる様に姿を消したのだ。

 

「な、なんだよ。今のは・・・」

 

俺は何が起こったのか解らず混乱したが、直ぐに気を取り直して落ち着きを取り戻した。俺は青年が先までいた場所を見ると、ソコには赤く光る門みたいなモノが出現していた。先の空間に入った赤いヒビと何か関係が有るかもしれないと思った俺は、その突然出現した謎の赤い門に向かって突っ込んでいくと見知らない場所についた。おそらく赤い門の中だと思うのだが、ソコはまるで遺跡の様な空間だった。ここは一体・・・俺は赤い門の中がこの様な空間に繋がっている事に戸惑いつつも青年を探す事にした。

 

「おーい!聞こえるか。聞こえるなら返事をしてくれ!」

 

俺は声を出すが返事は無い。やはり、この場所は怪しい。とにかく、青年が無事なのかどうかが気になるので奥に進もうとした時だった。

 

「グィギーーー!」

「なっ!?」

 

突然、俺の目の前に魔物にしか思えない小型の人型生物が現れた。この世界には魔物がいないんじゃ無かったのか!?俺はオリジンの話を少し思い出す。オリジンは現実には魔物と呼べる存在がいないと言っていた。その意味が少しはわかった気がする。おそらく、あの赤い門の中こそが現実とは違う世界なのだろう。この場所の様に・・・

 

「グッギー!」

「おっと、危ないな」

 

俺は魔物の攻撃をかろうじて避けるものの武器を持っていない今の俺ではマトモに戦う事が出来ない。仕方ない、ここは寿命が減るにしても骸殻で切り抜けるしかない。そう思った俺が時計を取り出そうとした時だった。

 

「これは!?魔物が止まっている?いや、時間が止まっているのか!」

 

俺は一瞬何が起きたのか分からなかったが、直ぐに俺以外の時間が止まっている事に気付いた。すると、俺の目の前に突如、銀髪の少女が姿を現した。

 

「君とこうして出会うのは初めてだね。ルドガー・ウィル・クルスニク。」

「お前がオリジンの言っていた・・・」

「そうだよ。僕が君をこの世界に蘇らせたんだ」

 

どうやら、今目の前にいる少女こそがオリジンの言っていた『彼女』だろう。俺が思っていたのと違って随分と幼い外見だが、今こうして時間を止めているのが目の前の少女なので、オリジンと同等の力を持つ『彼女』と呼ばれる存在で間違いないだろう。そんな『彼女』が俺を試すかの様な事を口にする。

 

「ルドガー。君は今、再び戦いの火蓋にいる。だけど、今の君には武器が無い。それでも戦う気かい?」

「ああ。例え、武器が無くとも関係無いな。俺は目の前で大変な目に合った人を放っておく事は出来ないんでね。お人好しだと思うなら、勝手に思えばいいさ。だが、俺は近くに助けられる奴がいると言うならば、例え寿命が減るにしても骸殻を使ってでも助けに行く!何故なら、俺は前の世界では分史世界を破壊した時にはその分史世界に住む人達は何も知らずに死なせてしまった。だからこそ、この世界では助けられる命は助けると心の奥では誓っていたんだ!それが俺の選択した道だ!」

「そうか。僕の目に狂いは無かった。君はやっぱり面白い人間だよ。他人の為に自分の命を削るんだからね。どうやら君は再び戦う事を選択したみたいだね。でも、せっかく僕が蘇らせた命だから、骸殻を使って直ぐに死なれてしまうとさすがに複雑な気持ちになるから・・・ルドガー。君の思いに免じて骸殻を使わなくとも戦える様にしよう」

「こ、これは・・・一体?」

 

『彼女』が俺の選択した答えを聞き、俺に再び戦える力を与えたのか俺の手が光だす。

 

「それじゃあ、ルドガー。また、会えるとイイね」

 

『彼女』がそう言うと姿を消したと同時に時間も動きだした。

 

 

 

「はっ!?お、俺は今、誰かと会話していた様な・・・って、そんな事を言っている場合じゃなかったな!?」

「グッギギー!!」

 

俺は魔物の攻撃を避けると、俺の手が光だしている事に気付く。この光は一体・・・先までは確かに誰かと話していた様な気がするのだが、多分気のせいだろう。変な事を考えている場合じゃないな。とにかく、手が光だしたと同時に頭に浮かび出した言葉を俺は発した。

 

「来い!デルタウエポン!」

 

そう発すると俺の手には馴染みが有る双剣が握られていた。俺はその双剣を逆手持ちに持ち変えると目の前にいる魔物を俺の得意技で斬り刻む。

 

「喰らえ!鳴時雨!」

「ギッゲゲ・・・」

 

魔物を鳴時雨で細切れにし、魔物が消滅した事を確認すると青年を探す為にこの遺跡の奥に進む。その道中に新たな魔物が襲撃してきた!

 

「ブッブブ!!」

「今度はエイ・・・いや、マンタなのか?」

 

今度はエイなのかマンタかは解らないが、それらのどちらかとムカデが合体した様にも見える姿をした魔物だ。まるで空中を泳ぐ様に浮遊している。その為、双剣では攻撃が届きそうには無いが、デルタウエポンという事はおそらく・・・俺は頭の中で使いたい武器を念じると双剣が二丁の拳銃に姿を変えた。

 

「よし!思ったとおりだな。これで撃ち抜く!ラピッドレンジ!」

「ブッビビィィーー!?」

 

俺はエイの化け物を銃での得意技であるラピッドレンジで穴だらけにして撃ち落とした。さらに奥に進んで行くと、大きな鉄の人形の様な魔物が姿を現した。いわゆるゴーレムだな。固そうなゴーレムにはコレだな!

 

「デルタウエポン。ハンマーモード!」

 

俺はデルタウエポンを今度は二丁拳銃から一本のハンマーに変えた。やっぱり、デルタウエポンは俺の使っていた武器に姿を変えるモノらしい。そもそもデルタウエポンが一体どのようなモノなのかは俺にはさっぱり解らないが、お陰で戦えるので難しい事は考えない事にした。

 

「これで粉々にする!」

 

俺はハンマーでゴーレムの体を思いきり叩きつけ、ゴーレムの体にヒビが入ったところでトドメの一撃を喰らわせる。

 

「これで終わらせる。デストリュクス!」

 

俺はハンマーを振り回してから地面にハンマーを突き刺す秘技デストリュクスでゴーレムに攻撃した。ゴーレムは静かに崩れ落ちた。これで魔物は大分、片付いた筈なので急いで遺跡の奥に俺は進んだ。

 

 

俺は遺跡の一番奥に来たのか随分と広い空間に出た。その奥には探していた青年の姿が見えた。青年は気絶しているのか倒れているので俺は青年の側に行き、無事かどうかを確かめる。

 

「おい!大丈夫か」

「う、うぅっ・・・」

 

青年は呼び掛けても起きなかったが、どうやら命に別状は無いのでひとまず安心した。とりあえず、青年を連れてこの訳が解らない場所を脱出しないとな。俺が青年を運ぶ為に青年を背中に乗せようとした時だった。

 

「ジェントルメ~ン!」

 

その独特な鳴き声?と共に俺の目の前に巨大な魔物が姿を現した。あの人型で細長い体をしたジェントル系の魔物だ。目の前にいるジェントル系の魔物の姿は紫色のボディに橙色のボーダーラインが縦に描かれた様な模様をしている。相変わらず独特な姿をした魔物だよな・・・とりあえず、名前は適当に紫ジェントルと勝手に命名させてもらおう。

 

「ゴメンゴメン」

「相変わらず独特な動きっていうか、変な攻撃してくるヤツだな・・・」

 

紫ジェントルは俺に謝る様な鳴き声を出しながら、ヘッドバットで攻撃してくる。俺は倒れている青年に被害が及ばない様に引き付けてから避けた。さてと、こちらもいかせてもらおうか!俺はデルタウエポンをハンマーから二丁拳銃に変化させて、紫ジェントルの頭上から弾丸が雨の様に降り注ぐ技レインバレットで攻撃するが、紫ジェントルはレインバレットをまるで踊るかの様な動きで全弾回避した。

 

「バーカバーカ!」

「この野郎・・・」

 

コイツ・・・今、バーカバーカって言ったよな?言っただろ!紫ジェントルがムカつく言葉を発したので、俺は銃での技を連続で繰り出す!

 

「喰らえ!バブルストーカー!ラピッドレンジ!レインバレット!」

「バーカバーカ!バーカ、バーカ!」

 

 

俺の繰り出す技は紫ジェントルに全て避けられた上に、もっと馬鹿にされる様になった。コイツは絶対に跡形も無く消し去ってや・・・おっと、落ち着け俺!頭に血が登ったら、攻撃が単調になってしまう。だから避けられたんだ。その事に気付いた俺は戦い方を変える事にした。

 

「いくぞ、紫ジェントル!レインバレット!」

「バーカ!」

「馬鹿はお前だ!デルタウエポン、ハンマーモード!デストリュクス!」

「グゲッ!?」

 

紫ジェントルはレインバレットを踊るかの様に回避しながら、俺を馬鹿にするがその瞬間に俺はデルタウエポンを銃からハンマーに変化させてデストリュクスで地面を盛り上げて、紫ジェントルに攻撃を当てるだけではなく紫ジェントルの周りの地面が盛り上がった事で壁ができ、動きを制限できる様になった。紫ジェントルは悪足掻きなのか、ジャンプしてデストリュクスで出来た壁を飛び越えようとした。

俺はその瞬間を待っていたんだ!紫ジェントルに一番回避に移せないであろうこの状況をな!

 

「これで終わらせるぞ!祓砕斬・零水!」

「グゲゲッ・・・」

 

俺は紫ジェントルにまずハンマーによる打撃を与えて怯ませ、続いて相手の懐に潜り込んで双剣で斬りつける。そして、最後に銃で狙い撃ちにする秘奥技である祓砕斬・零水でトドメをさした。デルタウエポンは武器を変化させる必要が有る為に最初の銃を空中に投げる動作は省く事になったけど、威力は変わらないので問題は無い。

 

 

 

さてと、今度こそ魔物はいない筈なので、俺は青年と共にこの訳の解らない場所から脱出しようと思ったんだ時だった。突然、空間が揺らぐ様な感じになる。すると、いつの間にか青年と共に俺は元の場所である通路に戻っていたのだ。

 

「何だ、今のは・・・とにかく、戻ってこれたんだ。おい、大丈夫か?」

「うっ、ううん・・・」

 

俺はどうやって元の場所に戻ったのか気になったが、それよりも青年の様子を確認する事を優先した。青年はまだ気絶している様だが、身体のどこにも怪我は無い様なので安心した。俺は青年を近くに有ったベンチに寝かせ、その場を後にしようとした時だった。

 

「人助けをしてお疲れのところですみませんが、あなたには私達の所で一旦、話を聞かせてもらいます」

 

いつの間にか、俺の周りには黒いスーツを着たサングラスの男達に包囲されていた。その男達を指示する立場なのか眼鏡をかけた女性が俺の目の前にいる。この状況、どう考えてもヤバいんですけど・・・

どう考えても黒いスーツにサングラスの男が複数いる時点でヤバい連中なのは確かじゃん!っていう事で悪いが俺は抵抗させてもらう!

 

「出てこい、デルタウエポン!・・・あれ?デルタウエポン、デルタウエポン!デェルタァァウエェポーーン!!」

 

俺は先ほどの様にデルタウエポンを出して、この窮地を脱しようとしたのだが、デルタウエポンは出現しない。何度叫んでも念じようが、しまいには赤っ恥覚悟で大声を出したのだが、デルタウエポンは出てこない・・・何で、こんな時に限って出てこないんだよぉーー!?

眼鏡をかけた女性は俺の考えていた事が解ったのか、俺に教える様に言う。

 

「あなたはどうやら何も知らない様ですね。そのあなたが言うデルタウエポンはソウルデヴァイスと呼ばれている武器です。ソウルデヴァイスは異界の中か、異界に関する力が働いている場所でしか出現しません。それにあなたは何か勘違いしている様ですが、私達は別にあなたに危害を加えるつもりは有りません。ただ、話を聞かせてもらいたいだけです!」

「そうでしたか、とんだ早とちりで勘違いしてすみません・・・」

 

俺は彼女達に敵意が無い事を知ると抵抗する事を止めた。それにしても、異界にソウルデヴァイスねぇ・・・彼女の話によると、俺が先ほどの魔物との戦いで出した武器デルタウエポンはソウルデヴァイスと呼ばれるモノで、ソウルデヴァイスは異界の中か異界に関する力が働く場所でのみ現れるという事は解った。でも、俺は異界というモノについては詳しく解らないし、とりあえず彼女達についていった方が俺の方も知りたい事を聞けるかもしれないので、俺は彼女達についていく事にした。

 

 

 

俺が彼女達に連れられてやって来たのは杜宮記念公園の敷地に有る高級マンションの屋上の部屋だった。俺もエレンピオスにいた時はマンションに住んでいたけれど、流石は高級マンション。壁の作りから隅々までもが立派に見える・・・うん、止めようか。自分の住んでいたマンションとこの高級マンションを比較する事はね。色々な敗北感に包まれるだけだからな・・・

 

「お嬢様。先ほど連絡した通り、初めての異界での戦闘にしては実力が有りすぎる男を連れて来ました」

「そうですか。それではキョウカさん。その方と一緒に入ってください」

 

この女性はキョウカさんっていうのか。キョウカさんは初めての戦闘にしては俺の実力が高い事に違和感を感じている様だな・・・あれ?もしかして、キョウカさん達は俺が青年を助けようとした時からずっと俺の様子を隠れながら伺っていたのか!?じゃないと、先ほどのソウルデヴァイスやらの説明がされない筈だからな。俺とキョウカさんは言われた様に部屋に入り、俺達の後ろにいた黒いスーツの男達はその場で待機する。部屋に入ると、水色のロングヘアーの女性がいた。彼女はキョウカさんがお嬢様と言っていたので、どこかの立派な企業を経営している家系のお嬢様なのだろう。お嬢様と言われるに相応しい気品と優雅さを一目で見て感じる。彼女は俺に目を合わせ話し出す。

 

「話はキョウカさんから聞かせてもらいました。私の名前は北都 美月。ミツキと申します」

「あっ、はい。初めまして、ミツキさん。俺の名前はルドガー・ウィル・クルスニク。ルドガーと呼んでください」

「ふふ。それではルドガーさん。話したいと思いますので、ソコに用意した椅子に腰をかけてください。それと無理して敬語を使わなくてもイイですよ」

 

互いに自己紹介をした後に俺はミツキさんに言われた様に側に用意されていた椅子に腰をかけて座る。それにしても、無理して敬語を使っていた事がバレたか・・・どうも、リーゼ・マクシアの王であるガイアスと旅をしていた事が原因か、それとも一時的とはいえ、クランスピア社の副社長になったからなのか。本来なら敬語を使うべき目上の人を前にしてもあまり緊張せずに普段通りに話してしまいそうになるんだよな。

とにかく、今はミツキさんとキョウカさんが俺の事をどう思っているのか知りたいし、俺も異界やらの情報を詳しく知りたいのでミツキさんに目を合わせ、話を聞く事にした。

 

「それではルドガーさん。あなたに聞きたい事が有ります。まず、あなたは先ほど異界に入り、迷宮にいた怪異(グリード)を倒して捕らえられた青年を救出したそうですね。しかも、あなたが異界に入った事とソウルデヴァイスを使っての戦いは初めてだと聞きました。ですが、あなたの戦闘能力はキョウカさんから聞かされた内容によると、三種の姿に変化するソウルデヴァイス、デルタウエポンを簡単に使いこなして怪異を簡単に倒し、迷宮の奥にいた迷宮の主であるグリードを相手に機転を聞かせて倒した様ですね。私とキョウカさんはソコに違和感を感じるのですが・・・あなたは本当に異界に関わったのは今回が初めてなのですね?」

「そうだ。俺は本当に異界とやらに関わったのは今回が初めてだ。ソウルデヴァイスを使っての戦いもな!それにしても、怪異って何だ?あの変な場所にいた魔物の事なのか?」

「そうです。ルドガーさんが言う魔物は怪異の事で間違いないでしょう。怪異の存在も知らないとすれば本当に異界と関わったのは今回が初めての様ですね」

 

どうやら、ミツキさんとキョウカさんの二人は俺が最初から異界とやらの事を知っていたのかどうかを知りたかった様だな。それにしても、異界に怪異ね。俺の世界での分史世界や時歪の因子の様にこの世界でも複雑な事情が有るみたいだな。ミツキさんは俺が初めて異界に関わった事を認識しつつも、キョウカさんは感じる違和感ゆえに納得できない部分も有るのか俺に問い質す。

 

「ですが、あなたの戦闘能力の高さの理由が解りません。あなたはまるで武器を使いこなすと言うよりも、武器をまるで使い慣れているどころか戦い慣れし過ぎている感じがしました。あなたは異界に関わった事が無くても、戦った回数は多いのでは有りませんか?」

 

さすがに、戦い慣れしている事は見抜かれているか・・・キョウカさんも異界とやらで戦った事が有るんだろうな。しかも、数回じゃないだろう。キョウカさんは相当な修羅場をくぐってきたと思われる。今、俺に向かれている目からは歴戦の猛者からしか出ない威圧感を感じる。もし俺がミツキさんに危害を加える輩だとしたら、直ぐに取り押さえる事ができる様にしているのだろう。

俺は何とかして敵意が無い事を伝えたいのだが、その前に戦い慣れしている理由も言わないとダメなのだが・・・どう答えればイイのか?

1.別次元の世界から来たと言う事を話す

2.実は俺、名前以外の事は覚えていないと作り話で誤魔化す

 

・・・止めよう。この二つのどちらを選択しても信じてもらえそうに無い。1は本当に別次元の世界から来たとは言え、まず確実に頭がおかしくなった人、もしくは俺が人型の怪異という化け物だと思われるだろう。2はどう考えてもミツキさんとキョウカさんを相手に誤魔化せるとは思えない。どうしよう・・・とりあえず、敵意が無い事だけは伝えたい。だからこそ、ここは俺の一番の特技で切り抜ける事にした!

 

「ええと、そんな事よりも二人供。腹が減ってないか?」

「いえ、私は先ほど食べたばかりですので大丈夫ですけれど・・・」

「そんな事よりも?ルドガーさん。私を相手にそんな簡単に誤魔化せると思ったら大間違いですよ」

「キョウカさん!そんな事は言わずに待って下さい。直ぐにできますから。ミツキさん。台所をお借りします」

「は、はあ・・・どうぞ」

 

俺はいきなりの事で少し戸惑うミツキさんと俺に対する不信感が徐々に強まっているキョウカさんに敵意が無い事を伝える為に俺の作った料理を食べさせる事にした。だって言うだろ、[料理は剣より強し]。いや、[ペンは剣より強し]の間違いだったな・・・でも、俺が敵意が無い事を伝えられる手っ取り早い方法がこれしか無いんだ!

 

俺は台所に有る冷蔵庫の中身を確認する。本来は人の家の冷蔵庫を見るべきでは無いと解っているが、敵意が無いと分からせる為には仕方ない事だと自分に言い聞かせながら冷蔵庫の中身を確認して必要な材料だけを取り出す。俺が冷蔵庫から取り出したのは、ブロッコリー、人参に玉ねぎ。そしてトマトだ!やっぱり、トマトを使う料理の方が俺の気持ちが食べた相手に伝わる気がするしな。まあ、トマト好きの兄さんによる影響かもだけど・・・

 

俺は取り出した材料で直ぐに調理を開始する。まずはブロッコリーを均等に食べやすいサイズにカットして、人参と玉ねぎは微塵切りにする。トマトは正方形に細かくカットする。次に熱したフライパンに油を惹いたら、先ほどカットしたブロッコリーに微塵切りにした人参と玉ねぎを入れて塩コショウを少々まぶして熱が通ったら、俺が作り出した秘伝の調味料を入れる。最後に正方形にカットしたトマトを入れて軽くかき混ぜたら、俺特性のトマト入り野菜炒めの完成だ!秘伝の調味料が俺のポーチに有って良かった・・・これが無かったら、このトマト入り野菜炒めの味が一割低下してしまうからな。たかが一割だと思ってはダメだ!一割をナメるヤツは一割に泣くんだからな!

さてと、さっさとミツキさんとキョウカさんの所に俺特性のトマト入り野菜炒めを持っていかないとな。

 

俺はミツキさんとキョウカさんに俺特性のトマト入り野菜炒めを食べてもらう為に二人を半ば強引に座らせてから、テーブルにトマト入り野菜炒めを置いた。キョウカさんは俺が料理をしていた最中に電話をしていた様だが、その電話相手が俺を始末する為の刺客ではない事を祈る。目の前にいきなり料理を置かれた二人は少し戸惑っている様だが、二人は俺の料理を口にした。

 

「美味しいです!ルドガーさんは料理がお得意なんですね」

「驚きました。まさか、こんなに美味しい料理を作れるとは思いもしませんでした。私はてっきり、毒物か睡眠薬を入れるのでないかと警戒していましたが、どうやらルドガーさん。あなたは私達に危害を加える人ではありませんね」

 

よ、良かった。ミツキさんはともかく、キョウカさんの警戒は解けた様だ。やっぱり、[料理は剣より強し]だな!キョウカさんは俺が危害を加える者では無いと解っても、少し腑に落ちない様だ。

 

「ルドガーさん。先ほど、あなたの事を調べてもらい電話であなたに関する情報を聞きましたが、あなたに関する情報がこの世界のどこにも無かったと聞きました。あなたは本当に何者なのですか?」

 

さすがに俺がどこの誰なのか調べられた様だな。でも、俺に関する情報がこの世界に有る筈が無い。何故なら、俺は別次元の世界のエレンピオスの出身だ。だから俺の事を調べても、この世界で得られる俺の情報はまさに無だ。ミツキさんにキョウカさんは俺の事をどう思っているのだろう?この世界にいきなり現れた謎の人物か?それとも、自ら自分の情報を消した者なのか。様々な考えを出している事だろう。

俺は何と答えればイイのだろうか。やっぱり、信じてもらえそうに無いと思っても別次元の世界から来たという事を話すべきなのか・・・俺がどう説明すればイイのか悩みだした時だった。

 

「キョウカさん。ルドガーさんは危険な人では無い。それが分かった事ですし、ルドガーさんの事を問い質すのは止めましょう」

「お嬢様!?確かにルドガーさんには敵意が無い事は分かりましたが、素性不明の人物を簡単に信用する事は・・・」

「キョウカさんの言いたい事は分かります。でも、私はルドガーさんが何者だろうと関係無いです。誰にも触れられたくない過去は有りますし、それに・・・」

「それに?お嬢様、どうしました?」

「ルドガーさんの料理からは懐かしく感じるモノが有ったのです。ルドガーさんの料理には食べてもらう相手に対しての思いやりに優しさ、食べた人に喜んでもらいたいという気持ちが強く感じました。それが当たり前の事だとしても、ルドガーさんの料理には懐かしく感じるモノが有りました。まるで、亡きお母様の作った料理みたいで・・・だからこそ、懐かしく感じたんです」

 

ミツキさんはどうやら母親を亡くしている様で、俺の料理には亡き母の様に懐かしく感じるらしい。それを聞いた俺は照れ臭いが嬉しくも有った。

 

「こんな素晴らしい料理を作れるルドガーさんが間違っても悪い人では無い事は確かです。例え、本当に素性不明の謎が多い方だとしても私はルドガーさんの事を信じてみたいです。だから、私はこれ以上はルドガーさんの事を問い質すのは止めたいと思います。ルドガーさんが何故、戦い慣れているのかも、どこの出身であろうとも・・・私はルドガーさんの事を信じてみたいです」

「分かりました。お嬢様がソコまで言うならば、私もこれ以上はルドガーさんの情報を捜索する事は止めさせていただきます。ですが、念のためしばらくはルドガーさんの監視をさせてもらいたいのですが、それは構いませんよね?」

「それで納得してくれるなら、構いません。ルドガーさん。すみませんが、しばらくはあなたの事を警戒させてもらいます。ですので、しばらくは監視させてもらいます」

「完全に疑われているよりはマシだし、しばらく監視されるぐらいならお安いモノだな」

 

どうやら、俺の事はこれ以上捜索しない様なので安心する。

 

 

 

まさか、蘇っての新たな人生の一日目でこんなに疲れるとは思いもしなかったぞ。とりあえず、しばらくは監視される事になるけれど、これでやっと、ゆっくりできる。そう思った俺だったのだが、ミツキさんの言葉で重大な問題を思い出した。

 

「それではルドガーさん。長くお話してしまったので、お詫びとしてルドガーさんを住居まで車でお送りしたいのですが、ルドガーさんの家はどこでしょうか?」

 

忘れてたぁぁぁ!?そうだった。俺は元々、泊まる場所を探していたんだった。その時に異界とやらに巻き込まれた青年を助けに行けば、怪異と呼ばれる魔物らしき化け物が出る。その怪異をソウルデヴァイスと呼ばれる武器で倒して青年を助けたら、今度は黒いスーツの男達に包囲され、俺が何者なのか問い質されて、現在に至る。ああ、凄いや。あまり、前の世界とは変わらない気がするのは一体、何故・・・

とりあえず、俺は恥ずかしいが正直に住む家が無い事を伝える事にした。

 

「ミツキさん。気持ちは有難いんだけど、実は俺。住む家が無いんだ・・・」

「住む家が無い・・・それって!?」

「お嬢様。私はどうやら、彼の事を。ルドガーさんの事を勘違いしていた様です・・・」

「ええ、そうですね。これでルドガーさんの情報が無い理由がはっきりしました。まさか、ルドガーさんが壮絶な人生を送っている方だったとは・・・」

「はいっ?あの、何か誤解している様ですけれど、別に俺は・・・」

「大丈夫ですよ。言った筈です。私達はこれ以上ルドガーさんの事を捜索しないと。例え、ルドガーさんがどんな方でも私達は受け入れますので、ご安心を」

 

何か、ミツキさんとキョウカさんは俺の住む家が無いという事に物凄い誤解をした様だ。別に俺は、住んでた地域の人に迫害された上に存在すら無かった事にされて住む場所を無くした訳じゃないのよ。ミツキさんにキョウカさん。あなた方、二人はとんでもない誤解をしています。間違っても俺は兄さんには愛されていたし、地元の人達にも・・・あれ?そう言えば、俺が借金二千万ガルドを背負った瞬間から、地元の人達の俺へ向ける態度が一変して、白い目をされる様になり、俺と関わろうとはしなくなったな。それと、ノヴァを除く俺の学生時代の友人も例外無く俺に関わろうとはしなくなったな・・・ははっ。笑おう。こう言う時は笑おう。笑えば辛さは消える筈だ。笑えば、その内にこの目から出る液体も出なくなる筈だ・・・

 

「ルドガーさん。失礼を承知で聞きますが働いている場所は有りますか?」

「無いです。無職です・・・」

 

ミツキさんは俺に働いているかどうかを聞いてきたので、これも正直に無職だと答えた。今の俺には住む場所も働ける場所も無いとは、自分の事なのに哀れにも程が有るよな。これが生き地獄というモノなのか・・・

 

「だったら、ルドガーさんには私の本で家政夫として暮らして下さい」

「そうですね。本来なら、見ず知らずの者をお嬢様と一緒にするのは不本意ですが監視も出来る上に、ルドガーさんの料理を・・・コホン。何でもありません」

 

何か知らぬ間に話が進んでいるな。家政夫って何よ?家政婦の男版だから家政夫なのか!?家事が得意な俺には適材適所だけどさ!でも、さすがに会って間もない人を自分と同じ屋根の下で暮らさせるのはどうかと思うぞ。

 

「ミツキさん。気持ちは有難いんですけど、本当にイイのか。もし、俺がミツキさんに危害を加える奴だったら、どうするんだ」

「大丈夫です。ルドガーさんはそんな事をしない人だと、あなたの料理を食べた時に分かっていますから。あなたが優しい人だと確信しています」

「お嬢様のおっしゃる通りです。ルドガーさんが無害な方だと、私も信じてみたいと思いましたので。もし、本当にルドガーさんがお嬢様に危害を加えるなら、その時は全力で排除させていただきます」

 

俺が言うのも変だがミツキさんもお人好しだな。キョウカさんも俺の事を信用したい様だし、二人のご厚意に答えるとしよう。でもミツキさんに変な事だけはしない様にしよう。確実にキョウカさんに殺されるからな・・・

 

「それじゃあ、ご厚意に甘えて宜しくお願いします」

「はい。こちらこそ宜しくお願いしますね、ルドガーさん」

 

俺とミツキさんがこの様なやり取りをした後にキョウカさんは部屋に有る監視カメラをチェックした。俺の監視も有るのだろうが、ミツキさんの安全も考えての監視カメラだと思われる。そう言えば、俺はこの二人が何故、異界というモノを知っていたのかが気になる。

 

「ミツキさん。それとキョウカさんに聞きたい事が有るんだが構わないか?」

「ええ。何でしょう?」

「二人は最初から異界やら怪異という化け物、ソウルデヴァイスの事を知っていた様だが、二人は結局何者だ?俺は二人の事をよく知らない。だからこそ聞きたいんだ。二人は何者だ?」

「まずお嬢様は《北都グループ》の社長の孫娘で、私はその社員です。それと今は詳しくお教えできませんが、《ゾディアック》と呼ばれる異界に関わる企業連合の一員でも有ります」

 

《北都グループ》の社長の孫娘か。道理で気品が有る訳だな。それにしても、一番気になるのは《ゾディアック》という企業連合の事だ。ミツキさんにキョウカさんが異界に関わる《ゾディアック》という企業連合の一員という事だけは分かったが、俺としてはまだ情報が伏せられている事に納得ができない。俺が納得できていない事はミツキさんにキョウカさんも分かっていた様で、ミツキさんが俺にこう言う。

 

「ルドガーさん。異界や怪異、それに《ゾディアック》に関する話は後日、詳しく説明しますので、今日のところはここまでにしませんか」

「分かった。本当に後日、詳しく説明してくれるんだよな。だったら、今は追及はしない」

 

俺はミツキさんが後日、詳しく異界や怪異に《ゾディアック》と呼ばれる企業連合の事を話すというので今日のところは話を聞くのはここまでにとする事にした。

 

 

 

 

キョウカさんが帰った後、俺はミツキさんのご厚意でシャワーを浴びた後に用意してくれたであろう布団に入る。甦った一日目でここまで疲れるとは思いもしなかったな。とりあえず、誤解だらけとはいえ、ミツキさんの住むマンションの部屋で家政夫として寝泊まりして働く事ができる様になったので良しとしよう。それにしても、異界に怪異、ソウルデヴァイス。そして《ゾディアック》か。この世界にも色々と複雑なモノが有るんだな・・・ひとまず、今日はもう寝る事にしよう。俺が知りたい事は後日、ミツキさんから説明される筈だ。俺は目を閉じて眠りにつくのだった。




今回、早めにミツキお嬢様を登場させました。アスカはまだこの時には来てない筈ですし、彼女に登場させていただきました。ルドガーは男性なのにお母さんみたいな感じですよね。だからこその家政夫なんですけど。

それと、ルドガーのソウルデヴァイスは武器が三種の姿に変化するモノで、マスターコアは同じ物になります。一応、マスターコアはオリジナルのモノです。一応、データを記載します。

マスターコアの名前;クルスニク
属性;影
ステータス;攻撃力・魔法攻撃力+35 防御力・魔法防御力+50
マスターコアのタイプは防御型




次回はルドガーにミツキとキョウカから異界に怪異、《ゾディアック》の事についての説明となるでしょう。
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