東亰ザナドゥ ~蘇りし骸殻者ルドガー~   作:ロナード

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今回はルドガーがミツキとキョウカから異界、怪異、《ゾディアック》についての説明をされます。ついでに今回の話でルドガーの仕事が増えます。


第3話 異界、怪異、《ゾディアック》

「ふあ~あ。よく寝たな・・・」

「おはようございます、ルドガーさん。今日もぐっすりでしたね」

「すみません。居候なのに俺の方が起きるのが遅くてすみません・・・」

 

俺が起きると、午前7時の半ばだった。どうも、俺はミツキさんに家政夫として住み込みで働く事になったにも関わらず、ミツキさんより起きるのが遅い事に申し訳なく思う。ミツキさんは杜宮学園の三年生になる様だし、俺が早く起きないとダメだよな・・・そんな俺がミツキさんの家政夫として住み込んで数日が経ち、日付は4月2日となった。今日はやっと異界に怪異、そして《ゾディアック》の事を詳しく説明される事になっている。話は昼間にキョウカさんが到着しだいにすると聞いたので、まずは朝食を作って腹ごしらえする事にした。俺はトマトピラフを作り、先にミツキさんの分を皿に入れてから自分の分を皿に入れた。その後にテーブルに置いて、ミツキさんと共に食べた。

 

「ごちそうさまでした。ルドガーさんの作られる料理は本当に美味しいですね。一流のシェフと比べても劣らない腕ですよ」

「そ、そうか。お世辞とはいえ、そう言われると照れるな」

「お世辞ではありませんよ。本当に一流の味です。そうだ!ルドガーさんは家政夫の仕事以外にも何処かの店で働いてみてはいかがですか。料理人として」

「そうですね・・・料理人として働ける様になったかと思えば、いつの間にか冤罪を掛けられ、列車テロに巻き込まれ、挙げ句の果てには高額の借金を背負う事になるのさ・・・」

「えっ?どうしました、ルドガーさん。私、何か悪い事でも言ったのでしょうか・・・」

「いや、ミツキさんは悪くないよ。悪いのは、俺の天成とも言える運の悪さなのさ・・・」

 

ミツキさんは俺の料理を食べて一流のシェフに劣らないと言ってくれた上に、料理人として店で働いてみるのはどうか聞いてきたのだが、俺は過去の出来事がフラッシュバックしたので、その時の不運を思わず口にしてしまった。本当にミツキさんは悪くないのに、俺は何と情けない男なのだろうか・・・

 

 

朝食の後、気を取り直した俺は皿やコップ等の食器を洗い終えた後に洗濯や掃除をする。ついでに言っておくが、さすがにミツキさんの下着とかは抵抗が有るので、ミツキさんが自分で洗濯している。洗濯機が止まるまでの間に、ハタキを使ってホコリを取った後に掃除機をかけて掃除を済ませた。洗濯し終えた衣類を室内干しにしてひとまずは朝の仕事は終了したのだが、昼間まではまだ時間が有るので、冷蔵庫の中身が少なくなってきたので買い出しに行く事にした。

 

「ミツキさん。冷蔵庫の中身が少なくなってきたから、買い物に行こうと思うんだけど構わないか?」

「ええ。ルドガーさんは監視されてはいますが、そこまで厳重に監視はしていませんので昼間までには、買い物を終えて帰ってくだされば大丈夫です」

「わかった。昼間までには帰ってくるよ」

 

俺はミツキさんに買い物に行く事を告げてから、マンションのエレベーターを使って1階に降りて杜宮商店街に向かった。ついでに買い物に使うお金は家政夫として働いて貰った自分のお金だ。俺は杜宮商店街に着くと、まずはお肉屋さんに行き、品質が良くて長持ちしそうな肉をチョイスした。次にお肉屋の目の前にある八百屋で野菜や果物を買おうと思い、八百屋に行くと八百屋の店主と思われるおじさんの近くに何処かで見覚えが有る少年がいた。

 

「いらっしゃい!本日の野菜は・・・って、アンタは確かスケボー大会で優勝したルドガーっていう幸薄そうな顔をした髪に変なメッシュをしたヤツ!ってか、眉毛も左右違う色って、本当に変なヤツだな・・・イテッ!?」

「おおい!接客態度が悪いぞ。リョウタァーー!!お客様に向かって、どんな口の聞き方をしてやがるんだぁーー!!」

 

ああ、リョウタ君だったね。女子にアピールする為に参加したスケボー大会で無様な醜態をさらしたリョウタ君ね。別にこれくらいの悪口は言っても構わない筈だ。先に人を悪く言ったのはリョウタだしな!ついでに言っておくが、俺の髪のメッシュと眉毛に関しては生まれつきだ!そう言えば、八百屋の一人息子だったな。そんなリョウタは、今の俺に対して向けた言葉が悪いと八百屋の店主である父親に絞られている。自業自得なので、俺は父親に叱られているリョウタに構う事は無く野菜に目を通す事にした。

 

「親子。悪かった、俺が悪かった・・・」

「うるさい、このバカ息子!」

 

何か、誰かが叩かれる音が聞こえるが因果応報なのでスルーする。ん、このジャガイモはずっしりしていて食べごたえが有りそうだな。他にはホウレン草も美味しそうだな。

 

「待ってくれ、親子。そろそろ近所迷惑だって・・・」

「リョウタ。男は言いがかり吐けて逃げるべきでは無い。それを今、教えてやろう!」

 

叩かれる音が止んだら、今度は教訓を叩き込まれている様だ。仕方ない、買う物は決めたし、そろそろ助けてやるか。さすがにリョウタが哀れに思えてきたからな・・・俺は因果応報、自業自得とは言え、お叱りを受けていた一人の少年を助けてやる為に、リョウタの父親にお会計をしてもらう様に頼む事にした。

 

「すみません。お会計をお願いします」

「ああ。はいよ!・・・リョウタ、この話の続きは次の機会にしてやろう」

「た、助かった・・・」

 

自業自得だから、お前が悪いんだけど、俺は父親にコッテリと絞られるお前が哀れに思えたから助けたんだからな。感謝しろよ、リョウタ。俺はリョウタの父親にお金を支払い、八百屋を後にした。それから、商店街の色々な店を周り長持ちしそうな食材を購入した後にマンションに戻った。

 

 

俺はミツキさんの部屋に戻ると、約束の時間が近くなっていたので、買った食材を冷蔵庫に閉まい、静かにキョウカさんが来るのを待った。しばらくして、キョウカさんがやって来る。

 

「お久しぶりです、ルドガーさん。それでは詳しく説明しますので、ソコに有る椅子に座って下さい」

 

俺はキョウカさんに言われた通りに椅子に座ると、ミツキさんとキョウカさんも椅子に座り、異界と怪異についての説明が始まった。

 

「それでは、まずは異界と怪異について説明します。異界とは、簡単に言えばこの世界とは違う空間に有る世界です。異界には怪異と呼ばれる異界に迷いこんだ人間を襲う怪物が住み着いており、異界を放置しておく事は危険です。異界は70年前に起きた世界大戦以降に急に現れ、世界の各地で異界による影響が確認される様になりました」

 

世界大戦?どうも、俺の知らない単語が出てきたな。あまり重要では無いと思うが、後でサイフォンのSNS(ソーシャルネットサービス)であるNiARというアプリで調べるとしよう。

 

「異界は発生しても、直ぐには現実世界には影響を及ぼしませんが、時間が経つに連れ現実世界に影響を与える様になっていきます。現実世界に影響を与える異界のほとんどがその異界に潜む怪異が興味を持った人間を取り込もうとするケースが大半です。その際、取り込もうとした人間の後ろの空間からは異界化(イクリプス)と呼ばれる現実と異界が交わる現象により赤いヒビが入り、そのヒビは徐々に広がり、ヒビが完全に広がると迷宮が出現します。そしてゲートと呼ばれる迷宮への入り口が出現して取り込もうとした人間を迷宮に連れ去ります。赤いヒビにゲートはルドガーさんも見た筈ですので知っていますね」

「ああ。あの現象の事だな」

 

あの不可思議な現象こそが、迷宮が作り出された瞬間だったんだな。

 

「出現した迷宮はしばらくの間はその場で出現していますが、時間が経つとゲートが閉じて迷宮は消えます。迷宮が出現した地点は放っておくと、迷宮が出現した地点を中心に現実世界を異界に取り込もうとします。それを防ぐには迷宮に侵入して、現実世界と異界の交わりを解かなければなりません。迷宮に侵入して突破し、迷宮に潜むエルダーグリードと呼ばれる、迷宮の主とも言える怪異を倒す事です。エルダーグリードを倒しさえすれば、その異界は現実世界に影響を与える事は無くなります。ただし、怪異には通常の物理攻撃は効かず、それに現代兵器を用いても傷一つ負わせる事は出来ません。しかし、ソウルデヴァイスによる攻撃は怪異にダメージを与える事が出来ます。我々はソウルデヴァイスを宿す人間を適格者と呼んでいます」

 

キョウカさんの説明で異界に怪異の事は大体理解できた。異界は現実世界とは違う空間に有る世界で、怪異は異界に住む生物であり、怪異が興味を持った人間を取り込もうとして現実と異界が交わると赤いヒビが出現して、迷宮を作り出す。これを異界化という。ゲートと呼ばれる迷宮への入り口を開いて人間を取り込む。迷宮はしばらく放っておくと、入り口を閉じる為にゲートが消える。迷宮が出現する様になった地点は放っておくと、その地点を中心に現実世界を異界に取り込もうとする。それを起こさない様にする為にも、異界を無力化させる必要が有る。その方法は迷宮にいるエルダーグリードと呼ばれる迷宮の主を倒すこと。ただし、エルダーグリードを含めた怪異には通常の攻撃はおろか、現代兵器でもダメージを与える事が出来ない。怪異を倒すにはソウルデヴァイスが必要。まるで、俺の世界で言う分史世界に時歪の因子みたいだな。

 

「それと迷宮の入り口であるゲートは普通の人間には見えません。ゲートを目視できるのはソウルデヴァイスを宿す適格者か、霊感を強く持つ者だけです。と言っても、適格者だとしてもソウルデヴァイスを出せる様になった時に見える様になったり、霊感が強くても異界の気配を感じるだけの者の方が多いですが。その為一般人は、異界に迷いこんで行方不明になった人間は神隠しに会ったと思われたり、異界による影響を受けて現実世界の地形に影響を及ぼしても自然災害だと認識しています。よって、異界の存在は一般人の方々が知る事は有りません」

 

迷宮の入り口であるゲートは普通の人間には見えないのか。俺はソウルデヴァイスを宿していたから見えたという事か。あるいはこの世界には無い精霊の力でもある骸殻を扱えるからかも知れないけどな。一般人には異界による影響は神隠しや自然災害だと思われているのか・・・待てよ、この間の青年は異界に連れ去られた事を周りの人達に話したりしたら騒ぎになる。それに、この間の青年以外にも異界に連れ去られた人も多い筈だ。なのに、異界の事は一般人には知れ渡ってないのは何故なんだ?俺はキョウカさんにこの事について聞いてみる。

 

「キョウカさん。一般人にはゲートが見えないのは解った。でも、この間の青年は異界に連れ去られた事を話したりしたら騒ぎになるよな。それに、他にも異界に連れ去られた事が有る人も少なくない筈だ。なのに何故、異界の事が一般人には知れ渡ってないんだ?」

「ルドガーさんの疑問はごもっともです。確かに異界に連れ去られた者が他の人達に異界の事を話して、騒ぎになる可能性が有ります。ですので、騒ぎにならない様に異界に連れ去られた人や巻き込まれた人には、特殊な処置によって異界に関する記憶だけを消去する作業を行っています。よって騒ぎになる事は有りません。ただし、ソウルデヴァイスを持つ適格者か霊感を強く持つ者には効果は有りません。記憶を消せなかった者に関しては説得して異界に関する情報を黙秘してもらう様に頼んでいます。他には、適格者として目覚めてもらい戦ってもらう選択肢も有りますがね。言うまでも有りませんが、この間の青年も異界に関する記憶は消去され、異界にいた時の記憶は既に有りません。よって、彼から異界の事は漏れだす事はまず無いでしょう」

 

記憶を消すだって!?異界に関する記憶だけを消去って、思った以上に手段が強引だな・・・まあ、それくらいやらないと、とっくにこの世界は世の中がパニックになっているだろうしな。それに記憶を消せなかった人はソウルデヴァイスを宿している可能性が有るのか。もしかすると、適格者として戦っている者のほとんどが異界に連れ去られた事が有る人なのかもな。

 

「これで異界に怪異に関する説明は以上です。次は《ゾディアック》についての説明をお嬢様が致します」

 

異界に怪異に関する説明は終わったという事なので、キョウカさんが言う様にミツキさんから《ゾディアック》に関する説明を聞く。

 

「それでは、ルドガーさんに私が《ゾディアック》についての説明をします。前にお話した通り、《ゾディアック》とは異界に関わる企業連合の事です。《ゾディアック》の大まかな目的は異界の利用です。勘違いしない様にに言っておきますが、《ゾディアック》が利用したいのは、あくまでも異界に有るエネルギーや物質の事で、間違えても怪異の利用だけは禁忌として禁じられています。《ゾディアック》は現実には存在せず、異界にだけ有るエネルギーや植物といった物質を現実世界の方で役立てないかと研究をしています」

 

《ゾディアック》の目的は異界の利用か。それだけを聞くと危ないイメージの方が出てくるが、利用するのはあくまでも異界に有るエネルギーや物質だと聞いたのでホッとした。別にミツキさんやキョウカさんの事を疑っていた訳じゃないけどさ、どうも大きな企業の関係者から利用という言葉を聞くと、前の世界でのクランスピア社の社長ビズリーの事を思い浮かんでしまうんだよな。ビズリーは自分の目的を達成する為に俺を利用して、カナンの地の道標を集めさせ、更にはカナンの地に行く為にリドウを容赦無く生け贄にした上に、幼いエルの事も気にかけずにクロノスを倒す為の道具として扱っていた。ビズリーの事を悪く言うつもりは無いが、ビズリーは俺を含めた者達をいや、ビズリー自身を含めた人間を道具としてしか見ていなかった。だからなのか俺は利用という言葉を聞くと、ビズリーの事を思い浮かんでしまう。ミツキさんとキョウカさんの属する《ゾディアック》は少なくともビズリーの様な考えのヤツはいないだろう。ミツキさんとキョウカさんを見る限りでは、《ゾディアック》の方がクランスピア社より信じられる。でも、今思うとビズリーに命の恩人とは言え俺に高額の借金をさせたリドウも悲しいヤツに思えるな。あの二人も審判さえ、無ければ平和に暮らせた筈だからな。今は前の世界での事を考えている場合では無いな。ミツキさんの話の続きを聞こう。

 

「私のお祖父様が社長を勤める《北都グループ》は《ゾディアック》の中でも一角を担っています。ですので、私は《ゾディアック》の中では自分で言うのは恥ずかしいですが発言力は結構なモノです」

 

ミツキさんのお祖父さんが社長を勤める《北都グループ》は《ゾディアック》の中でも一角を担う大企業なのか。だから、ミツキさんは《ゾディアック》の中でも発言力が高いのか・・・俺って、凄い人の家政夫をやっていたんだな。本当にとんでもない話だな・・・

 

「《ゾディアック》についての説明は短いかと思いますが以上ですね。それでは、ルドガーさんには聞いてほしい事が有ります」

「俺に聞いてほしい事?一体、何なんだ?」

「もし、ルドガーさんが良ければ《ゾディアック》のメンバーになりませんか?」

 

ミツキさんから《ゾディアック》の説明が終わり、俺はミツキさんに《ゾディアック》に加入しないか聞かれた。《ゾディアック》の目的は異界の利用。と言っても利用するのはあくまでも異界に有るエネルギーや物質なので、無害と考えていいだろう。少なくとも、世間を巻き込む様な事はしない筈だから、信用はしていいだろう。だけど、《ゾディアック》は企業連合だ。ミツキさんやキョウカさんの《北都グループ》は大丈夫だろうが、《ゾディアック》に属する他の企業が信用できるのかは定かでは無いので加入は断るとしよう。

 

「悪いけど、俺は《ゾディアック》に加入する気は起きない。別にミツキさんやキョウカさんに《北都グループ》の事が信用できない訳じゃないんだ。ただ、《ゾディアック》に属する他の企業の事まで信用していいのか解らないんだ。だから、加入はできないな」

「そうですか。ルドガーさんの言う事は理に叶っていますし、仕方ないですね」

「ルドガーさん。あなたは私とお嬢様に《北都グループ》は信用できるとおっしゃいました。なら、《ゾディアック》に加入するのでは無く、あくまでも《北都グループ》に対しての協力者になるのはどうでしょうか?」

 

俺がミツキさんに《ゾディアック》への加入はできないと伝えると、キョウカさんからは《北都グループ》の協力者になるのはどうかと聞かれた。確かに企業連合である《ゾディアック》は全てを信用していいのか解らないが、《北都グループ》だけなら話が別だな。《北都グループ》の事は、まだ詳しくないがミツキさんとキョウカさんを見る限りでは信用していいだろう。それにミツキさんの所で居候している身なので、断るのはさすがに俺が心許ないので、《北都グループ》への協力者になる事にした。

 

「そうだな。《北都グループ》への協力者としてなら、俺は引き受けるよ」

「ありがとうございます、ルドガーさん。あなたが協力してくれるのは心強いです。でも、協力者だからといって無理して協力する必要はありませんので、ルドガーさんの考えで行動してくださいね」

 

俺が協力者になってもミツキさんは無理して協力する必要は無いというが、俺としては異界に関する事には協力する事にしよう。俺がそう思った時、ミツキさんは何かを閃いたのかこんな提案を出してきた。

 

「ルドガーさん。今、思い付いたのですが、ルドガーさんがよければ私が通う杜宮学園で働いてみませんか?」

「杜宮学園で!?俺に教師にでも馴れって言うのか!?」

「いえ、教師では無くて杜宮学園の食堂で働いてみてはどうかと思ったのですが・・・」

「ああ、何だぁ。学園の食堂で料理を作ればいいのか。俺の得意分野だな。でも、家政夫の仕事と両立は難しいんだけど・・・」

「いえ、無理強いはしません。時間が有る時で構いませんので学園に通って下さると直ぐに合流しやすいかと思いましたので、ルドガーさんがよければ私が杜宮学園の食堂で働ける様にしておきます」

 

なるほど。ミツキさんが学園にいる間は確かに合流するのに時間が掛かるな。そこで俺が学園の食堂で働ける様にする事で、合流しやすくする訳だな。それに、これはミツキさん成りに俺の事を考えての事なんだろう。家政夫の仕事は食事の支度や洗濯に掃除が終わると退屈になるし、俺の料理の才能を無にしたくないという思いも有って、学園の食堂で働ける様にしたいんだろうな。俺は別にこの事に断る理由は無いし後、ミツキさんに言えないが金を得る手段を増やしたかったからな。という訳でこの話に乗る事にしよう。

 

「そうですね。合流しやすい様にする為にも、俺も杜宮学園の食堂で働いた方がいいですね。その案に賛成します」

「ルドガーさん、ありがとうございます。キョウカさん、ルドガーさんを杜宮学園の食堂で働ける様に手配する事を頼みます」

「了解しました。それでは、お嬢様にルドガーさん。本日はこれで失礼します」

 

キョウカさんはミツキさんに頼まれて、俺が杜宮学園の食堂で働ける様に手配する様だ。今日は俺の知りたい事は知り得たし、それに新たな仕事場も確保できた。さてと、話は終わった事だし昼飯を作る事にしよう。

 

 

 

しばらくして、日付が4月10日となり俺は杜宮学園の食堂で本日より働く事になった。まずは待ち合わせている職員と校門の前で合流する。待ち合わせていた職員はパッと見ると子供にしか見えないが、身なりがしっかりしているところを見ると教師だと感じる女性だ。

 

「あなたが今日から食堂で働いてくれる人だね。私は九重 永遠。この杜宮学園で教師をしています。ええと、あなたの名前は?」

「俺の名前はルドガー・ウィル・クルスニク。ルドガーって呼んでくれ!」

「うん。ルドガーさんだね。私の事は好きに呼んでいいからね」

「じゃあ、トワちゃんで!」

 

何故、トワちゃんって呼ぶかと言うと見た目が良くて中学生にしか見えない外見だからだ・・・って、あれ?なんか、トワちゃんからは物凄い気迫が感じられるのだけれど・・・

 

「今、何か失礼な事を思ってたでしょ!」

「いや、思ってないって。ただ、トワちゃんって若く見えると言うよりも子供っぽい外見だと・・・」

「やっぱり失礼な事を思っていたじゃない!言っておくけど、私の方が年上だからね!」

「ご、ごめんね。トワちゃ・・・」

「トワちゃんじゃなくて、トワ先生!トワ先生って呼んでね!」

「わかったよ。よろしくお願いいたします、トワ先生」

 

トワ先生は子供っぽい外見を気にしている様だし、トワちゃんと呼ぶのは止めておこう。一応年上の人だからな。

 

トワ先生は俺を食堂が有るクラブハウスの付近にまで案内すると、担当する授業が有るらしく、ここで別れる事となった。

 

「それじゃ、私は担当する授業が有るから、私は行くね。ルドガーさん。お仕事頑張ってね!」

「ああ。それじゃあ、トワ先生。また後で、昼休みに食べに来てくれよ!」

 

俺はトワ先生と別れると直ぐに食堂に入って、食堂の担当をしているアキエさんに挨拶をした後に早速、作業に取り掛かった。俺は食堂の決まったメニューの料理を作っていき、俺の料理の味見をしたアキエさんには絶賛される。

 

「おやおや、こんなに美味しく料理を作れるなんて、凄いじゃないか!私より美味しくできているんじゃないかい」

「いやいや、そんな事は有りませんって」

「またまた~。そんなに謙遜しなくてもいいじゃないか。今日は食堂が騒がしくなりそうね~」

 

俺はその後、アキエさんに俺が考えた特製料理も販売してみないかと言われたので、食堂に有る持ち前の食材で俺特製のスープを作り出した。味付けには俺が持つ秘伝の調味料も使った。ついでに言っておくが、秘伝の調味料の詳細は秘密だ!

しばらくして、昼休みとなり食堂には沢山の生徒が来て、俺の作った料理を口にした生徒からは絶賛の嵐だった。

 

「美味い!こんな美味い料理は生まれて初めてだ!」

「まさか、自分の通う学園の食堂でこんな素晴らしい料理にありつけるなんて・・・とても信じられない!」

「今日の食堂に有った特製スープがこんなに美味しいなんて!作った人は誰なの?一流のシェフが間違って来た訳じゃないわよね?」

 

なんか、思ったよりオーバーな感想が多いな。俺はさすがにアキエさんには悪く思ったのだが、アキエさんは気にしていないどころか、料理を作ったのは俺である事をまるで自分の事の様に広めていく。

 

「今日はねぇ、新しく食堂で働く様になった彼が作ったのよぉ!あの人よ!」

「何、男だと!?でも、美味しい料理だったし、美味ければ誰が作っても関係ないか」

「あの人が作ったの!この料理を!料理が得意な男の人って最高!」

「こんなにプロ顔負けの美味しい料理を作れるだけでも凄いのに、あの人はこの間のスケボー大会で優勝したルドガーって方よ!」

「凄い!料理も出来て、運動神経もいい男の人って最高よね!ゴロウ先生もいいけど、ルドガーさんもいいわね!」

 

なんか、スケボー大会の時に俺を追い掛けてきた女子達の一部もいるみたいだな・・・騒ぎにならないよな?ってか、もう騒ぎになっているな。俺の下に女子が集まってきて、色々と質問をされてくる。

 

「ねえねえ、ルドガーさんって彼女とかいますか?いなかったら、私と・・・」

「ルドガーさん。この料理にはどんな隠し味を入れているんですか?私は料理が趣味だから、気になって・・・」

「ルドガーさん。何処に住んでいるんですか?何処から、この杜宮学園に通勤したのですか?」

 

止めてくれ!そんなに一辺に質問されたら答えられないって!とりあえず、逃げの一手を使おう。

 

「おっと、すまない。次の料理を作らないとな。質問はまた後でな」

「ええっ!?そんなぁ~・・・」

「仕事が有るなら仕方ないよね・・・」

 

とりあえず、避難できたな。あれ?何処からか、俺に対して向けられた敵意を感じるな。敵意と言っても、嫉妬に近いモノだけどな。多分、アイツだろう・・・

 

「アンノヤロォー!何で、この杜宮学園にまで来やがるんだぁー!スケボー大会で優勝した上に、料理も得意なんて・・・全然、羨ましくないからな!本当だぞ!皆がお前の料理を誉めても、俺だけは絶対に煽ってやるからな!・・・チッキショー!?嫌味を一つも言えないくらいに美味いじゃねえかよ・・・クッソー!もはや、存在自体がとんでも野郎じゃないかよ!」

 

やっぱり、リョウタだったか。相変わらず賑やかなヤツだな。リョウタの友人達も俺の作った料理を食べているが、リョウタの事を気づかっているのか無言で食べ進めている。リョウタ、お前は友達には恵まれているぞ。それは本当に確かだ。さすがにうるさかったのか、眼鏡をかけた女子生徒に耳を引っ張られ、何処かに連れていかれた。じゃあな、リョウタ。食堂に来るかどうか解らないけど、また明日な!

 

昼休みが終わり、やっと一息つけるので俺は食堂の外に出た。はあっ、思った以上に大変だったな・・・料理を沢山作る事もそうだが、女子生徒の質問攻めへの対処もな。とりあえず、今は外の空気を吸って気分を落ち着かせよう。俺は軽く辺りを散歩して気分が落ち着き、お腹も空いてきたので食堂に戻って自分の食事を取ろうと思ったので食堂に戻ると教師と思われる眼鏡をかけた青年がいた。青年とアキエさんは二人で何かの会話をしていたらしく、アキエさんが離れると青年は俺に視線を向けて話でもしないかという感じだったので、俺は自分の分の食事を持って青年の隣に座ると、青年は話し出す。

 

「あなたが今日から食堂で働く様になったルドガーだな。俺は佐伯 吾郎。この杜宮学園で英語の担当をしている」

「そうか。俺の名前はもう知ってるみたいだけど、一応紹介させてくれ。俺はルドガー・ウィル・クルスニク。ルドガーって呼んでくれ」

 

ゴロウ先生か。確か、食堂にいた女子生徒が名前を出していたな。おそらく、女子生徒に人気の先生なんだろう。

 

「ああ。宜しくルドガー。俺は先ほどな、お前が作った料理を食べたんだが、今まで食べた物の中でも美味しかった」

「それはどうも」

「だけど、俺の中では一番じゃないな。俺が食って一番美味しいと思う料理は彼女が作った料理なら、何でも美味しく感じるな」

 

なんだ、ノロケ話か?女子生徒達よ、お前達のゴロウ先生には彼女がいるぞ。ゴロウ先生の事は早々に諦めて勉強に専念する事をお勧めする。とりあえず、ゴロウ先生の話に付き合うとしよう。

 

「彼女が作った料理の方が美味しいか。それは結構、立派な女性なんだろうな」

「ああ。俺には勿体無いくらいのな。でも、今は遠距離恋愛中だけどな」

「そうか。でも、会えたらまた食べれるだろ。会えた時にでも作って貰えればいい」

「・・・そうだな。もし、会えるならな・・・」

 

少しゴロウ先生が口ごもったな。そんなに遠い場所なのか?ゴロウ先生は一瞬、口ごもったが直ぐに元の調子に戻り、俺にこんな質問をしてくる。

 

「ルドガー。お前は何で、こんなに料理が上手くなったんだ?これは才能とかではなくて、お前が小さい頃から誰かの為に料理を作っていなければ、ここまで素晴らしい料理は作れない筈だ。お前は誰の為に料理を作っていたんだ?」

「凄いな、料理を食べただけでそこまで解るなんてな・・・そうだな。俺は小さい頃から兄さんと暮らしていたんだ。俺は親の顔を覚えてないけど、兄さんは俺の為に色々と自分の身を削ってまで俺の事を常に気にかけてくれていたんだ。俺はそんな兄さんの為にできる事はないかと思って始めたのが料理だったんだ。俺は兄さんの為に毎日、料理を作って兄さんに食べてもらおうと頑張っていたんだ。兄さんはいつも俺の作った料理を一口も残さずに食べてくれていたんだ。俺は兄さんの事を大切に思っていた。勿論、兄さんも俺の事を大切に思っていた」

「そうか。俺の彼女もお前と同じ考えだったんだろうな。それでお前の兄さんは今でも元気なのか?」

「いや、兄さんにはもう会えない。兄さんは死んだ。俺の為に身を削ってまで、俺を守ろうとして、俺の思いに答える為に死んでしまった・・・」

「すまない・・・他人の俺が聞いていい話では無かったな」

「いや、そんな事は無い。俺は兄さんの死を乗り越えてここにいるんだからな。兄さんの死を無駄にしない為にも、俺は頑張っていきたいからな」

「大切な人の死を乗り越えて、ここにいる。そして、大切な人の死を無駄にしない為に頑張っていくか・・・俺もそんな風に割り切って考える事ができたら、どれだけ楽だっただろうか・・・」

「えっ?それは一体、どういう事だ?」

「ハハッ!暗い話はここまでにして、俺はそろそろ次の担当する授業の準備をしないとな。それじゃ、ルドガー。また、こうして話せるといいな。それと早くしないと、授業が終わって生徒達が来てしまって食べる時間が無くなるぞ」

 

ゴロウ先生は話を終えると次の授業の授業をする為に食堂を離れていた。ゴロウ先生との話は何かと面白かったな。今回は暗い話になってしまったが、次からは互いの趣味とかについて話してみるか。さてと、早く食べるとしよう。本当に授業が終わって生徒達が来たら、また女子生徒達からの質問攻めが来るからな・・・

 

 

 

放課後、俺はアキエさんに挨拶をした後に女子生徒に捕まらない内にマンションに戻り、ミツキさんが帰ってくるのを待った。

 

「ただいま帰りました。聞きましたよ。食堂でルドガーさんが作った料理が絶賛された様ですね。良かったですね、ルドガーさん」

「あ、ああ。うん、確かに良かったよ。でも、疲れた・・・」

「やっぱり、大人数の料理を作るのは大変でしたか。お疲れ様です」

 

違うよ、ミツキさん。俺が疲れた原因は女子生徒への対処と一部の男子生徒からの敵意剥き出しの痛い視線攻撃が主なんだ。まあ、その内に女子生徒も落ち着くと思うし、大丈夫だろう。それに数が多いとはいえ、久々に多人数分の料理を作ったのは久しぶりだったし、やっぱり誰かに食べてもらって喜んでもらうのが一番嬉しいからな。

 

「じゃあ、ミツキさん。今日は俺が食堂で作った俺特性のスープをミツキさんにも食べてほしいから作るな」

「ふふ。それは楽しみですね」

 

俺は食堂で作ったモノと同じ俺特性のスープを作り、ミツキさんに振る舞った。今日は本当に疲れたが、色々と充実していて楽しかったので、これからもできるなら杜宮学園の食堂で料理を作り続けたいと思う。だけど一週間後、俺はリョウタの友達である少年コウとある場所でたまたま出会い、そしてソコに一人の少女が関わった事で本格的に俺は異界の恐ろしさを知る事になるとは、この時は思いもしなかったのだ。




今回は異界、怪異、《ゾディアック》についての説明とルドガーの新たな仕事として杜宮学園の食堂で働く事になりました。

次回は原作に突入し、本格的に異界に関わる事になります。
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