それと、今回の話とは関係無いですが、出来る限り早くシオ先輩を登場させたい。東亰ザナドゥの男性のパーティーメンバーで一番好きなキャラですしね。少し動きが重いけど、一撃で怪異を仕留める事も出来るのでお気に入りです。後、ネタバレの為、名前を伏せますが最後に仲間に加わる男性メンバーも最強すぎる性能なので、壊れ性能キャラとして気にいっています。ってか、教師補正と言えばいいのか・・・
俺とコウとアスカによる三人で異界に連れ去られたシオリちゃんを助けた日から十日が経過し、日付は4月27日となった。ここまでの間に俺はコウに、異界と怪異の事を詳しく教えた。ただし、《ネメシス》と《ゾディアック》の事を省いてだが。俺はコウに異界と怪異の事を説明した後、コウを鍛える為に、今まで入った迷宮はエルダーグリードを倒している為、沈静化しており現実世界には影響を与える事は無くなり現実世界との交わりは無くなっているが、現実からの干渉で迷宮の中に再び入る事が可能なので俺が初めて入った迷宮を特訓の場所にし、コウを鍛えた。沈静化した迷宮にも怪異は存在するので、コウに実戦経験を積ませるのには最適だった。それに俺がコウの相手として模擬戦闘を行った。もちろん、俺は加減をしてなのだが、それでもやり過ぎて、コウが死にかけたりもしたが、一番強くなれる方法としては俺との模擬戦闘が最適だった。コウは最初は俺の攻撃に耐える事に必死だったが、徐々に俺の動きを読み取り、俺の隙が出来たところを狙って俺に一撃を喰らわせる事が出来る様になり、どんどん俺の攻撃を防ぎつつ反撃に移せる様になったので戦闘センスはかなり上がっただろう。でもコウ曰く、
「ルドガーさんのしごきが思った以上にハードだったから、もうルドガーさんとは模擬とはいえ戦いたく無いぜ・・・」
という事らしいが、俺からするとコウの実力はまだまだなので、これからもコウとの訓練を行う為に時間を作らないとな。そもそも、俺は双剣でしか相手にしていないので、銃とハンマーによる攻撃にも対応出来る様になってもらい、様々な攻撃を防ぐ手段を身に付けてもらわないと、異界での戦いでは生き残れないしな。この十日間で確かに強くなったが素人で有る事に変わりは無いからな。だから、これからもコウを鍛える事にしよう。例え、二日前にコウが特訓を拒んで逃げようとした時の様に、俺の事をスパルタ悪魔と言われようとな!
さてと、コウとの特訓についてはここまでとして、もう一度言うが日付は4月27日となり、十日前の様に俺が朝早く起きるという奇跡は二度も起きず、今日もミツキさんより遅く起きる。相変わらず朝に弱い俺は、素早く着替えて朝食としてフレンチトーストにだし巻き玉子を作りミツキさんに振る舞う。ミツキさんは朝食を食べ終えた後にいつも通りに支度を済ませたら、キョウカさんの運転する車に乗り杜宮学園に行った。俺もいつも通りに洗濯や掃除を済ませたら、杜宮学園の食堂へと向かった。俺は杜宮学園へと向かいながら、今日のコウにやる特訓の内容をどうするのかを考えた。とりあえず、双剣から銃に切り替えて、模擬戦闘を行うとしよう。銃だけにガンガン撃って、コウを鍛えないとな!
ルドガーがその様な事を考えていた頃、シオリと共に杜宮学園に向かっていたコウは一瞬、寒気に似た恐怖を感じていた。
「どうしたの?コーちゃん、体が震えているけど。もしかして風邪?」
「いや・・・何か解らないけど、とにかく今日もしごかれる事は確かだな・・・」
「しごかれる?九重先生に?」
「いや、加減という言葉を知らねえ・・・スパルタの銀メッシュの悪魔にな・・・」
シオリはコウが何を言っているのかは解らないが、とにかくコウが誰かに恐怖を感じているのは何となく解ったとか、解らなかったとか・・・
俺は今日のコウとの特訓の内容を考え終わったと同時に、杜宮学園の正門前にまで来ていた。さてと、今日も仕事を頑張るとするか!そう思った俺だったのだが、後ろから物凄い音が聞こえたので振り向くと、スピードを出しすぎて急には止まらないバイクが俺の目の前に・・・
「ウワァァッーー!?」
「ルドガーさん!?」
「ルドガー様ぁーーー!?」
俺は正門にいた生徒達が俺の名前を叫んだのが聞こえたのを最後に意識を失ったのであった・・・
「はっ!?こ、ここは・・・病院か?」
「いえ、ここは杜宮学園の保健室よ・・・バイクに轢かれたと聞いたから心配して見に来たんだけど、幸い骨にはヒビ一つ入らない上に頭から出血しただけで済んだから、応急処置だけで済んでよかったわね。それとバイクの運転手は無免許運転、更に盗難にひったくりの容疑で逮捕されたみたいよ」
俺はバイクに轢かれて病院に運ばれたと思ったら保健室のベッドの上で寝ていた。幸い頭から出血しただけで済んだ様で応急処置だけで済んだらしい。それにしても、まさかアスカが俺の見舞いに来るとは思いもしなかった。ってか、俺を惹いたバイクの運転手は盗難したバイクを使ったひったくりかよ!?迷惑にも程が有るわ!逮捕されたからには、みっちりと取り調べされろよ!
「さてと、大した怪我も無くてよかったけど、無理して動いて怪我を自分で増やしたりはしないように!じゃあ、私はいくわね。そうそう、この学園の生徒会長も心配していたわよ。後で顔を見せた方がいいわよ」
アスカはそう言うと保健室を出ていく。本当に大した怪我も無くてよかった。アスカはこの学園の生徒会長、つまりミツキさんが俺の事を心配していたと言っていたし、ミツキさんに無事な顔を見せて安心させよう。他にも俺の事を心配した人達もいるだろうしな。俺は保健室の先生に挨拶をした後に保健室を出る。出る時に保健室の時計を見た限りでは今の時間は三時限目前の休み時間みたいだな。俺が保健室を出ると直ぐに俺の事を心配していた生徒が寄ってきた。
「ルドガーさん。本当に大丈夫ですか?本当に怪我は無いんですか?」
「無い無い。本当に無いから大丈夫だ!」
「ルドガー様。大した怪我も無くてよかったです」
「そうだな。ありがとう心配してくれてな」
俺の事を心配していた生徒に大丈夫だと伝えながら歩いていると、ゴロウ先生とトワ先生の姿も見えた。
「ルドガー。バイクに轢かれたと聞いたんだが、どうやら大した怪我も無くて無事の様だな」
「ああ。本当に大した怪我も無くてよかったよ・・・」
「ルドガーさん。私こう見えて杜宮神社で巫女さんもやっているんだけど、一度厄払いしに来たらどうかな?」
「考えておきます・・・」
先生方にも心配をかけさせてしまったな。本当に俺の運の悪さは異常に思えるので、トワ先生の言う通りに、一度厄払いしに行く事も考えてみるか・・・おっ、コウの姿が見えた。コウも俺の事を心配してくれて様子を見に来たのか俺に近付いて来た。
「ルドガーさん、大丈夫っすか!バイクに轢かれたと聞いて心配したんだが、どうやら大した怪我も無くて無事みたいだな」
「おう!この通りに全然ぴんぴんしてるぞ!」
「バイクに轢かれたのに、頭からちょっとした出血だけで済むなんて・・・アンタ、どういう身体の構造をしているんだよ・・・」
「まあ、身体は昔から異常に丈夫だったしな。よく思い返してみると、俺が風邪を惹いたのも片手で数える程度しか無かったな。それに、俺が動けない様では誰がお前を鍛えるんだ?」
「チキッショ・・・せめて、足ぐらい骨折してくれよ・・・」
そんなに俺との特訓が嫌なのか・・・でも、俺も心を鬼にしてお前を鍛える為にしごいているんだ。だから、そんなに嫌そうな顔をするな。コウが若干意気消沈しながら教室に戻っていた後、俺は生徒会室に行きミツキさんに無事な顔を見せた。
「ルドガーさん!ご無事でしたか!本当によかったです。バイクに轢かれたと聞いた時はさすがにあわててしまいました・・・」
「ご心配をかけて本当にすみません。俺は見ての通りに身体は全然ぴんぴんしてるし、頭にちょっと包帯を巻くだけで済みましたし、本当に大した怪我は無いので安心してください!」
「ええ、本当によかったです。だって、ルドガーさんが入院したらルドガーさんの料理が食べれなくなりますからね」
「えっ!?料理の心配だったの・・・」
「ふふっ。冗談ですよ、ルドガーさん。本当にルドガーさんの事を心配していましたよ」
また、からかわれた・・・まあ、それだけの元気が有るならよかったよ。本当に色んな人に心配をかけてしまったな。さてと、食堂に行って仕事をするとしようか!俺は食堂に行き、アキエさんにも無事を伝えた後に仕事を開始した。
しばらく時間が経ち放課後、なんだかんだで事故による影響も無く、普通に今日の仕事も終える事ができた。今日のコウとの特訓はコウがアルバイトを終えた後に行う事になっている。何故、アルバイトが始まる前にやらないのかと言うと、コウの身体や服装が俺との特訓でボロボロになるからだ。まあ、ボロボロになった服は俺がちゃんと責任を持って直しているけどな。さてと、たまには本でも読んで時間を潰すとしよう。そう思った俺の前をリョウタが通り、リョウタが俺に別れの挨拶をするので返事を返す。
「ルドガーさん。今日はバイクに轢かれるなんて災難だったな。でも無事で何よりだ!そんじゃ、サヨナラ!」
「おう、サヨナラ!」
俺がリョウタに別れの挨拶を返した後、直ぐにリョウタの幼なじみである女子生徒のチヅルちゃんが急ぎ足でリョウタを追い掛け、リョウタの首根っこを掴んで何処かへと引っ張っていく・・・
「何するんだよ、チヅル!?」
「リョウタ。今日こそは商店街での仕事をキチンとやってもらうわよ!」
「待てって。俺は今日はちゃんと親父の仕事を手伝うつもりで・・・」
「嘘は言わない!リョウタが向かおうとした道は商店街に行く道としては不自然よ。どうせ、今日も寄り道しようとしてたのは分かりきっているから!」
「クソッ!?ルドガーさん、ヘルプミー!」
「俺を巻き込むな!ちゃんと仕事を手伝うんだぞ」
「ルドガーさんの裏切り者ぉーー!?」
知らんわ。寄り道せず、商店街の八百屋の一人息子らしく、少しは仕事を手伝え!チヅルちゃんもリョウタが幼なじみで大変苦労をしてるんだろうな・・・まあ、リョウタがどうなろうがどうでもいいな。今までサボった結果による自業自得だしな。さてと、杜宮学園の図書館で本を読んで時間を潰そう。俺は図書館に来ると、シオリちゃんの姿が見えたのでシオリちゃんに話しかけた。
「やあ、シオリちゃん」
「あっ、ルドガーさん。ルドガーさんも本を読みに来たんですか?」
「ああ。そうだ。シオリちゃんはよくここで本を読むのかな?」
「はい。私は読書が好きでよく図書館に来て本を読んでいます。ルドガーさんも本が好きですか?」
「いやぁ、俺はあまり本は読まないんだ。もし、よければシオリちゃんがオススメする本が有ったら教えてくれるかな?」
「はい、私が読んで面白いと思ったのでよければ教えますね。ええと、この本なら、ルドガーさんでも楽しめるかな?」
俺がシオリちゃんにオススメの本がないか聞いたら、シオリちゃんがオススメする本はタイトルは[生まれた意味を探す者]か。
「シオリちゃん。この本って、どんな内容なのか簡単に教えてくれない?」
「そうですね。主人公は甘やかされて、ワガママに育った貴族の男性で、その主人公は今まで家から一歩も出る事が許されずに外の世界の事を全く知らない世間知らずなんですけど、そんな彼がある日に一人の女性と出会った事で初めて外の世界に旅たつんですけど、彼は旅をしていてもワガママなままで、ある事が原因で仲間からの信頼を無くして、自分の過ちに気付いた時に新たな自分に生まれ変わろう決意するんです。すみません、どうも簡単に説明できない話の本でして、伝わりにくいと思うんですけど、本当に読んで面白いと思う本だから読んだ方が物語をしれるかもしれません」
なんだろうか。その本の内容は何処かで聞いた事が有る様な気がしてならない。まあ、気のせいだろうけど、とりあえずシオリちゃんにオススメされた事だし、この本を読む事にしよう。
「ありがとう、シオリちゃん。とりあえず、この本を読む事にするよ」
俺はシオリちゃんにお礼の言葉を言った後に、図書館にある机の上でシオリちゃんからオススメされた本を読んで時間を潰した。
俺は本を読み終えたので、本を元の場所に戻した後に学園を後にした。あの本の主人公は最初こそは大変ワガママだったが、自分の過ちに気付いた時に自分の髪を唯一見守り続けてくれた女性の持つ刃物で切った時から、彼は生まれ変わった。今までのワガママっぷりが無くなり、自分の過ちを正す為に旅をする決意をした。そして、主人公の最後の行動は本当に感動的だったな。
どうやら、本を読んでいる内にもう暗くなっているな。ん?ミツキさんからメールが来ているな。どうやら、メールの内容によると《ゾディアック》関係の話が有るらしく、家に帰るのは遅いので夕飯は作らなくていいという事らしい。そうだな、今日は外食でもしよう。たまには、俺だって料理を作るのが面倒に思う時が有るしな。俺は杜宮商店街にある蕎麦屋に行き、蕎麦屋で夕食を済ませた。蕎麦は美味しいな。今度、自分で蕎麦でもうってみるか。蕎麦粉を手に入れるのが難しいなら、作る物をうどんかラーメンに切り替えればいいしな。
ん?蕎麦屋から出ると、スポーツ用品店からコウが出てきたな。なるほど、今日はスポーツ用品店でアルバイトをやっていたのか。ちょうどいい、今直ぐに特訓を始めるとしよう。俺はコウに声をかけた。
「よお、コウ。奇遇だな、今ちょうどソコの蕎麦屋で食事を済ませたんだが、蕎麦屋を出たらコウの姿が見えたから声をかけたんだ。さて、今日の特訓を始めるぞ、コウ!」
「ルドガーさん。アルバイトを終えたばかりの俺を少しは休ませるという選択肢は無いんっすか・・・」
「無いな。そんなに休みたいなら、俺はコウが夜遅くまでアルバイトをしている事を杜宮学園に報告するけれど、それでも休みたいと言うなら別に休んで構わないが」
「わかったよ。どうせ、しごかれるなら早く済ました方が楽だしな・・・」
コウはしごかられるなら早めに済ませるという考えの様だが、そんなに俺の指導は厳しいのか?どうも、俺は人を鍛える様な事はコウが初めてだしな。鍛え方に不満が有るなら仕方ないな。でも、コウもその内に慣れるだろうから鍛え方を変える気は無い。さてと、今日の特訓を開始するとしよう。そう思ったのだが、どうも近くで口論と思われる二人の話声が聞こえた。会話内容は聞き取れないが、どうやらコウは口論している二人に心当たりが有るのか、その声が聞こえた方に向かったので俺もコウの後を着いていく。コウを追いかけて着いた場所は商店街にあるアパートの付近だ。コウは口論をしていたと思われる二人の少女の会話に口出しをしたと思うのだが、少し遠めなので会話内容は聞き取れないでいた。俺はコウ達の近くにまで行くと、口論をしていた者の内の一人だと思われる少女がその場を走り去っていた。その少女はどうやら、あまりにも思い詰めた表情をしていた為か、俺の存在には気付かなかった様だ。あの様子では、今追いかけても事情を聞く事は出来そうに無いな。ここはコウと先ほど走り去っていた少女と口論をしていたと思われるもう一人の少女から事情を聞く事にしよう。
「コウ。先ほど走り去っていた少女とその子とは面識が有る様だな」
「はい。先ほど走り去ったのは、相沢 千秋っていう俺と同学年の杜宮学園の女子生徒だ。相沢は空手部のエースで、良い奴なのは確かなんだが、どうも最近はソラに対して当たり散らしているみたいなんだが・・・ここから、先はソラ本人から話を聞いた方がいいかもしれないな」
「ええと、食堂ではよく見ると思いますけど、話すのは初めてですね。私は郁島 空です。でも、どうしてルドガーさんもコウ先輩と一緒にいるんですか?」
ソラちゃんか。ソラちゃんはよく食堂に食事をしに来るので、顔だけは面識が有る。ソラちゃんはショートヘアーが似合う元気なイメージが有る少女だ。そんなソラちゃんが、こんなに元気が無いのはチアキっていう子との間に何か衝突する事でも有ったからだろう。コウは俺が何で一緒にいたのか理由を言う。
「たまたまだよ。先、偶然にアルバイトを終えて帰ろうと思ったら蕎麦屋からルドガーさんが出てきて、そんなタイミングでお前と相沢の口論する声が聞こえたから気になったから一緒に来たってところだな」
「コウの言う通りで、たまたまソラちゃんとチアキっていう子の口論する声が聞こえたから気になったんだ」
「そうですか。じゃあ、話しますね」
俺はソラちゃんからチアキとの口論をしていた理由を聞いた。ソラちゃんは郁島流空手と呼ばれる空手の流派を持つ郁島家の娘だという。ソラちゃんは空手部に入り、先ほどのチアキっていう子とは良い先輩後輩という感じで仲が良かったらしい。だが最近、チアキはソラちゃんに対する態度が変わったらしく、ソラちゃんは郁島流空手の構えが定着している為か、一般的な空手の構えに慣れてないらしく、ソコをチアキっていう子に先輩としてのアドバイスというよりはキツく当たる様に構えが出来てないと強く言ったりする様になったらしい。チアキが何故、いきなりソラちゃんにキツく当たる様になったのは、チアキは二年生のエースだったが、ソラちゃんという空手の達人が入り、ソラちゃんの空手の才能の高さに嫉妬したのか辛く当たり散らす様な言葉を言う様になったらしい。チアキの気持ちは解らなくも無いが、コウはチアキが後輩であるソラちゃんには言ってはならない言葉を言ったという。その言葉はソラちゃんさえいなければ、自分がこんな辛い思いをしないですむのにと言う、コウが言った通りに先輩が後輩に絶対に言ってはならない言葉だった。ソラちゃんは慕っていた先輩であるチアキにこの様な言葉を言われた事が一番ショックだっただろう。
「チアキ先輩があんなに思い詰めていたなんて・・・でも、私はチアキ先輩に会って教わった事が有るんです。それを伝える事ができれば・・・」
ソラちゃんはチアキにはどうしても伝えたい事が有る様だ。先ほどのチアキの言葉はきっと彼女も本心では言うつもりは無かった筈だ。ソラちゃんが伝えたい事がチアキに伝わりさえすれば、どうにか収まるだろう。そうだな、ここで会ったのも何かの縁だし俺もソラちゃんの力になるとしよう。そう思った瞬間、ソラちゃんの後ろの空間から赤いヒビが出現した。
「えっ・・・」
「なっ!?ルドガーさん、これは・・・」
「クソ、こんな時に異界化だと!?」
赤いヒビが割れ、ゲートが出現する。出現したゲートにソラちゃんが取り込まれる。
「コウ先輩、ルドガーさ・・・キャアアァッー!?」
「ソラァー!ルドガーさん、ソラを助けに」
「分かってる!行くぞコウ、今日は特訓じゃなく実戦だ。今のお前はこの間よりは確実に異界で戦える筈だ。絶対にソラちゃんを救出するぞ」
「当たり前だ!絶対にソラは助ける!」
「なら行くぞ、コウ!では迷宮に突入するぞ!」
俺とコウはソラちゃんを取り込んだ迷宮に突入した。
「この迷宮の奥にソラちゃんはいる筈だ。コウ、ソウルデヴァイスを!」
「ああ、分かってるさ!来い、レイジング・ギア!」
俺が言う通りにコウは俺がコウのサイフォンにインストールしたソウルデヴァイスを呼び出すアプリを起動させて、自身のソウルデヴァイスであるレイジング・ギアを装着した。俺も直ぐにデルタウエポンを出現させて、双剣の姿で構えた。
「よし、ソラちゃんを救出するぞ」
「ああ。絶対にソラは助ける!」
俺とコウはソウルデヴァイスを構えたのでソラちゃんを助けに迷宮を進もうとした瞬間、この迷宮に新たに突入した者がいた。その人物はアスカだった。
「時坂君。私は言った筈よね。あなたはこれ以上は異界に関わらない方がいいと忠告したのに、それでもまさか、まだ異界に関わるなんてあなたは本当に・・・」
「柊。悪いが説教は後だ。俺はソラを助ける為に迷宮に入ったんだ。それに俺も、この間よりは少しは強くなっている筈だぜ」
「はあっ。時坂君がソウルデヴァイスを構えている事とこの場所が迷宮だと解ってるという事はルドガー、あなたが吹き込んだ訳ね・・・」
どうやらアスカは、コウが自分が忠告したにも関わらずに異界に関わった事が不本意の様だ。アスカは俺がコウに異界に関する事を吹き込んだ事に対しても不満だったのか、俺を睨み付けてくる。
「確かにコウに異界の知識を吹き込んだのは俺さ。でも、コウはもう異界に関わるのを止めるつもりは無いから、止めても無駄だからコウを異界に関わらない様にするのは諦めてくれよ」
「仕方ないわね。時坂君もどうやら少しは素人よりはましなレベルにはなってそうだし、今さら異界に関わらないでとは言わないわ。でも、時坂君に異界の事を吹き込んだ事に関しては別問題よ」
「そんなに怖い顔しちゃ、将来的にシワが増えて肌の張りが無くなるぞ・・・って、落ち着けアスカ。ソウルデヴァイスで俺の頸動脈を斬ろうとするな!?」
「あら?怒ってないわよ、私は。そうね、ルドガー。これだけは言っておくわ。女性にシワが増えるとか肌の張りが無くなるとかはNGワードよ。よく覚えておきなさい!」
「はい、胆に命じておきます・・・」
「解ればいいのよ。さて、時坂君を止めても無駄なのはわかったから、ひとまずはこの三人で迷宮を進みましょ」
俺は女性には言ってはならない事を言ってしまったのでアスカの機嫌を損ねてしまい、少し空気が重くはなるが俺とコウにアスカの三人で迷宮を進む事になった。言うまでも無いが、俺達を先には進ませないと怪異が立ちはだかる。
「コウ。俺との特訓で前よりは強くなったお前をアスカに見せてやれ!」
「ああ!今こそ、特訓の成果を見せてやる!」
コウは襲いかかってくる怪異の攻撃を後ろに跳んで回避し、レイジング・ギアから炎の弾を相手に向けて飛ばす魔法スティンガーで怪異を焼き払った。焼き払われた怪異の後ろから新たな怪異がコウに襲いかかるが、コウの方が早く動き怪異の攻撃を避けるとカウンターを仕掛ける。カウンターによって、レイジング・ギアの刃に斬られた怪異は消滅する。アスカは前の時とは違うコウの動きを見ると新たに評価をする。
「この間の時と比べると時坂君の実力は上がっているわね。まあ、良くて素人より上のルーキーと言うところね」
「素人の次はルーキーかよ。まあ、俺の事を少しは認めてくれたって事でいいんだよな」
「そうね。前よりは大分マシな方ね。だからといって、調子には乗らないでね!」
「解ってるさ。調子に乗ったら、判断力が鈍るからな」
どうやら、アスカは少しはコウの事を認めてくれた様だ。コウもアスカに少し認められたからと言って、調子に乗る事はしない。調子に乗った状態では戦いの最中に適切な行動をする為に必要な判断力が鈍るからだと俺が教えたからな!コウは着実に強くなっている。俺達はそのままの勢いで襲いかかる怪異をなぎ倒しながら、迷宮の奥へと進んでいく。迷宮の先を進んでいくと、奥から戦闘音が聞こえる。まさか、ソラちゃんは・・・俺達は奥に進み、迷宮の深部に着いた。ソコでは、ソラちゃんがエルダーグリードと思われる鋼鉄の人形型の巨大な怪異を相手に素手で戦っていた。
「せい!はあっ!ダメだ・・・全然びくともしない・・・」
ソラちゃんは空手で鍛えられた持ち前の体術で鋼鉄人形の怪異を翻弄していたが、ソウルデヴァイスを持っていないので、ソラちゃんの攻撃ではダメージを与えられない。ソラちゃんはそんな事は知らないので、自分の攻撃が通らない事に戸惑いつつも鋼鉄人形の怪異に立ち向かおうとするので、俺達はソラちゃんに退避する様に言う。
「ソラちゃん。ソイツには通常の攻撃は全く意味が無いんだ。だから後ろに下がってくれ!」
「えっ?この声はルドガーさん!?それにコウ先輩と・・・ええと?」
「悪いけれど、自己紹介は後にして!今はルドガーの言う通りに退避をしてちょうだい!」
「ソラ。二人の言う通りにして、今は退避してくれ。コイツは俺達でしか倒せない。だから、ソラは後ろに下がってくれ!」
「はい。コウ先輩が言うなら、私は信じますね・・・コウ先輩、絶対に勝ってくださいね!」
「ああ。そんな事は言われなくても解ってらあ!」
ソラちゃんは俺達の忠告を聞くと後ろに下がって安全地帯へ移動する。鋼鉄人形は自身を倒す術を持たないソラちゃんを敵では無いと判断したのか、それとも俺達を排除すべき者と判断したのか、或いは両方だろう。鋼鉄人形は俺達を敵と認識し、攻撃を仕掛けてくる。俺達は鋼鉄人形の攻撃を避け、三方に散開した。
「あのエルダーグリードはドレッドゴーレム。見ての通りにゴーレムタイプのエルダーグリードよ」
「通訳して恐怖の人形ねぇ。見ての通りに名前にも捻りが無いヤツだな」
アスカの説明により、あの鋼鉄人形の名前はドレッドゴーレムと呼ばれるエルダーグリードの様だ。コウはその名前には何の捻りも無いと言うが、恐怖の人形と呼ばれるだけ有って、パワーはまさに恐怖の一言だ。まともにドレッドゴーレムの攻撃を喰らったら、ただでは済まないだろう。その威力はおそらく、バイクに轢かれるのとは桁が違う筈だ。多分な。ドレッドゴーレムには銃や剣が効きそうには無いので、デルタウエポンをハンマーへと変化させた。俺達は上手く連携しながら、ドレッドゴーレムを倒す事にする。
「私が牽制するから、二人はドレッドゴーレムが隙を見せたら攻撃をして!」
まずはアスカが魔法であるスプラッシュアローで攻撃し、ドレッドゴーレムがアスカの方を向くとアスカが素早く近付くと、ドレッドゴーレムの装甲の僅かな隙間をエクセリオン=ハーツの刃で突き刺すと、ドレッドゴーレムはアスカを殴ろうとして地面を右腕で叩き出す。アスカはそれをギリギリのタイミングで避けると、ドレッドゴーレムの右腕は勢い余って地面に突き刺さり身動きが出来ない。俺は身動き出来ないドレッドゴーレムに一気にハンマーによる大技を仕掛ける。
「喰らえ、ソート・ラルデ!更にファンガ・プレセ!そして、エオリエーネ!」
まずは俺は高くジャンプして勢いを付けて相手をハンマーで殴るソート・ラルデでドレッドゴーレムの頭部を攻撃し、更に追撃で俺の身体に有る闘気を集めて一気にハンマーで叩き出すファンガ・プレセでドレッドゴーレムの胴体を何度も叩く!そして、連続でハンマーを振り回して相手を殴り続けるエオリエーネを喰らわせた!この連続攻撃を受けたドレッドゴーレムの身体にはヒビが入り、無生物っぽいのに痛みを感じるのか怯みだす。
「今だ、コウ!お前の手でこの戦いを終わらせるんだ!」
「ああ!いくぜ、これが俺が持つ全力の攻撃だ!」
俺がコウに合図すると、コウは全力の攻撃を繰り出す。レイジング・ギアを鞭の様に伸ばして、ドレッドゴーレムに連続で斬撃を喰らわせ、そしてトドメの一撃を放つ!
「うおおおぉ!エクステンドギア!」
コウはドレッドゴーレムのヒビが入った箇所にレイジング・ギアを思い切り突き刺すかの様に強烈な一撃を放つと、ドレッドゴーレムは崩れ去る様にして消滅した。
「終わったな」
「ああ。ルドガーさんと柊の助けも有って無事にソラを助ける事ができたぜ」
「そうね。本当に少しはやれる様になったわね、時坂君」
主であるドレッドゴーレムが倒された事により、迷宮は現実世界への干渉が止まり空間が揺らぐと、ソラちゃんを含めた俺達四人は現実世界へと戻った。
「ここは?私達は元の場所に戻れたんですね。あのコウ先輩にルドガーさん、そしてソコの方も助けてくれて感謝します!」
「ああ、本当にソラちゃんが無事で良かったよ。でも、ゴメンよ・・・アスカ、処置を頼む」
「了解。ええと、ソラちゃんと呼んだ方がいいのかしら?私が直ぐに悪夢から覚まさせてあげる。イレイズ!」
「あっ・・・」
「時坂君。彼女を彼女の部屋まで運んであげて。今日はここで解散しましょ。明日は今回の異界化の原因を探る為にも、ソラちゃんと口論をしていたという相沢さんに会って話を聞く事にしましょ」
「そうだな。柊の言う通りに明日は相沢に話を聞く必要が有りそうだな」
ソラちゃんはアスカによって迷宮にいた間の記憶は消去され、その反動で倒れたソラちゃんをコウがアパートの部屋に寝かせ、その後に俺達は解散して帰宅する。明日は俺とコウはアスカの協力も得て、チアキという子に話を聞き出す事になった。ソラちゃんの為にも、明日は何としてもチアキから話を聞かないとならないな。ソラちゃんの為だけでは無く、彼女自身の為にも、絶対に二人の仲を修復してみせる!
今回の話の中で、ルドガーはバイクに轢かれましたね。ルドガーの運の悪さは健在です。
「そんなのが健在なんて、嬉しくねぇよ!?」<byルドガー
バイクに轢かれても、無傷で済むのは彼の身体が一般人というよりも、東亰ザナドゥの世界の人間よりも丈夫だからです。
後、シオリにオススメされた本の内容は知ってるかもしれませんが、テイルズオブジアビスが元ネタです。
次回は原作の第2話の後半の部分となります。