オラリオの殺し屋   作:金魚が2匹

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四話

 

「その短刀の使い方を教えてやるよ」

 

あの後、スーさんを呼んで短刀を買った。私がスーさんを呼びに行っている間に、もう椿さんはいなくなっていた。せっかくだから、お礼の一つぐらい言いたかった。

 

スーさんにこの短刀を見せたら良い刀だなって言われた。私が作った訳じゃないのに、なんか嬉しかった。

 

「刀の振り方って分かるか?」

「いや、わからない」

「そうか、知らなくてよかったな」

「なんで?今から刀の振り方を教えてくれるんだろ?」

「いや、違ぇよ。俺が教えるのは刀の使い方だ」

「………どう違うの?」

「刀を振るってのは、どっちかって言えば殺し屋がやることじゃねぇよ。それは、冒険者か武道家がすることだ。俺たちは殺し屋だ。いくら綺麗に美しく振れても相手を殺せなかったら意味がない。だから、俺が教えられるのはあくまで、短刀の使い方だ」

 

そう言ってスーさんは、懐からナイフを取り出した。ここは、オラリオの郊外の森なので、ナイフを出してもだいじょうぶだ。

 

スーさんが動きだすと、ヒュッ、ヒュッとナイフが空気を裂く。見えない。早すぎてナイフが見えない。音しか聞こえない。こんなことこんな光景初めて見た。

 

「これが刀の使い方だ」

「?振り方とどう違うの?」

「はぁ、………よく見とけ」

 

そう言ってスーさんは刀を構える。さっきは構えてなかったけど、構えるとなかなか様になっている。ヒュッッと音がなった。相変わらず早すぎて見えない。何が起こってるかわからない。

 

「どうだ?分かったか?」

「早すぎて見えない」

「…はぁ、そう言うのはもっと早めに言えよ………。もう一度ゆっくりやる。見とけ」

 

そう言って、スーさんは腕の力をダラーンと抜いた。力が入ってない。今にもナイフを落としてしまいそうだ。

 

「!」

 

スーさんがナイフ使った。

鋭い。限りなく鋭い。

スーさんの脱力していた腕がしなる。力が抜けているけど、それでも鋭い。

一撃一撃が急所を確実に切り裂く。その光景が、イメージできた。

 

「今のがナイフを使う、だ。今度は振るってみるぜ」

 

今度はナイフを構えた。瞬間、極東の戦士を思い出した。刀を持ち、主のために戦う誇り高い戦士。

スーさんが刀を振るう。見とれてしまった。美しい。動作一つ一つが美しい。それは一つの芸術品のように、綺麗だ。現実なのに、夢を見ているような感覚。

 

「違いが分かったか?」

「………」

 

ペシッと頭をはかたれる。現実に呼び戻された。

 

「スーさん、スゲーな!」

「あ?」

「あんなに綺麗に刀を振るえるな人を私は見たことないよ!」

 

スーさんは乾いた笑い声をあげた。そして、困ったような顔をした。

 

「二つとも全然違うだろ?だから、お前は幸運なんだよ。一旦どっちかが身についちまうと、なかなかもう一方を身に付けられねぇ。俺は先に刀を振るうことを覚えたからな。ナイフの使い方を覚えるのに苦労したよ」

 

はぁ、とため息を吐いた。

 

「まあ、やってみろ。悪いこところがあったら、俺がおしえるから」

「うん」

 

さっき買ったばかりの短刀を抜く。ホントにこの短刀を買ってよかった。まるで、体とひとつになったような感じがする。スウッと集中できた。

 

さっきのスーさんを思い出す。ナイフの使い方。私がやるのは刀の使い方だ。鋭く。ひたすら鋭く、正確に。

相手の急所を確実に切り裂き、即死させる。殺しに特化した使い方。

イメージしろ、イメージしろ、イメージしろ。

相手が確実に死ぬ瞬間を。私が殺す瞬間を。一瞬のうちにかける世界を。

 

刀を使う。スッと空気を裂く。その感覚が刀を通って、手に伝わる。

もっとだ。もっと鋭く。これでは相手は死なない。避けられる。

もっと緻密に。もっと繊細に。

 

刀が宙を斬る。

汗がダラッ、と吹き出した。

息があがる。一回の集中で、こんなに疲れなんて初めてだ。

スーさんがゆっくり近づいてきた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「お前すげぇな…」

 

この状態を皮肉ってるのか?

 

「お前が今どんだけ凄いことやったかわかってるか?」

「はぁ、はぁ、……?」

「今お前は確実にこの短刀の使い方をわかっていた。初めてでそれができるなんてすげぇよ………」

 

わかっていた?俺が短刀の使い方を?

 

「はぁ………ホントすげぇよ、お前。これに関しては、教えることはなにもないよ。形はできてる。後は自分なりにそれを使うだけだ」

 

スーさんはそのまま手を差し出した。息が落ち着いてから、私はその手を取る。ゴツゴツとした手だった。

 

「どうだ?一つ上に来た実感はあるか?」

「一つ上?」

「そうだ。ホントにお前は才能があるよ。お前は階段を10個飛ばしぐらいで登ってきたんだからな」

 

スーさんは、ニヤッとした。

その後もスーさんは、すげぇすげぇって言ってたけど、私はあんまり、実感がなかった。スカッとして呆気ない感じ。

 

「神様の腕、か………」

「なにそれ?」

 

スーさんが思い出したように呟いた。

 

「お前の腕を見て、思ったんだよ。お前の姿を見てゾクリとしたね。久しぶりだよ、こんなことを思ったのは」

 

スーさんの目が細くなる。

 

「もちろん、お前の腕は両親から貰った立派な腕だ。恩恵をくれる神様から腕を貰った訳じゃない。でも、お前のさっきの動きを例えるなら……」

「神様の腕?」

 

ニヤッとして、ワシャワシャと頭を撫でられた。

 

「とんでもねぇ奴をこっちの世界に引き入れちまったのかもな」

 

手を離して、私たちは歩き出した。適度な疲労感があった。

今夜はじっくり眠れそうだ。

 

 

 

帰って、晩御飯を食べて風呂に入って、歯を磨いて、寝る。ベットに入ろうとしたときに、ふと、今日のことを思い出した。

私が短刀を使った時じゃない。スーさんが刀を振るった時だ。

 

スーさんは、苦労したと言っていた。さきに刀を振るうことを身につけて、ナイフの使い方を学んだと言っていた。と言うことは、スーさんは殺し屋になる前に、何か別の仕事をしていたことになる。

あの完成された動き。芸術の域に達している動作。そこら辺の冒険者じゃできない。天才が努力を続け結果が、あの惚れ惚れする太刀筋だと思う。多分、あれこそ神様の腕だ。

でも、あの域に達しているなら、なぜスーさんは殺し屋になったんだろう。

 

スーさんはあんまり、過去の話をしない。単純に話す機会が少ないことも一つの原因だけど、それだけじゃない。必要なときは話すけど、自分から積極的に話そうとはしない。

 

自慢話をしない。自慢話だって、立派な経験の証だ。聞かされる方は嫌になるかもしれないけど、その人がどんなことをしてきたのか知るには適している。単に自慢することがないのか。それとも…………。

 

眠気が襲ってきたから、ベットに潜り込み、徐々に意識を手放した。

 

 

 

~現在のステータス~

 

ハイロ・ネック

Lv.1

力:I 60

耐久:I 5

器用:S 963

敏捷:H 139

魔力:I 0

《魔法》

【】

《スキル》

【一意専心】(コンセントレイション・リミット)

・極度に集中すると発動する。

・集中すれば集中するほど成長する。

・技術の向上




一気に強くしすぎましたかね。後悔してませんけど。
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