私立グリモワール魔法学園~Another story 作:風飛の丘
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。
いつもの様に登校してしていると、校門の前に生徒会長が腕を組んで立っていた。
そして、こちらを見つけたようで近寄って来る。
「登校してすぐで、すまないが手を貸してくれ」
突然の生徒会長、直々の頼みとは……
「アタシと一緒にクエストに行くぞ! 魔物が近くに出た」
「正確には昨日出たんだが、どうやらタイコンデロガらしくてな。いや実際はまだ正体不明なのだが……」
(どういう意味なんだろう? らしいとは?)
「普通は出現して、すぐに執行部がおおよそのデータを出すものなんだが、今回それが無い」
「そしてそのまま、生徒会に出撃要請がきたのだ」
(生徒会に依頼が来るとは、余程の事なんだな……)
会長から詳しい話を聞くと
詳細不明の魔物が、洞窟の奥深くに出現。人的被害はまだ出ていない。なので通常こういう魔物は軍が余裕もってあたるものだが、国軍は第7次侵攻の準備で手を取られているから動けない。そして、マニュアルに従えば通常の魔物は一旦放置されるらしい。
「力量がわからない。相手との戦闘はしないのが学園の方針だからな」
「だが来た! この魔物はすぐに退治しなければいけないと言うことだ」
「しかも生徒会会長のアタシをご指名の緊急クエストだ! 十中八九 タイコンデロガだな。そんな訳でアタシはすぐに出る!」
「そしてアタシからお前への頼みだ。一緒に同行してくれ! 生徒会役員を含め万全の態勢で挑む。お前の力が必要だ」
「さあ、みんなを守るぞ!」
やっと誰かを守れる力を手に入れて、そしてそれを必要と言われたら断る理由も無い。
「はい! みんなを守れるように協力します」
□□□
洞窟内
底冷えする洞窟内を移動していた。生徒会の人達とは、間隔を開けながら奥を目指す。
挟撃や不規則な事態に備え、数組に分かれ距離を開けながら一緒に奥を目指していた。
その時、いきなり地面が揺れる?地震だ!
「ドドン! ガラガラ」
音がしたと思うと天井から落石が降って来る。
慌てて、転がりながら避ける。間一髪で岩の下敷きになるのを避ける事が出来た。
暫くすると崩落はおさまったが、もろい洞窟なようだった。
しかも退路が塞がれ戻れない。魔法で掘ることも出来るだろうが…… 二次災害は避けなければならないので、無理だと判断する。他の人達も大丈夫だろうか?
こっちは会長と2人だけになってしまった……
会長も一瞬考えたようだったが
「ここはおとなしく先に進もう。運がよければ合流できる」
会長も同じ考えで、無理に魔法で掘る事はしないようだ。
「念の為、状況を確認するぞ!」
「今回の討伐対象は不明、洞窟の奥にいる何かだ! どれほどの強さかも不明、居場所も不明だ」
どれも分からない事ばかり、しかも退路は塞がれ出口もあるのかも分からない…… キツイな。
「そして、多分だが魔物の影響で地震が起き洞窟が崩れた」
「少なくともアタシ達以外とは、離れ離れになってしまった」
「あ! そうだ」
思い出した様に、自分のデバイスを出し救援を呼べるか? 確認するが圏外になっている。これでは救援要請は無理だな……
ついでに、会長のデータも一緒に確認する。
武田 虎千代 17歳 身長176㎝ 体重63㎏ B90 W59 H89
趣味 昼寝 特技 体術
会長 実は昼寝が趣味だったんだ…… 意外な一面だ。
「デバイスも使えないです」
「洞窟内だ。仕方がないだろう」
奥を目指しながら話を続ける。
「雑魚相手なら心配するな、伊達に生徒会長はやっていない! アタシに任せてもらおう」
「問題は討伐対象だが…… まぁ、魔物である限りどうにでもなる」
会長曰く
どれほど強くても、どんな魔物でも対処方法はあるらしい。
魔法が効かない魔物はいない。
霧で出来ているが、形を伴ったものの特性を得る。
目があるなら潰せば見えなくなる。耳を潰せば音が聞こえなくなるらしい。
「どうだ? 魔物であること以外が、不明でも恐ろしく無くなるだろう?」
「すべては敵を知ることからだ、今までずっとそうして戦ってきた」
流石は会長だ! 頼もしいな。
その時、前方から何やら動く物が空中に現れる。魔物だ!
「気を抜くな戦闘準備だ!」
前方から飛来するのは、10体ほどの羽の生えたトカゲ?ワイバーンだ。
本で見たことがある…… 確か空飛ぶトカゲと呼ばれ、口からは炎を吐くはず。
想像通り、空から急降下して来たと思ったら、口から炎の玉を吐き出す!
当たらないよう火の玉を避けながら反撃を開始する。
会長は、腕に雷を纏い砲撃を空中に放つ!
当たれば一撃で倒しているが、かなり戦い難い様子だった。
「く! こうもちょこまかと動かれては、魔法の威力も調整して下げないと…… 厄介だな。空を飛んでいては格闘戦も出来ないしな」
聞いた事がある。本気を出した会長の砲撃は、山も消し飛ぶらしい。そんな威力で撃ったら洞窟は完全に崩落するぞ。
「会長、援護します!」
グラビティシェルを次々に展開する。
その数は10個!
図書館の出来事から急に具現化の力が強まり、今では最大10個まで展開出来るようになっている。
グラビティシェルを当て、ワイバーンの動き止め落下させる。1体につき2個、2秒停止できれば後は会長が倒してくれるはず!
会長とのコンビネーションで、飛来した魔物は次々と打ち落とされ消滅して行く。
「2人だけでも何とかなるものだな! このまま奥に進むぞ」
さらに奥に進み、枝分かれた道を何度か通る内に、行き止まりにたどりついてしまったが…… 良く見るとそこには、湯気が立ち登る天然の温泉があった。
「よし! 丁度いい! ここで一旦、小休止だ」
会長は手をお湯の中に入れ、温度を確かめているようだ。
「問題ない。入れるぞ」
突然、会長は服に手をかけ脱ぎはじめた。
「え!?」
後ろ姿で、長い金髪に体は隠れていたが見えた!
引き締まった体に大きな双房が……
慌てて後ろを向きながら言う。
「か、会長、急に脱がないで下さい!」
「あぁ、すまんな。うちの学園は男子が少ないからついな」
「それに、この筋肉の塊みたいな体では面白くも無いだろうに」
「……そんな事は無いです」
十分に魅力的なボディだと思った。
「そうか? お前も一緒に入るか? アタシは気にせんぞ」
「ブッ! 会長何言ってるんですか!」
思わず振り向いて、つっこんでしまう。
「あ!」
振り向いた先には、黄金の長い髪がお湯の中に広がり扇状を作りだす。
水面には胸が浮いていて、体を伝わる滴が艶かしい……
胸って浮かぶんだな…… 初めてみた。
慌ててまた会長に背を向ける! 同時に鼻血が出てきた。
「ま、魔物が現れても対応が出来る様に、見張りをします」と返事をする。
「ならアタシの後に入れ、気持ちがいいぞ」
戦闘服は魔力を込めれば、自動修復し汚れも落ちるが体の汚れ自体は落ちないと言う。
「時間があれば、そうさせてもらいます」
と答えるのが精一杯だった……
暫くの間、会長の裸が……目の奥から離れなかった。
□□□
洞窟最深部
振動と共に地鳴りが聞こえくる。討伐対象の魔物が近いようだ。
洞窟の大きさ、地鳴りの様子から魔物は相当大型なるな。
「さあ、あと少しだ! 運よく目の前に、魔物が現れてくれた!」
「他の者と合流する必要もあるまい! このままカタをつけるぞ! 援護を頼む」
前方から巨大なドラゴンが現れる。岩の塊でできたような姿で、羽もあるが体より小さく飛べる様な物では無い。本で見たことある地竜、アースドラゴンに近い。
会長は炎をはかれる前に、接近戦に持ち込もうと走り出す。
手足に雷を纏いドラゴンに拳撃、蹴撃を加えていくが、ドラゴンに効果的なダメージは与えていないようだ。
長期戦を覚悟し、会長に魔力供給しながらグラビティシェルで援護する。
巨大な体、分厚い岩の体…… 何時間ぐらい戦っているのか分からなくなっている……
会長はブレスを警戒して接近戦で戦っているので、チャージ時間の取れないプラズマ砲では、本来の威力を出せないでいる。
また、自分も後方に回りバスターカノンで攻撃するものの大きい体の一部しか削り取れないでいる。
しかも削りとった場所は岩で塞がれてしまう。
しかし、ドラゴンも無傷では無いようだ…… 至るところに亀裂や窪むが出来ていた。再生する力が弱くなっているようだ。
このままダメージを蓄積していけば勝てる筈だ!
さらに幾度なく同じ作業を繰り返しながら攻撃する。
時が流れて行く……
「あと少しだ! 気合い入れていくぞ!」
会長も自身に気合いを入れる。
かなり弱ってきている魔物に隙が出来た。
「会長!」
「ブラズマスマッシャー!!」
会長のプラズマ砲とバスターカノンの砲撃で同時に攻撃し、何とか魔物を倒す事に成功した。
「うむ、やはり魔物だ! あのような巨体が霧散するなど他では考えられない」
「よし! と言いたい所だが、アタシ達にはまだ仕事が残っているぞ」
「クエストは受けた全員で報告せねばならんからな! 他の生徒を探し、無事を確認してから脱出路を探すぞ」
風の流れを辿りながら、さらに奥に進むと前方に人影が見える。
あちらも気づいた様で、誰かが駆け寄ってくる。
精鋭部隊のメアリーだ! 小隊を連れ、救援に来たようだ。
これでやっと外に出来るぞ。
メアリーと会長は、簡単にこれまでの経緯を伝え、お互い情報交換する。
どうやら他のメンバーも無事らしく、ひと安心だ。
会長と話をしていたメアリーは驚く!
「タイコンデロガ相手に無補給で2日……」
え! 時間の感覚がなくなっていたけどまさか2日も…… 自分達は戦っていたのか……
「転校生のおかげで魔力には事欠かさない! 魔物を倒せたのも常に全力を出し続けていられたからだ」
「あっそ、でも魔力は本人に負担をかける。アンダスタン?」
「暗い洞窟の闇の中で、無いかも知れない出口を探して 魔物と延々と戦う、どれだけ体力を消耗するか知ってっか?」
「アタシは元気だ、次のクエストもすぐに受けられぞ」
メアリーはヤレヤレといった感じで小隊を連れ、帰って行く。
ひとまず自分達も外に出て、他の仲間達と合流する事にした。
外に出ると太陽の光が眩しい、2日間も洞窟の中に居たせいだなと思った。
後は皆で、学園に戻りクエスト完了報告だ。
その時、会長のデバイスが鳴る! 会長はデバイスで何やら確認し、矢継ぎ早に他の生徒会役員に指示を出している。
こちらに会長が近付き言う。
「多数の魔物が現れた、第7次侵攻が始まった! しかも予定されていた数より多いぞ!」
「皆、急いで学園に戻るぞ」
END
いつもお読み頂きありがとうございます。
次話は第7次侵攻を予定していますが話が長編になりそうな場合は前・後編に分けようと思います。
2016/10/27 一部修正完了済み
用語解説
タイコンデロガ
現在、確認されている魔物で強力なカテゴリーに入る魔物をタイコンデロガと呼ぶ。
伝説となっている【ムサシ級】は江戸城より大きと記録されている。
大規模発生
魔物が異常に同時に出現する時期で数十年に1回発生すると記録されていて、魔物が現れて以来6回発生している。