私立グリモワール魔法学園~Another story   作:風飛の丘

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独自解釈、独自設定により原作を大切にされている方はご遠慮下さい。主人公はオリ主 不定期投稿
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。

お待たせしました~



グリモア 第25話 冬樹 イヴ 編

お昼を食べに食堂に向かう途中、廊下にミルクティーブラウンの髪が特徴の冬樹イヴが腕を組んで立っていた。

14歳 身長155㎝ 体重39㎏ B74 W53 H77

趣味:読書 特技:速読

何度か話す機会があり、話した事があるがいつも態度が冷たく、どちらかと言うと苦手な女の子だった。

 

彼女はこちらに気がつくと、近寄って声をかけて来た。

 

「不本意ですが、あなたとパーティを組むことになりました」

「以前、崩落があった洞窟を調査します」

 

彼女の言う通り、先程クエストの依頼がデバイスに届いていた。もちろん、パートナー名は冬樹イヴの名前が書かれていたのも確認済みだった。

 

「調査は私がやるので、見ているだけでも結構ですよ」

「表向きは、新たに現れた魔物の討伐ですが……」

「他にも調査している学園生がいるので、テロリストのことは喋らないように注意して下さい」

 

「では、時間が惜しいので行きましょうか」

 

「え? 昼食は……」

 

「そんな物は移動しながらで十分です」

 

「……はい」

 

□□□

洞窟入口

 

移動車両に揺られながら目的地に到着する。

 

「早速、クエストを開始します!」

彼女に言われ、さっそく崩落した場所を中心に調査を開始する事になった。

 

しかし、本当に崩落がテロリストによるものなのか? 偶然だったのか? 何かの痕跡が無いか、念入りに2人で調べて回る。

 

「うーん、何も見つからないね」

 

「ええ、でも何かあるにしても簡単には見つからないと思います。時間のある限り調べます」

 

「了解~」

彼女は生真面目だから、意地でも何か見つけるまで捜索するつもりだろうな。

 

「うん?」

大きな岩影で、何か動いた気がしたが気のせいか? 念の為、岩に近付きながら彼女に声をかける。

 

「そこの大きな岩影に注意して、何か動いた気がした」

彼女に注意を呼びかけた瞬間。突然、岩影から5体の河童の姿をした魔物が飛び出して来た。

 

魔物は子供ぐらいの大きさで、鋭い爪で襲いかかってきた。

 

完全に不意をつかれた形になってしまった。

 

「させません!」

氷の短槍が、突然現れた魔物を串刺しにする。

彼女の攻撃魔法で、魔物はすべて一撃で霧散していった。

 

「た、助かった」

意表をつかれたのもあるが、基本的に中距離から遠距離を得意とする自分には近接戦闘は苦手な分野だった。

 

「今回は仮にも私のパートナーですから、無様な姿を見せないで下さいね」

「あなたのせいで、私まで低い評価を付けられてしまっては元も子もありません」

「……せっかく積み上げてきた実績を台無しにされるのは困ります」

 

「……悪かった」

彼女の言う通りだが、そこまで評価にこだわっているとは思っていなかった。

 

「……少し調査範囲を広げましょう。ついでに周辺にいる魔物も掃討します」

 

「先程の様な事態を繰り返さない為にも」

 

捜索範囲を広げ、辺りを捜索している彼女に先程の疑問を聞いて見ることにした。

 

「どうしてそこまで、評価にこだわるんだ?」

 

「特に意味はありません。私は2人分の働き…… 強さを得られれば良いのです」

 

「2人分? ノエルと何か関係あるのか?」

以前、ノエルから聞いた事があるが、姉である彼女とはあまり仲が良くないらしい。

 

「……ッ 私は1人で強くなりたいだけです! 誰にも関係ありません!」

 

どこか意地を張っている様に聞こえた。

 

「やっぱり、ノエルの事を気にしてるんだろ?」

 

「……さて、お喋りはここまで! 魔物です」

これ以上の詮索は無用と言うことか…… 前方から4体の河童型の魔物が現れこちらに向かって来る。

 

「弱い魔物が何匹束になろうと私の前では無力です!」

 

言葉の通じない魔物が挑発に乗った訳では無いが全ての魔物が彼女に向かって行く。

 

「いいでしょ。私の力! 存分に味わってもらいます」

 

「支援する!」

 

「ご自由にどうぞ」

彼女はそう言うと魔物の群れの中に躍り出る。

 

そしてオールレンジで戦える彼女は実際に強かった。

雑魚の魔物では、彼女に傷負わせるのも難しいと思いながら戦う姿を見ていた。

 

「支援も不要だな……」

独り言の様に呟くと、急に後ろで物音がした。

 

「……ッ!」

後ろを振り向くと、1体の河童型の魔物が跳び跳ねながら攻撃仕掛けて来た! 気づくのが遅れ、背中に一撃をもらってしまった。

元々、障壁類いは使えないので緊急用のバリア装置【ガジェット】を持たさせられているが間に合わなかった。

 

「クッ! 完全に油断してた」

お返しとばかりにバスターカノンの砲撃で反撃し、魔物を消滅させる。

 

「ふぅ、こんなものですか? 弱いですね」

丁度、前方の魔物を全て霧散させた彼女が戻って来た。

 

「流石だな、1人で全部倒してしまうなんて……」

 

「……どうかしましか? 何やら顔色が悪い様子ですが……」

 

「どうもしないよ。早く調査を再開しよう」

彼女の足を引っ張る訳にはいないので、怪我の処置は彼女に見えない所でする事にした。

 

「……そうですか、あなたが大丈夫であればいいのですが……」

「もしもの事もありえます。敵には十分に注意して下さいね」

 

「わ、分かった」

既に時遅しだったが、そんな事は言えないので痛みを我慢しながら歩き出す。

 

「……本当に大丈夫ですか? おぼつかない足取りですし、少し休憩を……」

 

彼女の声が遠くに聞こえる…… あれ? そんなに傷も深く無いと思っていたけど…… 背中で見えないし…… 意識が朦朧として来た……

 

「ちょっと…… ッ!? まさか、魔物にやられて……」

 

急に目の前が暗くなり、彼女の声がさらに遠くに感じられる。

 

「傷は、傷はどこですか! あ! どうしてこんなになるまで……」

「まったく手間のかかる…… 少し痛みますが我慢…… 下さ……」

途切れ途切れに聞こえる彼女の声を聞きながら、完全に意識を手放してしまった。

 

□□□

岩穴

 

「……ッ」

体に痛みが走り目を開くと、上からこちらの顔を覗いていた彼女と目が合う。

 

ち、近い、近い! そして柔らかい?

そして何故か? 自分の手は…… 彼女の胸を掴んでいた。

 

どうやら痛みで目が覚める瞬間、痛みで思わず手を上げた所で、掴んでしまったのでは…… 冷や汗が流れるを感じながら何とか自己分析する。

 

まだ、柔らかい感触が手の平に伝わってきている。

 

「いつまで掴んでいるつもりですか!」

 

「ごめん!!」

慌てて、掴んでいた手を離す。

 

「……それでは、もう意識はハッキリしましたね?」

彼女は射抜く様な視線を向けて来た。

 

「あなたは、本当に大馬鹿者です!」

「傷を隠してまで、どうして進もうとしたのですか?」

 

「君の足を引っ張る訳に行かないからかな?」

そう言いながら体を起こそうとする。

 

「……まだ起きてはいけません。しばらくの間は、こうして寝ていて下さい」

 

改めて自分の状況を確認すると、彼女に膝枕をしてもらっている自分がいた。

 

「……恥ずかしいですか? 私を心配させた報いです!」

「こうして子供のように、膝枕されながら恥ずかしい思いをしているといいです!」

顔を真っ赤にさせた彼女は、自分が気を失っている間、どうやらずっと膝枕をしてくれていた様子だった。

 

「本当に…… 心配したんです……」

消えるような小さな声が耳元に届いた。

 

「一時とはいえ、パートナーなんですから…… ちゃんと自覚を持ってください!」

 

「ごめん、心配させた。もう君に心配はかけない」

 

「本当に大丈夫ですか?」

「次に倒れる事があったら私は助けません。そのつもりでいて下さい」

 

「あぁ、分かった。気をつける」

 

「まったく、本当に人騒がせな人ですね。あなたは」

 

「でも本当に助かったよ。助けてくれてありがとう」

 

「……ッ 素直にお礼を言う人は嫌いではありません」

彼女はさらに顔を真っ赤にさせていた。

 

そんな可愛い彼女を見ていると普段、学園での態度は無理して自分を繕って、気を張っているのでは無いかと心配する。

 

機会があれば、ゆっくりと話をさせてもらえたらいいなと思いながら体を起こし、調査再開させようと洞窟の奥を目指す。

 

「あ! だから1人でいかないで下さい。私が先導しますから!」

後ろから慌てて彼女が走って来るのが見えた。

 

□□□

洞窟深部

 

「調査していないのはこの奥だけだな」

 

「ええ、河童のボスも此処にいると思われます」

「行きましょう」

奥に進むと予想していた通り、今までの魔物とは違う大型の河童と取り巻きの小型の河童がいた。

 

「素早い動きと爪には注意するんだ」

 

「あなたが、身をもって証明してくれた訳ですから十分に注意します」

 

「それを言われると痛いな……」

 

「それじゃ、前衛は任せた。 行くぞ! 雑魚は俺に任せろ」

バスターカノンを構え、グラビティシェルを雑魚の河童に向けて撃ち込む。

動きを止めれば、素早い動きも懐に入られる心配はない。

後は、次々にバスターカノンの砲撃で魔物を消滅させて行く。

 

そして急いで彼女の方を見ると、氷の魔法を駆使しボス相手に善戦しているのが見えた。

 

「こっちは片づいた! 動きを止めるから止めを!」

 

「お願い!」

彼女の返事を受け、バスターカノンからグラビティシェルを5個作り、魔物に向けて撃ち込み命中させる。

 

その瞬間を彼女は見逃さず、巨大な氷柱を魔物に向けて撃ち大型の魔物を串刺しにする!

貫かれた魔物の体には、大きな穴が空きそこから霧散していた。

 

「やったな!」

 

「ええ、これでまた私の評価はまた上がると思う…… だからでしょ? 私にボスを任せたのは!」

 

「ばれてたのか……」

彼女の評価を少しでも上げる事が出来ればと思い、ボスの相手は彼女に任せたのだった。

 

「でも…… 気を使わなくてもいいのに……」

「違うわね。こんな時は素直に礼を言うべきでした」

 

「……あ、ありがとう」

 

彼女は人と話すのが得意では無いのだろう。そして本当は優しい子なんだとその瞬間に思った

 

「調査の方は収穫が無かったけど、そろそろ時間だ。学園に帰ろう」

 

少しだけだが彼女の新たなる一面が見れ、距離も近くなった気がしたので個人的には収穫はあったクエストだも思った。

 

END

 

 

 




いつもお読みいただきありがとうございますm(__)m

本作品も書き初めて、後1ヶ月ほどで1年を迎えます。
個人的には、もっと話が進んでいる予定でしたが……
執筆の進捗が遅れ遅れて今に至ります。

今回はこの作品のオリ主は強くないぞ!を盛り込んであります。

2016/11/4 一部修正完了済み

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