私立グリモワール魔法学園~Another story   作:風飛の丘

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独自解釈、独自設定により原作を大切にされている方はご遠慮下さい。主人公はオリ主 不定期投稿
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。

では、どうぞー



グリモア第31話 火焔の誓約編

□□□

県道707号線

 

「そろそろ、富士山につくぞ。森が深いから迷っても知らねぇぞ…‥」

来栖焔がぶっきらぼうに言う。

 

「…‥」

 

「ああぁ、もう…‥ なんでついて来たんだよ。冗談じゃなくて本気で死ぬかもしれねぇんだぞ!」

 

「クエストは二人以上で受けるものだし、何よりお前の事が心配だからじゃないか!」

「従姉妹を見捨てる訳には行かない」

 

「うちの家族の問題だ! 他の誰にも関係ない」

「もう、あんたはここにいろ! 後はアタシが1人でやる」

 

「そうは行かない。絶対ついていくぞ」

ここに着くまで、何度も繰り返した会話をしていた。

 

「はぁ? だから死ぬかもしれないって! どうすんだよ!あんたは間違えても死んじゃいけない存在だろ?」

「アタシとは違うから…‥」

意地になっている焔の目をしっかり捉え、絶対ついて行く意思を声に出さずに伝える。

 

絶対、焔を死なせる訳には行かない!

 

「わ、分かったよ。クソ、意地になってる訳じゃねぇよ…‥」

「今日はあんたと二人きりで、敵がどれだけ強いかもわからねぇんだ。アタシ、一人であんたを守って戦えねぇんだ…‥ だから 一人で行く」

 

自分の知っている焔は優しい子だった。以前と違い、口はだいぶ悪くなっているが、自分の事を心配して言っている事が分かった。

 

■■■

 

「この盗聴器、優秀だなぁ。あっちの声がばっちり聞こえるぞ。こっちからも声も送れるんだっけかな?」

「いざって言う時には、使わせてもらうぜ」

メアリーは、無線をいじりながら操作方法を確認する。

 

「精鋭部隊から単独行動での死人を出す訳にはいかん」

「今回は特別に、本人の意思を尊重して単独でのクエスト続行が不可能と判断されるまで、私達は距離を取って進むぞ!」

エレンは決定事項を全員に伝える。

 

「納得行かないけど、分かったわよ」

「分かりました」

エレンの指示に精鋭部隊の守谷と我妻が返事をする。

 

 

□□□

「これまでもそうだけど、スカーフェイスはデバイスで追うことが出来ない。用心深くて衛星からのマーキングが出来ないんだ。一度、何かの目印を付けるとロストするまで逃げ回るらしい」

「あいつが人を襲うのは、無事逃げられるって確信出来る時だけだ」

「根気よく探すか、こっちが一見、無防備に見えるようにしないといけない」

「アンタと二人でこうしているのもそれだ。だから注意しろ! いつ襲って来るか…‥」

 

その時、魔物の咆哮が森全体に広がる。

 

「あ、現れやがった! スカーフェイスだ」

 

「下がってろよ!」

 

突然、森から現れた巨大な人型の魔物。目には傷痕が刻まれていた。

あの大きさ、纏う存在感からタイコンデロガ級に違いない…‥ 焔の両親が殺されてから約6年、それ以前から確認されているだけで10年。合計16年以上も存在している。もし同一固体ならタイコンデロガの中でも最上位になるかもしれない。

 

 

■■■

「あ!?」

メアリーが突然声を上げたと思ったら急に目をつぶり、耳を澄ませる。

 

「どうした?」

異変に気がついたエレンが声を掛ける。

 

「静かに!…‥ 何! 魔物が…‥ スカーフェイスが現れやがった!」

「くそっ! あの図体で、ここまで気配を消せるものなのかよ」

「テメーら、戦闘準備だ! タイコンデロガだと考えて行動しろよ」

「あいつらがヤバイ! 行くぞ」

メアリーが慌てて、戦闘準備を始める。

 

「待て! 来栖の動きを待つ。我々が動くのは、単独クエスト続行が不可能になってからだ!」

エレンは、尚も全員に待機の指示を出す。

 

「はぁ? エレン! 自分が何言ってるか? 分かってんのか! 放っといたらあいつが死んじまうだろうが!」

 

「焔を信じろ! あいつの訓練をいつも見ている私達が一番、分かっているはずだ! そう簡単にはやられない!」

 

「だからだ! アイツがスカーを倒せるはずがねぇ!」

メアリーはエレンに吠える。

 

「安易に助けに入れば、元の木阿弥だ! ここで焔には、一歩前に進んでもらわねばならん!」

 

「っくそ…‥ 見てるだけなのかよ!」

 

「自分の部下を信じろ! 一人で勝てないと分かったらやつは助けるを求める」

 

「…‥ッ。待機だ! 守谷、我妻! 今の聞いたな!」

 

「分かったわよ! でもヤバイと思ったら出るからね」

「ったく。少しぐらい頼りなさいよ…‥ 仲間じゃない…‥」

守谷は待機の命令に従いつつ、焔の単独行動に愚痴をこぼす。

 

□□□

 

「出たか…‥ その傷、間違えはしねぇ! よく覚えてるぞ!」

「テメェが! テメェがアタシの家族を殺したヤツだ!!」

「灰にしてやる!」

両手に炎を纏い、目の前に現れたスカーフェイスに向けて炎の塊を撃ち込む。

 

「死ね! 消えろ! …… ッ、 一発じゃビクともしねぇか?!」

「あんたはもっと離れてろ! 防御障壁もまともに張れないあんたは、アイツの一撃で死ぬぞ! もっと離れてろ!」

 

焔の言う通り一旦、距離を取りバスターカノンの準備をする。

「援護する!」

目の前のスカーフェイスに、集中している焔からは返事は無かったが攻撃を開始する。

 

まずは、クラビティシェルを展開して撃ち込む。

巨大なスカーフェイスには、簡単に当てる事が出来たが予想通り動きは止まらなかった。

 

「くっ、あの時で同じでやはり駄目か!」

以前、生徒会長と一緒に戦ったアースドラゴン型のタイコンデロガにも効かなかったので、もしかしたらと思っていたが…‥

焔に当たらない様に注意しながらタイミングを計り、砲撃に切り替えて攻撃を与える。

 

あの時と同じく地味に削るしかないか? あの時は3日間、戦い続けていて何とか倒せたのだが…‥ 焔の火力で倒せるか?

焔に高火力の魔法があれば…‥ または深淵(アビス)を使うしかないか? 駄目だ! 時間が掛かる上に、魔法を発動する前に攻撃をされたら、無防備に殴られてお終いだ。やはり削り切るしかないのか!?

 

考えている間にも焔は火球の魔法で、何度も攻撃しているが決定打にはほど遠かった。

 

□□□

 

幾度もスカーフェイスの巨大な腕の振り下ろしを回避しながら焔の攻撃は2時間を経過していた。

自分も援護で、魔力供給とバスターカノンの砲撃で、スカーフェイスの体の一部を削り取るが直ぐに再生されていた。無限の再生では無いと思うが…‥きりが無かった。

 

「まだだ!まだ動ける!」

焔は叫び、自身を鼓舞しながら戦う。

 

魔力供給により魔力の枯渇の疲労は消えても運動の疲労はどんどん蓄積されて行く…‥

 

「…‥ ぜぇ、ぜぇ… ぐ、クソッ! ちきしょう!」

「タイコンデロガっていったって、限度があるだろうがよ! なんで倒れねぇ」

 

「いい加減にくだばれぇー!」

今までの火球より、さらに大きい魔法を放つ。

「これでどうだ!!」

炎の中からスカーフェイスがほぼ無傷の状態で現れる。

 

疲労が蓄積されてきた焔は焦り始める。

その時、動きが鈍っていた焔は、遂にスカーフェイスのなぎ払ってきた腕に当たり、離れていた自分の所まで吹き飛ばされて来た。

 

「グッ! 体がバラバラになりそうだ…‥ クソッ 一人じゃ駄目なのか…‥ 勝てねぇのかよ…‥」

 

焔を抱え起こしながら彼女に言う。

「俺以外にも頼れる仲間がいるだろう!」

 

「…‥こんな自分を誰が助けるかよ…‥」

 

「いるだろう! それにアレを倒したく無いのか?」

 

「…‥」

「助けてくれ! アイツを倒す為、協力してくれー!」

 

「頼まれなくても、助けるに決まってるだろ」

焔の心からの叫びに答える。

 

「やっと言ったわね! 最初からそう言えば良いのに、私たち仲間でしょ!」

「ずっと隠れてるの大変だったんだからね! 浅梨、行くわよ!」

 

「はい! 焔先輩、よろしく輩お願いします!」

 

「!? な、なんで、てめぇらがいるんだよ」

焔は精鋭部隊の存在に気付いていない様子だった。

 

そして、盗聴器から焔の様子が危険だと感じて、守谷と我妻は先行して近くに待機していた様だった。

 

エレンからクエストに出る前、離れて待機する事を教えてもらい、メアリーからは盗聴器を渡されていたのだった。

 

「トドメはアンタに刺させて上げるからそれで納得しないよ!」

 

「焔先輩、私が盾になりますから! 攻撃に専念して下さい」

我妻が前衛で盾役を務めるべく、前に出て行く。

 

「馬鹿! アイツの攻撃力、見てただろう」

 

「大丈夫です。これでも私、始祖十家ですから!」

我妻は振り返らずに答え、スカーフェイスの攻撃を受け止める。

 

「待たせたな! 同じ部隊で魔物を倒したいと願ってる奴がいる! でもその魔物は超強ぇ。一人じゃ無理だ。だが全員で掛かればイケるかもしれねぇ!」

「それが助けに来た理由だ! 他に何か? 必要か!」

メアリーが銃でスカーフェイスを動き牽制しながら焔の近くまで駆け寄って来た。

 

「みんな来ていたのか…‥」

 

「テメェだけ、クエスト出てると勘違いしてたのか? 倒し漏らしたらどうすんだ」

当然、執行部から精鋭部隊にもクエストが発動されていた。

 

「今からアタイらが、魔物の動きを止めるからテメェはアレやれ!」

 

「アレ?」

 

「武田虎千代のホワイトプラズマだ!」

メアリーは簡単に言っているが、誰でも出来る魔法では無い。

 

「な! で、出来る訳が…‥」

 

「出来るかじゃねぇだろ? やるしかねぇんだよ! なーに心配すんな。 出来なかったら、そん時はアタイが奴を倒す!」

 

「ホワイトプラズマ…‥ 大量の魔力を放出することで、それをレザー化としてぶち込む…‥」

「自分を魔力が通り抜ける筒と考えて…‥ やってやる!

いままでずっとアイを倒す為に訓練して来たんだ!」

 

「銀河兄ちゃん。力を貸してくれ! 全力で魔力回して」

 

「不味い! ヤロー、人が増えて逃げ出す気だな! エレンが逃げ道をふさいでいるが、早めにケリをつけろ!」

メアリーが焔に叫ぶ。

 

「…‥魔力をギリギリまで溜め込んで…‥ 一気に! 消し飛べ-!!!」

焔の体が魔力により輝き、白い閃光が一直線に放出される。

 

逃げだそうとしていた、スカーフェイスの背中に大きな穴を空け貫いて行く!

スカーフェイスの原型が徐々に崩れて行き、遂に霧散していった。

 

「ヨッシャー! スカーの霧散を確認だ!」

メアリーの勝利の声が聞こえる。

 

焔の方を振り返るとその場で倒れていた。巨大な魔力を一気に放出した事で、そのまま昏睡した様だった。

 

□□□

「うぅ…‥ッ、痛ってー」

焔が意識を取り戻し、目を覚ます。

 

「ど、どうなった? アイツは? どうなった!!」

目が覚めたと思ったら、急に起き上がり辺りを見渡す。

 

「安心しなさい。ちゃんと倒したわよ。心配なら後で戦闘データでも見なさい」

傍で回復魔法もどきをかけていた守谷が教える。

 

「そ…‥ そうか…‥」

 

「ま、霧散した瞬間には気絶してたから実感ないかもだけどね」

 

「うっ…‥ う、う…‥」

焔は突然、泣き出した。

 

積年の怨嗟と一緒に涙が流れて行く。

 

□□□

 

「自分で歩けるか?」

 

「ば、ばかにしやがって歩けるよ!」

涙を拭きながら声を張り上げる。

 

「GOOD、テメーら撤収だ!」

メアリーの指示にしたがい、守谷と我妻は急いで、こちらに背を向け去って行った。

 

「銀河兄ちゃん…‥ ありがとう…‥」

耳元に小さな声が聞こえる。

 

「妹みたいなもんだから気にするな。兄として当然だ!ほら乗れ」

焔に背中を向けしゃがみこむ。

 

「こう言う時ぐらい、良いだろう? 昔みたいにさ」

 

「…‥ わ、わかったよ」

数年ぶりに背負ったが、昔同様に軽く暖かい温もりを感じた。

 

「後で、皆にもお礼言うんだぞ」

 

「あぁ…‥ 感謝している」

 

■■■

数日後

宍戸にある件で呼ばれ研究室に来ていた。

 

「例の件、分かったわ」

いくつか疑問を感じていた点があり、内密に宍戸に調査を依頼していたのだった。

 

宍戸曰く

焔の両親は盛山研究所で働いていた事。しかし子供が産まれたと言う事実は無かった。

彼女は試験管ベイビーだと判明した。盛山研究所は極秘で、人工的に強い兵士を作ろとしていたらしい。赤ん坊の頃から洗脳に近い教育を受けさせ育てる。魔法使いに覚醒しやすいように全て女性のみ。盛山研究所には記憶を植え付けられた、沢山の【魔物に家族を殺された少女】で溢れていたらしい。その中でも優秀な子、焔が研究員を勤めていた親戚の来栖家で英才教育を受けながら育てられる事になったが、何かの手違いにより両親は本当に魔物に殺されてしまったらしいが…‥ たぶん計画通りだと思われる。

そして予定通り、焔は魔法使いに覚醒して今に至る。

 

「これから気をつけ方がいいわ。彼女、魔物を倒した時に泣いたでしょ? 感情的を手に入れ過ぎた…‥ 弱い兵士は要らないから消されるわ」

 

「は?! 勝手に作って失敗作になったから殺すのか?!」

「そんな馬鹿げた話あるか!!」

 

「今すぐでは無いと思うけど…‥ 学園にいる間は手出し出来ないから安心して。私も出来る事はするから」

 

「頼む…‥ どの道、この件は焔に話せないからな…‥」

「調べてくれてありがとう。卒業するまでに、何とか出来る様に考えるよ」

 

研究室を後にしながら理不尽な事に怒りを感じていた。

 

              END

 




いつもお読みいただきありがとうございますm(__)m
今月で掲載して、足掛けか2年経過しました。
投稿ペースは早く無いですが話自体のペース上げて、本編を終了させたいと思います。

引き続きよろしくおねがいします。

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