私立グリモワール魔法学園~Another story   作:風飛の丘

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独自解釈、独自設定により原作を大切にされている方はご遠慮下さい。主人公はオリ主 不定期投稿
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。

メインストーリーは最終話【前編】です。
オリジナルのストーリーとは違う設定となっていますので予めご了承下さい。

ではどうぞ~



グリモア第36話 南半球編【前編】↓↓↓3/16番外whitedayを最下段UP

「間もなく南半球上空に接近します。ご注意下さい」

初音に用意してもらった飛行機のパイロットからアナウンスが流れる。

 

「ここが正念場じゃ。少年、準備は出来ているな!」

隣の席に座っている師匠(アイラ)から檄が飛ぶ。

 

「はい、大丈夫です! いよいよですね。ここまで辿り着くのは、長い様であっと言う間だった気がします」

 

ロンドンから香港に渡り、それから各国の魔法学園を飛び回りながら大量の魔物を討伐し続けた。また、それに合わせ各国が攻勢をかけたのが、3週間前の事だった。

国軍、PMC、各学園生徒達が中心となり、世界中の至る所で魔物に同時攻勢を開始。この南半球の方に、霧を送り込んでいるのであった。

 

「さて、そろそろ上陸じゃ。無事に降りられると良いな?」

 

「恐いこと言わないで下さい。作戦を開始します」

 

デバイスから降下準備をしているチームに連絡を入れる。

「間もなく着陸体勢に入ります。先行して滑走路の確保と周囲の警戒を頼みます」

今は誰も住んでいない、南半球に残された滑走路へ無事に着陸する為、先行で飛行出来るメンバー中心に降下してもらう作戦になっていたが……

 

「我慢した甲斐があったな。もう我慢の限界だ! 先に行かせてもらうぞ」

そう言って生天目つかさは、飛行機の後部ハッチから飛び降りって行ってしまった。彼女なら飛べなくても平気な気がするが…… 大丈夫なのだろうか?

 

「さて、生天目先輩だけ行かせる訳にも行かないッスから自分らも降ります。来栖先輩、また後で会いましょう」

服部梓が降りると、それに続く様に先遣隊が飛行機から降りて行く。窓から下を見ると、先に降りた梓は布を広げムササビの様に降りて行く姿が見え、その後ろに先遣隊が続いて降りて行った。

 

□□□

滑走路

「大分、滑走路が痛んでるッスね」

長年、使用されずに放置されている為、滑走路は至る所でひび割れや穴が空いていた。

 

「何とかするだろう。 我々は、我々の仕事をするぞ! 何体かタイコンデロガ級の魔物が上空から見えた。流石は南半球だ。心が躍るではないか!」

生天目つかさは、近寄って来た魔物を睨みながら戦闘体勢に入る。

 

「マジっすか?! これは、頑張るしか無いッスね」

服部梓も生天目つかさ同様に戦闘体勢に入る。

 

「暴れさせてもらう!」

魔物に向かって生天目つかさは突進して行った。

 

「まだ他のメンバーが降りて来ていないのに…… 仕方がないッス、辺りを撹乱しながら時間内を稼ぎますか……」

周辺の状況を確認しながら服部梓も突撃して行く。

 

「ふはは! 戦闘こそが、私の楽しめる娯楽。故に私は戦うのだ」

生天目つかさの肉体強化魔法は、パンチや蹴りであっても一撃で魔物を粉砕する。

 

タイコンデロガ級の魔物が生天目つかさの前に現れる。

 

「いいぞ、新しい技も試してみるか!」

 

そう言うと、タイコンデロガを囲む様に小型の魔方陣が幾つか展開される。

 

「では! ゆくぞっ!!」

肉体強化されている生天目つかさは、魔方陣に向かって勢いよくジャンプし、その魔方陣を足場にしながらさらに加速スピードを上げる。魔方陣に付与された加速魔法により、どんどんスピードが上がり、巨大なタイコンデロガの目の前まで、一気に辿り着く。

 

「覚悟しろ!!」

スピードを上乗せした状態で、魔物の頭を蹴る! 轟音と共に大型の魔物を一撃で吹き飛ばす。

 

「凄いッス…… 反則的な強さッスね……」

遠目に見ていた服部梓は驚きを隠せなかった。

 

□□□

「降下ポイントは確保ッス。降りて来て大丈夫ッスよ」

服部梓から上空に待機している本隊に連絡が届く。

 

「地上に降下しても大丈夫です! 滑走路の至る所に穴が空いてるので注意して下さい」

パイロットに降下を伝えると、頷き降下を開始する。

 

□□□

「何とか無事に着いた様じゃな。直ぐに準備に入るぞ!」

着陸してすぐに辺りを警戒していた師匠(アイラ)に言われる。

 

「分かりました。楯野、後はよろしく頼む」

これ以降は自分の魔法の準備がある為、任せる事になっていた。

 

「それじゃ、オペレーション【ラグナロク】開始だ!各チームは作戦通り!」

急遽、設置した簡易の司令部にいる楯野望からデバイスを通じて、全メンバーに指示が飛ぶ。

 

ロンドンの戦いの時に、初めて仲間達と実戦。それ以降も何度も実戦で試しながら作戦を詰めて行った。

 

□□□

偵察チーム

 

「次は私達の出番だね。みんな! 森が深いから注意して、あと魔物は倒す必要は無いから! それじゃ、行くよ」

ヤヨイロカを中心とした偵察チームは、この地に人が残っていないか? 敵勢力が居ないか? 大規模の魔法効果範囲内での探索及び魔物を集めて来るのが任務となっていった。

しかし目の前に広がる森は、霧の影響で木々が怪しく変形し、そして大きく育っていて見通しが悪い状況だった。

 

「こちらA班、人影及び怪しい建造物等は無いです」

二人組ずつ分かれ、各方面の探索が開始されていた。

 

「分かったよ。引き続き調査、よろしく」

チームリーダーのヤヨイに各方面から連絡が順次、届いて来る。

 

「他の所は順調っと……  私の所は…… 誰が通った形跡がある。巧妙に隠されてる?」

僅かながら足跡らしい物が見え隠れしていた。しかも視線を感じる。

 

「誰かに見られてる? レナ、分かるかな?」

森の奥のから視線を感じ、パートナーの相馬レナに聞いてみる。

「すん、すん。ニンゲンのニオイいする…… あっち?」

気配や足跡の痕跡は消せても、鼻の利く相馬レナは誤魔化せない様だった。

 

「こんな所に人か…… 作戦を邪魔しようとする勢力?」

「レナ、一旦隠れてから近づくよ。あと念の為、相手に怪我させないようにね」

急ぎ森に身を潜めながら相馬レナが教えてくれた方角へ向かう。

 

「レナ、まだいる?」

 

「すん、すん。このへん、いる」

 

木々の中に溶け込みながら辺りを見渡し気配を探る。

(見つからない…… 何者だろう?)

 

考えて事をしていると急にレナが近寄って来て、太い木の方を指を指す。

 

「レナ、任せた! 追いかけて捕まえるよ」

 

「うん」

レナは目標に向かって猛烈に駆け出す。

その瞬間、人影が現れたと思ったら森の奥に逃走して行く。

 

「逃がさないよ。これでどうだ!」

先回りしていたヤヨイロカの魔法のロープがどんどん伸びて行き、人影を絡め捕る。

 

「痛てて…… ドジったな……」

人影の方に近寄ってみると、見覚えのある姿の人が横たわっていた。

 

「お父さん?! 何でここにいるの? 政府からこのエリアには、立ち入り禁止が出ているでしょ!」

冒険家のアンドリュー・ロカだった。

 

「ヤヨイか? 腕を上げたな! まさか捕まるとは…… それでヤヨイは、なんでここに居るんだ?」

 

「逆にこっちが聞きたいよ!!」

どうやらアンドリュー・ロカは立ち入り禁止命令が出る少し前に森に入り、魔物の動向と植物の生態を調べに来ていたらしい。

 

「作戦行動中で、このまま帰す訳にも行かないから父さんも手伝って」

「探索終了後、魔物引き連れながら逃げるから!」

 

「分かった。それぐらいなら俺でも手伝えるな」

 

□□□

上空チーム

 

「魔法範囲外、地上半径3㎞ほど大型の魔物はいないわ」

空からの偵察兼迎撃チームリーダーの立華卯衣から連絡が司令部へ届く。

 

「分かりました。そのまま偵察を継続して…… 前方に多数の魔物が出現、接近して来ます!!」

司令部のスタッフから指示が来る。

 

 

「前方に…… 敵影300発見。迎撃に移るわ」

立華卯衣は鳥型の魔物の姿が見えると、瞬時に魔物の数を計算する。

 

「少し多いわね…… 接触する前に少しでも数を減らしましょう」

朱鷺坂チサトが魔法の詠唱を開始する。周りに黄金色の魔方陣が多数出現する。

 

アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル。Photon Lancer Phalanx Shift 撃ち砕け!

 

無数の雷槍が魔物に向かって、高速で撃ち込まれ次々に魔物が霧散して行く。

 

「もう次は撃てないわよ。魔力の大半以上を使ったから」

 

「後は任せて」

立華卯衣の魔力で形成されている白い羽が光り出すとそのまま魔物の群れに突撃する。

光り輝く羽が触れた瞬間、魔物は真っ二つ切られ霧散して行く。それを何度か繰り返し続け魔物のほとんどが霧散していった。

 

「各員、残りを殲滅します」

立華卯衣から空戦チームに指示が伝えられ、残りを殲滅して行く。

 

□□□

護衛チーム

 

森から少し離れた場所にある平原に陣取り、近付いて来る魔物を撃破していた。

 

「少年、そろそろ魔法の準備をしろ。魔物の動きが活発になって来ているらしい」

師匠(アイラ)から合図が出される。

 

「分かりました。皆、魔法発動するから近寄ら無いように注意して下さい!」

魔力で形成しているバスターカノンの銃口に向け魔力を集め始める。

 

アビス(深淵)

魔法名を唱え、さらに集中する。黒い球体が次第に大きくなって行く。

 

「少年が魔法の準備に入った。これから30分間、魔物を近づけるではないぞ!」

東雲アイラが護衛チームに指示する。

 

「早速、現れよったか!」

5体の魔物が森の方から現れ、近付いて来る。

 

「神凪、頼むぞ! 魔力切れには注意するんじゃ。いつもの様に魔力壌渡は無いぞ」

 

「分かった。ここは、我々に任せてもらう!」

みんな、作戦通り戦闘はいつも通りた! スリーマンセルで確実に1体づつ倒せば大丈夫だ! 智花、夏海、行くぞ!」

3人1組のチームがそれぞれ防衛線から前に進み、魔物が進軍して来る方角へ向かって行く。

 

□□□

司令部

生徒会中心に、各チームリーダーより状況報告が届き次第、情報をまとめていた。またその横では作戦全体を指揮、管理する宍戸結希と楯野望達がいた。

 

「今の所、予定通りだな。このまま何も無ければ良いけど……」

楯野望は幾分、緊張していた。

 

「あなたも今の内、休んでもいいわ。本番はこれからよ」

魔力濃度が高いこの地では、楯野望にはキツいと思い声を掛ける。

 

「分かってる。無理はしない。無理な時はすぐに休む」

「転校生の方は大丈夫なのか? そろそろ魔物が気付いてもおかしく無い頃だと思うけど……」

この場に居ない来栖銀河がいるエリアマップを覗く。

 

「まだ、大丈夫。魔物が数体ほど来栖君の所に向かっているけど、護衛チームで対処出来る範囲だわ」

 

「そっか、ならいい。少しだけ…… 20分ほど休む」

 

□□□

各チーム

「各メンバーは、最終フェーズに移行して頂戴」

司令部の宍戸結希から伝達される。

 

「分かったわ」

「了解した」

「承知ッス」

各チームリーダーから応答が届く。最終フェーズは戦闘領域に出ている全員で魔物を引き付けながら来栖銀河の元に連れて来ることだった。

 

「遅くなった。宍戸、どうなってる?」

短い休憩を取り幾分、回復した楯野望が戻って来た。

 

「平気。今、最終フェーズに入ったわ」

 

「うん。分かった…… 少しロカの所が早いか? ロカ、5分ほど調整してくれ」

戻って来るなりエリアマップを見ながら指示を出して行く。

 

「分かったよ。でも、こんなに沢山いるから上手くいくか分かんないよ?」

エリアマップで敵を示す赤いマークは、どんどん増え続けていた。

 

「先頭集団に攻撃魔法を。頭を抑えれば少しは遅くなるはず」

 

「やってみる!」

 

□□□

各方面から敵を引き連れてながら各リーダー達が戻って来た。

クロスポイントに大量の魔物が集結されて行く。

 

「皆、待たせた! 完成だ!」

アビス(深淵)魔法により、黒い球体がどんどん大きくなり続け最終的に500mほどの球体になっていた。

 

「撃ちます!」

最後の戦いになるように祈りを込め撃つ。

コントロールされた黒い球体が、クロスポイントに集められ、押し寄せて来る魔物を吸い込んで行く。

 

 

「来栖君。そのまま左に100m移動させて」

「次は右に50m移動してそのまま直進!」

上空の魔物を全滅させた朱鷺坂チサトと魔法で 感覚同調(シンクロ)」していた。

感覚の一部を共有できる魔法で、今回は視覚を同調してチサトが空から見ている物が自分にも見えていたが、チサトはあえてデバイスを通じて同時に連絡している。

 

危険な魔法に誰も巻き込まれないように、細心の注意を払っていた。

 

アビス(深淵)の魔法は黒い球体が大き過ぎて、自分の位置からだと全く周辺が見えず、それをコントロールする為、移動速度も遅い。

それを補う為、魔物を一カ所に集めたり上空から魔物の位置を確認したり、全員で足りない部分を補っているのであった。

そのお陰で周辺にいる魔物は、全て異次元の空間に送り込む事が出来た。

 

□□□

「空から見える範囲では、魔物は居ないようだわ」

上空にいるチサトから連絡が入る。

 

「理解! そろそろ、こっちも限界時間だ」

アビス(深淵)には30分間の持続時間があり、それを過ぎると消えて無くなるのだった。

 

「司令部より、各員に連絡。各チームリーダーは引き続き魔物の残党が残って無いか? 周辺を確認。見つけ次第、撃破して」

宍戸から指示が届き、各チームリーダー中心に東西南北へ移動を開始する。

 

デバイスの画面で戦況を確認しようと思った瞬間、地面が大きく揺れる。

「結構、デカいな。こんなタイミングで……」

イレギュラーが起きなければいいなと思う。

 

「来栖君。森の中心部に山みたいの現れてる! 山? じゃない? 動いてる? 跳ねる鼓動の様に……」

立華卯衣から連絡届く。

 

「転校生、立華が言っているのは山じゃ無い! 魔物の反応がある。デカ過ぎだろう……」

楯野望から慌てて連絡が来る。

 

「それは、もしかして魔物の心臓では? 確かもう一人の僕がそんな事を調べ、資料を残していたはずだ」

「魔物の元凶…… 本体と言うべき存在らしい」

司令部にいる遊佐鳴子から驚きの話を聞かされる。

 

 

「それが本当なら倒すしかないわ。各チームリーダーは残敵を排除しながら目標ポイントへ移動して」

宍戸結希から最終の指示が届く。

 

「よし、我々も移動じゃ。護衛チームもそのまま付いて来い。最後の戦いになるはずじゃ。少年、行くぞ!」

 

□□□

心臓付近

 

「しかし…… 間近で見ると本当に山のようじゃのう。我らが一番乗りなのか?」

師匠が疑問に感じてる様子だった。それも、そのはず他のチームは先に着いてるはずだった。

 

「司令部、どうなってるんじゃ?!」

 

「くっ! 各チームの前にタイコンデロガが出現して、足止めされてるわ。貴方達に心臓は任せるわ」

師匠の問いに、宍戸結希が的確に答える。

 

「少年、ここで決着をつけるぞ! お前達も気合いれてるんじゃ!」

師匠が護衛チーム気合いを入れる。

 

              END

 




いつもお読みいただきありがとうございます。
次回で最終話【後編】を投稿する予定です。
書き始めて、2年半近くなって来たのと時間が取れなくなって来たので、メインストーリーは完結します。

今より亀更新になりますが、番外編を中心に投稿は続けて行きますのでよろしくお願いします。

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