私立グリモワール魔法学園~Another story 作:風飛の丘
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。
次回の投稿予定は後書きで。
今年もこのイベント時期がやってきました。
今回の番外編クリスマスは彼女に決めました。
では、どうぞ~
12月に入り、本格的に寒さが到来しようとしていた。小さな雪が舞い降る日もあったが、今年はまだ雪は積もっていなかった。
クリスマスはもう間近、ホワイトクリスマスになればいいなと思っていた。
しかし、その前にやるべき事をしないと始まらないな…‥
その想いを胸に、足は図書館に向かっていた。
図書館の受付は…‥ ちょうど今は一人だけ、チャンスだった。腰まである長い髪をおさげにして、細い赤いリボン付けている霧塚萌木の姿が見えた。
「…‥吐息すら感じられる二人の距離、二人は熱い、く、く、くちずけを…‥ ふぁっ! く、来栖君…‥ いつからそこに! な、何か御用でしょうか?」
「萌木、今、ちょっといいか?」
相変わらず本を読んでる時は、周りに気がつかないな…‥ しかも声に出てたぞ…‥ まぁ、そこも可愛い所でもあるんだけど…‥
「本を借りに来た訳では、ないんだ…‥」
「来週のクリスマスイブ、日曜日だろう? まだ予定が入っていなければ俺と出掛けないか?」
「え、えぇぇ! わ、私ですか?! 私、本の事しか知らないし…‥ モブっぽいし…‥ 一緒に出掛けても、きっと楽しく無いですよ!」
全力で断られてしまったが、ここで引き下がる訳にはいかない。
「俺は萌木と話をしていて、つまらないと思った事はないぞ? それにせっかくのクリスマスだし、楽しく無いって事は無いだろう。駄目かな?」
「そ、そうですね…… 特に予定は無いですけど……」
「分かりました。来栖君さえ良ければ、わ、私は大丈夫です」
「なら良かった。当日の予定は後でメールするよ。楽しみにしている」
何とか萌木を誘う事が出来た。後は当日まで、デートプランを考えないとな…‥ 出来たら告白までしたいと考えていた。
□□□
クリスマスイブ当日
残念ながら雪は降らなかったが、晴れて空が透き通っていた。12月にしては暖かく外を歩くには、最適の日になった。
待ち合わせの場所で待っていると、遠くに萌木姿が見えた。
白のワンピース姿に、赤いハーフコートで身を包みこんでいた。
「ご、ごめんなさい。お待たせしました。どんな服装が良いか悩んで…‥ サンタクロースぽい感じにして見ました」
「うんうん。凄く似合っていて可愛いいよ」
「あ、ありがとうございます」
顔を赤くした萌木が笑顔で答える。
「それじゃ、風飛市まで来たんだから色々と見て回ろう」
□□□
市内はクリスマスイブと言う事もあり、凄い人混みだったが、綺麗なイルミネーションが飾られ、彩鮮やかに輝いてとても綺麗だった。
特に大広場には、巨大なクリスマスツリーが飾られていたので、見上げるように見てまわる。
「このクリスマスツリーの飾り凄いな~ 近くで見るとさらに大きいぞ」
後ろを振り向き、萌木に話かけるが…… あれ? 居ない?! どこだ? 急いで辺りを見渡す。
人混みに流れに逆らえず、遠くに流されて行く萌木の姿が見えた。
「萌木、今行く!」
見失わない様に、大声で呼び掛けると萌木は手を上げて答える。
何とか人の流れに逆らいながら、萌木の手を掴む事が出来た。
「ご、ごめんなさい。イルミネーション見てたら、人の波に逆らえなくて…‥ 鈍くてすみません…‥」
「この人混みだから気にする事は無いよ」
「迷惑かけてしまって…… あ、手…‥」
助ける時に思わず手を掴んで、そのままだったが…‥
「はぐれないように、このまま手を繋いでていいか?」
手を離したくなくて…… 思い切って言ってみた。
「く、来栖君さえ良ければ…‥ ちょっと照れますが、またはぐれてしまっても大変なので…‥」
消えそうなぐらい、小さな声だったがOKの返事をもらえた。
「もう少し見て回ったら場所変えよう」
流石に、ここまで混雑するのは予想外だった。恐るべしクリスマス。でもお陰で手をつなぐ事が出来たので、結果は良しだ。
□□□
バス停
「しかし凄い人混みだったね。萌木、大丈夫か?」
人の多い所が苦手な萌木は、かなり疲労しているように見えた。
「な、なんとか…‥ せっかくのクリスマスですし、頑張ります」
「そうか…‥ でも、もう少し人が少ない所に移動しよう。このバスに乗って移動だ」
念の為、もう一つ考えていたデートコースがあるので、そちらに変更する事にした。
「こめんなさい。わたしの為に、わざわざ…‥」
「気にしないで。行って見ると楽しいと思うから」
□□□
浜辺
「さぁ、着いたよ。海風で少し寒いと思うけど」
バス停から少し歩くとそこは浜辺になっていた。冬の寒さに加え、冷たい風が吹いていたが砂浜には沢山のイルミネーションが飾られていた。
「市内のイルミネーションも綺麗だけど、ここも穴場としてはいい感じだろう?」
「はい、凄いですよ! あの飾りなんかは、北斗十字星でよね? あそこにあるイルミネーションは宇宙をイメージしているのかな?!」
「来栖君、来栖君! あれ見て下さい。あのイルミネーション、童話に出て来るお城にそっくりです!」
一気にテンションが高くなった萌木を横目に見ながら、喜んでもらえたので自分も嬉しくなってきた。
その後も動物や建物、星座をモチーフした飾りやイルミネーションなど色々と見て回り楽しんで行った。
「ちょっと遅くなったけどお昼にしよう。この先に面白い所があるんだ」
「あれですか? 普通の家ぽい感じですね」
確かにぱっと見は、普通の家にしか見えないお店だったが……
店の入口にはクリスマスツリーが飾られていて、中に入るとタペストリー、暖炉、テーブルなど全てが童話の世界に出て来るようなメルヘンな作りなっていた。また本棚もあり、そこには色々な本が置かれていた。
外見こそ普通だが、店内は童話に出てきそうな一軒家を感じさせる作りなっているお店だった。
「ふぁー 素敵なお店ですねぇ。本の品揃えも良いと思います」
「私、ここにずっと居たかも…‥」
流石にそれは勘弁してくれ! まだ行く所もあるし…… 内心、冷汗をかいた。
お昼に頼んだ料理も童話の雰囲気を感じさせられる品々だった。カボチャの中に入っているスープ、ピタパン、サラダ、宝石の形をしたデザートがセットのランチだった。
萌木がお勧めする本の話などを中心に会話しながら、楽しく食事していた。
そして、頃合いを見て切り出す。
「萌木、メリークリスマス。実はクリスマスプレゼントがあるんだ。これを……」
「はい。メリークリスマスです」
「あ、ありがとうこざます。開けて見てもいいですか?」
「たいした物では無いけど色々、考えて決めたんだ」
萌木は、袋からラッピングされた小箱を取り出し、包みを解く。中から出て来たのは白鳥と様々な星座が描かれた厚手のブックカバーだった。
「とても可愛くて素敵です。ありがとうございます」
「暗い所だと星座がうっすらと光るから寮に帰ったら試して見るといいよ」
「はい、大切に使います! それと、こ、これは私からのプレゼントです」
先程とは逆に、今度は自分がプレゼントを開けて見る。中には赤色の手袋が入っていた。
「ちょっと形が変かも知れませんが、頑張って編んでみました。せび、使って下さい」
嬉しい事に、手編みの手袋をもらう事が出来た。
□□□
プレゼント交換した後、再び浜辺に戻り散策しながらクリスマスの雰囲気を楽しんで行った。
しかし楽しい時間は、あっという間に過ぎて行き陽が海に落ちようとしていた。
「最後に見せたい場所があるけどいいかな?」
「はい、時間は大丈夫です」
萌木を連れて近くの灯台へ向かう。この灯台は一般人でも気軽に入る事が出来て、上の方は展望台になっていた。
「これは…‥ とても 素敵です……」
展望台に着き、地上で見ていたイルミネーションを上から見下ろす事が出来る。先程までとは、また一味違うイルミネーションの光を見る事が出来た。
「あれは? なんでしょうか?」
萌木が見つめる転落防止の為の柵には、様々な南京錠が取り付けられていた。
「萌木、大事な話があるんだ。これを……」
予め用意していた小さくて可愛いサンタクロースが描かれた南京錠を渡す。
「こ、これは…… もしや、 伝説の恋人同士に伝わるあれですか?!」
「伝説はどうか? は別として…… ずっと前から萌木の事が好きなんだ。俺と付き合って欲しい」
「そして、もしOKなら一緒にその柵に南京錠を付けて欲しい」
この場所は、恋人同士が二人で南京錠に鍵を掛けると永遠の愛が続くと言われていた。
「わ、わたしなんかで、良いのですか? 人付き合いも苦手で…… 運動音痴で可愛くないですし……」
「萌木がいいんだ。 優しくて思いやりのある人だと思ってる。何より好きな本の話をする時の表情は、すごく素敵だと思ってる」
「そ、そんな事を言われたのは、初めてです…… わ、わたしなんかで良ければ…… 私も、もっと来栖君と仲良くなれたらいいなと前から思ってました!」
「……私だけの王子様になって下さい」
「もちろんだよ。じゃぁ、萌木は俺だけのお姫様になって欲しい」
「ひゃい」 「は、はい!」
緊張しているのか? ちょと噛んでしまった彼女が可愛いかった。
「この鍵を一緒に取付けよう」
二人で一緒に南京錠を持ちながら……
「カチャリ」
彼女との愛に永遠の鍵を掛ける。
お互い無言で見つめ合う…… 彼女の腰に手を回し、抱き寄せる。寒さがそう感じさせるのか? それとも自分が緊張しているせいなのか? 抱き寄せた彼女はとても暖かかった。そしてお互い見つめ合い、ゆっくりと目を閉じた彼女の唇にキスをする。
「大好き、ずっと一緒だ」
「はい。私も大好きです」
萌木の顔を見ると真っ赤になっていた。そんな彼女を愛おしく感じる。
「もう一つ、クリスマスプレゼントがあるんだ。空を見て、十字架が見える」
日中、晴れていたお陰で夜空には、輝く満天の星空が広がっていた。
「あの十字星は、白鳥座ですね。冬を代表する星座…… 大きな翼を広げて天空を舞う白鳥は綺麗ですね」
流石、物知りな彼女は星座を見ただけで理解した。
「本物の十字架のアクセサリーより、萌木ならこっちの方が喜んでもらえると思ったんだ」
「はい、とても素敵なプレゼントです。なるほど、それでブックカバーにも白鳥座が描かれているですね」
ちょっと嗜好を凝らしてみたプレゼントだったけど、萌木は気づいてくれたようだった。
「来栖君は星座、好きなんですか?」
「好きだよ。うちの両親は天文に関わる仕事してるし、ほら俺の名前も銀河って言うくらいだしね。子供頃から身近に星座や惑星の資料が沢山あって、気付いたら好きになっていたんだ」
「そうだ! 今度、天体望遠鏡を持って星座を見に行こう」
「はい。楽しみにしてます」
「あ、流れ星です! 願い事を!」
萌木は急いで目を閉じ両手を組み、何かをお願いしているようだった。
「何をお願いしたの?」
「えへへ。銀河君とずっと幸せでいられる様にと……」
初めて名前で呼ばれ、改めて萌木が彼女になった実感が湧いて来た。
「ありがとう。とても嬉しいよ」
星に願い事をしたし、愛の鍵も掛けた。萌木の言う通り、ずっとこの幸せが続けばいいなと思いながら最後のプレゼントをする事に決めた。
「萌木、ちょっといいか?」
「え?! きゃぁ」
小さく悲鳴を上げた原因は、急に彼女を抱きかかえたのだった。
所謂、お姫様抱っこをしたのだった。
「王子様なら当然だろう」
「えっと、はい…… 夢のようです」
萌木の顔が近くにあり、吐息さえ感じられる…… そして熱い口づけをしながら二人で幸せを感じていた。
END
いつもお読みいただき、ありがとうございますm(__)m
クリスマス番外編を投稿しました。クリスマス編は、これで三回目の投稿でした。
いろんな女の子の話も書きたいですが…… 口調に特徴ある女の子は書き難いです(T_T)
さて、次回の予定は番外編の正月です。間に合えば正月編の後すぐ位にコラボ編を投稿予定です。コラボ編は、完成出来たらいいな……