私立グリモワール魔法学園~Another story 作:風飛の丘
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。
多忙で投稿が出来ていませんでした! 久々なので練習も兼ねて、梅雨が近いので番外編を投稿します
1話限定恋物語の番外編
短めですがどうぞ~
雨の匂いが感じられる季節になって来ていた。
個人的に雨が降った時の独特の匂いは好きだった。
そして今日は、授業が終わる辺りから雨が降り出していた。
さて、傘は持っていなかったな…… もう寮に帰るだけなので、そんな日は敢えて傘を差さずに帰る事が多かった。
理由は、雨と一体化出来る気がするのとワクワクしてくる事、そして雨の音、匂いがよりはっきり伝わって来るからだった。
勿論、濡れるのは気にしなかった。
行くか…… 雨の中に足を踏み出そうすると後ろから声を掛けられる。
「来栖君。今から帰る所なの? あれ傘は?」
声を掛けて来たのは南智花だった。学園に入学して最初に学園を案内してくれた人だった。あれから半年が過ぎ仲良く話をしている内に、どんどん好きになっていた人でもあったが、想いは伝えていなかった。
告白して上手く行かなかったり、話が出来なくなったりしたら…… 怖くて…… 単なるヘタレだった。
「傘、忘れて走って帰ろうかなと思ってた所だよ」
変な人だと思われない様にしないと…… 傘持ってても差さずに帰ったと思うしな……
「一緒に帰りますか? 寮に戻るだけなら一緒だし」
彼女から嬉しい申し出があった。願ったりかなったりだった。
「……あぁ、それなら逆にお願いするよ。いいかな?」
「うん」
彼女は笑顔でOKしてくれた。その笑顔に、一瞬ドキッとさせられる。
「傘を貸して」
智花から赤い色の傘を借りて広げ、二人で寮に向かって歩き出す。
所謂、相合い傘で照れくさかったが、凄く嬉しかった。
その帰り道、いつもと変わらない世間話をしていたが、頭の片隅では別な事を考えていた。
自分の左側には、智花の肩が触れるぐらい近い距離にあり、あと少し手を伸ばせば、手を繋げるかな……
しかし左手には傘を差しているのでそれは無理だった。
勇気出して! ってそれ以前の問題だ。
いつか智花と手を繋いで帰れる日は来るのだろうか……
「ありがとう。助かった」
寮の前に到着する。ゆっくり歩いて来たつもりだったが、時が流れるのはあっと言う間だった。
「少し濡れちゃったね」
一人用の傘なので当然だったが、悪い事をしてしまった。
「ごめん。俺のせいで智花も濡れてしまって……」
「ううん。大丈夫だよ」
「それじゃ、またね。今度は傘を忘れない様にね」
手を振りながら智花は女子寮の方へ向かっていった。
□□□
雨の日
翌日も夕立の雨が降っていた。
偶然は二度も続かず、今日は彼女の声は聞こえなかった。
いつも通り傘を差さず、雨の中に足を運ぶ。水溜りの弾ける音、雨の滴る音そして独特の香りを楽しみながら寮に向かって歩き出す。そして彼女の事を考える。
いつか勇気を出して告白できる日が来るのだろうか? それともこの楽しい関係を壊さない為にも、心の中だけで想い続けた方がいいのか……
彼女が誰かと付き合うのを想像すると胸が苦しくなる。もし彼女に好きな相手がいるなら、その人にはすでに付き合っている人が居ればいいのに…… など考えられずにはいられない程に好きになっていた。
「駄目だな…… こんな事を考える様じゃ……」
明日は土曜で学園は休みだ。気分転換に市内に出掛けようと思った。
□□□
風飛市
バスで揺られながら風飛市に着いた。当ても無いので、気ままに散策しようと思っていた。
いつくかの店舗を外から眺めながら時間を潰して行く。
「来栖君?」
急に声を掛けられる。
声をする方を振り向くと智花がいた。
「やっぱり来栖君だった。今日は何か? 用があって来たの?」
「と、特に目的があって来た訳じゃないよ」
智花の事で、頭の中を整理しようとは言えなかった。
「智花はどうしたの?」
「本格的に梅雨が始まりそうだから新しい傘でも買おうかなっと思って来たの」
「そうだ。来栖君も一緒にどうかな? いつも傘を差さずに帰ってるよね?」
ヤバイ、見られてた…… 変な人だと思われてる?
「う、うん。一緒に見に行こうかな?」
「それじゃ、すぐそこに傘を売ってる店あるから一緒に行きましょう」
彼女の案内で傘の専門店に入り、中を見て回る。
様々な色、模様が入った傘が所狭しに並んでいた。
「これ、面白いぞ」
「どれどれ? あ、可愛い~」
サニーレタス? 型の折りたたみ式の傘だった。広げると中心部が白くなっていて、レタスのシワシワ感もしっかり出ているユニーク傘だった。
その他にも見てるだけでも楽しい傘がたくさんあった。
「これ似合うかな?」
智花が青色の傘を広げて見せる。ワンポイントで小さく猫がプリントされているシンプルな傘だった。
「うん。似合ってるよ」
「良かった。私はこれにするね。来栖君はどれにするか決まった?」
「うーん。どうしようかな……」
傘にこだわりは無く、どうしたものか?と考える。
「来栖君、あまり傘は好きじゃないのかな? さっきも言ったけど傘差さずにいること多いよね」
「そんな事は…… あるかも……」
「そっか…… ならあれならどうかな? ちょと来て」
上の階に移動してとあるコーナーに連れて来られる。
「これならどうかな? 似合うと思うよ」
智花が指を指したのはレインコートだった。いわゆるポンチョだった。なるぼど、こんな物もあるのか! これなら雨の日、傘が無くても平気だった。
「これにするよ。智花が選んでくれたし」
黒で長めのレインコートを選んで買う事を決めた。
□□□
二人で傘を購入して外に出ようとすると、いつの間にか雨が降っていた。
「来栖君、私の傘に入って。せっかくなので今買った傘をつかちゃいます!」
智花はそう言って傘を広げると、店内で見た時より大きなサイズの傘だった。不思議に思い聞いてみる。
「うん。大きいから濡れないよ」
なる程、納得だ。
先日の様に、智花から傘を受け取り二人で相合い傘をしながらバス停を目指が、時間と共に雨が次第に強くなって来た。
「一旦、あそこに避難しよう」
智花を誘導しながら近くに見えた公園の休憩スペースに逃げ込む。屋根もありドリンクの自動販売機もあるしかっりとした休憩所だった。
「凄い夕立だ。一気に降って来たぞ」
「うん。急だったね。傘あっても無理だよ」
「智花、濡れただろう。これ使って」
先程の店でレインコートと一緒にタオルも購入していたのだった。
「ありがとう。来栖君はいつも優しいね」
ベンチに座り智花はタオルで濡れた服や荷物を拭いて行く。
胸の音が高鳴る…… やっぱり智花は可愛いし、好きだなと想った。
好きって言いたい…… 俺の彼女になって欲しい……
智花の事で頭がいっぱいになる……
自然と手が伸びて、智花の頬に触れる。
「俺じゃ、駄目ですか? どんどん好きになって行く……」
お互い沈黙する。
俺、今何を言った?! 声に出た?! しかも頬に触れなかったか?
想い過ぎて何を急に……
「い、今のは違う!」
あたふたしてしまう。
智花も顔を赤くして、うつむいてしまった。
ヤバイ、言うつもり無かったのに! これで終わりになるのか! 明日から話をする事も出来なくなるのか?! とにかく謝らないと……
「ごめん、急に触ってしまって……」
「う、うん。驚いた。でも嬉しかったよ」
「私も来栖君のこと、好きです!」
赤くした顔を上げて、智花は俺の想いに答えてくれた。
「い、いいの? 俺なんかで?」
「自分で好きって言っておいて…… 来栖君がいいの! 私もずっと前から好きでした」
「良かった…… これからよろしく」
「うん。私こそ、よろしくお願いします」
ちょうど雨も小降りになって来た。門限もあるので帰ろうと智花を促す。
先程と同じく、相合い傘をしながら雨の中を歩いて行く。自分の左手には傘があり、すぐ傍には智花の小さな手があるが、見つめるだけで手に取る事が出来なかった…… すると突然、智花が更に近寄って来て、傘を持っている腕に手を回し腕を組んで来た。
「手を繋ぐ代わりに、これならいいかな? 彼女になった訳ですし…… いいですよね?」
「うん」
考えている事は、どうやら同じだった。
「ありがとう。あと忘れてた事が……」
傘を深く差し、腕を組んで近寄っていた彼女の顔に自分の顔を近付ける。そして思い切ってキスをした。
彼女は今まで以上に、顔を真っ赤にさせて言う。
「そんな事に使う為に、大きい傘を買った訳じゃないんだから……」
後で聞いた話しだが、また俺と一緒に相合い傘した時に二人とも濡れない様にと、大きい傘を選んだらしい。彼女らしい優しさだった。
雨の中、一人で歩くのも好きだが、好きな人と相合い傘が出来る雨の日も好きになっていた。
雨の日は、やっぱり素敵な日だった。
END
いつもお読みいただきありがとう御座います。
今回は1日で無理矢理、投稿したので変だったらごめんなさいです。
多忙で、掲載出来ていませんが、何とか頑張って行きますのでよろしくお願いしますm(_ _)m