絶対、こんな感じで付き合ってる恋人っているはずなんっすよ。
何となく好きだなと思って、何となく付き合って、なんとなく結婚したり、もしくは別れたりする、そんな恋人たちが。

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恋人関係になるにあたって、全部が全部くっだらねぇドラマみたいなことがあると思うんじゃねぇぞ。

 とある少年の部屋。その家には部屋の主である少年と少年の幼馴染である少女しかいなかった。少女は隣家に住んでおり、幼い頃からずっと兄妹のような関係と立ち位置を築いていた。

 二人とも一人っ子として生まれて来ており、両親が共働き。小学校から帰っても両親はおらず、お互いの孤独を埋め合うようにしていつも二人っきりで遊んでいた。お互いに活発な方ではあったが、人見知りしがちな面もあるせいで友達は少ない方だった。そのせいか、二人の関係は他の誰よりも深く濃く強いものだった。

 しかし、その関係が友情以上のものになることはなかった。お互いにその関係を壊すのが怖く、踏みきれなかったのだ。逆に言えばどちらかが一歩、踏み込めが進展するような関係だった。そしてまた、その一歩を踏み出すチャンスが生まれていた。

「……はぁ、はぁ」

 少女は仄かに顔を赤らめている。息は少し荒くなっており、体をもじもじと動かしている。対して暑くないはずなのに発汗は激しく、意識は若干朦朧としている。

「体の調子はどうだ?」

 くくっ、と罠に嵌ったか弱い野生動物を見るような目で少年は少女に問う。小さく、不敵に笑って粉状の薬を見せる。

「……あんた、まさか」

「ああ、薬を盛ったんだ。大人しくさせる為にな」

「どうして、そんな、こと」

「もう、我慢できないんだよ。このまま放っておくなんて、俺には出来ない」

「そんな……、どうして」

 裏切られたような表情の少女を見て、しかし少年は逆に怒りを発露する。

「いいからくだらないことしてないで、薬飲んでさっさと寝ろ! 学校サボりてぇからってインフルなのに薬飲まずに悪化させてんじゃねぇよ!」

 別に体が熱くなってナニかが欲しくなる薬を飲ませた訳ではない。そもそもそんな発想をするような人間はいないはずだが、念の為に補足せざるを得ない。

「あんただってくだらないことにノッてたじゃないの! それにあんたも学校サボりたいから私の面倒見る癖にマスクも何もしてないじゃないの!」

「俺のインフルがお前に伝染ったんだろうが! だったら俺には抗体持ってんだから大丈夫なんだよ! お前、もう2週間だぞ? 授業付いていけんのか?」

「え? いや、私あんたと一緒の学校に行きたいから今の学校にいるけど、学力的には既に大学生レベルなのよ、私。あんたとは違って優秀なのよ?」

「ああ、そうだったなクソがッ!! ったく、なんで頭がいいのにこういうことは馬鹿なんだよ!」

「馬鹿と天才は紙一重だからね」

「それは馬鹿が自己を肯定する時に言うことだろ!? くそっ、病人のくせに頭が周りやがって!」

「あはは、ゲホッ、ゴホッ、かはっ」

「あぁ、ほら、酷くなってんだから無理をしてんじゃねぇよ!」

「あー、やばい。こりゃ死ぬかも。なんだか、眠くなって、きた、し……」

「雪山じゃねぇから大丈夫だよ」

「私、この病気が治ったら、あんたと結婚するんだ……」

「おう、よろしく」

「いや、そこは「死亡フラグ立ててんじゃねぇよ!」じゃないの?」

「なんでさっきまで眠そうだったのに普通に起きてんだよ!?」

「ぐー、ぐー」

「……スマートフォンのバッテリーの最後の一パーセントが何気に長持ちする法則かよ」

 普通に眠っているらしい少女の姿を見ながら、少年はふと思う。

「……あれ? これ、婚約ってことじゃね?」

 

 ちなみにその後、正式に恋人関係になり、少女が持っていた悪化したインフルエンザウイルス――つまり、形質変化した新型のインフルエンザウイルスはかろうじて抗体の持っていた少年に伝染って、少年からクラス中に伝染ってパンデミックを起こし、丁度少女が完全に回復した頃になって学級閉鎖になり、更に一週間少女の休みが増えたらしい。少女曰く、後者の方が嬉しかったらしい。




別に恋人関係になるのにドラマチックな理由なんて、必須項目じゃないですよね?

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