水銀転生   作:卵かけ御飯用醤油

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まず感じたのは『感銘』――求めしものは無上の戦慄
ああ何と素晴らしき世界!女神の祝福も邪神の怨嗟も目に映るもの全てが愛おしい
しかし、総ては永遠ではないから、何時か壊れてしまうだから
故に願う あの輝きをもう一度味わう為に、次は更なる歓喜に震えると信じているのだから!
那由多の彼方まで消えぬ祈りを捧げよう
――永劫回帰!

作ってみたんですけどコレジャナイ感が…
と、取り敢えず始まります




プロローグ

 

  思えば数奇な生涯だった

 

 昔の私、いや今はもう面影すらなくなった前世の『私』と行った方が正しいか

 

 平凡な家庭に生まれ、平凡に人生を終えた私は気が付いたらこの世界に居た

 

 戸惑い、助けを求めたが誰も答えてくれるものは居らず、私は世界を彷徨った

 

 生憎とこの身は歳を取らなかったのでね、寂しさは時が誤魔化してくれたさ

 

 しかし、永く生きると娯楽などの楽しみが少なくなっていった

 

 全てに飽き、ある日私の世界は色を失ったのだ

 

 其処から先は周りに流されるまま無機質な生活を送っていたよ

 

 どんなものにも無感動、まるで地獄だった

 

 しかし、神が救いでも齎したのか私に転機が訪れる

 

 そう、彼女との出逢い。マルグリットとの出逢いだ

 

 抱きしめると首を刎ねてしまう、其れでも愛しているから抱きしめたい。願いと呪いのジレンマの末、彼女は来世を夢見た。次の生ではきっと誰かを抱き締めることができると希望を込めて

 

 その姿を見て私は、私の世界は色を取り戻した

 

 そして気付いた。人が何かを渇望する様はどんな宝石よりも美しく輝いているのだと

 

 なんと嘆かわしい、私はこんなに輝く世界を無機質に過ごしていたなんて

 

 ならば、此れから輝く原石たちを眺めに行こう。其れはきっと私に無類の感動を与えてくれるはずだから

 

 

 

 

 私の思う通り旅は素晴らしいモノだった

 

 栄華を極めたローマの皇帝達、覇を唱えた魔王と呼ばれた男、そして、今を生きる人間達

 

 今でも鮮明に思い出せるよ、彼らは正しく輝いていた

 

 だからこそ私はまだ消えたくなかった。輝く世界をもっと愛でていたかった

 

 しかし、死とは万物の終着点。さけることの出来ないこの世の真理

 

 故に願った。時よ逆流しろ、世界よ回帰せよ

 

 全ては愛しき輝きを、あの感動をもう一度味わうために。その末に既知の呪いに苛まれようとも構わない。人が未来を夢見る限り私の世界は輝き続けるのだから!

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、とまあ永劫回帰の世界はこの様に生まれたわけだが。馬鹿げたわがままを笑うかな?」

 

 其処は『座』と呼ばれる世界の深淵。黄昏の砂浜の空に四つの人影が有った。其処に居る全員が覇道神と呼ばれる己が渇望の末に至った者たち。黄金は愛を、刹那は不変の日常を、そして黄昏は抱擁を願った。そんな彼らが水銀の願いに否を唱える筈がなかった。

 

「其れは重畳。しかし、此処()にたどり着くとは…流石は私の愛した輝きたちだ」

 

 水銀は心から嬉しそうに告げる。そして、一人一人に言葉を贈る

 

「我が友、獣殿。回帰世界の中で貴方ほど愛を叫んだ人は居ない。総てを全力で愛すために壊す。愛ゆえの破壊、ああ何と甘美な響き。心からの喝采を送ろう」

 

 黄金は肌が痛くなる様なオーラを発しているが顔に薄く笑みを浮かべている。友からの賛辞が喜ばしいようだ。心なしか迸るオーラが濃くなった気がする

 

「我が息子、ツァラトゥストラ。時よ止まれ、愛しき刹那を永遠に。私と似て非なる渇望だ。其れに己の刹那を守るために立ち上がった勇敢な姿。親として鼻が高い」

 

 刹那は突然の賛辞にこそばゆい感覚に襲われる。思わず、うわぁ似合わないし何かうぜえ、と苦言を漏らしている

 

「そして女神、マルグリット。私の世界に色を取り戻してくれた恩人。世に降り注ぐ貴方の輝きはいつの世界でも我が至高だ。本当愛おしく思うよ」

 

 水銀の救世主でもある黄昏へ向けた言葉は短いものだが、其処には確かな重みが有った。黄昏は満面の笑みで返す。救われたのは此方もだと。

 

「さて、筋書、台本などない歌劇だが終わりが近いようだ。私の流出の起点はもう直ぐ其処。回帰世界を止めたいのならならば座に居る私を打ち倒せ。もう手放したくないと思えるほどの輝きを見せてくれ!其れこそが無限ともいえる回帰世界の私全員の願いなのだ!!」

 

 瞬間、覇道の鬩ぎあいが始まる。停止と回帰と破壊。それぞれの全力がぶつかる。日常の些細な変化から始まり果てには世界まで巻き込んだ舞台は黄昏が座に就き輪廻転生の世界に変わったことで終幕となった

 

 

 

 

 

「ああ、素晴らしき輝きだったよ。故に幕を下ろそう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ある日、気が付いた日から不快だった」

 

 其処はある薄暗い洞窟の中、ナニカが胎動し言葉を発している

 

「何かが俺に触っている。常に離れることなくへばりついてなくならない」

 

「何だこれは。体が重い。動きにくいぞ消えてなくなれ」

 

 誰に語り掛ける訳でもなく只の己の自白、自己完結した男の世界

 

「俺はただ独りになりたい。俺は俺で満ちているから、俺以外のものは何もいらない」

 

 其れがこの男の願い。最悪にして最凶の覇道神。極大の下衆、波旬の渇望だ。自己愛に始まり、自己愛に終わる決して流れさせてはいけない理。

 

「やはり目覚めたか邪神。自己完結しその生を終えると言うのなら放っておくつもりだったが、そうもいかないらしい」

 

 突然現れた影。即身仏の如き男に話を持ち掛けるが応じるどころか認識すらしていない様だ

 

「何だァ?煩いハエがいるな、喋るな口を閉じろ。俺が汚れるだろ」

 

「全く損な役割だよ、しかし此れは私の願いでもある。我が至高を糞と断じ、穢そうとするお前を生かしては置けないのだ。総ての輝きを受け入れる私でもお前の歪んだ輝きは承諾しかねる。故に不完全な今のうちに芽を摘み取らせてもらおう」

 

 

 

 怒りは短い狂気である

 Ira furor brevis est.

 自然に従え

 Sequere naturam.

 

 

 刹那、星をも焼き尽くす爆炎が巻き起こる。超新星爆発。巨大な星が長年燃え続けた末に起こる現象の事で新しい星が生まれたかの様な明るさからそういわれているがその実、星の死の瞬間のきらめきだ。もし、此れに巻き込まれる様なことがあれば只では済まないどころか、塵も残さず消える。実際、水銀が張った結界、次元をその空間だけ切り取るという技がなければ辺りは灰燼と化していただろう。しかし、この下衆に至っては話が違った

 

「煩いハエが塵を撒き散らしてるなあァ、煩い、煩わしい。アァ、ゴミか。ならゴミは掃除しなきゃなアァアァ!!!」

 

 

 滅塵滅相ォォ!!!!

 

 

 波旬が腕を振るう。たったそれだけの動作で先ほどの爆発と同等以上の衝撃が放たれる。其れのより避け切れなかった水銀は片足と片腕を無くすという甚大なダメージを受けた。しかも星を焼き尽くす爆炎でも波旬は全くの無傷だ。

 

「くくくく、はははは!!どうだァ俺の糞は美味かったかァ?」

 

「美味いはずないだろう。全く、あの爆炎を受けて傷すら付かないとは…些か自信を無くすよ。正に理不尽の体現者と言ったところか」

 

 満身創痍、誰もが波旬の勝利は揺るがないという状況で水銀の目は光りを失っていない。絶望していなかった。

 

「だが、折角の女神の治世。彼女の願う世界なのでね。引く訳にはいかんのだよ」

 

 彼が至高と信ずる女神の渇望(輝き)。其れがやっと叶った世界をこんな下衆に邪魔される訳にはいかなかった。例えその末に自分を犠牲にしても…

 

「さて、観客のいない独り舞台。私の最後の輝きをお見せしよう」

 

 Aut viam inveniam aut faciam.

 私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう

 

 Ad augusta per angusta.

 狭き道によって高みに

 

 Alea iacta est!

 運命の賽は投げられた

 

 

 

 其れは正史の彼なら持っていなかった秘術。文字通り水銀の禁術だ。彼の秘術の一つ『暗黒天体創造』というものが有る。此れは彼の代名詞ともいえる回帰してきた世界総ての星を凝縮させ規格外のブラックホールを生み出すというトンデモ占星術な訳だが彼は思った。星を集めることができるのなら自分を集めたらどうなるか(・・・・・・・・・・・・)。しかし、リスクが大きすぎる。暗黒天体創造でもビッククランクに繋がる部分が有るというのに那由多のその先まで回帰した自分を総て集めこの体に凝縮するということはそれだけの数の神威と霊格をその身に宿すということ。当然魂が耐えられる筈が無い。持って数分、下手すれば発動した瞬間に爆死するかもしれない術を使う機会など無かった。

 

「地力が違うなら他から持ってきて届かせればよい」

 

 だが、今の彼は己の愛した輝きを守るため命など惜しくもないと自分の身を犠牲にする。

 

「此れで同じ土俵だ波旬。時間が無いのでね。早めに終わらせよう」

 

「煩い、煩い煩いウルサイィィ!!!!早く俺の前から消えてなくなれェェエ!!!」

 

 

 

 卍曼荼羅ァア・無量大数ゥゥウ!!!!

 

 

 

「存在すら消えて無くなれ!!!」

 

 

 始まりから終わりまで

 Ab ovo usque ad mala.

 時はすべてを運び去る

 Omnia fert aetas.

 

『素粒子間時間跳躍・因果律崩壊』

 

 

 

 波旬の万象の滅相と水銀の全平行世界からの根源の消滅が互いを撃ち滅ぼそうとぶつかる。同じ土俵にたった覇道神の鬩ぎ合いは拮抗していたが、波旬の力が段々減衰して行き、最後は消滅に飲まれた

 

 

「糞が糞がクソがクソがァアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

 呪詛の如き叫びと共に塵となる波旬。敗因は最後の最後で水銀を自分と渡り合う『他人』と認識したこと。畸形嚢腫によってつけられた自己愛の世界の罅。その隙間から入り込む水銀の毒。最悪の邪神は総ての世界から誕生するという可能性すら消し去られた。

 

 

「ゴフッ、やはりこの術の代償は消滅か」

 

 コップに海の水を詰め込んだ様な行為により、魂、体共にボロボロだった

 

 そして、水銀は落ちていく、堕ちていく。既に四肢、下半身は消し飛び、残った上半身も崩れかけ首はやっとの事で繋がっていると言ったところだ。

 流れに逆らうことなく、落ちていくとふと温もりを感じた。鉛の如く重くなった瞼を開ける。目に映るのは黄昏の彼女。どうやら座まで来ていたらしい

 其処には至高と信じた者が揃っていた。息子は涙を堪え、獣殿は涙こそ見せないがその美貌を歪めていた。聖槍十三騎士団、エインフィリア達の表情は様々だ。肝心のマルグリットは大粒の涙を流し、消えちゃダメと嗚咽と共に繰り返している。

 

「此れは何とも面妖な光景だ。ふむ、では消える前に一つ辞世の言葉でも」

 

 その言葉を聞いた瞬間マルグリットの抱き締めが強くなるが時間が無いので続ける

 

「息子、獣殿、そしてそのエインフィリア達よ。この先に逝く老いぼれの代わりにマルグリットを支えてあげて欲しい」

 

 女神の理では極大の下衆の様な奴も許容してしまう。総てを抱き締める。其れが彼女の願いだから。だからこそ守る者達が要る。護衛する騎士が

 

「マルグリット。貴方の行く末を見守れないのが残念だ。だが、貴方を守れたのだ、悔いは無い。だから最後くらい笑ってほしい。私の愛した笑顔をね」

 

 皆、女神を守ることを誓い、マルグリットは涙にぬれぎこちない笑みだが私にとっては最高の笑顔だ

 

「ああ、君たちと過ごせたことこれ以上ない至福だった。誇りに思うよ」

 

 水銀は笑った、どんな絵画にも勝る満ち足りた様な美しい顔で。水銀が瞼を閉じる。同時に体が光の粒子となって虚空に溶けていく

 

 

 

 その日世界は誰よりも人を愛した一人の男を失った

 

 

 

 

 

 

 

 此れにて私の歌劇は終幕だ

 

 未来は彼らが勝ち取ってゆくだろう

 

 では、さらばだ

 

 

 Acta est fabula (芝居は終わりだ)

 

 




初っ端からクライマックス感が(白目)
水銀じゃない……まぁ中身違うので
戦闘シーンはプロローグであまり長いとアレなんで削りに削りました
とても無理矢理でしたがお許し下さい、
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