水銀転生   作:卵かけ御飯用醤油

5 / 5
覚えている人も少ないと思いますが、久しぶりの投稿です。
問題児の設定的にこの水銀よりやばそうな奴もいますね。
つまりはこの水銀が挑戦者となるわけです。
あとは———わかるな


未知との遭遇

  逆廻十六夜は歓喜していた。

  退屈のない非日常を、人生を彩る刺激を求めて手にした未知への切符。

  召喚に応じ、目にした宏大な大地に胸を躍らせた。空を飛ぶ胡散臭い男に兎耳の女、同じく召喚された者たちに期待を抱いた。

  凍りついた世界が、熱をもち、大きく胎動するような気さえしていた。

  そして、その感動は終わらない。

 

「ははっ、いいぜ。最高じゃねえか、この世界」

 

  落下の際に目についた世界の果てらしき場所。神話上の生物を目にしながら、鬱蒼と連なる樹木の間を駆け抜けた先にいたのは、

 

『む、これは珍しい。水神である我が住処へ赴くとは、試練でも受けに来たのか? 人の子よ』

 

  己の身長を優に超える巨大な体躯を持つ白蛇であった。背後に見える大滝とも相まってその様は壮観ともいえる。

  自然と口角が上がり、顔には獰猛な笑みを浮かべている。

  水神。所謂ファンタジーの存在との会合は十六夜の探求欲にさらなる火をつけた。

 

 ———もっとだ。もっと楽しませろ

 

  語らいか。知恵比べか。はたまた、決闘か。

  どれを選んでも面白そうだ。だが、ここで選ぶなら一つしかないだろう。

  せっかく、存分に暴れられそうな場所なのだ。この機会を逃すなど、損でしかない。

 

「試練ね、そいつも面白そうだが。まずは水神サマとやらに聞きたい」

「ほう、何を問うのだ?」

「実に単純な質問だぜ。———あんたは俺を試せるのか?」

 

 ———まずは、小手調べだ。

 

 心地よい高揚感と共に、十六夜は拳を振り上げた。

 

 

 :

 

「なんと未知と輝きに満ちた光景。ああ、素晴らしすぎる」

 

  そして、ここにも一柱。溢れんばかりの幸福感に包まれているものがいる。

  十六夜の魅力的すぎる誘いも惹かれたが、まずはということで街にきた水銀だ。

  彼は今、逸る気持ちを抑えきれず単独行動をしている。

  むろん、こっそりである。

  彼としては、案内を受け、他人の評価を交えながらというのも好ましく思うのだが、この時ばかりは抑えきれなかった。

  それだけ魅力的なのだから仕方がない。

  黒ウサギとジンは犠牲になったのである。

 

  して、水銀はというと、活気に溢れる街の人々の合間を通りながら、いたる所を観察していた。

  見慣れぬ文字、建造物。そして、住まう人々に目を引かれる。

  人間だけではない。獣人や精霊、天幕を見るに吸血鬼のような怪異まで居るのだろう。

  素晴らしき哉、素晴らしき哉。

 

「お、美形の兄ちゃん。一つどうだい? 今朝仕入れた新鮮なやつだぜ!」

「む?」

 

  水銀が賛美に耽っていると、近くの屋台から声をかけられた。

  彼が目をやると、人のよさそうな獣人の男が手招きをしている。見るに八百屋のようだ。

 

「ほう、これは中々」

「だろう! この辺りの土地は豊かでな。いいもんが仕入れやすいんだ」

 

  豊かな品揃えや、商品の一つ一つ、そして街の雰囲気から察するに、ここは農耕地としてよほど成功を収めているらしい。

  貧困に苦しんだかつての大戦時とは、雲泥の差である。

  さて、ここまで来たのだから、何か買わねばと思うのだが、

 

「すまない、店主。あいにく持ち合わせがなくてね」

 

  この水銀、無一文なのである。店主は少し残念そうにしながら、また寄ってくれと笑顔で送りだす。

  改めて、彼の人の良さを感じた。実に美しい輝きだ。

  店を後にしたあと、また辺りを散策する。

  フラフラ。フラフラと歩き回り、人気の少ない開けた場所に出た瞬間。

  水銀はおもむろに後ろを振り返った。

 

「して、私に何か用事でもあるのかな」

 

  そこにいたのは、奇抜な和服らしきもの着た白髪の幼子であった。

  しかし、それを認識したのは少ししてから。

  というのも、彼女を目に収めた瞬間———水銀の目は灼かれた。

  これは、比喩であるが、また事実でもある。

  それほどだったのだ、彼女の輝きは。

  太陽で在りながら夜を司り、精霊でありながら神威を宿す。

  未だ体験したことのない未知ではあるが。

  故に———水銀は勿体ない(・・・・)と思う。

 

「おんし、一体どこのコミュニティじゃ?」

 

  その体躯には似つかわしくない口調ではあるが、今はどうでもいい。

  彼は今、未知への高揚感で一杯なのだ。

 

「どこのコミュニティといわれてもね」

「惚けるでない。それほどの神格じゃ、何か目的があってこの外側にやってきたのじゃろ?」

 

  有無を言わさぬ剣幕。しかし、彼は飄々と疑問を呈する。

  知らないものは、知らないのである。来たばかりの水銀とって、この世界の知識は散策中に耳にしたことと、見たものしかない。

  謂わば、赤子と大差ないのだ。

 

「と言われても、召喚されたばかりで何もわからないのだが」

「なに?」

「先ほど黒ウサギというものに呼ばれてね。この世界にやってきた次第だよ」

 

  彼女、白夜叉は予想外の返答に面を食らう。というより、黒ウサギに呼ばれた?

  確かに、彼女はコミュニティの窮地を救うため召喚を行ったが、あれは人を呼ぶもののはず。

  なのに、こやつは呼ばれたといった。

 

「その話、真か?」

「もちろんだとも」

 

  胡散臭い雰囲気も相まって、謀っているようにも感じるが、嘘と断じるには判断材料が足りない。

  この男をどうするか迷った末、

 

「はあ、黒ウサギに直接確認するしかないの」

 

  放置するとはいかないので、黒ウサギを探すことにした。

  己が監視に付けば問題ないだろうという判断の元である。

 

「私は階層支配者(フロアマスター)の白夜叉じゃ。放置するわけにもいかんらの、監視させてもらうぞ」

「ああ、かまわないとも。私はカール・クラフト。よろしくたのむよ。———ところで」

 

  ガシ。

 

「語感から察するに、あなたはここに詳しいのだろう?」

「あ、ああ。というか近い! 近い!」

 

  とてつもない速さである。これも執念のなせる技であろうか、一瞬にして距離を詰める水銀。恐るべし、未知への執念。

 

「丁度よい。一人では限界があってね。この世界に明るい者を探していたのだよ」

「ま、まて。案内するとは一言も言って……」

 

  言い切る前に彼女は水銀に引きずられていった。

 

 

 




被害者一号
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

問題児? いいえ、神殺しです。(作者:怜哉)(原作:問題児たちが異世界から来るそうですよ?)

──────魔王とは、揃いも揃ってカスである。▼彼は『覇者』である。▼天上の神々を殺戮し、奪い取った至高の力で同胞までもを滅ぼすが故に。▼彼は『王者』である。▼弱く脆い人類を愛し、庇護し、その外敵の悉くを打ち砕くが故に。▼彼は『魔王』である。▼己の愛する者を甘く優しく飼い殺し、衰退させるが故に。▼人類は、彼に抗う術を持たない。▼元は同じ『ヒト』でありながらも…


総合評価:3072/評価:8.77/連載:15話/更新日時:2026年09月07日(月) 20:07 小説情報

星殺しの英雄(作者:Castella)(原作:アサルトリリィ)

星の究極種を殺した型月転生者がアサリリ世界に転移する話。▼※掲示板形式ありです。


総合評価:2250/評価:8.12/連載:18話/更新日時:2026年05月11日(月) 21:37 小説情報

ようこそ暗殺者の卵がいる教室へ(作者:塩安)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

暗殺教室の潮田渚スペックのオリ主が、よう実世界を好き勝手に楽しむ話▼アンチ・ヘイトは念の為


総合評価:8266/評価:8.69/連載:27話/更新日時:2026年05月31日(日) 18:08 小説情報

自称ヨーロッパの父 with よわよわ坂柳(作者:ミツヒコ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

 ぼんやりと転生者だという自覚だけあるシャルルマーニュっぽい主人公を放り込んだ話。尚、坂柳はよわよわとする。


総合評価:3815/評価:8.58/連載:3話/更新日時:2026年07月19日(日) 22:59 小説情報

ようこそ最強ゲーマーのいる教室へ(作者:現魅 永純)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼ 空のいない白▼ 白のいない空▼ 二人で一人ではない、たった一人で両翼を宿す存在。▼ 空間認識能力・動体視力・演算能力・記憶力・心理察知───etc.▼ 人に許された数多の能力を、人には許されざる領域でその身に宿し産まれ落ちた。▼ 何者にでもなれた才禍の怪物は、知らぬ誰かをなぞる様にゲームの世界へ魅入られた。▼


総合評価:8114/評価:8.7/連載:23話/更新日時:2026年09月08日(火) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>