転生伝記   作:斎藤 恋

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第十四話 不知火・一条

私の告げた言葉が、余程信じられないことだったのか、彼等は憔悴していた。

 

ーー無理も無い。聞いたのが私だったとしても、おかしい、あり得ないと声を上げただろうな。

 

そう、それだけ、彼自身の手で開拓団基地が破壊されたというのは、信じがたいことだった。

故に告げてやる。

 

「あの状況で、ドミトリが破壊行動を起こしたのはおかしい。私はそう思っている。あり得ない行動だ。」

 

この言葉に、不知火も一条も頷く。

 

「しかし、…しかしだ。……操作されていたのならどうだろう?」

この言葉に二人は首をかしげる。

 

「操作………ですか?催眠術のような、ということですか?」

 

「……催眠術…………?」

 

「あぁ、そうだ。君たちは覚えていないのかもしれないが、我々がパッチの、いや、マーズサイトの最初の発見者なのだよ。」

 

 

「……え……………。」

 

「そんな!………それじゃ、もしかして…………」

 

雫君はその可能性に思い当たったかのように声を上げる。

 

「雫君。分かったかね。開拓団最後の状況が…。」

 

 

そう、開拓団は、あのドミトリによる最後を迎える前に崩壊しかけていた。

マーズサイトという新種の功績の発見。

そしてその可能性。

 

その価値は計り知れないだろう。

国家間の政治的やりとりが続き、地球との通信装置が破壊され、全員が疑心暗鬼に陥った時、ドミトリがすべてを破壊した。

 

 

そう、説明を終えた時。

不知火君も、一条君も、何かしら思い出しそうではあったが、結局、思い出すまでにはいたらず。

そんな暗い報告だけを聞いて、自室へと帰ろうとしていた。

 

 

 

 

そういえば、言うのを忘れていたが。

不知火君も一条君も、パッチ装着を済ませている。

パッチを装着し、火星人として生きていく決意をしていただけた、ということだ。

 

まぁ、生身の人間が、ここまで来るのはしんどいしね。

この中央庁舎は、50階建ての全長100m近い建物だ。

擬似エレベーターもあるにはあるけど、、時速数10キロ〜100キロ近くでるから、生身の方には専用階段を置いている。

下には、電話っぽいものもあるから、連絡があればすぐに行けるのだけれども、、、。

 

 

基本的にはやっぱりパッチユーザー用なわけで。。

通常人類にはキツいものなんだよね。

 

 

 

 

で、暗い顔で自室へと帰ろうとした彼等を引き止めた。

ーーいや、なんで帰るの……。話まだ済んでないし。

 

「少し待ちたまえ。話はまだ終わっていないよ。まぁ、あと言えるのは、ドミトリが操作された可能性だ。あの時にもパッチユーザーは存在したのだから、状況がかみ合えば彼を操作することも可能だろう。無論、それが可能な能力を持っていることが前提だが、。」

 

 

「「っ!」」

 

 

「で、ですが、その者ももう死んでしまっているのではないでしょうか………。」

 

ーーさて

「それはどうかな?」

 

 

「え?」

 

「私がこうして生きているんだ。彼が生きていないとどうして言える?」

 

「いや!それは……………確かに……………………。」

 

不知火も一条も否定はできないらしく。

生存を信じる方に傾いてきたようだ。

 

 

パッチユーザーでなくても、人は百年生きることができる。

なら、パッチという強大な力をヒトが手に入れたのなら・・・?

 

そう考えるとヒトは皆否定できないようだ。

まぁ、これを話したのはわずかな人間だけだし、俺自身がほぼ確実にシャノンは生きているだろうと確信しているからでもある。

 

なぜ、だって?

 

 

そんなもの決まっている。

 

シャノン=ワードワーズという生き物は、それだけの化け物だからだよ。

私自身も、いくらか化け物じみているとは思っているが、それは転生し自身の肉体や魂が強化されているからこそだ。

 

そうでなければ、最初の人生のように、上司や組織の方針、社会そのものに振り回された挙句に事故死、といったような、くだらない人生は歩んでないだろう。

 

 

「分かったかね?そうだ。彼らは生きているだろう。特に、シャノンやドミトリはね。」

私は、彼らに、それが確定の事実であるかのように告げた。

 

 

「?なぜ、そう言い切れるんですか?いや、というより、なぜrその二人なんでしょうか?」

不知火君が、私の言動に疑問を持ったのか、そう問いかけてくる。

 

しかし、これは証拠があって言っているのではない。

ただ長年生きたものとしての❝勘❞だ。

 

パッチユーザーとなってからはあまりないが、前世でも今世でも、この勘で生き延びたことは何度もある。

そこらの小僧に分かるものではないだろうが、それでも、私は確信しているのだ。

 

 

 

彼らは生きている、と。

 

 

 

 

EVOLIMIT

 

限界進化。進化の果て。生命の極致。

 

なんでもいい。

私たちパッチユーザーは、そこに至れる可能性を、このパッチと融合したその時から秘めているのだ。

 

 

❝手❞ という概念を生み出し、人類が人類として誕生する以前から、知恵を磨き続けていた我々、ヒト。

ヒトは、その知恵の元に、森を切り開き、大地を均し、空を海を大地を。

 

それらのすべてを、自分たちの都合のいいように作り変えてきた。

それが悪いとは言わないし、悪いとは思わない。

 

 

それがヒトだからだ。

 

 

そして、我々ヒトは、遥々も地球を飛び立ち、火星という空の先にまでたどり着いた。

 

それは素晴らしいことだろう。

人類にとって発展とは、まだ見ぬ何かを眼に収めることに他ならない。

 

であるのなら、そのために❝ヒトを辞める❞ことも、また❝アリ❞だろう。

 

 

可能性があれば、それにすがるのもまたヒトなのであるから。

 

 

 

そう、そして、第一火星開拓団リーダー、ドミトリ=カラニコフは、パッチを手に入れ、先を見ることができるようなヒトであったのだろうか?

 

答えは❝是❞である。

 

ドミトリほどのヒトであるのなら、それを掴めないことはないだろう。

だからこそ、リーダーに選ばれたともいえるのだから。

 

 

 

では、副リーダーのシャノン=ワードワーズはどうだったのだろうか?

 

これもまた。❝是❞だ。

 

シャノンは、その容貌に似合う、完璧な人間であった。

場合によっては、否、よらずとも、その能力はドミトリを超えるだろう。

状況によっては私をも超えるかもしれない。

 

彼はそれだけの力を持っている。

 

 

それは、才覚であり、センスであり、努力である。

 

 

世界の意思が彼を作ったのだと言われても不思議はないほど、彼の力と知恵は秀でていた。

無論、それだけの人間に惹きつけられない者がいるわけもなく、多かれ少なかれ、彼は、その周囲を多くのものに囲まれていた。

 

 

 

 

❝まるで、王のように❞

 

 

 

CIAという彼の前職は、どうやら彼を引き留められなかったらしく、彼の言うがままに、彼を火星へと押し出していた。

そのことを私が感じたのも、私が彼と初めて話した時だったが。

 

 

話がそれてしまったが、それだけ彼は優れていて、それはその精神においてもそうであったということだ。

 

 

「不知火君。君はシャノンを覚えているかね?」

 

 

「もちろんです。俺は彼に護身術を習っていましたし……。」

 

護身術?そんなの習ってたのか?この火星で?

それにも驚いたが、むしろ、シャノンにそれだけ近い者が今まで生き残っていたというのは、偶然ではありえない気がする。

 

いや、ありえないだろう。

 

 

シャノンは、完璧に近い人間であるが、そうであるがゆえに、有象無象はあまり近くに寄せないようなところがある。

この場合の近さとは、心理的な距離感、プライベートな時間といった意味だ。

 

現に、私はさっきまで、シャノンが彼に、護身術なんて教えているとは思いもよらなかった。

 

 

ボディーガードや諜報員でもあるまいに、単なる高校生に、❝護身術❞を教えるというのには、とてつもない違和感を覚える。

彼ならむしろ、素手でクマを殺す方法でも教えそうなものだが……。

 

 

「(いや、もしかしたら、その護身術とやらもその類かもしれないな……)」

そう考えると腑に落ちる。

 

「シャノンが……、そうか。で、だ、それなら分かるだろうが、あのシャノンが、そう簡単に死ぬと思うのか?すでに三人も、生存者がいる中で、だ。」

そうだ。そのシャノンが、だ。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ありえないですね。」

そうだろう。

他の誰にありえないことでも、シャノンにとってはそうではない。

可能性が1%でもあるのなら、キッチリ掴んでくる男だろう、彼は。

 

 

「斎藤さん。でも、ドミトリたちが生きているのなら、いったいどこに・・・・?」

 

そう。しずくの言う通り、❝どこに❞いるのかは、まったく分かってない。

 

「生きているのなら、出てきてもいいはずなのに、かね?」

それはそうだろう。

しかし、雫の意見には、壊滅事件のことが抜けている。

 

「えぇ、生きているのなら、ふつうは何かしらの行動を起こしているはずです。百年間、その存在を秘匿し続けるというのは、さすがに困難では?」

 

 

「いや、可能だろう。誰かに鎮圧され、封印されたというのであれば、ね。」

多分、どこかの洞窟か地下だろう。

今まで発見されておらず、バルバロイたちに干渉されない場所といえば、そのくらいしかないだろう。この火星には。

 

 

「・・・・・封印・・・。」

こいつらがやったんだろうな。

あのときの生き残りというだけでも、その可能性が高い。

 

だとすれば、あのドミトリの娘は・・・・?

 

 

「そうだ、お前たちは、ドミトリの娘を覚えてるか?」

 

「え?」

急な話の転換についていけないのか、不知火が戸惑っている。

 

「あー、何て名前だったか・・・、火災だか台風だか、そんな名前のやつだ。」

 

「・・・ツナミのことですか?」

 

そっちだったか・・。

 

「あぁ、そう、ツナミだ。彼女はまだ発見されていない。ドミトリが生きていて、彼女が生きていないってのはありえないだろう?あの子煩悩なドミトリならよ。」

 

 

「・・!確かに!」

 

「ツナミが生きている?!」

 

「あくまで可能性だがな。お前たちでさえ生きてたんだ。ツナミが死んでるってのはありえない気がしてな。」

 

 

 

 

話していて、その可能性に気づいた。

そこからは、自分たちの境遇なんかそっちのけで、鷹星を巻き込んで、ツナミの捜索計画に取り掛かっていた。

 

 

 

「・・・この切り替えの早さが、開拓団に選ばれた理由なんだろうな。」

 

タフでなければ生きていけない。

アメリカンスピリッツの代表的な言葉ではあるが、まさしくその通りだ。

 

「タフな人間しか、この世界では生き残れないからな・・・。」

 

 

夢を持ち、タフな精神力で目の前の障害を破壊して進めるような奴でなければ、火星開拓団なんてもんに参加なんてしないだろう。

それの最たる奴が、シャノンであり、ドミトリだった。

 

「シャノン、ドミトリ。お前たちの精神は、こいつらの中にも受け継がれてるぞ。」

 

 

 

真剣に取り組む彼らの姿を見て、今は亡き日を思う。

時代のうねりは、すぐそこまで来ている。

 

そう、感じ取れる瞬間だった。

 

 

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