「いてて・・・」
屋根の上から無理矢理地面に叩きつけられた男はゆっくりと起き上がろうとする。その瞬間、彼の前に二人の影が現れる。それに気づいた男はゆっくりと顔を上げる。そこには男に刀を向けている青年とミニ八卦炉を向ける少女がいた。と、刀を向ける青年、悠岐が口を開く。
「よぉ、テメェが九十九を操っていた奴か。」
「な、なななななんだ君達は!?」
「惚けるんじゃないぜ。お前が九十九を操っていたんだろ?」
魔理沙が男を睨みながら言う。それに続けて悠岐が口を開く。
「テメェ何者だ?それに輝夜の奴はどうした?」
「ここまで追い込まれたなら仕方ねぇ。俺の名は寳、飽星寳だ。蓬莱山の奴は知らねぇよ。俺があの店にいった時は星熊九十九しかいなかったからな。」
「九十九しかいなかった!?じゃあ輝夜は何処にいったって言うんだ!」
「エリュシオンって奴に連れ去られたか・・・。」
「クックック、恐らくそうだろうな。エリュシオンさんならやりそうだ。」
「輝夜は後で探すとするか。まずはテメェをぶっ殺すことに専念してやる。行くぞ魔理沙!!」
「あぁ!!」
そう言った瞬間、悠岐は寳に刀を振り下ろした。咄嗟に反応した彼は悠岐の攻撃を避ける。寳の避けた場所には悠岐の攻撃によってへこんだ地面があった。それを見た魔理沙が驚きながら言う。
「あ、危ないだろ悠岐!!私まで真っ二つに斬られるところだったじゃないか。」
「すまねぇ、確実に奴を殺すつもりで刀を振ったからな。加減が出来なかった。だが、次は仕留める。」
「おぉ、怖い怖い。随分と乱暴だな君は。だが、お前らじゃ俺のこの能力には勝てっこないな!」
そう言った瞬間、寳は宙に浮かび始めた。それを見た魔理沙が箒に股がり、宙に浮かぶ。
「掛かったな。」
その一言を発した寳は魔理沙の目の前にいた。
「魔理沙避けろぉ!!」
「ッ!?」
咄嗟に悠岐が魔理沙に言う。だが遅かったのか、魔理沙は目の前で寳の攻撃を食らった。
「魔理沙!」
ヨロヨロと落ちていく魔理沙を見て悠岐は彼女の元へ走った。そして彼女を受け止めた。それを見た寳が笑い声を上げて口を開く。
「アハハハハ!滑稽だな、滑稽過ぎて思わず笑っちまったよ。」
「テメェ、ふざけるのも大概にしろよ。」
「クッ!」
悠岐と魔理沙が寳と戦っている中、百々は寳に操られている九十九と戦っていた。
「正気に戻るんだ、九十九!!」
「・・・・。」
しかし百々が何を言おうとも九十九は彼の言葉を無視して攻撃を仕掛ける。
「・・・そうかよ、俺を殺るまで攻撃し続けるか!」
そう言うと百々はチラリと悠岐と魔理沙を見る。そして心の中で語る。
(負けるんじゃねぇぞ、悠岐に魔理沙。)
そして百々は九十九を睨み、言う。
「必ずお前を元に戻してやるからな、待っていろ九十九。」
そう言った瞬間、悠岐と魔理沙のいる方向から爆発音が響いた。
「!?」
その瞬間、百々と九十九は同時にその方向を見る。そこには刀を地面に刺し、右腕からは血が垂れている悠岐の姿があった。
「悠岐!!大丈夫か!」
「バカ百々!!俺に構うな!!」
悠岐が言った瞬間、百々の背後から宝具を持った九十九が彼に向かって振り下ろす。
「クッ!」
咄嗟に反応した百々は九十九の攻撃を避ける。そんな中、悠岐はゆっくりと立ち上がり、寳を見て心の中で語る。
(奴の武器は銃。奴は俺の利き腕ばかりを狙っていやがる。さて、どうしようか・・・。)
「何か策でも浮かんだのかい?」
「さぁ、それはテメェの想像に任せるぜ。それよりテメェ、本当に人間か?」
「・・・それは一体どういうことだ?」
「テメェは間違いなく霊夢や魔理沙と同じ、人間の筈。なんだがテメェからは人間らしさを感じねぇ。」
「・・・それは、俺が人間じゃないって言ってるのか?」
「人間じゃないとは言っていない。人間らしさがないと言っただけだ。」
「ハッ、知ったこっちゃねぇなそんなこと。」
「ま、どうでも良かったことかもな。」
そう言った瞬間、悠岐は持っている刀に力を込め始めた。その瞬間、悠岐の肩を銃弾が貫いた。
「ぐっ!?」
声を上げる悠岐とは別に寳は笑みを浮かべて続けて発砲し、彼の左足を貫いた。
「ッ!!」
その瞬間、悠岐は自然と膝をついてしまう。それを見た寳がゆっくりと彼の元へ近寄る。そして言う。
「残念だったな、剣と銃じゃあ銃のほうが強いのさ。いやしかし君は強かったよ。まさか屋根の上にいた俺を地面に叩きつけるなんて、それは素晴らしかった。」
「チッ・・・。」
「クックック、そんな顔するなよ。安心しな、こいつらは君の後をすぐに追わせるからさ。」
「テ、テメェ!!」
「それじゃあね、悪魔のなりかけ。」
「悠岐!!」
思わず彼の名前を叫ぶ百々。そんな中、悠岐は密かに笑みを浮かべて小声で口を開いた。
「我、堕天の左腕なり。」
その時だった。発砲しようとした寳の銃に悠岐が刀で貫き、そのまま彼の肩を貫いていた。
「なっ!?」
寳は一瞬の出来事を理解出来なかった。そんな中、寳の攻撃で気を失っていた魔理沙が目を覚まし、悠岐を見て言う。
「ん?ここは・・・。って、あれはまさか悠岐の
「堕天化ね。…………は?え、ちょ、マジ?人間がやっていい事だっけそれ!!?」
「……は、ハァァァ!?堕天化なんてふざ!ふざけん!ふざけんなよ!!」
驚く百々と思わず声を上げる寳とは別に悠岐は笑みを浮かべて口を開く。
「随分と喧しい野郎がいるもんだな~。」
彼の言葉を聞いた瞬間、魔理沙の頭の中に疑惑が浮かんだ。
(なんだ、あいつの
そんな中、悠岐は刀を手に取ると闇のオーラを漂わせ始めた。それを見た寳が口を開く。
「クソッ。九十九!!こいつを始末しろ!!」
彼の言葉を聞いた九十九は百々から離れ、悠岐に向かって宝具を投げつけた。
「フッ。」
鼻で笑った悠岐は九十九が投げた宝具を刀で弾いた。
「何ッ!?」
思わず声を上げてしまう寳。そんな彼とは別に悠岐が口を開いた。
「届けるぜ。地獄を支配した、極上の音をな!!」
そう言った瞬間、悠岐の刀に闇のオーラが漂い、そのまま彼は寳に向かって走り出した。
「クソッ!!」
それを見た寳は彼に向かって何発も発砲する。しかし彼の発砲した弾は闇のオーラによって消えてしまう。そして寳の目の前に来た瞬間、悠岐がスペルカードを発動する。
「不覚『ロッキンオン・ヘブンズドア』」
その瞬間、悠岐の刀が寳の腹をとらえた。そのまま寳はヨロヨロになりながら倒れた。それを見た悠岐が目を閉じ、口を開く。
「ありがとう、サタン。」
そう言った瞬間、悠岐はゆっくりと目を開ける。そんな彼の目はいつもの穏やかな黒い目だった。それと同時に呪縛から解放された九十九が辺りを見回しながら言う。
「ここは、何処だ?ワタシは確か何でも屋で蓬莱山といた筈・・・。」
「九十九!元に戻ったか。」
九十九が元に戻ったのを確認した百々が口を開いた。それを見た魔理沙と悠岐が二人の元へ駆け寄る。と、魔理沙が口を開いた。
「なぁ九十九、悠岐と百々が人里へ行った後は何も覚えていないのか?」
「あぁ、覚えていない。覚えていないというより、思い出せないんだ。一体何があったのか、どうしても思い出せない。」
「クックック、思い出せないようにしたのさ。」
その声が聞こえた瞬間、四人は一斉に後ろを振り返る。そこには出血の量が多いのにも関わらず四人を見る寳がいた。それを見た百々が口を開いた。
「テメェ、まだやるつもりか?」
「いいや、こいつにはもう戦う力は残っていない筈。」
「クックック、その通りさ西田悠岐。」
笑みを浮かべて話す寳とは別に九十九が寳を見て言う。
「話してもらおうか、お前達の企みを。」
「!!」
彼女の言葉を聞いた瞬間、三人の体がピクリと反応する。そんな中、寳は口を開く。
「俺達の企み。それは星熊九十九、お前の世界を壊したようにこの表の世界全てを破壊するのさ!!」
「破壊する、だと?」
「そう。俺やエリュシオンさん、闘神や幻獣達が幻想郷だけでなく現世、
「現世、だと?テメェ、分かってないようだな。現世には五大王という最強の存在がいる。」
「分かってないのは君達だ。君達はエリュシオンさんの恐ろしさを知らない。」
「おい、エリュシオンって誰だ!?」
「エリュシオン・・・パチュリーのところで読んだ本に書いてあって神話の中の奴だと思っていたが実在していたとな驚きだぜ。」
「話は変わるがどうせ君達のことだから俺を殺すんだろう?ならば一つ忠告してやるよ。君達じゃあ絶対にエリュシオンさんには勝てない。諦めたほうが身のためだぞ。」
「諦めたほうが身のため?そんな訳にはいかない。世界も仲間も家族もみんな失わされたんだ。諦める訳がない。」
「悠岐くーん!」
突如魔理沙達の背後から声が聞こえたため、四人はその方向を見る。そこには黒い髪で赤い瞳の少女と白い帽子をかぶっていて横縞のニーソックスをしている少女がやって来た。二人を見た悠岐が口を開く。
「ユニ、楓!」
「悠岐、そこにいる二人の鬼は?」
「こいつが伊吹百々でこっちが星熊九十九だ。」
悠岐が言うと楓は百々と九十九の前にやって来る。彼女に続いてユニも二人の前にやって来る。そして口を開く。
「私は楓、出野楓だ。」
「私はユニ、アイアルト・ユニよ。」
「初めまして、ユニに楓。ワタシは星熊九十九だ。」
「俺は百々、伊吹百々だ。」
自己紹介を終えた四人は倒れている寳を凝視する。と、楓が口を開いた。
「魔理沙、先程の指紋検証の結果なんだが・・・一致する人物は見つからなかった。」
「なんだって!?」
「そりゃあそうさ。なんせ、エリュシオンさんの仕業だからな。」
「エリュシオン・・・。輝夜から聞いた名前だな。お前は奴と何か関わりのあるのか?」
「俺はただの協力者だ。」
そんな中、何かを思い出した百々が寳に言う。
「もう少しで慧音先生と妹紅が此処へ来る筈だな。こいつの管理は二人に任せよう。」
「なら尚更だ。こいつを気絶させておこう。」
そう言った瞬間、楓は寳の体を起こし、首の後ろをチョップした。その瞬間、寳は気絶してしまった。それを見た九十九が楓に言う。
「容赦ないな、お前。」
「私は相手が誰であろうと容赦しない。」
「ここにいたのね、あなた達。」
突然声がしたかと思うと背後に銀髪を三つ編みにしていて左右で色の分かれる特殊な服を女性とその後ろにおかっぱの赤髪の少女に全身黄色で頭が熊の形をしていて著しい人形がいた。三人を見た魔理沙が口を開く。
「永琳、妹子、ピンさんじゃないか。」
「どうやら、輝夜は拐われたようね。」
「拐われた!?」
九十九が驚きを隠せない声を上げる。そんな中、妹子が口を開く。
「皆さん、聞いてください。まず始めに私の能力なのですが、私は『世界の出来事を見る程度の能力』なんです。それで私が世界を見たところ、現在月の都で戦が起こっています。」
「戦だと?」
悠岐が首を傾げる中、ユニが妹子を見ながら口を開く。
「戦!?一体何があったの?」
「えぇ、実は神霊である純狐がヘカーティア達を連れて嬢娥と決着をつけるみたいです。」
「決着をつける、ですって?」
「その通りよ、ユニ。」
そう言ったのは永琳だった。そして永琳は再び口を開いた。
「神霊達は月の都を破壊できるほどの力の持ち主よ。恐らく豊姫や依姫達じゃ勝てる相手じゃないわ。」
「月の都って確か紫が母さんと協力して攻めて失敗したんだよな?そんな強い奴等を越える奴がいるのか。」
「俺は一度、依姫を刀を交えたことがある。恐らく、油断すればすぐに負ける奴だ。」
「大変なのは戦だけではありません。」
そう言ったのは妹子だった。そして彼女は再び口を開く。
「その月の都に神霊達ではなくまた別の存在がやって来ているんです。」
「べつの、存在?」
「えぇ、その存在は神霊達や月の都の人達の力を遥かに上回る力を有しています。」
「まさか・・・。」
「お察しの通りよ九十九。今すぐ幻想郷全土にエリュシオンが来ることを伝えるわよ。」
寳を倒すことに成功した魔理沙達。そんな中、史上最悪の存在が・・・。
次作もお楽しみに!