東方混沌記   作:ヤマタケる

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エリュシオンによって様々なものを失ったビオラ。そして幻想郷に向かうメルト・グランチとマーグル。


第106話 回顧

場所は変わって幻想郷の玄武の沢。そこではユニ、霊夢、魔理沙の三人が歩いていた。と、ユニが口を開く。

 

「みんな大丈夫かなぁ。少し不安になってきたわ。」

 

「大丈夫だぜユニ。みんなお前のことを信じている。」

 

「そうね、そんな心配することないわよ。」

 

「不安なのよ。私の判断が本当に正しいのか。悠岐君には地霊殿を頼み、楓ちゃんには魔法の森を任せて、百々と九十九には無縁塚をお願いしたんだけれど・・・。」

 

「楓は少し不安そうな表情をしていたけれど大丈夫よ。楓を信じなさいユニ。」

 

「・・・うん、そうね。」

 

「なんだユニ。他に何か心配なことがあるのか?」

 

「うん。実は私、少し気に入っている人がいてね、その人が大丈夫かなぁって心配しているの。」

 

「へぇ、ユニに好きな人が出来たなんて以外だぜ。それで、その人は誰なんだ?」

 

「それは・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフフ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

突然玄武の沢に響く笑い声にユニ達は声にならない声を上げる。と、魔理沙が口を開く。

 

「何者だ!隠れてないで正体を見せるんだぜ!!」

 

「フフフフフフ。」

 

再び笑い声が聞こえたかと思うとユニ達の前の空間が突如歪みだした。そして歪みが治まったのと同時にユニ達の前に青い瞳に腰まで伸びる銀髪、白いスーツに白いスカートを履いている背の高い女性が姿を現した。

 

「あ、あんたは・・・。」

 

呆然となりながら口を開く霊夢。そんな彼女とは別に女性が口を開く。

 

「初めまして、幻想郷の守護者達。私の名前はエリュシオンよ。」

 

エリュシオン、という言葉を聞いた瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙は同時に戦闘体勢に入る。そんな三人を見たエリュシオンが口を開く。

 

「まぁまぁ少しは落ち着きなさいよ。どうせ世界は私の手によってゆっくりと壊れるのだからそう焦ることはないでしょう?」

 

「落ち着けるわけないぜ。お前がエリュシオンと聞いたからにはただじゃおかないぜ。」

 

「ただじゃおかない、ねぇ。私はただ、アンタ達と話がしたかっただけよ。」

 

「話、ですって?」

 

ユニ、魔理沙、エリュシオンが話している中、霊夢はエリュシオンを見て何かを感じていた。と、エリュシオンが霊夢を見て言う。

 

「ほう。博麗霊夢、アンタ私のことを知っているような目をしているわね。」

 

「えっ?」

 

「霊夢お前、あいつを知っているのか?」

 

「知らないわよ。ただ、あいつと同じような感覚を持った奴と出会ったことがあるなって思っただけよ。」

 

「ん~?それは二年前の異変を起こしたあの子達のことかしら?」

 

「二年前の異変を起こしたって・・・まさか、セコンドやメルト・グランチのことか!?」

 

「そう、アンタ達は違和感なく戦ってたけれどね。」

 

「違和感、ですって?」

 

「アイアルト・ユニこと八意百合姫には分からない話よ。博麗霊夢に霧雨魔理沙、アンタ達、おかしいとは思わなかったの?」

 

「・・・・。」

 

「現世を攻める理由のないセコンドとメルト・グランチが唐突に幻想郷を攻め込んできたこと。現世で滅んだ筈の大魔王こと黒田輝宗が幻想郷へ攻め込んだこと。決して出会う筈のない覇王クリーフルとハイラル王国の悪の化身ガノンドロフが幻想郷へ現れたこと。そしてカオスが幻想郷へやって来たことも、一度もおかしいとは思わなかったの?」

 

「・・・それはどういうことなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これらは全て、私の策略よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって!?」

 

思わず同時に声を上げるユニ達。そんな彼女達とは別にエリュシオンは再び口を開く。

 

「勿論。そしてメルト・グランチが博麗霊夢、アンタに言っていた博霧合戦も私の仕業。博麗家と霧雨家を滅ぼしたのは私よ。」

 

「・・・なんだと。」

 

歯を食い縛りながらエリュシオンを睨む魔理沙。彼女に気にせずエリュシオンは話を続ける。

 

「しかし操りやすいわね、表の者達は。」

 

「操りやすい?」

 

「そ、裏の世界の者達と比べれば断然操りやすいわ。」

 

「じ、じゃあセコンド様やメルト・グランチ様を操っていたのは!!」

 

「そう、私よ。セコンドもメルト・グランチもクリーフルもガノンドロフもカオスも、術を掛ければ思うがままに動くただの道具(おにんぎょう)よ。でもカオスの時は失敗したわね。あの子、無の存在だから操ってもすぐに術を解くこと出来るのよねぇ。」

 

「一人で話しているところ申し訳ないのだけれどエリュシオン。あなたは何の目的で世界を壊すの?」

 

唐突に話しているエリュシオンに首を突っ込んだのはユニだった。そんな彼女にエリュシオンは言う。

 

「良いわ、お答えしましょう。私が世界を壊す目的、それは私の望む世界を作るため。そのためならば表の世界など私には必要ない。」

 

「何ですって!!」

 

「だから私は片っ端から世界を壊していく。月の都を最初に攻めたけど純狐達がいたからちょっと面倒だし次に現世を攻めたけど五大王が厄介だったわね、後回しにした。」

 

「フフッ、流石五大王ね。」

 

「けども地王セコンドの部下であるヴァン・グレイダーとビオラ・ハイラルドを始末したわ。」

 

「えっ!?」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニは目を大きく見開く。そんな彼女とは別にエリュシオンは再び言う。

 

「ビオラ・ハイラルドの場合は視力、聴力、そして能力を不自由にしたわ。少しは後に楽になれるよ。」

 

「お前・・・。」

 

「許さない!!」

 

何かを言おうとした魔理沙より先にユニが涙を流しながら空間から剣を取りだし、エリュシオンに向かっていく。

 

「待てユニ!!」

 

魔理沙がユニを止めようと声をかける。しかし彼女の耳に魔理沙の声は届かなかったのか、ユニは彼女の言葉を無視し、エリュシオンに剣を振り下ろした。

 

「滑稽ね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはユニの手首を掴み、そのまま地面に叩きつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「ユニ!!」

 

ユニの名前を呼ぶ霊夢と魔理沙。そんな彼女とは別にエリュシオンはユニを地面に組み伏せ、言う。

 

「誰かを呼び寄せることしか出来ないアンタに私を倒せるとでも思ったのかしら?」

 

そう言うと彼女は組み伏せていたユニの腕を放し、そのまま彼女の頭を掴み、持ち上げた。そして言う。

 

「今のアンタじゃ私には勝てないわ。勿論、西田悠岐や出野楓、星熊九十九、伊吹百々でもね。それにアンタ、ヴァン・グレイダーという名を言った瞬間、顔色が変わったけどそんなに彼が大事だったのね。ごめんね~、殺しちゃって。」

 

そう言うと彼女はユニを霊夢と魔理沙のいる場所へ投げた。

 

「くっ!!」

 

「ユニ!」

 

倒れるユニの元へ霊夢が駆け寄る。と、魔理沙がエリュシオンに言う。

 

「なぁエリュシオンさんよ。1つ聞きたいことがあるんだが、輝夜は何処だ?」

 

「輝夜?それは蓬莱山輝夜のことかしら?」

 

そう言った瞬間、ドゥンという音と共にエリュシオンの足元に倒れる輝夜が現れた。

 

「輝夜!!」

 

三人が揃えて声を上げる。と、エリュシオンは輝夜の胸ぐらを掴み、持ち上げた。そして空いている右手で彼女の首を指差す。彼女の首には噛まれたような傷痕が残っていた。それを見たユニがエリュシオンに言う。

 

「エリュシオン!!輝夜に何をしたのよ!!」

 

「ちょいと血をもらっただけよ。安心しなさい、気絶しているだけよ。」

 

そう言うと彼女は輝夜をユニ達の方へ投げた。

 

「輝夜!!」

 

それを見た霊夢が輝夜を受け止める。そんな中、エリュシオンが口を開く。

 

「さぁて、お喋りも過ぎたし、私はそろそろ・・・。」

 

と、彼女が続きを言おうとした時だった。突如エリュシオンの背後に何かが落ちてきた。その衝撃で地響きがなる。そんな中、エリュシオンはゆっくりと後ろを振り返る。

 

「エェェェェリュシオォォォォォォン!!」

 

上から落ちてきたのは背丈は4mほどで四つの腕に大きな翼を持っている悪魔のような姿をした異形なものだった。異形のものはエリュシオンの名前を叫ぶとそのまま彼女に拳を叩きつけた。それを見たユニ達が同時に声を上げる。

 

「カオス!!」




突如現れたカオス。一体何故・・・。
次作もお楽しみに!

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