東方混沌記   作:ヤマタケる

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第147話 裏の世界へ

時は最終決戦の朝。今日の戦いに備えてユニ達は準備をしていた。

 

「いよいよ、今日ね。」

 

「あぁ、ワクワクするぜ。」

 

ユニと魔理沙がやる気を見せる中、九十九だけはまだ寝息を立てていた。それを見た霊夢が口を開いた。

 

「ねぇ、まだ九十九寝てるわよ。」

 

「起こすか。」

 

そう言うと楓はゆさゆさと九十九の体を揺すり始めた。

 

「ん……。」

 

「あ、おはよう九十九ちゃん。」

 

「うん、おはよ……。」

 

「あんた随分と気持ち良さそうな寝息を立てていたけれど、何かいい夢でも見たの?」

 

「……うん、友達の夢を見てたの。凄く大切な友達の夢をね。」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、おはようございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン、とノックの音がした瞬間にユニ達の部屋に一人の女性、優理花が入ってきた。彼女を見てすぐに口を開いたのはユニだった。

 

「優理花さん、おはようございます!」

 

「おはようございます。」

 

彼女に続いて九十九も挨拶をする。

 

「朝食は既に準備されています。食堂へ必ず足を運んでください。今日が世界の存続に関係する決戦の日なのですから。」

 

「えぇ、分かっているわ。」

 

「当たり前です。」

 

「……男のみんなはもう行ってるんですか?」

 

霊夢と楓が言った瞬間、九十九が優理花に聞いた。

 

「えぇ、皆来ていますよ。後はみなさん女性達だけですね。」

 

「ならすぐに行かないとだな。早く行こうぜ!」

 

「ご飯のメニュー、何かしらね。」

 

「白米は勿論、パン、うどん、蕎麦、ラーメンなど朝食としては少し多いかもしれませんが今日は特別です。早くしないと無くなるかもしれませんよ?」

 

「それは嫌ですね。早く行こう。」

 

そう言うとユニ達は食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に入ると既に多くの幻想郷の人達や帝王軍の兵が朝食をとっていた。そんな中、一際うるさい場所があった。男衆が集まっている場所だ。それを見て楓が口を開く。

 

「・・・なんかあそこだけうるさいな。」

 

「今日決戦だっていうのによく騒げるわね。」

 

ユニと楓が呆れている中、声が響いた。

 

「テメコラ悠岐!その蕎麦は俺んだぞ!!」

 

「うるせぇ!!お前のもんは俺のもんだ百々!!」

 

「大人しく食べましょうよ……。あ、次は味噌ラーメンをお願いします。」

 

「暁君に同意だね。あ、僕はコーンフレークで。」

 

「大人しく出来るか!あっ百々!!それは俺のパンだぞ!!」

 

「蕎麦の仇だ!」

 

「朝から元気ですね、男性方は。」

 

男達の様子を見てニコニコと笑みを浮かべながら感心する優理花に魔理沙が口を開いた。

 

「感心している場合じゃないぜ優理花さん。うるさいから早く止めないと。」

 

「私行ってきますわ。すこし試したいこともあるので。」

 

「あぁ、頼むぞ九十九。」

 

(九十九ちゃんの口調、変わったかな?)

 

九十九の口調を気にするユニと全く気にしない楓。そんな中、九十九はそう言って自身の白いスマホを取り出し、何かを起動した。

 

「『さぁ、行きましょう。喧嘩の時間よ』」

 

その言葉と共に、スマホから黄金のカラスが飛び出し、彼女の周囲を飛び回り始めた。

黄金のカラスを伴い、九十九は騒ぐ2人にの間に割って入った。

 

「なっ、九十九!?」

 

「げぇ、九十九!?……雰囲気変わった?」

 

「『ラウンドフラッシュ』」

 

その瞬間、悠岐と百々、というよりは男衆の回りが光り始めた。

 

「……逃げよ。」

 

「あ、これ間に合わないわ。」

 

光った瞬間、男達に強烈な一撃が炸裂した。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ダァァァァア!?」

 

「うーん、またこんなy」

 

騒いでいた2人はその一撃をモロにくらい、巻き込まれた琥珀は死んだ。

 

「な、なんて一撃なの・・・」

 

「あれは一体・・・。」

 

「ラウンドフラッシュですよ。爆絶なる者の一人であるエルドラドが使う力です。かなりのパワーですね。」

 

疑問を抱くユニと楓に優理花がすかさず答えた。

 

「あれを見て感心できる優理花さん、あんたすごいぜ・・・。」

 

魔理沙の言葉は優理花には聞こえなかった。

 

「なんで九十九さんがエルドラドのラウンドフラッシュを? あ、次はとんこつラーメン下さい。」

 

「あいよ!とんこつラーメンいっちょ!」

 

暁がとんこつラーメンを貰う中、悠岐がヨロヨロになりながら起き上がった。

 

「な、なんで九十九がラウンドフラッシュを・・・。」

 

「俺が、知るか、よ……。」

 

「さて、なんでだと思う?当てられたら御褒美をあげてもいいわよ?ちなみに琥珀は参加禁止ね。」

 

首を少しだけ傾げた悠岐はすぐに答えを導きだした。

 

「お前、エルドラドの力を使えるのか?」

 

「エルドラドだけじゃないの。ほかのみんなのも使えるわ。」

 

「お、恐ろしい奴だ・・・。」

 

そう言うと彼はヨロヨロになりながら百々の元へ行き、言う。

 

「もう飯を取り合うのはやめようぜ。」

 

「セ、セヤナ-」

 

二人が話している中、食堂に一人の男が入ってきた。

 

「あの人はまさか?」

 

「えぇ、セコンドさんですよ。現世の帝、強いて言えば現世で一番のお偉いさんと言ったほうがいいですね。」

 

ユニの疑問に次々と答えていく優理花。そんな中、生き返った琥珀が口を開く。

 

「ただいまー。っと、ギリギリ間に合ったかな?」

 

「間に合ったようだな。ちょうどセコンドが来た。」

 

「それは良かった。……あ、おにぎり貰うよ。」

 

「あぁ、いいさ。」

 

悠岐と琥珀かを話している中、セコンドが口を開いた。

 

「諸君、遂にこの時がやって来たな。我々は現世の・・・いいや、表の世界の存続を掛けた戦いに挑む。諸君らは人それぞれ覚悟を決めている筈。我々の世界のため、絶対に勝つ。それだけだ!」

 

そう言った瞬間、兵達がウォーと声を上げ始めた。

 

ypaaaa(ウラー)!……なんてね。」

 

「・・・暁?」

 

「なんでもないよ姉さん。ただふざけただけですから。」

 

「そう・・・。」

 

「それでは皆の衆、すぐに準備に取りかかれ!」

 

セコンドが言った瞬間、兵達が食器等を片付け、皆食堂から出ていった。そんな中、百々が口を開いた。

 

「……俺達も、行くか?」

 

「そう、ですね。急いだほうがいいですね。」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は食堂を急いで出ていった。一人を除いては。

 

「あ、待って、まだ食べ終わって……。あー、アルミ何処にあるかな。」

 

「これをお使いください。」

 

どこから取り出したのか、優理花は琥珀にアルミを渡した。

 

「どうも。さて、行きますか。」

 

残っていたおにぎりと唐揚げを数個ずつ、アルミホイルに包み、簡易的なお弁当を10個作って琥珀は後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、帝王軍の兵や幻想郷の人達が集まる御所にユニ達も到着した。と、ユニが馬に乗る悠岐と楓を見て言う。

 

「そう言えば悠岐君と楓ちゃんは馬に乗るんだね。」

 

「そういやそうだな。」

 

彼女に続いて百々も言う。

 

「俺達は空を飛べないからな。」

 

「移動手段は馬なんだ。」

 

そう言いながら楓は辺りを見回す。辺りを見ると戦車や銃を持つ兵が多くいた。と、唐突に百々が口を開いた。

 

「……九十九も飛べなくないか?」

 

「確かに・・・。暁は飛べる?」

 

「僕は『飛べます』よ姉さん。まぁ、嘘ですけどね。」

 

「大丈夫。飛べるようになったから。蓬莱、チカラ借りるね。」

 

ふわり。と九十九がその場から空へ浮いた。それを見た楓が納得した表情をする。

 

「なら心配ないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「九十九ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突に優理花の声が響いた。後ろを見ると走ってきたのか、息を切らした優理花がいた。

 

「何かしら、優理花さん。」

 

「・・・いいえ、ドリームランド。」

 

その言葉を聞き、九十九の柔らかかった表情が変わった。

 

「何処で気付いたの?」

 

「あなたと今日会った時から気づいていました。実は私は閉ざされた扉の鍵を持つ者との契約者なんです。あなたにあるものを託そうと思って。」

 

そう言うと彼女は首に着けていたネックレスを外し始めた。

 

「そのネックレスは……?」

 

「アヴァロン、ニライカナイ、シャンバラ、エデン、黄泉の鍵を伸縮化したものです。取り外せば元の大きさに戻ります。私と同じ存在であるあなたなら使いこなせる筈です。」

 

そう言うと彼女は5つの鍵の付いたネックレスを九十九に渡した。

 

「『伝説の理想郷』たちね……。」

 

受け取ったネックレスを九十九は首につけた。

 

「では私はこの辺りで。みなさん、気を付けてくださいね。」

 

そう言うと優理花は何処かへ行ってしまった。それと同時に一人の女性がユニ達の元へやって来た。

 

「……1周目の持つ『鍵』。3周目の持つ『錠』。これは、酷いことになりそうですね。」

 

そのやり取りを見ていた暁が、ポツリと言葉を漏らした。

 

「あなたが百々さんね。」

 

そう言いながら一人の女性が百々の前にやって来た。彼女を見た悠岐が少し目を見開いて言う。

 

「ミクじゃねぇか。どうしてここに?」

 

「百々さんやその他の人達に言いたいことが会ってきたのよ。」

 

「なんの用でしょうか、私はあなたを知りませんが。」

 

「あなたが私を知らないのは知っているわ。初めて会うもの。私はミク。悠岐達の仲間よ。あなた達に言いたいことがあるの。」

 

そう言うと彼女は大きく息を吸い込み、口を開いた。

 

「悠岐と楓を、よろしくお願いするわ。」

 

「ミク!?」

 

驚きの声を上げてしまう楓。

 

「……みっくみっくにしーてやんよー♪」

 

暁の言葉を聞いた瞬間、ミクは暁に銃口を向け、

 

「禁句よ?」

 

満面の笑みでそう言った。

 

「アッハイ」

 

「勿論、任せて!私達が悠岐君や楓ちゃんを守って見せる!」

 

「ありがとう、ユニ。」

 

「……なぜ彼はああも地雷を踏み抜いていくのか。」

 

ミクが去っていった瞬間、ユニ達の元へ二人の男と少女がやって来た。二人を見た瞬間、霊夢が口を開く。

 

「篁に妹子じゃない。二人も行くの?」

 

「勿論です。世界の存続のためにエリュシオンを倒します!」

 

「よぉ、篁。死ぬんじゃねぇぞ。」

 

「フン、当たり前だ。お前こそな、百々。」

 

2人は握り拳を作り、それを軽くぶつけ合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れました、セコンドさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声がユニ達の後ろから聞こえた。その声を聞いたメルト・グランチが後ろを見て言う。

 

「待っていたよ、月人達よ。」

 

「兵も集めておきましたわ。これで少しは楽に戦える筈よ。」

 

「油断は出来ませんよ、お姉様。相手は世界を滅ぼすことの出来る神。」

 

そう言うと二人はメルト・グランチの乗る馬の後ろに立つ。それを見た琥珀が口を開いた。

 

「……月人も来てるなんて、ホントに総力戦だね。」

 

「あぁ、驚いたよ。まさか月人にも出撃要請を出すとはな。」

 

悠岐が言った瞬間、馬に乗るセコンドの前に巨大な空間が開いた。

 

「あれが裏の世界への入り口か・・・。」

 

「いよいよね。」

 

「あぁ。」

 

「みんな、気を付けてね。向こうも攻めてくることなんて分かってるから出待ちされてる可能性もある。」

 

「そうですね。そうしますよ。……逆に踏み抜いて挑発でもするか?」

 

「それもいいかもしれねぇな。」

 

「皆、余に続け!!」

 

そう言った瞬間、セコンドは自分の武器である勺を上げ、空間の中に入っていった。それに続いて紅魔組や守矢組、月人組、帝王軍が空間の中へ入っていく。それを見た悠岐は少し笑みを浮かべて言う。

 

「俺達も行かねぇとな。」

 

「半人半鬼伊吹百々、出る!」

 

「あ、そうやっていく感じ?」

 

琥珀が言った瞬間、百々に続けて暁が口を開いた。

 

「現代の博麗魄霊暁、出陣します。」

 

「堕天の右腕出野楓、参る!」

 

悠「堕天の左腕西田悠岐、参ります!」

 

「えっと・・・幻想郷の守護者アイアルト・ユニ、行きます!」

 

地球(ほし)の神々の理想郷ドームランドこと星熊九十九、出ます!」

 

「二代目知識の妖精琥珀・イーグナウス、死なない程度に頑張るよ。」

 

「行くわよ!」

 

そう言うとユニ達も空間の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間から出るとそこは草木に覆われた、夜の草原だった。それを見た楓が口を開いた。

 

「ここが、裏の世界・・・。」

 

「……思ったよりも普通ですね。」

 

暁が言った瞬間、セコンドが辺りにいる者全てに聞こえるくらいの声で口を開いた。

 

「皆、よく聞け!ここから東南へ約8km先にあるエリュシオンの城へと向かう。その途中に帝都に辿り着くだろう。恐らくそこで幻獣達との交戦に入る。心するがよい!」

 

はっ!と兵士達が声を上げた。

 

「幻獣……ね。テルヒ、悪いけど会ったら容赦はしないからね。」

 

空に向かって、九十九はそんな言葉を送った。

 

「行くぞ!余に着いてこい!」

 

そう言うと彼は馬を走らせた。それに続いて兵士達や幻想郷の人達も移動を始める。

 

「頼むぜ、ケイ。」

 

そう馬に言った悠岐は馬を走らせた。

 

「じゃあ、私たちも遅れないように行きましょう姉さん。」

 

「えぇ、そうね。」

 

「行くぜ!」

 

そう言うと魔理沙は箒に又借り、宙に浮かんだ。そして悠岐と楓の乗る馬と同じスピードで飛んだ。

 

「みんな、やる気MAXだねぇ。」

 

チラリ。と琥珀は自分たちの背後へ視線を向けた。

 

「まだ大丈夫かな。」

 

「琥珀君?」

 

彼の様子を見ていたユニが口を開いた。

 

「いや、なんでもないよ。知識と体験を合わせてただけさ。」

 

「そっか。さ、早く行きましょう。」

 

「そうだね、行こうか。みんな結構先に行ってるみたいだし。」

 

そう言うと二人は悠岐達のあとを追った。




裏の世界へやって来たユニ達はいよいよエリュシオンとの最終決戦へ!!
次作もお楽しみに!

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