東方混沌記   作:ヤマタケる

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エリュシオンに果敢に挑んだルシファー。しかし彼女の前では手も足も出ず・・・。


第151話 邪魔をする幻獣

場面は変わってユニ達。彼女達はメルト・グランチの指示のもと、エリュシオンの拠点である鋼鉄城へと向かっていた。と、悠岐が突然辺りを見回し始めた。それに気づいた琥珀が彼に話し掛ける。

 

「どうしたんだい?悠岐君。辺りを見渡して。」

 

「いや、何か変だなと思ってな。」

 

「変?特に変わった様子はないと思うけれど・・・。」

 

辺りを見回しながらユニが口を開く。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「さっきの廃帝都と比べて何故かこの辺りが静かすぎる。エリュシオンのことだ、俺達へ幻獣を向かわせてもおかしくない。なのに帝都を出てから1匹も遭遇しない。エリュシオンの奴、何か企んでるのか?」

 

「もしかすると主戦力である五大王の軍を潰すために幻獣全てを向かわせているのかもしれない。となると奴は私達を一人で倒すかあるいは他の協力人と倒すかだ。」

 

悠岐の言葉を聞いて楓が自分の推理を言い放った。そんな彼女に百々が言う。

 

「アイツがどう攻めるのかは知らねぇけどよ、俺達の目的はただ1つだろ?」

 

「えぇ、そうですね。エリュシオンの討伐。それが僕らに与えられた使命です。」

 

「使命ってほどではないけれど五大王達が来るまでの時間稼ぎね。」

 

「・・・そうですね、姉さん。」

 

「どうしたの?暁。何か不安なことでもあるの?」

 

「・・・いえ、何でもありません。先を急ぎましょう。」

 

「そう・・・。」

 

霊夢と暁が話している中、何かを見つけたユニがある方向を指差して言う。

 

「みんな見て!あんなところに何かあるわ。」

 

ユニの指差す場所を一同は同時に見る。そこには赤い液体が流れている紫と白の大きなものがあった。それを見た魔理沙が目を細めて言う。

 

「・・・なんだありゃ?」

 

「何かしら・・・うっ!?」

 

突如ユニが地面に降り、その場で嘔吐してしまった。

 

「おいユニ!?」

 

それに気づいた百々が彼女の側に寄り、背中を摩る。

 

「あ、ありがとう百々君。」

 

彼に続いて霊夢達もユニの元へ寄る。と、楓が大きなものを見て口を開く。

 

「あのデカいものから腐敗臭が漂ってるな。きっと何処かに死体が転がってるんだろう。」

 

「死体か・・・。にしてもあのサイズの生物なんていました?」

 

「少なくとも現世にはいねぇな。・・・っておい、あれってもしかして!」

 

そう言うと悠岐は恐る恐る大きなものに近づいた。

 

「ちょっと悠岐!急に動き出したらどうするのよ!」

 

唐突に動いた悠岐に霊夢が言う。そんな彼女とは別に悠岐は大きなものをじっくり眺め、口を開いた。

 

「間違いない、コイツはBEATだ!」

 

「べ、ベータ?」

 

聞き覚えのない言葉にユニ達は首を傾げる。そんな彼女達に楓が口を開く。

 

「ガイルゴールが生み出したのかどうかは知らないが現世では人類に敵対的な地球外起源種とされている。しかし驚いたな、大きさ的には要塞(フォート)級だな。本でしか見たことがないから実物を見るのは初めてだ。」

 

「大きいほうなの?」

 

「観測されている中ではな。実際はもっとデカい奴がいるのかもしれないが私達人類の知る限界はここまでなんだ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

ユニと楓が話している中、暁がBEATの死体をじっくり観察していた。それに気づいた九十九が彼に言う。

 

「どうした?暁。」

 

「いや、どうも気になったことがありまして・・・。先程からこのBEATとやらの死体の中から何かを食べる音がしません?」

 

「音?確かに少ししたかもね。」

 

暁と琥珀の言葉を聞いてユニ達は要塞級の近くで耳を澄ませる。すると中からクチャ、クチャと何かを食べているような音が響いた。

 

「・・・これ、中に何かいない?」

 

何かを察したユニがいち早く口を開いた。

 

「でもBEATを捕食する奴なんて聞いたことがないぞ。」

 

「表ではな。でも裏は違うかもしれないぞ、楓。」

 

百々が楓に言った時だった。突如BEATの死体の中から身体中に血が付着した大きさ8mほどのある巨大なコウモリが姿を現した。

 

「ひっ!」

 

「げ、幻獣だ!!」

 

腰を抜かしてしまうユニと思わず声を上げる魔理沙。と、巨大なコウモリが空を見上げて耳をピクピクと動かし始めた。それを見た琥珀がユニ達に言う。

 

「みんな急いでここから離れよう!今あのコウモリが仲間を呼んでるよ!」

 

「仲間って他の幻獣をか!?」

 

百々が琥珀に言った時だった。突如辺りがズシン、ズシンと揺れ始めたかと思うとユニ達が通ってきた廃帝都の方から大量の巨大な生物が迫っていた。その種類はワニやゴリラ、ユニコーンやバッファローなど様々である。

 

「ひっ!」

 

「マジかよ・・・。あんな数相手に出来るわけがねぇ、急いで逃げるぞ!!」

 

悠岐の言葉を聞いてユニ達は急いで飛び上がり、百々は魔理沙の箒にまたがった。

 

「ちょっ、百々!?」

 

「悪いな、魔理沙。乗せてもらうぜ!」

 

「仕方ないぜ!」

 

そう言うと魔理沙は百々を乗せて空に飛び上がり、幻獣の大群から逃げ出す。馬に乗ったまま楓が口を開く。

 

「マズイな・・・。いくら馬が持久力があるとはいえ、あのスピードで追いかけられればすぐに捕まってしまう。」

 

「馬で追いつかれるって結構ヤバイな・・・。」

 

「それに、上を見てみろ。コウモリやタカだって追いかけてきてる。もしあの走ってきてる奴らの体力がなくなったとしても空から追いつかれる。」

 

「どうしろって言うのよ!」

 

ユニ、九十九、楓が話している中、百々が後ろを見ながら言う。

 

「こうなったら少しでも対抗するしかねぇ!」

 

「ちょっと百々君!?」

 

百々を琥珀が止めようとするが遅く、既に百々は弾幕をゴリラの幻獣に放っていた。だがゴリラは百々の弾幕をまるで何もなかったかのように受け、ユニ達を追い続ける。

 

「オイ嘘だろ?弾幕が効かねぇぞ!?」

 

「幻獣に弾幕が通用しないとは、幻想郷の連中に対策してきているのか!」

 

そうこう話している内に幻獣の大群はユニ達のすぐ後ろまで迫っていた。それを見た悠岐が口を開いた。

 

「オイオイ、これはマジでヤバイぞ。下手したら全員奴らのエサになっちまう!」

 

「嫌ダァァァ!!私は食べられたくありませぇぇえん!!」

 

「暁、しっかりして!!」

 

発狂してしまう暁を見て気を戻させる霊夢。無理もない、すぐ近くに死が迫っているのだから。全員(百々、琥珀を除く)が死を覚悟した時だった。突如空からヒュルルルルという音が聞こえたかと思うと大群の中心目掛けて何かが飛んできた。そして大群の中心に落ちた瞬間、強大な爆発が起こった。

 

「!?」

 

「な、何が起こってるんだ?」

 

あまりの突然の出来事に困惑するユニ達。そんな中、大群に次から次へと大量に何かが落ち、爆発する。と、楓が口を開いた。

 

「これは小型ミサイルか!?」

 

「ミ、ミサイル?」

 

聞いたことのない言葉を聞いて首を傾げる幻想郷組。そんな彼女達に琥珀が言う。

 

「現世にある、所謂現代兵器ってやつだよ。どうやら幻獣達には有効のようだね。」

 

「で、でもこれは一体誰が飛ばしているの?」

 

ユニが言った瞬間、九十九が廃帝都の方向を見て言った。

 

「派手にやってくれるけれど頼りになるな、あのオッサン。」

 

「・・・メルト・グランチか!」

 

九十九の言葉を聞いて楓がすぐに推測した。そんな中、霊夢が後ろを見ながら言う。

 

「どうやら幻獣達はそのミサイルってヤツに驚いて混乱してるみたいね。今の内に先を急ぎましょう。」

 

「うん、そうだね。」

 

琥珀が言った時だった。突然悠岐が何かに気づいてある方向を見る。

 

「どうなさいました?悠岐さん。」

 

「あれ、鋼鉄城じゃないか?」

 

そう言うと彼は正面を指差す。そこには堂々と建つ巨大な城が姿を現した。それを見た百々が口を開く。

 

「鋼鉄城だ、間違いない。」

 

「なんで確信できるんだ?」

 

百々の言葉に魔理沙が食いつく。

 

「昔、エリュシオンといた時、ここに来たのを覚えてる。」

 

「なるほど、なら話は早い。すぐにあそこへ向かおう。」

 

悠岐が言うとユニ達は目の前にある城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ユニ達は城の前に到着した。悠岐と楓は馬から降りる。

 

「お前は剛岐の所へ行くんだ。決して戻ってくるんじゃないぞ。」

 

そう言うと悠岐は馬を軽く抱きしめた。彼は続いて楓も馬を抱きしめる。そのまま馬はユニ達の辿っていった道を戻っていった。と、百々が悠岐に言う。

 

「いいのか悠岐。もしかしたら幻獣に食われちまうかもしれねぇぞ?」

 

「ケイは剛岐が育てた利口な馬だ。そう容易く危険な場所に行くヤツじゃない。」

 

「そうか。」

 

「よし、中に入りましょうか。」

 

暁が城の門を開けようとした時だった。突如楓が何かの気配を感じ、暁の首襟を掴んで引っ張った。

 

「ぐえっ!?何するんですか楓さん!」

 

暁が言った瞬間、先程まで彼のいた場所に槍が降ってきた。それを見た彼は小刻みに震えた。そんな彼に楓が溜め息をつき、言う。

 

「危なかったな、暁。もし私が一歩遅かったらあの世に行ってたぞ。」

 

彼女が言った時だった。突如ユニ達の目の前に何かが降りてきた。それを見たユニ達は同時に戦闘の準備に入る。降りてきたのは黒いフードのついたコートを着ていて黒い目、腰にはホルスターをつけている男だった。男を見た百々が口を開く。

 

「テメェ、誰だ?エリュシオンの手下か?」

 

すると男はフッと笑うと顔を上げ、口を開いた。

 

「誰ねぇ・・・。とりあえず復讐者(アヴェンジャー)、とでも名乗っておくか。」

 

「何、ア◯ンジャーズ?お前あの有名なヒーローの仲間だったのか!?」

 

悠岐の突然の言葉に一同はずっこける。そんな中、同時にずっこけた男が口を開く。

 

「ちげぇよ!!復讐者だ!!」

 

「え、ア◯ンティーズ?お前ヒーローじゃなくて有名youtuberの一員だったのか!?だったらサインくれよ!」

 

「そっちでもねぇよ!復讐者だ!お前は耳がジジババか!」

 

ぜぇ、ぜぇと息を切らしてしまう男。と、息が整った瞬間、ユニを見て一言言った。

 

「お前を探していたぜ、アイアルト・ユニ!」

 

「え、私・・・?」




幻獣の大群から逃れたユニ達の前に現れた謎の男。彼の企みとは一体・・・。
次作もお楽しみに!

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