龍神とバベルの乱入を予想していなかった五大王は目を見開いて見ていた。と、紫がセコンドに言う。
「龍神様とバベル。まさか、ユニが呼び寄せたって言うの!?」
「いやおそらく龍神、バベルの意思だ。世界破滅の危機と感じたのであろう、彼らが姿を現すのも分からなくもない。」
「それにしてもとんだお祭り騒ぎになるねぇ。」
そう言いながら2人の背後からゆっくりと肩を揉みながら加奈子が歩み寄る。その後ろには諏訪子にエリュシオンとの戦闘によって戦線離脱していた小宝剛岐がいた。3人を見た紫が細めて口を開く。
「あなた達はもう傷は大丈夫なの?」
「何言ってんだい、世界の終わりが目の前に迫ってるんだよ?呑気にずっと眠ってられないって。」
「そうよ、こんなの放ってあげる訳ないじゃない。」
「散々やられたんだ、お返ししてやらねぇとな。」
加奈子、諏訪子、剛岐が言うと紫はエリュシオンの方を見て口を開いた。
「でも、どうやって奴を倒そうって言うの?現代兵器や弾幕による攻撃はおろか、バベルの一撃を喰らっても平然としているあの超巨大な化け物相手に倒す術はあるって言うの?」
「先程ガイルゴールが手下の化身に何かを指示してどこかに行かせていたのは見たけど、何考えてるんだろうね。」
加奈子が呟くと龍神とバベルが2体同時にエリュシオンに向かって攻撃を放つ。その攻撃はエリュシオンに容易く命中するも一切傷がつかない。それを見た魔理沙が箒に跨り、空から眺めながら頭を掻いて言った。
「ったく、神様の攻撃ですら効かないなんて埒があかないぜ。」
「魔理沙!」
そう言う彼女の名前が聞こえたかと思うとユニと琥珀が彼女の元へやってきた。そのまま琥珀が続けて口を開く。
「さっき悠岐君、楓ちゃん、影裏君の様子をチラッと見てたんだけどどうやら爪が弱点っぽいね。悠岐君の攻撃が奴の足の爪に当たった瞬間に奴は今まで兵器の方を見ていたのに急に悠岐君達へ目線を向けた。おそらく爪を破壊すれば何か見えてくるかもしれないね。」
「なるほど、爪を攻撃か。了解したぜ!」
「それは本当なのか!」
その声が聞こえたかと思うと別行動をしていた筈の霊夢、暁、百々、九十九がやってきた。それを見たユニが自身なさげに口を開く。
「でも、これで倒せるのかな。私達の攻撃は全く効いてなかったし、それどころか琥珀君の力を得た五大王の方々の攻撃、更には龍神様やバベル様の攻撃だって一切ダメージを受けてない奴を・・・。」
「いつまでナヨナヨしてんだよユニ!!」
「あいたっ!?」
そう言って百々は彼女の頭に1発チョップを喰らわした。そして再び口を開く。
「幻想郷の守護者であるお前がそんなのでいいのかよ?俺達は今、表の世界の人達のために、そしてこの戦いで命を落とした人達のために戦うんだぞ。不安になってる場合じゃねぇんだよ!!」
「・・・うん、ごめん百々君。私も変わらなきゃ。世界を守るって、決めたんだから!!」
そう言うとユニ達はエリュシオンの方を見る。と、ユニ達の元へ龍神とバベルが寄り添うように飛んできた。そして龍神が呆然とするユニ達に向かって言う。
「我々が奴を惹きつける。その間に攻撃せよ。」
「・・・感謝します、龍神様。・・・てか喋れるんですね。」
彼女の最後の一言で一同はずっこける。すぐに起き上がった龍神とバベルは同時にエリュシオンに向かっていき、攻撃を放ち始めた。
「行くわよ!!」
霊夢の合図でユニ達は戦車の砲弾に当たらぬようエリュシオンの手の懐へ行き、一斉に弾幕を放った。
「これでもくらえ!!」
そう言いながらユニは青い光を手に集めてそれをエリュシオンの爪に向かって放つ。7人の攻撃は怪物の右手の爪に命中したかと思うとそのままボロボロと砕け始めた。
「やった!砕けた!!」
そう言ったのも束の間、エリュシオンの顔は龍神、バベルからユニ達の方へと向けられた。それに気づいた暁が目を見開いて叫んだ。
「奴の顔がこっちを見た!!何かきます!!」
その瞬間、巨大な左手の攻撃が7人を襲い掛かろうとゆっくりと動き始める。
「全員避けろ!!」
百々の言葉でユニ達は咄嗟に左手の勢いから離れることに成功した。だが怪物の目は7人を見失ってはおらず、口から再び紫色の光を貯めたかと思うとそのまま7つのに分裂させてユニ達に向かって放ったのだ。
「え?」
「やばっ!!」
思わず声を上げる琥珀と九十九。そのまま7人は咄嗟に弾幕を放って攻撃を相打ちにしてダメージを軽減させようとした。だが7人の放った攻撃は一瞬にして変えてしまったかと思うとそのまま光は7人に命中してしまう。
「うわぁ!!」
「きやぁ!!」
攻撃をまともにくらったユニ達はそのまま勢いよく地面へと落とされていく。
「ユニ!!」
「霊夢!」
咄嗟にルシファーがユニを、紫が霊夢を空中で受け止めた。
「ル、ルシファー。ありがとう。」
「感謝するわ、紫。」
2人に礼を言うユニと霊夢。そんな中、アリスと勇儀が動いていた。
「魔理沙!!」
「おっしゃ受け止めるぞ暁!」
アリスは人形達を操って魔理沙を受け止め、勇儀はそのまま暁を地上で受け止めた。地面を数メートル滑らせたが勇儀は暁を受け止め切った。
「アリス!ナイスだぜ。」
「ありがとうございます、勇儀さん。」
暁がそう言った瞬間、ペシャッという音と共に琥珀が地面に叩きつけられた。それに続いて百々、九十九が地面を滑らせながらも地面に着地した。
「クソッ、なんて威力だよあれ。」
「私達の攻撃じゃどうしようも出来ない。」
「百々!!九十九!!追撃がくるぞ!!」
その声のする方向を見ると影裏が楓と悠岐の乗る馬の影から2人に叫んでいた。その声を聞いた2人はハッとなってエリュシオンの方を見る。既にエリュシオンは口に紫色の光を溜めていた。それを見た龍神とバベルが止めにかかる。エリュシオンは光を溜めたまま右翼でバベルを弾き飛ばし、長い尻尾で龍神を勢いよく弾いた。それと同時に2人に向かって紫色の光の攻撃を放ったのだ。
「マズイ!!(クソッこの距離じゃ間に合わない!!)」
咄嗟に影裏が援護しようとするが既に攻撃は百々と九十九の目の前まで迫っていた。
「やべっ、九十九!!」
「お兄さん!?」
咄嗟に百々が九十九を覆って彼女を守る体制に入った、その時だった。突如1匹の影が2人の横に現れたかと思うとそのまま2人を咥えて背中に乗せると光から離れていった。2人がいなくなった場所から爆発が起こり、辺りを襲う。
「ぐっ、何だ今のは!?」
「ほんの一瞬の出来事だ。2人を連れてどこかへ行ったぞ?」
「おい見ろよ!」
困惑する悠岐と楓とは別に影裏がある方向を指差す。そこには2人の襟首を咥えて立つ、1匹の全身青い狼がいた。そのまま狼は2人を下ろす。狼を見た百々が目を見開いて口を開いた。
「テルヒ!!何でここに!?」
「テルヒ、どういうつもりなの?」
「あれは何だ?」
声を上げる百々、九十九にテルヒが一言言う。テルヒが見つめる先にはエリュシオンの姿があった。と、再びテルヒが口を開く。
「あの怪物は何だと言っているのだ、百々。」
「テルヒ、驚かないで聞いてほしい。あれは、エリュだ。」
「・・・そうか、何となくそんな気がしたよ。」
そう言うテルヒは冷静ながらも目の奥には何か思っているのだと九十九は気づいた。そのままテルヒは再び言う。
「私にも、
そう言うテルヒの言葉にはどこか寂しそうだった。と、テルヒが百々、九十九の方へ向いて口を開いた。
「鋼鉄城の中にも触手が侵攻し、多くの幻獣達、囚われの人間達を取り込んでいった。私とオスカーとパンドラは無事だがそれ以外は皆取り込まれていった。もうあれはエリュとは言えんな。」
「奴、幻獣中まで侵攻して全てを取り込むつもりだったのね。」
「パンドラはオスカーと共に安全な場所にいる。百々、九十九、私もこの戦いに参加する。そして協力させてほしい。もはやこれはお前達表の者達だけの問題ではない、この裏の世界まで崩壊しかねない。」
「いいのかテルヒ?」
「勿論だ。そしてお前達は今あの姿のエリュの弱点を探しているらしいな?ならば!」
そう言うとテルヒはゆっくりとその場で座り始めた。そして再び言う。
「私の背中に乗れ。飛んだばかりでは細かいところは見ることはできんぞ。」
「おっしゃ、それならお言葉に甘えようかな。」
そう言うと百々はテルヒの背中に跨る。そのまま百々は九十九の手を取って彼女を乗せる。2人を乗せたテルヒはゆっくりと立ち上がり、口を開く。
「さぁ行くぞ。私は少々手荒だぞ?」
「構わない、な?九十九。」
「えぇ、問題ないわ!」
「よし、言質は取ったぞ。」
そう言うとテルヒは空へ向かって一声遠吠えをする。そして勢いよく走り出したかと思うとエリュシオンの後ろ脚へ向かって走り出した。そのままテルヒはなんと自身の爪を使ってエリュシオンの体を登り始めたのだ。
「うぉぉぉぉぉ落ちるぅぅぅぅ!!」
「なんで登れんのよぉぉぉぉ!!!」
「言ったであろう?少々手荒だと。」
それを見ていたユニ、霊夢がぽかんとしていた。そんな2人とは別にルシファーは目を細めてテルヒの様子を見ながら言う。
「凶神の犬、テルヒ。噂で聞いていた以上の身体能力だな。」
その頃、テルヒはあっという間にエリュシオンの背中まで登るとそのまま頭へ向かって背中を登り始めた。その途中、百々がテルヒにがっちりしがみつきながら辺りを見回す。と、九十九が口を開く。
「ねぇお兄さん。何かあったかしら?」
「いや、何も見たからねぇ。」
2人が話している内にテルヒはあっという間にエリュシオンの頭の上まで登り終えた。そのままテルヒはエリュシオンの頭の角のところで泊まり、目をじっと見つめる。と、九十九が口を開く。
「・・・テルヒ?」
「見ろ。」
そう言うとテルヒはくいっと頭を動かしてエリュシオンの目の方を向けるようにした。そのまま2人はエリュシオンの目をじっと見つめる。よく見るとエリュシオンの目の奥に何か動いているものがあるのを2人は確認した。その奥には紫色の泡のような者に閉じ込められている1人の青年の姿がちらりと見えた。その瞬間、九十九が目を見開いて叫ぶ。
「アルカディア!!」
飛び出しそうになった九十九を百々は無理矢理止める。その時、青年の姿が奥へと消えていったかと思うと右腕だけ異常に発達した大男が青年同様紫色の泡の中で閉じ込められているのを百々は見て叫んでしまう。
「ドゥーム!!」
「待て、この状況で助けられる訳ないだろう。」
飛び出しそうになる百々、九十九を制止させてテルヒはじっと見つめる。続けて赤髪の男、両手に枝を持つ少女、緑色の探偵の服をきた少年少女、胸に大きな目がある少年、全身緑色の植物を持って何か祈る女性、ペンを持って何かしようとする少女、そして異形な姿をした巨大な怪物も泡の中に閉じ込められるのを見る。それを見たテルヒが目を細めて口を開いた。
「ニルヴァーナ、メメ、カルマ、アカシャの魂をも取り込んだかエリュ。それにかつて我々が仕留めた小僧達の魂も。」
「テルヒ、なんとかして助け出そう!」
「無駄だよ九十九。エリュの体内から出せたとて、所詮は魂。肉体がなければすぐには生き返らぬ。」
「・・・。」
そう言われた九十九は落ち込むように項垂れた。その瞬間、エリュシオンが突然動き出したかと思うとなんとその場で大きな咆哮を上げたのだ。
「おっと!」
「ぐぁぁぁあ!!」
エリュシオンのすぐ近くにいた百々と九十九は思わず耳を塞いでしまう。それを見たテルヒは咄嗟に彼女の頭から降りてそのまま彼女の体を降りていく。その頃、紫と霊夢は地上でエリュシオンを見ていた。
「・・・何か来る?」
霊夢がそうボソッと呟いた時だった。突如エリュシオンが翼を大きく広げたかと思うとその背中かはギロッと無数の目が開き始めたのだ。
取り込まれた仲間達、突然翼を広げるエリュシオン。一体何が起こるのか・・・。
次作もお楽しみに!