エリュシオンが粉々に砕け散っていったのをユニ達は息を荒くしながらみていた。その瞬間、影裏がその場に座り込んだかと思うとその場で吐血する。
「影裏!大丈夫ですか?」
すぐに暁が彼に寄り添う。それを見た悠岐が口を開いた。
「使ったら自分に負担がかかる系のやつか?」
「ご、御名答。ちょいと無理しちまったよ・・・。」
「でも、これで全て終わったんだし───!?」
霊夢が続きを言おうとした時だった。突如彼女は背後を振り返る。霊夢に続いてユニ達も一斉にその方向を見る。そこには銀髪の長い髪に血塗れの白いスーツと白いスカートを履いた女性が血を流しながらゆっくりとユニ達に歩み寄っていた。女性を見た悠岐が目を細めて口を開いた。
「エリュシオン・・・!!」
そう言うと彼は刀を彼女に向ける。と、楓が悠岐の刀を握る手に優しく手を乗せる。
「・・・楓?」
「大丈夫、殺気を感じられない。だがこの執念はなんだ?」
楓がそう言う中、エリュシオンは血を流し、ふらふらになりながら百々に近寄る。それを見た九十九が百々の前に立つ。
「九十九、いい。」
そう言って百々は九十九をどけてエリュシオンの元へと歩み始めた。
「あぁ、百々・・・。」
そう一言言うとエリュシオンはそっと優しく彼の体を抱きしめた。そして口を開いた。
「ねぇ百々、私達が初めてゴフッ・・・会った日のこと、覚えてる?」
吐血しながらエリュシオンは声を出した。彼女の様子を見て話す力もほぼ残ってないとユニ達は悟る。そんな中、百々が口を開いた。
「・・・忘れるもんか。アンタは、義母さんは俺のことを助けてくれた恩人じゃねぇか。見ず知らずの俺を拾い、そしてここまで育ててくれた。アンタは、俺にとっちゃ家族なんだよ。アイツらも・・・。」
そう言うと百々はそっと自分の体からエリュシオンを離す。そして彼女の頬に手を当てて再び言う。
「色々と辛かったよな。無理させてごめん、母さん。けど、ここまでやるのはやりすぎだよ。」
「・・・気に入らなかったの、あなた以外の存在が。あなたと私が、幸せなら・・・なんでもいいって・・・。」
「それじゃだめだ、母さん。母さんはずっと家族と家族との絆があれば怖いものはないって言ってたな。けど、それじゃ足りないよ。母さんには、友情が必要だったんだ。」
友情という言葉を聞いた瞬間、エリュシオンの体が震え始めたかと思うと彼女の頬に涙が流れ始める。それに気にせず百々は再び口を開く。
「俺は悠岐や楓、影裏のような別の世界の人達との間にも友情や絆はあると思ってるんだ。もしかしたら母さんの出会ってきて人間達が皆悪い奴らしかいなかったのかもしれない。けど母さんが殺してきた人達の中にはいい人だっているんだ。」
「・・・。」
「母さん、もう終わりにしよう。人間は滅んじゃいけない。人間がいるから世界が保たれている、秩序がある、そして絆がある。種族の違いなんて関係ない、モンスターだろうが妖怪だろうがさ。」
「百々っ!!ありがとう・・・ありがとう・・・!!!」
そう言うと彼女は勢いよく百々に抱きつき、その場で声を上げて泣き始めた。そんな彼女を百々は優しく抱きしめる。それを見たユニが声を出す。
「なんだか複雑な気持ちね。この感覚、なんて言ったらいいのかしら。」
「僕にも分からないよ。不思議な感じだね。」
そう言うと琥珀はゆっくりと空を見上げる。空は既に紫色の靄が消えていて満点の星空が輝く夜景となっていた。と、エリュシオンが胸元のポケットから何かを取り出したかと思うとそれを百々の前に見せた。それは銀色に輝く勾玉だった。
「母さん、これは?」
「もう母さん呼びはよしてよ。私はあなたのお母さんじゃないんだから。これはあなたへの贈り物。お守りとして持っておいて。」
彼女がそう言って百々が勾玉を受け取った時だった。突如彼女の体からグツグツと音が聞こえ始めたかと思うとエリュシオンの体が徐々に溶け始めたのだ。
「なっ!?」
「溶けてる!?」
思わず声を上げる魔理沙とユニ。そんな中、紫が琥珀に言う。
「師匠、何か知ってる?」
「いや、初めて見たね。」
「敗者の末路よ。」
その声が聞こえたかと思うとユニ達の背後から失った右腕の箇所を抑えて2人の白服の紳士2人と天使を背後に連れてガイルゴールがやってきた。そして再び口を開く。
「禁断の果実を口にしたものは力の代償として己の霊力を出し尽くした際に消滅する。」
「そんなことが・・・。」
そう一言言った紫は再びエリュシオンの方へと顔を向ける。そんな中、エリュシオンは呆然としている百々に向かって笑みを浮かべて口を開いた。
「そんな顔しないでよ百々。これは私が決めた運命なんだから・・・。」
そう言うと彼女も自分の体を見ながら震え声になっている。と、エリュシオンの両足が完全に溶けてしまい、エリュシオンは前のめりになる。だが両腕で上体を起こしたエリュシオンは溶けゆく自分を見て涙を浮かべながら百々に言う。
「あぁ、体が溶けていく。やだよ、私、消えたくないよ・・・。」
そう言うと彼女はゆっくりと百々に手を伸ばす。それを見た百々も彼女に手を伸ばす。そしてお互いの指が絡み合う寸前でエリュシオンの腕がその場で溶け崩れてしまう。
「あ・・・。」
「フフ、最後に手を繋ぎたかったなぁ。」
呆然となる百々にエリュシオンは笑って言う。そして涙を流しつつも満面の笑みを浮かべて、
「元気でね、百々♪」
そう一言言った瞬間、彼女の体が一気に溶けてしまい、彼女の原型がその場でなくなってしまった。
「あぁ・・・!」
それを見た百々は彼女が溶けてしまった場所へと這い、地面に落ちるエリュシオンだったものをかき集める。だがそれはすぐに液体状へとなってしまい、地面に溢れる。その瞬間、百々の顔からボロボロと涙が溢れ始めたかと思うと鼻を啜りながら叫んだ。
「エリュ・・・エリュ・・・エリュゥゥゥゥ!!!」
1人の少年の叫び声が辺りに響き渡る。だが誰もそれに対して声をかけることはなかった。彼の様子を皆泣きながら見守る者がいれば何も思わずただじっと見る者もいた。
表裏戦争──────終戦。