内通者の男と会ってから数時間経過後…
日が落ち明るかったパラオの市街地が暗くなり各家庭の灯りだけが光っている。
「そろそろ、時間だな…」
俺はバナージが向かっているであろう場所に向かった。
向かった場所はネオ・ジオン艦隊が配備されているドッグの片隅に位置し、人の出入りが少ない所であり、そこには目標人物であるバナージ・リンクスが居た。
「待たせた」
「あ、あなたは!?」
バナージが驚くのも無理はない…最後に会ったのは、インダストリアル7内の案内をしてくれた時だ。その時あった人が敵の拠点に居るのだからな。
「俺は地球連邦軍ロンド・ベル隊所属のシュウ・クラナド少佐。インダストリアルで会った時は名前しか言ってなかったね」
「軍の方だったんですか…」
「そうだよ…詳しい事は後で、ネェル・アーガマがパラオの近くまで来ている。そこまで1人で行けるな?」
「はい、大丈夫です」
「よし、ではネェル・アーガマでまた会おう」
「シュウさんはこれからどうやって脱出するんですか?」
「ネオ・ジオンのMSを使わせてもらうから大丈夫だ」
バナージと別れたあと使えそうなMSを求めドッグ内を探してみると、MSがどこにも見つからなかった。
「まさか…ネェル・アーガマの作戦がバレていたのか?」
「あんた、MSパイロットか?」
突如、後ろから整備員らしき人物から声を掛けられた。
「そうだが」
「なら、こっちに来てくれ」
案内された場所はMSの格納庫であった。そこには、ギラ・ズールが置いてあった。
「今、出来たばかりだ。これで、ロンド・ベルの奴らを蹴散らして来てくれ」
「分かった。それより他の機体はどうした?全く見当たらないが」
「あんた、大佐の連絡を聞いてなかったのか?ロンド・ベルの奇襲があると思う。各員、戦闘用意をって言っていたじゃないか」
「その時、休暇中でな」
なるほど、念には念をいれていた訳か…さすがはフル・フロンタル侮れない男だ。
「で、どうだ?もう出撃できるか?」
「大丈夫だ。出撃する」
俺は出来たてのギラ・ズールを奪取?に成功し戦場に向かった。
「このままでは、ネオ・ジオンには狙われないがロンド・ベルにやられる」
俺はMSに搭載されている電子パネルを弄り、識別信号をネオ・ジオンからロンド・ベルに切り替えた。
「おっと敵の真っ只中に切り替えちまった…」
切り替えた直後、機内中にロックオンアラートが鳴り響きミサイルやビームマシンガンが飛んできた。
「早く味方と合流しなければ、流石に辛いな…っとあれはロンド・ベルか?」
ジェガンやリゼル、プロト・スタークジェガンの中にデルタプラスという珍しい機体が見えた。
「ミネバが乗っているのか?」
《この声はシュウ?良かった御無事でしたのね!今、リディ少尉が操縦しています》
「そうか、バナージには会ったか?」
《はい、先程会いました。先にネェル・アーガマに戻りました》
「分かった。ミネバはこれからどうするんだ?」
《私は地球に降ります。そこで、戦争を止めるため動きます》
「なるほどな…少尉、ミネバを何が何でも守れよ」
《了解》
「ミネバ元気でな」
俺はリディとミネバが乗るデルタプラスと別れネェル・アーガマに向かっている最中、胸騒ぎを感じた。
「なんだ?この魂を削り合う感じ…まさかまた来たのか」
機体を180°回頭し、パラオに全速で向かった。
「やはり来ていたか!」
パラオ周辺では、マリーダが乗るクシャトリヤとバナージが乗るユニコーンが戦闘をしていた。
「バナージ!?ネェル・アーガマに戻っていたんじゃないのか」
ユニコーンは紅く染まりNT-Dを発動させていた。
「やめろバナージ!あとの事は俺に任せろ」
《この人は…マリーダが戦闘をやめない限り終わらない!》
ちっ、頭に血が上ってやがる…
俺はバナージとマリーダの間に入り2人の攻撃を制しした。
「バナージ!怒りに身を任せてはいけない。それでは身を滅ぼすことになるぞ!」
《では、どうしろと言うんです!!》
「マリーダの事は俺に任せて、お前はネェル・アーガマにいけ…心配している人が居るんだからな」
《…分かりました》
ユニコーンはNT-Dを解除させネェル・アーガマに向かって飛んで行った。
「大人しく行ってくれたか…さて、今度はマリーダだ」
《なぜ邪魔をする…》
「マリーダを救う為だ」
《私を救えるのはマスターだけだ!》
マリーダはファンネルを操り四方八方から撃ってくる。
「やめろ!俺は戦うつもりはない話を聞け!」
《話など聞く気は無い!強化人間は戦いだけだ!》
なら仕方ない、少々荒いが機体を壊すしかないか…
ファンネルを一つずつ確実に潰しながらマリーダに近づいて行く。
《なんでだ!ファンネルが当たらない!?》
「諦めろ」
一気に決着をつける為ビーム・ホークを持ちギラ・ズールの出せる限界速度でマリーダに接近した。
「うおぉぉぉお!!」
クシャトリヤの右腕と左脚を切断した。マリーダはあまりの衝撃に気を失った。その時、マリーダの思念が俺に流れ込んできた。
「なんだ?この光は…」
クシャトリヤを攻撃している時、突如シュウはマリーダと精神反応を起こし意識を共有した。
「これは…マリーダの過去か?」
マリーダの意識の中で第一次ネオ・ジオン抗争後に娼館へ売られて以降、数年間は娼婦として客を取らされ、マリーダの身体は妊娠・堕胎・客の倒錯行為により著しく消耗しており、女性としての機能も破壊された。その後、スロベア・ジンネマンに養女として保護されるという過去であった。
「なんて事だ…」
俺と別れた後あんな事があったなんて…
《仕方の無い事だ、正しい戦争などない…》
意識の共有によりマリーダの過去を知った俺は攻撃を止めマリーダをネェル・アーガマへと連れて行った。
――ネェル・アーガマ 医務室
戦闘が終わった後、俺は医務室に向かった。理由は先の戦闘で負傷したマリーダが気になったからだ。
医務室に向かっている時、怒鳴り声が通路にまで響いてきた。
「ハサンさんどうしました?怒鳴り声が聞こえましたが?」
「少佐か…」
「私は強化人間に拘束衣が必要だと思います!」
「ミヒロ少尉、落ち着け」
「強化人間は何をするか分かりません!」
どうやら、ミヒロ少尉はマリーダが怖いらしい。
「大丈夫だ。マリーダはそのような事はしない。」
「少佐!?事件が起こってからじゃ遅いんですよ!」
「俺がそばに居るから平気だ」
「少佐がそこまで仰るのでしたら…」
ミヒロは不機嫌になりながら医務室を出て行った。
ハサン軍医によると、ミヒロの過敏な反応はリディがMIA(戦闘中行方不明)になってショックしているからだという。
医務室にはベッドが二つあり、一つにはマリーダ、もう一つにはバナージが横になっていた。
「様子はどうだバナージ」
「それがあまり覚えてないんです…シュウさんの声が響いて、その後ネェル・アーガマに戻ったらベッドに居ました」
「ユニコーンに飲まれかけたな、自分の心で戦わないといつかは飲まれてしまうから気をつけないとな…でも、無事で良かったよ」
「はい」
バナージと一通り話した後、マリーダの前に来た。マリーダは目を覚ましていて、俺の方を見た
「シュウか…」
「目を覚ましていたか」
「あの戦闘の時、私もお前の中を見た…私達は昔同じ所に居たのだな」
「ああ、俺もマリーダの中を見た時に全てを思い出した」
あの忌まわしい記憶を…
あと一ヶ月ぐらいで第6巻発売ですね!!
楽しみです(≧∇≦)
次回は、『古き思い出』を書きたいと思います!!