艦隊これくしょんーー雨名の少女と双頭鎮守府ーー   作:-rita-

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第2話 提督着任

・・・一体どれほど歩いただろうか、

 

 葵は今も倒れそうな状態で本土と島を繋ぐ唯一の道、つなぎ橋をわたっていた、

 

 双頭鎮守府は海域の奪還本拠地ということから、街から離れたところにある島をまるごと改造して建てられていた、

 

 目的地である鎮守府にたどり着くためには長い海岸線を歩き、一度山道を上り、1キロ以上ある橋を渡る必要があり、体力がない者にとっては心臓破りの道のりとなっていた。

 

「日頃の鍛錬がたりてなかったか...」

 

葵は座学はトップであるが、その分体力的には平均を下回っていた。しかし、葵はその短所を補うほどの分析能力があり、実技的訓練から外され、各海域で起きているヤツラの行動パターン分析していた。

 

「う...俺はもうダメかもしれない...母上...無念です...」

 

 葵は四肢を生まれたての小鹿のように震わせ、目は虚ろを向き、呼吸は虫の息となっていた。

 

現在、太陽はとうとう山に隠れ始めていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「いまの連絡によると司令官さんはつなぎ橋にいると思うのです」

 

「う~ん、どちら荒いったら早く辿り着けるのですかね」

 

「たぶん、本土の方がちかいんじゃねぇ~、一人だけ早く着いたってことは一人はだいぶ後ろなんだと思います!」

 

 三人の少女はワイワイと話をしながら海の上を駆け抜けていた、とりあえず本土に向かうことになり、さらに速度をあげ、上陸できそうな場所を目指し始めた。

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「叢雲といったか、貴様は私にこの施設を案内してくれると助かるのだが」

 

「わかった、と言いたいところだけれど、迎えに行ってる三人が案内をしたいといって騒がしいから、それは許可しかねるわ」

 

「ふん、まぁいいだろう、私はどこで待っていたらいいのだ?」

 

「何を勘違いしているのか知らないけど、あなたも手伝いなさい、どうせそれだけの荷物じゃ何もすることはないでしょう」

 

 実際茜は自分の衣類などだけをカバンに詰めているだけで、情報をまとめた資料やその他物資は現在葵が運搬中であった。

 

「...私は葵を助けろと?」

 

・・・どうして私があんな奴の手助けをしなければならないのだ、冗談じゃない...

 

「司令官、貴方お姫様になりに来た気分なのかしら?」

 

「ぬっ、いや、いやいや、私情を挟んで悪い、しかし!あの男はどうも苦手なのだ...」

 

「弟さんらしいわねぇ、何をそんなに嫌がることがあるのかしら」

 

・・・どうやら此奴の性格はとことん私に似ているようだな

 

「説明が難しい・・・私たち姉弟はこんなものなのだ」

 

「まぁいいわ、吹雪あんたは荷台をもって橋へ向かいなさい、私はこの人の話し相手でもしているわ」

 

何かを感じ取ったのか、叢雲はそれ以上の追求はしてこなかった。

 

「え~...分かりました、私一人で行ってきます」

 

「すまんな、助かる」

 

 茜は叢雲に連れられ、案内は待つとのことなので茶室に通された。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

・・・陸から行くと言った奴を締め上げたい、締め上げるような力はないが、そうとう頭の固いやつなのだろう。

 

 大変遅い速度であったが、一歩ずつ歩みを進めていた。が、とうとうその歩みも止まり、そのまま橋の上に葵は倒れた。

 

なんとか進むことの出来た距離は600メートルほど、と少しのところで力尽きてしまった。

 

・・・これが気絶というものなのだろうか、視界がだんだんと暗くなって、割と普段からやりがちな寝落ちとかわらないものなのだな...

 

「....い」

 

・・・誰かの声がする、もしかすると天からのお迎えが来たのかもしれない。

 

「お~い!...ってあれ!?倒れてる!?」

 

 声はだんだんと大きくなり、頭のそばで誰かが立ち止まった。

 

「あ、あの!もしかして茜提督さんの弟さんですか?」

 

 この極限状態で最も聞きたくもない名前を聞いてしまいさらに体力がそがれる。

 

 葵は残った体力を振り絞りながら顔をあげた、目の前には吹雪がスカートであるにも関わらずしゃがみこみ、見られると羞恥に染まってしまう布がチラっとどころかモロに見えていた。

 

「ん...白い...布?」

 

「何を言って...きゃぁ!!!」

 

「え...あ!すまないことをした、決してそういうわけでは...」

 

 顔を真っ赤にしてしまった黒髪の少女はこちらを睨みつけている。

 

「い、いえ、こちらの不注意も原因ですので...ところで茜提督の弟さんで間違いないでしょうか?」

 

「こんな体制ですまない、いかにも俺が新しい提督のもうひとり、氷月 葵だ先程は済まない事をした...」

 

「お~い、吹雪~そこにいる人は新しいご主人さまですか~?」

 

歩いてきていた道の方から声がする。

 

「あ、は~い!この方が司令官のもうひとりだそうです~!」

 

「はわわわ!司令官さん倒れてるのです!助けるのです!」

 

「す、すごい荷物ですね~よくここまで運んだものです...」

 

「えっと・・・君たちが艦娘なのだろうか」

 

「はい、私たちが双頭鎮守府初期艦たい5人のメンバーです」

 

「【綾波型9番艦 漣】!よろしくお願いしますご主人様~♪」

 

「【暁型4番艦 電】これからよろしくなのです~」

 

「【白露型6番艦 五月雨】一生懸命頑張ります!護衛艦任務などはおまかせください」

 

「私は吹雪型1番艦吹雪です、はじめまして、先ほどのことはお忘れください...

 

「じゃあ、各艦司令官の荷物を預かり鎮守府に帰りましょう」

 

 吹雪の一言で3人が動き始める、どうやらこのメンバーでは吹雪がリーダーらしい

 

「ありがとう軽くなったよ、しかし足はもうだめだ、震えが止まらない...

 

「あ~なら、五月雨ちゃん、一緒に荷台で提督を運び入れましょう」

 

「はい、分かりました、初任務は輸送作戦ですね!」

 

「あはは...どうだろ...」

 

「なら、漣たちは先に海から帰ってますね電、いきますよ」

 

「はいなのです~」

 

そう言うと二人は手すりを足場にして海に飛び出した。

 

「え、君たち危ないだろ!」

 

 葵は海に飛び込んだ二人を見て驚愕した。

 

「ほ、本当に水に浮かんでいる」

 

「浮かぶっていうよりかは水上に立ってるって感じですね、、着水の衝撃は艤装が海に逃がしているのです」

 

「ご主人様~早く来てくださいね~」

 

 そう言うとふたりはまた海をかけるように島影に見えている建物を目指して滑り始めた。

 

「ふふっ、君たちは本当にすごいな」

 

「司令官さんはこれからもっともっとすごい人たちに出会えると思いますよ」

 

「そうなのか?」

 

「おそらくですが、戦艦や空母の方々もそのうちこの世に生まれ変われると思うのです、私たちが何かに呼び起こされたように」

 

「そう..なの..か.....」

 葵は意味ありげに語っていた吹雪の話を最後まで聞くことなく夢の世界へと誘われた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「おい、起きろ、おい!」

 

「ん....?」

 

・・・いつの間にか寝てしまっていたようだ、ここはどこだろう

 

「ここは?」

 

「私らが着任した鎮守府だ、さっさと起きろもう日が沈むぞ」

 

「あ、気がついたようですね、各艦整列!」

 

「あ~い」「なのです~」「はい!」「........」

 

 吹雪の号令で漣、電、五月雨、あと一人は誰だろう、もうひとりの少女が並んだ

 

「えっと、君は?」

 

「私は叢雲、貴方がここに来るまで貴方のお姉さんとお話をしてたのよ」

 

 どうやらこの子は五月雨や電のように礼儀正しいとは言えないが、自然体で話しかけてくれている。もしかするとこれも気遣いなのかもしれない。

 

「俺は氷月 葵、迷惑をかけてしまいすまなかった、この鎮守府に着任したもう一人の提督だ改めてよろしく」

 

「私は氷月 茜、貴様たちのことは先ほど叢雲からよく聞いた、君たちはヤツラと本当に戦うことが出来るのだな」

 

「もっちろんです、ご主人様、もうある程度なら赤子の手をひねるもんですよ!」

 

「君たちは実戦経験があるのかい?」

 

「あ、はい、えっと最も交戦回数が多いのは最古参の五月雨ちゃんですね、そして練度で比べると叢雲ちゃん 漣ちゃん 電ちゃん 私 五月雨ちゃんの順になります」

 

「君が最古参なのか」

 

「はい、でも私は直接戦うのは怖くて...いつも後方からの支援をさせてもらってます」

 

「ん?しかし貴様は海軍の一団を一人で助けたそうじゃないか」

 

「あ~、あの時は助けなきゃ...って思って...がむしゃらに戦ってなんとか...」

 

「でも、五月雨ちゃんはすごいのです!私たち駆逐艦は決して火力がないのですが、確実に敵を落とせるのは五月雨ちゃんの援護射撃の質にもあると思うのです!」

 

「それと、やはり貴様が練度としては1番高いようだな」

 

「たまたまよ、実際五月雨の支援が入った艦の止めをもらっているだけ、実際のところ私たち5人の練度の差は誤差の範囲だと思うわ」

 

 てっきり茜と似たような雰囲気のために鼻を伸ばすと思ったが、意外にも仲間をちゃんと評価していた、口調で印象付けてしまっていたが、もしかすると一番素直なのかもしれない。

 

「う~ん、これから暗くなりますし、大まかな施設の紹介は明日ですかね~」

 

「そうだな、明日たのむ」

 

「貴様が陸路から行くとなってこうなったんだろうが、何を上から偉そうに」

 

「後半部分は鏡を見てから言ってもいいと思うぞ」

 

「ご主人様~お腹すいた~間宮さんのとこいきましょ~」

 

「間宮?」

 

「はい!この鎮守府ができた時に3人戦力はないのですが着任しているサポーターのような方々が居るのです、明石さんと大淀さんは今【工廠】というところに、間宮さんは食堂を受け持ってもらっています」

 

・・・工廠?どのような施設なのだろう...

 

「まだ工廠は準備中です明日のお昼頃から使えるようになると思います」

 

「なんだ、完成していない施設もあるのか」

 

「規模が私たちの提示した規模より大きかった為に完全に完成しているところはまちまちと言った結果です」

 

「その作業ってどうなってるんだ?そのような業者は入ってないと思ったが」

 

「それは【妖精】達がやってくれているの...って何よ、何か言いたげにしてるじゃない

 

・・・まさか叢雲があんまりに真面目な口調で妖精などといったファンシーな考えをしていたために何とも言えない感覚を覚えてしまった。

 

「妖精とは何だ、ふざけているわけではなかろう」

 

「ええ、実在しているわ、ほらそこの影にも」

 

〈!〉

 

 確かになにか小さな影が部屋の隅の穴に見えた気がする。・・・・穴?

 

「すまん、あの穴はなんだ?」

 

「妖精さんの通り道ですよご主人様~、お菓子とか置いとくと食べて可愛いですよ~」

 

「ふむ・・・とりあえず妖精とやらもサポーターとして考えていいのだな」

 

「そうね、その認識でいいと思うわ」

 

・・・艦娘や妖精どうやら知らないことが多いようだ

 

「今日は迷惑をかけてしまって本当にすまなかった、間宮は食堂なのだろうかぜひ奢らせてくれ」

 

「生憎だけど司令官、この鎮守府の食堂は基本無料よ、お礼は別の形でお願いするわ」

 

「別の形・・・そうだな、またの機会があれば何かで埋め合わせをするよ」

 

「ではみんなでご飯を食べに行くのです~!」

 

 こうして、双頭鎮守府に 茜、葵、ふたりの提督が着任した。

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