機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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第11話

 カナーバは会合の決定に従い、さっそく義勇軍の編制に取り掛かった。そして、義勇軍の総指揮をザフト最強のMSパイロット、キラ・ヤマトにすることを評議会で発表した。

 彼をトップに据える理由は義勇軍の消耗を抑えつつ、オーブに侵攻してきた連合軍に大打撃を与える為である。最もキラが進んで義勇軍の指揮官に名乗りを上げたことで、ザフト内では義勇軍に参加希望者が増えてしまった為、パイロットを厳選する作業から始めなければいけなかったが。

 

「ナチュラルに差別意識を持ってない者や、それを表に出すことがない者を選抜しなければならない」

 

 キラはそう言って義勇軍のパイロットを決める作業に追われることになった。

 一方カナーバは義勇軍の受け入れをオーブ行政府に認めさせるべく、オーブ行政府側と協議に入ったがオーブ側の回答が「送るに及ばず。オーブは中立国家であり、プラントと同盟を結んでいるわけではない」というものだった。

 カナーバはキラにある程度ウズミの人柄や信念を聞かされていたので、この回答に驚くことはなかったが、一部の評議員は「義勇軍を送って助けてやるというのに何たる返答だ」と憤慨する者もいた。 

 

 オーブ側の回答を受けて、キラの呼びかけで急遽会合の席が設けられ、会合のメンバーは料亭に集まり話し合いを行った。

 

「拒否ですか。そう来ると思っていましたが、あの獅子さんは今の状況がわかっているのか?」

「連合に最後通告を突き付けられても、中立を維持する立場に変わりはないか……立派な精神だが些か現実が見えていないのでは?」

 

 会合メンバーの1人がそう発言するとほとんどの面々が頷く。

 

「現実を見たくないだけかもしれません。本当そんなのがトップにいるオーブ国民は本当にかわいそうですね。正直同情しますよ」

「そんなことを言っている場合か。義勇軍を派遣してムルタ・アズラエルを抹殺するという裏の目的は半ば頓挫することが確定したのだぞ。なぜ、冷静でいられるのだキラ?」

 

 キラはオーブ側の現実を見ていない対応に半分呆れている。最も半ば予想した通りであったので、半分納得ができる返答でもあった。

 

 そんなキラの態度と言葉にカナーバは突っ込みを入れ、これからどうするのかキラの意見を尋ねようとした。

 

「僕としては諦めるしかないかと思っています。何せ受け入れを拒否された以上義勇軍はオーブに正規では滞在できないですからね。それでカナーバ議長はどう思っているんですか?」

「やけにあっさりと諦めるのだな。私としても先方が拒否している以上義勇軍の派遣は無理だと思っているし、最高評議会でも、その意見が大勢を占めている。寧ろこの隙に連合軍の月基地を攻略したらどうだという意見が出始めているくらいだ」

「月基地攻略は確実に行いたいので、通商破壊作戦がうまく機能して効果が表れてからです」

 

 キラは連合の力を過小評価する連中に内心苛立つ。相変わらず現実が見えていない連中は、いずれ政治の世界から排除してしまう方が、プラントの為にもいいだろうとキラは思ってしまった。

 

「オーブ行政府が拒否してきた以上は、表向きはこの侵略戦争を傍観しているしかないでしょう」

「そうだな。できれば連合軍の練度がどのくらいか確認しておきたいが、それは現地に潜入させてある情報局の人員に任せるしかないでしょう」

 

 結局会合では引き続き義勇軍受け入れを要請し続けるという決定が下された。しかし、オーブ側の心変わりを期待するのは難しいという意見を取り入れて、連合軍とオーブ軍の様子を探る為の人員を密かに派遣することが決定し、会合はお開きとなった。

し、会合はお開きとなった。

 

 

 

 

 地球連合はビクトリア奪還作戦を本来の開始日から3日ほど前倒しにして発動した。ザフトの不意を突く為に予定を繰り上げて発動された作戦だったが、ザフト側は連合軍がいつ来ても問題ないように万全の準備を整えていた。

 

「上の予想通りだな。奇襲する為にこちらの予測より早く動いたつもりだろうが、そんなのはこっちの参謀にすでに見透かされているぞ」

 

 バルトフェルドは3日前に参謀本部から、連合軍がビクトリア奪還に向けて奇襲をしてくる可能性あると助言を受け、手ぐすね引いて連合軍を待ち構えていたのだ。

 

「ダコスタ! 俺達の目的はあくまで敵の進軍を遅らせることだ! 部下共にそのことを徹底して深追いはするなと命じて置けよ。命令違反者は問答無用で軍法会議にかけると言っておけ」

「了解です。それと現地に潜入させていたスパイから情報が入りました。連合軍がスエズ方面からこちらに進軍を開始したそうです。数時間もすればこちらの索敵範囲に入ります」

「そうか。では行くとしますか。何せ上は核動力MSまで派遣してくれたんだからな。しっかり働いて連合軍の足を引っ張ってやるとしますか」

 

 数時間後。名将バルトフェルド率いるザフトMS機動部隊と、連合軍のMS並びにリニア・ガンタンクの部隊がアフリカ中央で激突した。

 

 

 

 

 

 連合軍がスエズから出撃してバルトフェルド率いるザフト部隊と激突する少し前、国防産業理事のムルタ・アズラエルはオーブ向かう艦船の中で、連合軍がビクトリアの作戦が開始されたことを知り、自分達も行動を開始するのであった。

 

「何としてでもオーブを攻略しないといけませんね」

「ええ。オーブ解放作戦が失敗すれば我らの反攻は遅れることになります」

「じゃあ、最後通告をオーブのウズミさんとやらに送るとしますか」

 

 地球連合はこうして中立国オーブを支配下に置くべく、最後通告をオーブ行政府に叩きつける。おまけにその案は原作より苛烈な物であった。原作の要求+軍基地の査察に加え、連合の監督官を政府に常駐させることを認めろと要求した。

 

 無論こんな物を送られたオーブ行政府は狼狽した。とてもではないが呑める条件ではなかったからだ。

 

「大西洋連邦め! 何という傲慢さだ!」

「だが、断れば戦争になるぞ!」

「そうだ。連合に敵うはずがない。戦力差は絶望的なのだぞ!」

 

 オーブの政治家達の大半は連合に積極的に協力して、最後通告を撤回してもらうべきではないかという意見が大半を占めていた。

 

「連中の要求は断固拒否する。それと軍の配備と市民の避難を始めろ」

「まさか、戦うつもりですか!? 無茶です。勝ち目等ありません!」

「だが、ここで連中の要求を呑めば独立国の主権を失う。最早戦うしか道はない」

「勝算もない戦等承認できません! それこそ国を滅ぼします!」

 

 官僚の1人がウズミに再考を求めるが、彼は首を横に振る。

 ウズミに撤回する気がないことを悟り、官僚は勝ち目のない戦をして焼かれることになる祖国の未来に絶望する。カガリはそんな父と官僚のやり取りを見て複雑そうな表情をしていた。

 

(このままではオーブが……だが、どうすればいいんだ? 他の中立国は軒並み連合へ加盟している。だからと言って勝算のない戦で国を焼きたくないが、最後通告を呑めばオーブは属国に成り下がる)

 

 カガリは必死に頭を働かせているが、彼女の頭脳では国是の中立を維持して国を守る方法等見つかるはずもなく、ただ時間だけが過ぎ去っていくだけであった。

 オーブ行政府の人間はただ、必死に連合と交渉を重ねることに終始した。しかし、連合は交渉がしたいのなら用件を呑めと言うばかりで、双方の歩み寄りは絶望的だった。

 

 オーブ行政府に閉塞感が漂い始めたその時、外交官があるプラントからの申し出を知らせに来た。

 

「プラントは義勇軍を派遣してもいいと言ってきています。それと戦闘になった場合、難民の受け入れを行うそうです」

「難民受け入れはともかく、義勇軍の派遣は送るに及ばずと返答しろ」

「ウズミ様!? ここに至れば義勇軍を受け入れてもいいのは!? 幸い、ザフトはまだ要請を撤回していません!」

 

 外交官は義勇軍の受け入れを拒否するウズミに驚愕する。最早連合は敵なのだ。連合の要件を呑む気がないのなら、対外的に問題ない義勇軍を受け入れるぐらい問題ないはずだ。

 

「ザフトを受け入れれば、それこそ連合の思う壷だ! ザフトには『オーブの国是は中立である。申し出は嬉しく思うがお断りさせてもらう』と伝えておけ」

「……わかりました。そう返事を返しておきます」

 

 外交官はウズミの言葉を聞いた後、ザフトに返事をするのであった。

 そして、連合の要求は断固として受け入れられない物だったので、オーブ行政府は拒否するという返答が連合に対して返されるのであった。

 

 

 

 一方連合はオーブ行政府から予定通りの回答を受け取っていた。

 

「『要求は受け入れられない』か。まあ、予想通りですね。寧ろ断ってくれた方がありがたかったので感謝ですね」

 

 連合軍にオーブ行政府から最後通告の回答はアズラエルが予想した通りだった。そして、彼は左程驚くことなくオーブ解放作戦を作戦通り実行するように司令官に進言するのであった。

 数時間後。連合軍はオーブへの侵攻を開始した。

 

 

 

 

 

 連合軍のオーブへの最後通告に対して、ザフトは最後通告の期限ぎりぎりまでオーブに会談の申し入れを行っていたが、オーブ行政府は中立を維持するの一点張りで進展はなかった。

 しかし、連合軍のオーブ侵攻を手を拱いて見ているのはザフトにとって下策。そこでオーブに避難民を受け入れると発表し、状況しだいでは連合軍に独自に攻撃を行うとオーブ行政府に通達を行い、オーブ領海外の海中で潜水母艦を待機させ、連合軍とオーブ軍の戦闘を観察することになった。

 

「始まったようだな」

「連合軍はお得意の物量作戦で一気に攻め潰すつもりですね」

 

 キラはボズゴロフ級潜水母艦の中で、副官のジークリンデと共に連合軍とオーブ軍の、熾烈な戦いを観察していた。

 

「あのG兵器は連合の新型のようだね。最優先でデータを取って」

「了解です」

 

 義勇軍受け入れが拒否された以上、領海外でこの戦いを見ているしか方法がない。

 キラとしてはここでムルタ・アズラエルを始末して、終戦を早める一手を打ちたかったのだが、どうにもならない状況に内心少し苛立っていた。

 

「キラ参謀長。入電です。避難民を乗せた避難船が所属不明の潜水艦に撃沈されたのことです。避難船は沈む前に救難信号を出していました」

「場所は?」

「オーブ-カーペンタリア間、我が艦が沈んだ場所の一番近い位置にいます」

「もしかしたら脱出している人がいるかもしれないな。人命救助を優先する。避難船が沈んだ場所へ向え」

「了解です」

 

 潜水母艦は沈んだ避難船が存在した場所へ向うのであった。

 

 

 

 キラ達の元に輸送船が沈んだと報告が入る少し前。

 オーブ在住のアスカ一家は何とか、避難船が停泊する港に辿り着くことができた。しかし、マユ・アスカの落とした携帯を拾いに行った彼女の兄であるシン・アスカは、家族とはぐれてしまい、港に着いた時家族を乗せた避難船は先に出航していた。

 シンは仕方なく後で出航する避難船で追いかけることになったが、乗っていた船によって自分達家族の運命が違うことになろうとは、このとき想像もつかなかった。

 

 それは偶然オーブ領海外に潜んでいた連合軍の潜水艦が避難船を発見したことから始まった。

 

「避難船が近づいてきます」

「恐らくオーブのコーディネイター共を避難させる為だろう。魚雷発射管開け。宇宙の化物は一人残らず始末せねばならん」

 

 この潜水艦を指揮する者がブルーコスモス思想に染まっている人物であったことが、避難船の命運をわけることになった。

 

 潜水艦は避難船に魚雷を発射。避難船に見事命中してしまい、避難船を大きく傾けてしまう。

 

「緊急事態発生! 係員の指示に従って避難してください!」

「落ち着いて乗ってください。救難信号も出しましたのでご心配なく!」

 

 係り員は避難船に備えられていた救命ボートに、避難した人々を誘導しようとしたが先に新たな魚雷が襲ってきたことで、その努力は水泡に帰すことになった。

 

 魚雷は容赦なく船体に突き刺さり炸裂して、避難船の船体を真っ二つにする。

 

「お父さん! お母さん!」

「「マユ!?」」

 

 マユ・アスカは両親と救命ボートに乗ろうとした瞬間、凄まじい衝撃に襲われて海に投げだされてしまった。

 

「お父さん~! お母さん~!」

 

 何とか船の破片に捕まって溺れないようにしたが、そこで見たのは沈む船が作った渦に救命ボートごと呑み込まれる両親の姿だった。

 

「そ、そんな……」

 

 マユはそれをただ呆然と見ていることしかできなかった。

 

 

 

 避難船が沈んで数十分後。救難信号を受けて救助にやって来たキラが指揮する潜水母艦は、無事な人がいないか確認を急がせた。

 

「海面に1人。女の子を発見しました」

「どこだ?」

「あちらです」

 

 キラはその映像に映った女の子を見て驚愕した。

 

「(あれってマユ・アスカ!? 何で1人だけ海に漂っているんだ!?) 取り敢えず彼女の回収を急げ。漂流していたから衰弱している可能性があるから、医務室に連絡も入れておけ」

「了解しました」

 

 キラは何の運命の悪戯かシンの妹である、マユ・アスカを拾うのであった。

 

 




オーブの話はまだ続きます。

ちょっと修正しましたが、それでも最後の方の展開は御都合主義過ぎるかもしれないけど、作者の文章力ではこれが限界です。取り敢えずオーブ潜入は取りやめで、沈んだ船から救出する方向に修正しました。

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