機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト 作:幻龍
機動艦隊は所属不明の艦船を捕捉し、撃沈或いは拿捕する為にMS部隊を発進させ、MS部隊からさっそく2隻の内逃げようとした1隻を撃沈したとの報告が入る。
「逃走しようとした所属不明艦1隻撃沈を確認。艦船の種類を見る限り民間の輸送船のようです。残り1隻はいかがいたしますか?」
エターナルの管制官の1人がそう言って、キラ達に残った1隻をどうするか尋ねる
「ジャンク屋ギルド所属だと偽装すれば我々が見逃すと思ったのでしょうか?」
「目の前に吊るされた餌に喰い付くことしか頭にない連中のことなんて、考えるだけ時間の無駄だ。もう一隻も撃沈しろ。ここで徹底的にやらないと何度でもバカが湧いてくるからね」
キラの容赦のない命令が発せられる。
その命令を受けたMS部隊が輸送船を包囲して一斉射撃を行い、輸送船はビームで蜂の巣になり爆発・炎上して撃沈。宇宙のデブリの残骸になる。
周囲に他に何かいないのを確認した後、機動艦隊はMS部隊を収容して別の場所に行こうとしたその時、新たな敵機をレーダーが察知した。
「周囲を探索していた偵察部隊から連絡! アガメムノン級一隻にドレイク級3隻、MS一機を確認したとの報告あり。レーダーにもその機影を確認しました!」
「新手か……」
敵機の映像が送られてきたが、その映像に映っていた機体にキラは驚く。
「(ハイぺリオンガンダムだと!? それにあの機体カラーは!?)あいつは僕が相手をする。 MS部隊は一旦補給に戻った後、再度出撃。迂回して敵艦を撃沈させろ」
「キラ参謀長! 私も援護の為出撃します!」
キラはそう指示した後格納庫に向かい、ジークリンデもキラを援護すべく一緒に付いて行く。
格納庫についたキラとジークリンデは、すぐにフリーダムとジャスティスに乗り込んだ。
『フリーダム、ジャスティス発進どうぞ』
「キラ・ヤマト。フリーダム行きます!」
「ジークリンデ・フォン・ブランデンブルク。ジャスティス出ます!」
フリーダムとジャスティスがエターナルから発進する。
2機が互いを庇える位置を維持しながら、ハイぺリオンガンダムに向かって行く。
それに対してハイぺリオンのパイロット、カナード・パルスは己の宿願をようやく果たせることに歓喜しつつ、狂犬の様にキラが乗るフリーダムに襲いかかった。
「キラ・ヤマト! この日を待ってたぞ。俺の手で必ず撃墜してやる!」
カナードは己の目的を果たせる状況になったことに興奮していた。
普通なら十隻と多数のMSを有するザフト艦隊に、一隻とMS一機にMA数十機で挑むなど無謀なことは普段の彼ならしないのだが、最近の戦況悪化と目減りする物資に正常に稼働しなくなっていく兵器群が彼の焦りを生み出す原因になっていた。このままでは目的を達成する前に連合軍は動けなくなってしまい、終戦になってしまうのではないかとカナードは内心焦り始めていたのだ。
そんな状態の時にとある情報屋から、キラ・ヤマトが通商破壊作戦の艦隊を指揮して、ある宙域までやって来るという情報が入ってきた。無論最初は信用していなかったが、彼は情報屋ではそれなりに名の知れた人物だったので、偽情報の可能性は低いと判断。そして、宙域に赴いてみると情報屋の言っていた通りザフト艦隊が展開しているのを発見した。そして、あの艦隊にキラ・ヤマトがいると確信し、連合の物資の問題からこの邂逅が最後のチャンスだと思い、そのまま己の宿願を果たす為に艦隊に強襲をかけることにしたのだ。
「邪魔をするな!?」
ハイぺリオンがビームサブマシンガン『ザスタバ・スティグマト』をフリーダムに向けて撃つ。
フリーダムはそれを回避するとルプスビームライフルで反撃するが、ハイぺリオンはその正確無比な射撃を腕部に装備したアルミューレ・リュミエール発生装置から、モノフェーズ光波シールドを発生させて防ぐ。
「ビームを防いだ!? もしかしてアルテミスの傘を応用した物!?」
「たぶん、そうだね。でも、あれは今の所腕部しか展開していないから、それ以外の場所を狙えば問題ない」
フリーダムとジャスティスはハイぺリオンの鋭い攻撃を躱しつつ反撃するが、相手の技量も相当優れているのか攻撃をうまく躱していた。
「その程度でこの俺を撃墜できると思うなよ!」
カナードはフリーダムとジャスティスが繰り出す攻撃を回避しながら吠える。
キラは全方位にアルミューレ・リュミエールを展開したら、ジャスティスを一旦下がらせるつもりでいた。未だにNジャマーキャンセラーを連合は実用化していないので、制限時間はあるがアルミューレ・リュミエールは凶悪な防御力を保持しているからだ。
(最も全方位展開したら切れるまで粘らせてもらうけどね)
キラはハイぺリオンの攻撃を躱しながら、敵が全方位展開をしてきたときの対策を色々と考えるのであった。
「くそ!? キラ・ヤマトめ! なぜ落ちない!?」
カナードはなかなか落ちないフリーダムに苛立っていた。自分の存在意義を証明する為には成功作であるキラを討ち果たすしかないと考えていた。もし、不様に敗れでもしたら自分が今まで行ってきたことが無意味になってしまう。
「お前に勝って俺が本物のスーパーコーディネイターになる!」
キラが搭乗しているフリーダムの援護を行っているジャスティスを牽制しつつ、猛攻を仕掛けているがその攻撃は悉く回避されている。おまけに一対一で戦うことができない状況のせいで、隙が出来てもカバーされてしまい決定打を与えられないでいた。
「ええい! 埒が明かない! 一気に片をつけてやる!」
このままでは埒が明かないと判断したカナードは、乗機であるハイぺリオンガンダムの切り札を切ることにした。
「アルミューレ・リュミエールを全方位に展開した。これで死角は存在しないぞ! キラ・ヤマト!」
カナードはアルミューレ・リュミエールの鉄壁の防御で守られたハイぺリオンを駆り、キラに止めを刺すべく先程のより激しい攻撃を行う。相手の攻撃は全てアルミューレ・リュミエールが防いでくれるから、その間に勝負をつけるとカナードは意気込むのであった。
一方全方位に展開されたアルミューレ・リュミエールを見て、キラは内心舌打ちする。少なくともあれが消えるまではこちらの攻撃は全て防がれる。
「ジーク。回避を優先して攻撃を浴びせ続ける。恐らく制限時間があるはずだ」
「わかりました」
キラとジークは連携してハイぺリオンを迎え撃つ。
ハイぺリオンはアルミューレ・リュミエールの防御力を活かして、嵐の様な攻撃を仕掛けてきたが、一定の距離を取りつつ回避に専念し、時折り攻撃を加えて敵を艦隊に近づけない様に牽制するが、ジャスティスの援護があるおかげで追い詰められる事態にはなってないが、ハイぺリオンにフリーダムが少し押される。
フリーダムとハイぺリオンのビーム兵器の撃ちあいになって膠着状態が続いたが、しばらく時間が経った後、ハイぺリオンガンダムのアルミューレ・リュミエールが消える。その瞬間をキラは逃さずフリーダムの火力に物をいわせて逆に猛攻を仕掛ける。
「逃げるのは終わりだ。さて反撃の時間だよ」
キラはそう言い、今までの逃げの姿勢が嘘のような容赦ない攻撃を加えていき、先程とはあべこべにハイぺリオンガンダムを追い詰めていく。
「(お前の人生には同情するが、お前の自己満足の為にやられてやるほど俺はお人好しではない!)これで終わりだ!」
ビームサーベルでハイぺリオンの片腕を擦れ違い様に根本から切り裂き、素早く相手の方に向き直ってハイマットフルバーストをキラは叩き込んだ。辛うじてハイぺリオンはそれを回避するが隙が生まれてしまい、ジャスティスのビームブーメランを受けて、もう片方の腕を切り落とされてしまう。
バランスを崩した隙をついてビームライフルで立て続けに放ち、背中のビーム砲とスラスターを破壊する。完全に武器を失って動けないでいるハイぺリオンに、フリーダムとジャスティスはフルバーストを放った。
「おのれー! キラ・ヤマトーー!」
カナードはフリーダムとジャスティスから発射された、多数のビームに全身を貫かれてハイぺリオンガンダムのコクピットで絶叫を上げながら機体と共に爆散する。こうしてカナードの復讐は失敗に終わり、彼は復讐を果たすこともなく機体諸共宇宙の花火になるのであった。
「撃墜完了、エターナルこれから帰還する。それと敵艦はどうなった?」
『MS部隊より連絡。敵艦を撃沈したとのことです』
「わかった。全機帰投せよ。一旦補給の為に本国へ引き返す為、この宙域から離脱する」
キラは艦隊の撤退命令を出して、この宙域から艦隊と共に離脱するのであった。
「ちっ。あのカナードとかいう男。期待させておいて不甲斐無い。これではザフトの新型艦の実力を確認できないではないか!」
カナードにキラがいることを教えた情報屋の男は、カナードの不甲斐なさに憤った。
彼はカナードをぶつけてザフトが最近開発した新型艦の実力を計り、その生の情報を連合に売って大儲けしようと企んでいたのだ。
それ故にカナードが艦の攻撃行動すら行わせることができずに、あっさり撃墜されたことに腹を立てていた。
「仕方がない。この儲け話は諦めるしかないか。さっそく別の伝手を当たってみよう」
情報屋の男はそう言って今回の儲け話を諦めて、次の儲け話を探す為にこの宙域から離脱するのであった。
カナード戦終了。
機体性能+原作と違い容赦のないやり方+味方との連携と数的有利=キラ達の勝利で終結