機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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前半は正直いれるかどうか迷いました。


第15話

 プラントでザフトの各種兵器製造と最先端の技術を持つグラム社のMS開発部門。その研究所の一角にキラの姿はあった。

 

「それでストライクの改造はできそうなの?」

「はい。今回利用するシグーディープアームズはMSに携帯するビーム兵器を試す試作機に過ぎず、維持費が大変でした。だから、この機会にビーム砲を取り外してそれを改良することにしました。そして、改造したビーム砲をストライクの両肩に装着するつもりです」

「そのビーム砲を取り付けてバランスは悪くならないの? パイロットが不便する装備を付けても意味はないよ?」

「彼女は元々この機体のパイロットだったので、運用に問題はないかと思います」

 

 試験運用中の装備を付ける作業を行っている、ストライクを見ながらキラはそう言い、担当者はキラの疑問に一つずつ答えていく。

 

「でも、二門もビーム砲を付けたらバッテリーの方は大丈夫なの? いくら新型バッテリーを積んでいてもあっという間に使い果たす恐れがあるんじゃない?」

「その問題はアークエンジェル級から手に入れた、ストライクの運用データにあった使い捨てのバッテリーパックを、ビーム砲に取り付けることで解決しました。無論全部使い果たしたら、本体からの供給で撃つこともできるようにしています」

「運用データは今後役に立ちそう?」

「はい。例のセカンドステージMS開発計画に大いに役立てるかと」

「わかった。評議会と参謀本部には僕が根回ししておくから、今後も頼んだよ」

「了解しました」

 

 キラは担当者との話し合いを終えた後、ストライクのコクピットに座っているシホに声を掛ける。

 

「シホ。機体の調子はどう? 何か問題があったら遠慮なく言ってくれ」

「キラ参謀長!? どうしてここに!?」

 

 シホ急に声を掛けてきたキラに驚く。何せキラが様子を見に来るなど聞いていなかったからだ。

 

「僕が自社の研究所にいることは特に問題ないはずだけど?」

「そうでしたね。すっかり失念していました。それで何の御用でしょうか?」

「この機体に乗った感想を聞かせて貰いたくてね。直接聞きに来たんだよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 シホはうれしそうな表情を浮かべる。キラはザフトの若いパイロットにとって憧れの存在だ。シホも当然その1人であり、彼に声を直々に掛けられて喜ばないわけがない。

 

「操縦性が少し癖があるように感じます」

「なるほど。それじゃあ、ちょっと調整してみようか」

 

 キラはシホの意見を聞いて、OSの調整を始める。そして、数分後調整が終わりストライクは以前よりもシホに操縦しやすいようになった。

 

「ありがとうございます! こんなに変わるなんて思いませんでした」

「これで大丈夫だね。じゃあ、僕は行くから。今後も奮闘を期待するよ。シホ」

「はい。御期待に沿えるよう一層頑張ります!」

 

 シホはキラに対して敬礼をするのであった。

 

 

 

 キラが次に訪ねたのは回収したハイぺリオンの残骸を調べている研究所だった。

 キラは調査を行っている研究チームに話しかける。

 

「どこが作ったのかわかった?」

「はい。どうやらアクタイオン製のようです。恐らくユーラシア連邦から光波防御帯に関する技術提供を受けてこの機体を完成させたものかと」

「腕は片方破壊しなかったんだから、ビームシールドの参考にならないか?」

「充分参考になります。本体はほぼ原形を留めてませんが、腕が無事なのでこれを参考にビームシールドを試作してみます」

「頼んだよ。常に先を一歩行かなければプラントは勝てないんだから」

「何としても良い結果を出してみせます」

 

 研究チームはそう言ってキラの方を向いて頷く。キラもそれを見て満足そうな表情を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 地球連合がマスドライバーの奪還して本格的な反攻に入る前に、戦争を終わらせるべくザフトはプトレマイオス基地攻略に取り掛かった。地球連合が万が一マスドライバーを取り戻して勢いづけば、講和が難しくなると評議会が判断したからだ。

 

 幸いプトレマイオス基地は物資が底を尽き、まともな軍事行動を起こせなくなっているので、この千載一遇の好機を見逃す手はないと参謀本部のお墨付きもあり、評議会は月基地攻略に踏み切りことにした。

 

 無論急遽開かれた会合での話し合いで、月基地攻略作戦が主な話題になるのは当然だった。

 

「全ての準備が完了するのは早くて1週間後です。連合のカオシュン奪還作戦発動前には準備を完了できるかと思います」

「練度の方も問題ありません。通商破壊作戦実行によって新型艦の実戦経験も積めましたので、その力を充分に発揮できるかと」

 

 アウグストが全ての準備が整うまでの時間を言い、キラが攻撃部隊について説明する。

 

「派遣する部隊の規模は?」

「最低でも艦船50隻以上、MSは500機以上を注ぎ込む予定です。フリーダムとジャスティスは新たに3機ずつ完成しました。練度も問題ないので、この作戦に3機ずつ投入します。更に新たに1機製造されたテスタメントを1機に先行試作型核動力MSザクを5機を配備する予定です」

「それは心強いですが、少々数が多すぎないか? 相手は餓えている上、まともに兵器も動かせなくなっているのだぞ?」

「敵が自暴自棄になって命知らずな行動に出る可能性があるので、それに対応できる戦力は必要だと参謀本部は判断しました。しかし、練度が不安な部隊もあるので実際派遣するMSの数は減るかもしれません」

 

 キラは派遣する数が多すぎると意見してきた者に、練度次第では数は減るかもしれないと説明した。

 

「確かに大事な作戦に練度が低い部隊は投入できないからな」

「少し減ってもこっちには核動力MSが存在する以上質に関しては連合軍を上回っている。多少の数的劣勢は覆せるだろうしな」

「この件での会合の意思は、専門家の匙加減に任せる方がいいと判断するでよろしいでしょうか?」

 

 攻略部隊の編制は臨機応変に対応することになった。

 次に議題に上がったのは連合軍のカオシュン攻略とギガフロートについてだった。

 

「マスドライバーはこちらにとっても貴重な物だ。一個ぐらいは手元に置いておきたい」

「しかし、連合は立て続けの失敗に業を煮やしているだろう。今回はビクトリア奪回作戦の時以上の戦力を投入してくるはずだ。正直守りきるのは難しいのでは?」

「確かにそうだ。それに連合は壊れたマスドライバーの修復を行っていますが、こちらの破壊工作のせいで工期が遅れているからな……」

「ここはやはりいざとなれば戦略通り破壊するべきでしょう。固執しすぎて被害が大きくなっては意味がない」

 

 カオシュンのマスドライバーは予定通り、連合軍が本格的に侵攻してきたら破棄することになった。最もその場合ザフトも物資を効率よく上げれなくなるので、手元にあるうちにできるだけ資源や食糧、水等を宇宙に上げることになった。

 

「ギガフロートはどうします? カオシュンの奪回すら失敗すれば連合の連中躊躇なく接収に走るのは確実です」

「いっそのことこちらが先に接収してしまうのはどうだ? 連合に渡すぐらいならこちらの物にした方がいい」

「だが、その場合ジャンク屋ギルドとの仲が悪化するぞ。ジャンク屋はこちらの物資購入に一役買っているのだ。仲を拗らせればそちらに支障が出てしまうぞ」

 

 ギガフロートを連合にやるのは論外だ。だが、自分達が接収すればジャンク屋ギルドとの仲を悪化させることになり、戦略物資購入等に支障が出る。

 

「連中は戦後邪魔になる存在だ。いっそのことこれを機会にジャンク屋ギルド自体を潰すか乗っ取るのはどうだ? 連中この前我々のレアメタルを強引に自分の物にしてしまったのだぞ。抗議しても馬耳東風だ」

 

 ジャンク屋ギルドを快く思っていない一部のメンバーからは過激な意見が出る。ジャンク屋ギルドは特権を利用して好き勝手することもあるので、それの被害に遭った者からはあまり好かれていない。

 

「それとクライン派への工作だが、何割かをこちらに取り込むことに成功しました。これで万が一クライン派が独断行動を行ってもその動きを察知することが可能です」

「同じ和平を実現する考えを持つ者達だから無得に扱いたくないが、地下に潜られると面倒だからな……」

 

 前議長のシーゲルとクライン派の影響力はプラント内でかなりものだ。敵に回せばどれだけ内部を引っ掻き回す存在になりえるので、会合に集まった面々はなるべく敵に回したくないのが本音だ。しかし、その影響力を使って好き放題にされても困るので、枷を付けるべく内部を分裂させる策を打つことにしたのだ。

 

「これで向こうの行動を察知できますから、当面は監視だけでいいでしょう(ドレッドノートの件も拒否して封印したし)。それよりも折角集まったのですから、和平案の方はどうなっていますか? 議長?」

 

 キラはそう言って話題を変え、そっち方面担当のカナーバを見る。

 

「現在八割方完成しているが、今回の作戦の成功するか否かで多少修正を加えることになるだろう。確実に交渉の席に座らせるには、連合がマスドライバーを抑えて宇宙に戦力を上げる前に、月基地を落とすのがベストだといえるだろう」

「やはりそこに行きつきますか……。今度の作戦は是が非でも成功させないといけませんね(もし、失敗すれば例の戦略兵器を使うしかないか……)。正直こちらとしても長期戦は避けたいですし」

 

 キラはカナーバの話を聞いて、完成している例の戦略兵器のことが頭に浮かぶ。

 

(月基地を占領しても和平できないのであれば、連合の最大の武器である物量を支えているデトロイトの工業地帯を破壊するしかないな)

 

 キラはいざとなれば戦略兵器で、大西洋連邦の生産力を破壊することも考えていた。民間人を巻き込む所業なので心が痛むが、戦時においては何でもありなので、いざとなれば心を鬼にして実行するつもりでいた。

 

「月基地攻略で和平が実現できない時はどうするのですか? 評議会にはその方法があると前に言っていましたが……」

「済まない。それについて話すことはできない。なるべく評議会としても避けたい方法なのでな」

「気にしないでください。和平の方は評議会に任せて、それをスムーズにできるよう根回しを我らでしておこう。今度の作戦で和平が実現できるようにな」

「頼みます。軍は作戦成功に全力を尽くします。立ち塞がるものは徹底的に叩き潰します」

 

 こうしてプラントの取るべき方針は決定するのであった。

 

 

 キラは会合が終わった後、その帰りにオーブ領海付近で助けたマユの見舞いに向かった。

 

「マユちゃん。調子はどう?」

「調子はいいです。お医者様もあと数日で退院できると言っていました」

 

 マユはキラの気遣いに笑顔で答える。マユにとってキラは恩人なのである。内心では唯一生きていると思われる兄のシンの安否は気になっていたが、自分が今後生活に困らないように、退院後の仕事まで用意してくれたキラを心配させまいと思って笑顔を作って誤魔化したのだ。最もキラとしては彼女を助けられたのは本当に偶然だっただけに、対応に少々困っていた。それがシンとの敵対を避ける為という打算で行動している部分もあるので、その対応に素直に感謝されると罪悪感が湧き出てくる。

 

「必要な物があったら連絡してね。連れてきた以上は面倒はしっかりと見るつもりだから。住居も社員用のマンションだけど用意したから」

「はい。何から何までありがとうございます! この恩はいずれ必ず返します!」

「ふふ。期待しておくよ」

 

 キラは柔和な微笑みを浮かべ、それを見たマユは顔を赤くする。

 

「じゃあ、退院するときは迎えに行くよ。それまでに必要な物は揃えておくから」

「はい。キラさんもお仕事頑張ってください」

 

 マユはベットに座ったままキラに頭を下げて、彼を見送るのであった。


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