機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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第1話

 期日が迫る大作戦や各地の指揮官の要望で1機でも多くのMSを確保する為、関係部署への根回しや製造工場に生産力を上げられないか相談に行ったり、研究機関に新型MSの開発を急がせるように言った後、参謀本部の自室に帰還してすぐに、信じられない報告が入ってきた。

 

「イザークが負傷した? おまけにデュエルは中破だって!?」

「はい。イザーク・ジュールは脚付き追跡任務で脚付きと交戦した際撃墜こそ免れましたが機体は中破し、本人は顔に傷を負いました」

「そうか(自分がストライクを動かしているわけじゃないのに何でだ?)」

 

 キラのいないアークエンジェルのまともな戦力はムウ・ラ・フラガだけ。彼がストライクを操縦しているにしても、今の時点ではナチュラル用OSは完成していないのだからまともに動かせないはずだ。

 そんなMS相手に少々この頃は短気が欠点でも赤服であるイザークが、手傷を負わされ機体も損傷したことに驚きを隠せない。

 

(まさかOSが完成したのか? 或いはクルーゼみたいに元々素質があって操縦が可能だったか……どちらにしても厄介だな)

 

 どうやら主人公のいないアークエンジェルの力を過小評価しすぎたようだ。

 

「デュエルは修理する為、参謀がオーナーをしているマイウス市にあるミーミル社工場にあります」

「デュエルはビーム兵器が搭載されている為現存するザフトMSより優秀だ。しかし、奪取した他の3機より性能が劣る。修理と同時に機体性能を向上させる必要があるだろう」

 

 デュエルには原作通り、アサルトシュラウドを付けて機動力と火力を強化するプランを奪取する前から用意していた。何せデュエルガンダムは基本装備以外付いていない汎用性MSだ。このままでは地球連合軍が開発するMSに苦戦を強いられるのは間違いない。

 

 だから、追加で付けたアサルトシュラウドがどの様な性能を発揮できるか、試験運用も兼ねて原作通り装備させることにした。

 

「それなら開戦前に趣味で作ったアサルトシュラウドにフライトユニットをつけた複合装備が会社の倉庫に眠っていたから、あれを付けてデータ蒐集を行うか」

 

 ディンやバビを量産するよりも、将来ウィザードシステムで武装換装が可能なザクに大気圏で飛行可能な装備を付けた方が効率がいいと考え、その先行実験用として生産していたあれが役に立つときがきたようだ。

 

 さっそくその様に指示を出すと、そのフライトウィザードを造った技術者は大喜びでデュエルを改造し始めた。足付き追跡任務があるので最優先に修理するように国防委員会からの命令もあったので、作業は1週間以内に終わらせるように努力するそうだ。

 

「国防委員会は他に何か言ってきたのではないですか?」

「察しがいいね。今度の大作戦の攻撃目標であるパナマ軍港攻略に必要な戦略兵器『グングニル』の製造はどうなっているか聞いてきた。無論順調だと答えたけど」

「そうですか。この作戦が成功すれば連合は宇宙港を全て失うことになりますね」

 

 過去、地球連合が保有していたマスドライバーはアフリカにあるビクトリア、台湾にあるカオシュン港、パナマの3つ。

 しかし、その3つの内の2つビクトリアとカオシュンは現在こちらが占領しておりプラントに資源等を上げるのに役立っている。

 最高評議会は連合が保持する最後の宇宙港であるパナマを落として、連合を地球に閉じ込めて連合の宇宙軍の補給を断ち、士気が下がった所を攻め落とすことを考えていた。

 

「連合としては自勢力に残った唯一のマスドライバーだから絶対死守してくるから、嘗てない激戦になるだろうけど」

 

 今の所この作戦の攻撃目標はパナマとなっている。しかし、原作通りならパトリック・ザラが一部の軍人達と結託して攻略目標を変更しているが、その様な機密情報は、参謀といえど新人の若造であるキラのもとには入ってこなかった。

 

(穏健派よりの中立派に属していると思われているのも原因かな)

 

 アスランの親友ともあって一応パトリックにも悪い印象は持たれていないのだが、英雄クルーゼスパイ摘発事件の件に加え、早期講和とプラント独立を目指す為に穏健派であるアイリーン・カナーバと接触して幾度も話し合いを行っている。

 プラントには長期戦を行えるほどの国力はないのだ。戦線が膠着状態になっている状況はプラントにとってはよくない状態で何とか和平交渉を成功させる必要がある。

 

 プラントが独立できるのなら占領地は、カーペンタリア基地周辺以外は放棄してしまってもいいとキラは考えている。カナーバ氏も大方同じ考えを持っており和平案作成を穏健派と進めている。

 

「次の作戦のパナマ攻めは太平洋と大西洋から挟撃する形になる。しかし、敵もそれは予測しているだろうな」

「降下部隊を同時に降下させて一気に橋頭保を確保してマスドライバーを確保或いは破壊ですね」

「恐らく破壊することになるだろう。あそこは地球連合の盟主である大西洋連邦の領域に近すぎる」

 

 例え制圧しても大西洋連邦の裏庭ともいえる中南米地域を占領・維持することは不可能だ。だから、作戦本部でも破壊が妥当という意見が大半を占めている。

 

「しかし、パナマを攻略するにしては些か他の戦線から部隊を引き抜きすぎではないでしょうか? グングニールの使用を考えれば少し多すぎる気がするのですが……」

「万が一を考えてだろう。連合のMS開発が進んでいることを考えれば別に過剰ともいえないことはない」

 

 不思議がっている副官を見てもう少し作戦本部は作戦の秘匿に務めるべきだと思った。

 グングニールを用意しておきながら各戦線の部隊を引き抜く。このような大部隊を異動し動員すれば怪しむ輩が現れることを想定してないのだろうか。

 

(義勇軍であるザフトの未熟な部分が出たと云えるな。しかし、何とか攻撃目標をパナマに戻せないだろうか)

 

 クルーゼはすでに退場しているので、連合軍は攻撃目標が確実にアラスカだと知ることができない。だから、連合がサイクロプスを用意することは難しいと今の所判断しているが、それでも一抹の不安は残る。

 

 攻撃目標変更はパトリックの独断なので何とか阻止したいが彼はプラント国防委員長だ(後に最高評議会議長を兼ねる予定だったが見送りになった)。残念ながら阻止する方法はない。

 

(万が一に備えておく必要があるな。しかし、ジェネシスを2基も製造するとなると予算が厳しい)

 

 パトリック・ザラの命令で建造が進められている大量破壊兵器ジェネシス。当初は『γ線レーザー砲』として建造される予定だったが、クルーゼを始末した折に穏健派を焚きつけて1基を00のメメントモリみたいなビーム砲に計画を無理やり変更させた。そして、試作型のジェネシスαを予定通りの『γ線レーザー砲』にすることに成功した。

 

 ちなみにそれが決まった時のパトリックの顔は真っ赤になっており、彼は自宅に一時帰った時に怒鳴り散らしたらしい。

 

(これでプラント側の大量破壊兵器にある程度枷をつけることができた。後は連合にNジャマーキャンセラーの情報を渡さないだけだ)

 

 その為にもジャンク屋ギルドとマルキオ導師を監視し、最悪排除する必要がある。特にジャンク屋はテロリストの兵器供給所になる可能性が高いので、キラはいずれジャンク再生分野に進出してシェアを奪うつもりでいた。

 

(前途多難だな。しかし、自分の平和な生活を獲得する為にもやりぬくしかない)

 

 これから先の未来への不安を抱きながら今日も仕事をこなすのであった。

 


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