機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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明日からは少し更新が遅れる可能性があります。未だにプロットが完全に完成していないことに加え、明日からはちょっとリアルが忙しくなるからです。最も予定なので実際はどうなるかわかりませんが。


第2話

 プラントが戦後の平和を謳歌しているのに対して、地球情勢は戦争が終結したにも関わらず暗い影が落ちていた。

 南アメリカ独立戦争に端を発した、連合の中核を担う国家に無理やり併合されていた地域に住む民族が、自主独立を掲げて蜂起したのだ。

 無論連合の中心である大西洋連邦はこれに対して武力で対応した為、状況はものの見事に泥沼と化してしまったのだ。

 

 そんな情勢の中で南アメリカ政府が大西洋連邦に降ったにも関わらず、未だに抵抗を続ける者が南米には多くいた。連合の脱走兵こと切り裂きエドの異名を取るエドワード・ハレルソンもその一人だ。

 

「ダガーなんていくら投入してきても意味がないのに連合は懲りない奴らだぜ」

 

 エドはそう言いながら、ソードカラミティのメインウェポンである対艦刀シュベルトゲーベルで、ダガーLを真っ二つにする。

 

「みんなは今頃どうしているかな? 俺が連合から脱走したからやっぱ怒っているかな……」

 

 エドは敵を倒しながら、嘗ての同僚のことを思い出す。脱走は軍人にとって重罪。それ故に誰にも何も告げずに脱走してきたが、今は少し後悔していた。せめて一言何か言っておけばよかったエドは思い始めていた。

 

『エド! 連合の増援が来る! そろそろ撤収だ!』

「了解。早くこんな泥沼から抜け出したいぜ」

 

 エドはソードカラミティのスキュラを連合のMS部隊の足元に発射して、土煙を舞い上げることで連合軍の視界を塞いでいる隙にジャングルの中に消えるのであった。

 

 エドは愛機と共に今日も強大な連合相手に戦い続ける。人々が自ら立ち上がって連合に立ち向かえる日が来ることを祈りながら。

 

 

 

 東アジア共和国。

 連合の中核をなす国家勢力の一つで、かつては強大な勢力であったが、これまでの少数民族弾圧政策で各地に不満が溜まっていた。その結果、地球連合の敗北とプラントの独立により、民族独立運動が一気に再燃。各地で独立を果たすべく、弾圧が酷かった地域の住民は一斉蜂起した。

 

 東アジア共和国政府は無論これを鎮圧すべく軍を派遣したが、戦時中にプラントの支援を受け取っていた独立派はジャンク屋から購入したMS等の兵器で対抗したことに加え、決戦の折りに優秀な将兵を多数損失していたので戦局は膠着状態に陥った。

 東アジア共和国内部では、人権侵害をやめて融和政策を行なうか、独立を認めて陣営に残ってもらった方がいいのではないかという意見も出たが、支那はそれを内政干渉だといい突っぱねた。

 何せ東アジア共和国は一部の将兵のミスにより連合中心国の中で唯一、マスドライバー施設であるカオシュンをプラントに譲るはめになり、東アジア全体で経済的に不味い状態になっていた。ここで万が一弱気になれば自国で革命が起きることを恐れた支那政府要人は強硬策に打って出るしか方法がなかったのだ。無論自分達の政策の失敗を誤魔化す為のいつもの手であったので、カオシュンを奪われた現地政府や日本政府の人間は白い目で見ていたが。

 

 この様に地球圏の問題はプラントにも届いており、独立を支援して親プラント勢力を現地に築くべきだという強硬な意見が評議会でちらほら出ていた。

 

 会合に集まった出席者達は、基本方針をキラ達から聞いていたので、その現実性がないことを声高に叫ぶ一部の連中に顔を顰める。

 

「地球圏がどうなっているのか一応ニュースや新聞で説明した後、干渉は難しいと説明したのにこんな声が出るとはな……現実が見えていない連中はまったくこれだから厄介だ」

「コロニーという閉鎖空間に住んでますからそうなるのも仕方ないのかもな。それにしても、地球はまさに混沌状態ですね。まあ、戦前に行ったことのツケですから彼らの自業自得だがな」

「これだと民需はしばらく需要がないな。地球圏にはさっさと安定してもらいたいな」

 

 出席者達は地球圏国家の混乱に思わず苦笑してしまい、今後の見通しがつかないことになることを多少危惧した。

 

「連合各国は現在国家の立て直しを図っていますが、状況はあまりよくないといえます。何せ独立を叫ぶ勢力がゴキブリの如く湧いてきていますからね。当分連合各国が安定することはないでしょう」

「我らはその間に戦力再編を終える必要がある。その為にも独立勢力への支援は控えるつもりだ」

「無い袖は振れない以上は仕方がありませんな」

 

 キラとアウグストの意見を聞いて、その意見に出席者達は同意し頷く。

 プラントは戦後広がった勢力圏を整備するのに手一杯で独立勢力大規模に支援する余裕はないのだ。もし、するとすれば弾薬或いは旧式兵器の売却が関の山だろう。それがわかっているだけに、独立勢力を積極的に支援をしようと思う輩は軍や政治家の中にはほとんどいなかった。

 

「独立勢力への支援は最低限は行うつもりです。露骨に見捨てると恨みを買いますし、彼らが頑張るほど連合各国の目は内側に向きます。最も戦後だというのに露骨に対外強硬策を取ろうとする国家も存在しますが」

「あの国家のことか……話には聞いていたが本当に酷いな。知れば知るほど関わりたくない国家だ」

 

 例の国家の民族浄化政策を知ったメンバーは、政治中枢にいる者は碌な人物がいないと見ていた。いくら、マスドライバーを奪われたといっても、それは彼等の失策である以上露骨な責任転嫁を行う神経はこの会合に集まった者達にとって理解し難いことだった。

 

「頭の中が何千年も変わっていない連中の考えること何て我らには理解できませんし、その様なことを理解するのも時間の無駄です。それよりもこの内紛を我らの益なるようにしましょう」

「一体どうするのだ?」

 

 キラの発言に出席者達が興味を示し、アウグストがキラに尋ねる。

 

「この件を利用して東アジア共和国を分裂させましょう。彼等が行っていることを世界に宣伝します。そして、国際的に非難を浴びせて孤立させた後、一部の地域を東アジア共和国から脱退させます」

「確かにいい策だが、正直難しいのではないか? 日本列島は北海道を失っているから国力は昔程はないし、あそこは大陸に近い。それに下手をすれば東アジア共和国軍が雪崩れ込んでくる恐れがある以上、両国共下手な行動は取らないのでは?」

 

 アウグストはキラの意見に疑問を呈する。東アジア共和国を分裂させればカオシュンへの圧力は減るが、当分はどこの国家も内政を重視するので必要以上の揉め事は避ける。だから、離反を狙うのは正直難しいのではとアウグストや一部の出席者達は思っていた。

 

「まあ、すぐには無理でしょうね。しかし、心理的な離反はできるでしょう。支那の横柄な態度に両国共常に忌々しいと思ってますから、ここで更に彼等が行っていることを伝えてやればその不信感は増します。この策略を実行する為に両国へ密かにアプローチを取っている最中です」

 

 キラは折角手に入れたカオシュンを守るべく、東アジア共和国を分裂させる気満々だった。特に日本は他の東アジア共和国構成国と違い、約束をよく守る国なので親プラント国にするメリットは大きい。

 

(戦力再編が終わるまでに色々と手を打っておくことに越したことはない……特に大戦に敗北した結果、元プラント理事国に言われて戦争に協力した非理事国との間に溝が生まれている。これを利用して連合内に不和の種をまける)

 

 キラは更に大戦に敗北した原因は、理事国国家が無能だったせいだと民間のジャーナリストを使って喧伝するつもりでいた。特に勝敗を決する決戦で敗北する理由を作った支那に対して、不信の目を向けている国は多い。そこに楔を打ち込んで更に仲を悪くさせることができれば、戦闘になった場合でも連中の連携を阻害でき、万が一すぐに再戦となったとしても、こちらに有利にすることができるとキラは考えていた。

 

「こちらも段階的に進めていく必要があります。それでこの案を了承してくれますか?」

「プラントに不利益は発生しない所か利益になる以上反対する理由はない。私は賛成する」

 

 カナーバが賛成の意を示したことで、他の出席者達も顔を縦に振って賛成を示したことで、キラの策を実行することが会合で承認された。

 

「戦争は終わった。だが、私達は今後に備える為に山ほどやることがあることを忘れるな」

 

 最後はカナーバの言葉で会合の話し合いは締めくくられることになった。

 

 

 

 

 キラ達ヴァルハラの面々が色々と影で奮闘している頃、士官学校で奮闘している人物がいた。

 

「シン・アスカ! 何をやっている! これは練習であって模擬戦ではないのだぞ!」

「わかっていますよ! でも、こうやった方が効率がいいじゃないですか!」

「基礎を他の者より早く修得したからと言って調子に乗るな! ここは軍の学校だぞ! 上官の言う通りにしろ!」

 

 士官学校に入ってシン・アスカは2度目のMS訓練を受けていた。シンは他の者より早く上達したので色々な動きをしてみたのだが、調子に乗って激しい動きをしてしまい、他の練習生に迷惑をかけてしまい、教官にこってりと絞られる羽目になったのだ。

 

「すみませんでした……」

「何か色々引っ掛かるがまあいい。今後は気を付けるようにな」

 

 シンは渋々教官に謝罪し、教官は一応反省したのを見て許したのか別の練習生の元に向かった。

 

「俺は強くなる。そして、今度こそ大切な者を守る力を手に入れるんだ」

 

 シンはそう呟きながらコロニーの人工の青空を見上げるのであった。

 

 


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