機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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更新です。

たった2話更新しただけでお気に入りが100件を超えたことに驚いている筆者です。
こっちの筆が進んだので自分としては珍しい2回目の更新をします。

それにしてもアスランが一番嫌われているんだな……。二期目の脚本の罪は重すぎるとつくづく思いました。アスランの〇モ疑惑も凄まじいな……。


第2話

 ラクス・クライン嬢が無事にユニウスセブンから帰還しプラント上層部は一先ず胸をなで下ろした。

 そして、ラクス・クライン探索任務を終えたアスランが帰還。デュエルの修理と改装は予定通り終了したので、アスラン隊の旗艦ヴェサリウスはガモフと共に足付き追撃任務を続行する為プラントを出航した。

 

「バルトフェルド隊に回す物資はほぼ手配しました。後はMSが揃い次第ジブラルタルへ送ります」

「ありがとうジーク。今度休日が取れたら何か奢るよ」

「いえ。あなたの副官として当然のことをしただけです」

 

 ジークリンデはキラに褒められて年相応の微笑みを浮かべる。

 ジークリンデはやや切れ長の理知的な蒼い瞳に、透き通るような白い肌と見事な対をなす薔薇色の唇に加え、最高級絹ような光沢を放つ銀色の長髪をくびれた腰まで伸ばし、一流モデルのようなスラリと長い脚はとても軍人をしているとは思えない程綺麗であり、顔も動かなければ精巧な人形と勘違いするほど整っている。(ちなみに名前が長いので周りからはジーク或いはリンデと呼ばれることが多い)

 彼女は女性にしては背が高く大人びた雰囲気を纏っているので、キラと並んでいると年上だと勘違いされてしまうが、上司であるキラと同じ年でザフトに入隊して以降苦楽を共にしてきた仲である。おまけにキラとジークリンデは恋人関係にあり。身長は僅かに彼女の方が上なせいか年上に見られがちだが非常にいい関係で、周囲はこんな才色兼備の女性を彼女にしているキラとの仲を持て囃したり、嫉妬の視線を向けてたりしていた。

 

「ザラ隊に増援を送する様にユウキ隊長に要請したとか」

「足付きは唯一手元に残ったG兵器を届けるべくアラスカに降下する。だから、先行させたザラ隊に増援を送った」

 

 原作よりも多くの戦力が攻撃に加わる予定になっていた。第八艦隊を確実に殲滅する為にはこれぐらいあっても問題はない。あとは我が軍の奮闘を祈るしかない。原作より戦力が下がっている敵相手に過剰ともいえるかもしれないが、イザークが負傷したことを考えると念には念を入れておいた方がいいと判断したからだ。

 

「さて、後はザラ隊の奮戦に期待しよう」

「そうですね。もし、失敗したら喝を入れてやりましょう」

 

 

 

 

 隊長であるアスランが帰還したことでザラ隊は先行して足付きを追ったが、足付きが第7艦隊と合流してしまった為迂闊に手を出せなくなり目標を見失わない様に追尾することしかできなかった。

 このまま手をこまねいて足付きを地球に降下させるのを座視するのは論外だが、現戦力ではこちらの数が少なすぎるので下手に攻撃を仕掛ければ包囲されて全滅する恐れがある。

 

「足付きを撃沈する為すぐに仕掛けるべきだ! ナチュラルの艦隊等蹴散らしてしまえばいい!」

「今の戦力では冒険はできない。いくらこちらに敵から奪取したG兵器があっても数が違い過ぎる」

 

 アスランの慎重な姿勢にイザークが噛みつく。彼はアスランをライバル視しており処刑されたクルーゼの隊を臨時で引き継いだキラが、引き継いだ隊の隊長にアスランを任命したことに少しだけ納得していなかったのだ。

 

 元クルーゼ隊は当初誰が隊長となって引き継ぐかザフト軍上層部でも議論になった。何せクルーゼに率いられたクルーゼ隊は練度が高い部隊なので、兵力不足に悩むザフトに本国で遊ばせておくという選択はなかった。

 そこでクルーゼの叛意を突きとめ証拠を押さえて、ザフトでも指折りのMSパイロットでもあったキラが預かることになった。幸い彼が元々ザフト軍に入隊する可能性を考慮して軍事・軍政等をいち早く学んでいた結果、指揮官適正もある上に武勲も申し分なかった為、評議会の面々も特に反対することなくあっさりと彼が隊を引き継ぐことになった。

 

 しかし、ここでパトリック・ザラが軍政面の方により才能があると判断してキラを、彼の意見を取り入れて創設されたザフト軍参謀本部の後方参謀に異動させた。

 彼は裏切り者クルーゼを重宝していたので彼が粛清された後周囲から嫌味を言われるだけでなく、プラント政府・ザフト軍内でもその発言力が著しく低下していた。自らの支持基盤である強硬派ですら彼を見限り始めており、その評議会内でも彼の影響力は徐々に衰えつつあった。結果最高評議会議長就任すら怪しくなってきており、変わりに周囲から政治手腕に定評がある穏健派のアイリン・カナーバ氏を議長にするべきだという声が、評議会内でも日に日に高まってきている。その結果シーゲルの議長辞任は延期になり、誰が議長に就任するかは大作戦発動後に持ち越すことになった。

 パトリックは自分の不甲斐なさと裏切りを働いていたクルーゼを内心で罵りつつ、何とか自分が議長に就任する為の成果を得るべく大作戦を早めることにした。それと同時にカナーバの議長就任を望む穏健派達がこれ以上点数を稼がないようにする為、彼等を内心支持している者を各戦線に支障がない範囲で後方に下げることにした。

 その人事異動の真っ先の標的となったのがクルーゼの裏切りの証拠を集めて告発したキラだった。最も本人は危険なオペーレション・スピット・ブレイクに投入されることがなくなったことを内心安堵して喜んだのだが。

 

「ユウキ隊長とキラ隊長が意見を具申した結果援軍を寄こしてくれる。それと合流でき次第仕掛けるぞ」

「キラ隊長ね……随分と出世したもんだな」

 

 アスランの口から出たキラの名前にディアッカ・エルスマンは嫌味半分、羨望半分に呟く。

 キラは自分達と同じ年齢でありながらザフト軍が使用するMSを独占的に供給する軍需会社の経営者。その上ザフト軍に入隊したらあっという間に出世していき今では自分達を命令する立場になった。

 いくらプラントが能力主義で15歳以上で大人に認められるとは云え同年代の男としては嫉妬したくなるのだ。

 

「あいつが就任したのは後方参謀だ。今頃俺達が活動できるように色々と苦労しているんだぞ」

「そうですよ。父も言っていましたよ。彼のおかげでザフトの補給がスムーズに行えている。前線の要望も可能な限り聞き入れてくれるから作戦本部でも評判はいいみたいですし」

 

 キラの仕事の大変さを理解しているアスランはディアッカを嗜め、二コルも自分の父から聞いたことを話してアスランを援護した。

 

「悪かったって。そんなに怒るなよアスラン。俺も奴に関しては嫌っていないさ」

 

 ディアッカはアスランに慌てて弁解する。

 キラは基本的には仕事を真面目に取り組む上優しい性格な上ザフト内でも三本の指に入るエースパイロットなので憧れや尊敬を抱くものが多い。上からは若い割には現実を見据えることできる奴だと概ね好評価をもらっている。その為同期の中で一気に出世して今ではザフト内でも割と有名人だった(容姿も悪くないのでアスラン程ではないがもてるので、プラント内での名家の令嬢等とお見合いや会食を持ちこまれることもあるが、その内のジークリンデといい関係になった結果それは以後減少していた)。

 

 ディアッカはキラの能力と出世ではなく、そのリア充の部分に男として嫉妬しているだけで彼自体を嫌っているわけではない。

 

「アデス艦長。足付きの様子はどうなっていますか?」

「偵察機からの連絡によるとまもなく連合艦隊と合流するらしい。どうするのですか?」

 

 ナスカ級戦艦ヴェサリウスの艦長を務めるアデスはどうするのか決めてもらうためアスランに視線を向ける。

 アスランはそれを受けて暫し熟考した後口を開く。

 

「増援の到着まであとどれくらいだ?」

「予定通りなら後約10分後に合流ポイントに到達します」

「そうか……なら、増援部隊に連絡。我々は先行しぎりぎりまで敵に接近して気取られない位置で待機する。そちらは到着しだいそのまま敵艦隊に攻撃を仕掛けるようにと」

 

 アスランはまだ気づかれていない自分達を伏兵として付近待機し、増援部隊を利用して敵を分散させて双方を撃滅することにした。

 

「ヴェサリウスは敵の索敵範囲に入らない場所まで移動を」

「了解した。ヴェサリウスを所定の位置まで移動だ! パイロットはいつでも出撃できるように待機せよ!」

 

 アデスはクルーゼに付き従って手柄を立ててきた優秀な艦長だ。命令を1つするにしてもアスランよりも上司の頼もしさが感じられた。

 アスランはアデス艦長を見て自分もまだまだ精進が必要だなと改めて思うのであった。

 

 ザフトは戦力を増強して足付きを殲滅する為に第七艦隊へと進軍を開始。こうして低軌道会戦の幕が開けるのであった。

 


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