機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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チラ裏に投稿している異世界漂流記外伝がさっそくスランプ状態に陥りました。そこで、ハイスクールD×Dを新たに書き直すことを検討しています。主な変更点は原作沿いになることです。それと一誠を登場させるべきか迷っています。原作沿いにするなら必須なのでしょうが、それでは数あるハイスクールD×D二次作品と変わらないし……。


第5話

 シンが命令を受けて数ヶ月後。

 士官学校では卒業式が行われ、卒業生は士官学校の校長から軍人としての心構え等を聞かされたあと、同級生と卒業写真を取ったり、これからの互いの配属先について話に花を咲かせていた。

 教室に戻った卒業生は参謀本部からやって来た人事部の人間に、それぞれの配属先が詳しく書かれた書類の入った封筒と配属先を発表されてその場所に向かうように指示された。

 

 シンは事前に聞いていたので配属先に驚くことはなかったので、普通にその辞令を受け取り、そのまま最近軍事コロニーとして稼動し始めたアーモリ・ワンに向かうのであった。

 

 

 

 

「すげぇ……」

 

 シンはアーモリ・ワンに軍事施設の規模の大きさに感嘆する。コロニー内部は軍事関連の施設が所狭しと佇んでいた。

 

「話には聞いていたけど本当に軍事専門のコロニー何だな。ここで俺は新兵器開発に関わるのか……」

 

 教官の話によると正式なパイロットになれる可能性もあるそうだ。全てはここで結果を残せるかどうかに掛っている。

 シンは命令書に記載されていた場所へ向い受付を済ませると、係員の案内で新型の開発が行われている工廠兼軍事演習上に到着した。

 

「君がインパルスのテストパイロットを担当する新人か。ここの総責任者のキラ・ヤマト参謀長だ」

「最強のエース! ……えっと、シン・アスカです。参謀本部からの命令で今日付けでここに配属されました。どうかよろしくお願いします」

 

 シンは最強のエースがいたことに驚き、目の前の上官に慌てて敬礼をする。

 

「よろしく。全員に挨拶が終わったから僕はこれで失礼させてもらうよ。後で同じテストパイロット仲間同士挨拶を行う予定になっているから」

 

 キラはそう言って工廠を後にしようとしたが、ふと妹のマユと再会させるちょうどいい機会だと思い、後ろを振り返ってシンの方を見て口を開く。

 

「シン・アスカ君だっけ? 君の今日のお勤めが終わったら話したいことがあるんだけどいいかな?」

「え!? は、はい。別に構いませんが?」

「じゃあ、終了時刻にまたこちらに来るか。テストパイロット頑張ってね」

 

 キラはシンにお勤め終了後に会う約束を取り付けて今度こそ工廠から去って行った。

 シンはキラの後ろ姿を見届けた後、同じテストパイロットの者達と自己紹介をした後、自分がテストパイロットを務める新型機の元に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 プラントで戦力再編が急速に進む中、地球圏の勢力再編はなかなか進んでいなかった。民族独立を掲げて武装蜂起する勢力は後を絶たず、連合各国はその鎮圧に力を注がなければならず戦後の平穏とは程遠い情勢だった。

 

 無論会合でも地球圏の動乱が課題にされることが多く、今回の集まりも主な議題は地球圏の動乱についてだった。

 

「ユーラシア西側で連合離脱を目論む動きが出ているようだ」

「連合の威信は我らに敗北したことで失墜しましたからね。新たな枠組みを求めるのは無理ないか……」

「おまけに東アジア共和国で内戦と紛争が勃発しましたからね。それらの動きに触発されたようです」

 

 一部の出席者達は地球圏の混乱に顔を顰めつつも、同情の声は上がらなかった。仮想敵国である連合の弱体化は、プラント政治の影の中枢を司る者達からすれば好ましいからだ。

 

「大洋州連合は旧式兵器の貸与或いは売却を求めています。どうやら連中安全保障の為に、パプアニューギニアを占領したいようだ」

「確かに今がチャンスだが赤道連合を敵に回すようなことは避けたい。兵器の売却等は検討するが大洋州連合の軍事作戦を実行させるわけにはいかないな。根回しして黙らせるしかないな」

「旧式兵器は大分売り払う予定ですから、あまり回せる物はありませんしね」

 

 大洋州連合の要請は軽く受け流すことになった。

 次に議論されたのは内戦が始まって混乱が続く東アジア共和国についてだった。

 

「大陸では内戦が広がっています。各地で軍閥が台頭したことで内戦は混迷を深めており、各軍閥は自分達こそ正統な政府であると喧伝して同じ東アジア共和国内の国や地域、連合各国や我が国に支援を求めています」

「連合各国はどうするつもりだ?」

「大西洋連邦は軍閥ではなく華北に存在する東アジア共和国を支援すると発表しています。ユーラシア連邦もどこかを支援する気配を見せていますが、まだ、明確にしていません。恐らく様子を見るつもりでしょう」

「大陸を生贄にして連合各国は自国の経済活性を狙うつもりのようだな」

 

 同じ連合構成国なのに支援する相手が違うことに、出席者達は連合各国が東アジア共和国を半ば見捨てたことを悟った。大西洋連邦やユーラシア連邦はこの内戦で発生する特需を利用して経済の活性化を図るようだ。

 

「これで東アジア共和国の分解はほぼ確実。我らも予め用意していたドクトリンに沿って行動を開始するとしよう」

「お願いします。これで連合の一角を切り崩せます。それにカオシュン周辺の安全確保もできるでしょう」

 

 アウグストは軍事支援を行うことを言い、キラはプラントの安全保障の要である連合の解体の第一段階を行うことを宣言し、出席者達は全員が頷いた。

 

「第一目標は福建軍閥の撃破と沿岸部の制圧。ここの軍閥がカオシュンのマスドライバーを狙っているとの情報が入っています。ここで奴らを容赦なく叩き潰してマスドライバーに色目を使う連中を牽制します」

「奴らが持つ兵器は旧式兵器のリニア・ガンタンク等が主力だ。MSも少し数が確認されているが大した数ではない以上、これを撃破すれば連中は降伏するだろう」

 

 キラとアウグストが軍事作戦の概要を説明する。

 

「議長には我らが敵を殲滅したら速やかに講和をお願いします」

「わかった。私も混乱がこちらの勢力圏に広がるのは望んでいないからな」

 

 アウグストの言葉にカナーバは頷く。

 

「ここは他勢力を脅す為にも圧倒的な戦力で押し潰す方がいいかもしれません。自分も少し改造を加えたフリーダムで出ます」

「確か武装を少し改装したものでしたか?」

「セカンドステージの使用されている技術を使いました。これで格闘戦とビーム砲の威力は上がりましたので、実験をするのにぴったりかと」

「出撃させる軍の編制は参謀本部に任せるから問題ない。思う存分暴れてこい」

 

 カナーバはキラの出撃許可を出した。この忙しい時期に会合の要であるキラを、地球の戦場に出撃させることはあまり好ましくないのだが、キラに実戦の勘を鈍らせるのもよくないと思い内心少し悩んだ結果許可を出すことにした。

 

「ありがとうございます。出撃する以上は最善の結果を出せるように頑張ります」

「なるべく被害は少なくしてくれ。あまり被害を出すと私の支持基盤である穏健派がうるさいのでな」

「わかりました。では、福建省を拠点とする軍閥を容赦なく潰してカオシュンの安全を確保することにします」

 

 プラントの大戦戦後の軍事行動は福建省に拠点を置く軍閥と賊を討伐することになり、それを実行することが会合で承認された。

 

 

 

 

 シンはキラと約束した通りにテストパイロット終了後に、キラに誘われて食事をしていた。

 

「緊張してるのかな?」

「こんな高級なお店に来たことなんて自分は一度もありませんので……」

「大丈夫。ここは防音を施している部屋だからいくらうるさくしても問題ないよ。それに俺がオーナーを務めている店だしね」

「キラさんって公私で言葉を使いわけているんですね。……ところで自分に話したいことって何でしょうか?」

 

 シンは場の雰囲気に若干緊張しつつも、自分と何を話したいのか尋ねる。

 キラは急に真面目な表情をして、シンが一番気にしているだろう件を口に出す。

 

「シン。君の家族のことなんだけど?」

「家族ですか……オーブ戦の折り脱出した船が連合の潜水艦に沈没させられて行方不明ですが……」

 

 シンはその時ことを思い出したのか顔を暗くする。

 

「御免。辛い思いでを思い出せてしまって……。でも、確認しておきたいことがあるんだ? 君はマユ・アスカという子を知っているかい?」

「マユは俺の妹ですが……っていうか何でキラさんがはマユのことを知っているんですか!? 俺妹がいるって話していませんよね?」

 

 シンはキラが妹の名を知っていることに若干不思議に思い尋ねた。

 

「そうなんだ。君の妹のマユちゃんだけど無事だよ。現在プラントにいる」

「えっ? ……今何て言いました……マユが無事って……どういうことですか……」

 

 シンはキラの言ったことが最初は理解できずに固まってしまう。

 

「そのままの意味だよ。マユ・アスカは僕が戦争の折りに漂流していたところを保護したんだ。無論五体満足で元気に暮らしているよ。僕が保護者になってね」

「……は、ははは。俺てっきり一人になってしまったのかと……今すぐマユに会いに行きます! 俺が無事だってこと教えてやらないと!」

 

 シンは急に席を立って店から出て行こうとした。

 

「落ち着いて。そう言うと思って連れてきたから。入っていいよ」

「はい」

「! この声……」

 

 キラがそう言った後、外から少女の声で返事が返ってきた。

 シンはその声を聞いて表情が固まる。開いた扉から現れたのは黒髪を肩まで伸ばし、シンと同じ赤い瞳をした明るい表情が魅力な少女だった。

 

「マユ……」

「久しぶりだねお兄ちゃん」

 

 

 

 

 キラがシンにマユのことを話す少し前。ジークリンデはマユを伴って高級料亭に来ていた。

 それはマユから聞いていた彼女の兄であるシンがプラントの士官学校に在学していることがわかり、彼女が兄に会いたいと希望したので、キラがシンの存在を黙っていたことを悪く思ったので、再会の場を用意してやることにしたのだ。

 

 マユはキラと兄がいる部屋の近くで終始ソワソワしており、今か今かと再会を心待ちにしていた。そして、遂にキラから声が掛り、マユは部屋に入って行く。

 

 

「マユ……マユなのか……」

「そうだよ。お兄ちゃん。マユだよ。お兄ちゃんの妹のマユ・アスカだよ……」

「マユ……マユ!!」

 

 シンは涙を流してマユに駆け寄り嬉しさのあまりマユを思いっきり抱きしめる。マユも若干力が強い兄の抱擁に顔を顰めていたが、嬉しさの方が勝っているのか抱き返す。

 

「よく、よく無事だった! 俺は今この奇跡に感謝する!」

「うん。偶然ザフトの潜水艦の近くを漂流していたからその部隊に助けられたの。そのままプラントに移り住んだの」

「そうか……お前が本当に無事でよかった! ……そうえばお前どうやって生活していたんだ?」

 

 シンは疑問に思ったことをマユに尋ねた。

 マユは9歳だ。プラントでも成人年齢に達していない。どうやって今まで生活していたのか気になった。まさか変な仕事をしていたんじゃないかとシンは気になってしまい、マユに救出された後の生活を尋ねる。

 

「キラさんが家族を失った私の保護者になってくれたの……キラさんは私にとって恩人なの」

「そうか……キラさんマユを助けてくれただけでなく、生活までお世話してくれてありがとうございます! 兄として礼を言います! 本当にありがとうございました!」

 

 シンは心の底からの笑顔を出してキラに頭を下げた。

 キラとしてはこうなることを見越して世話していたので、シンの純粋なお礼に若干心苦しく感じたが、礼を言われるのは悪い気分ではない上、そのことを一々言って涙の再会に水を差すこともしなかった。

 

「じゃあ、今後のことを兄妹で話し合うといいよ。勘定は済ませておくから」

「ありがとうございます。この恩は一生忘れません!」

 

 シンはそう言い部屋から出て行くキラ達に向かって礼を言うのであった。

 シンはこの後マユと色々話し合い、マユが軍人になることに関してはシンは猛反発したが、シスコンである彼にマユのお願い攻撃に抗うことができず、最終的に了承するのであった。そして、キラのことを話すマユの目が若干熱を帯びていることに気付き、キラさんとはどういう関係なんだと問いただす場面もあったが、マユは「キラさんは恩人だよ」と言うだけで、明確な答えを聞き出すことは叶わなかったが、妹の恩人を悪く思うのは嫌なのでこれ以上は問い詰めるのをやめて、久しぶりの兄妹二人きりの会話に花を咲かせることにするのであった。




感動の再会にしては少し表現が淡白過ぎないと思った方はどうか御容赦を……。作者の力量ではこれが限界です。

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