機動戦士ガンダムSEED ザフトの名参謀? その名はキラ・ヤマト   作:幻龍

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第5話

 ザフトが一大作戦に向けて準備している最中、連合上層部でも反撃準備を着々と行っていた。

 当初ザフトにいる内通者のおかげで敵の大作戦の攻撃目標をアラスカだと知ることができたので、アラスカ基地にサイクロプスを仕込んでザフト軍ごと自爆させる作戦が立案される。しかし、内通者が粛清されたことで連合軍上層部はザフトが攻撃目標を変更する可能性が高いと判断し、サイクロプスを設置するかどうか議論が紛糾することになった。

 

「情報提供者が粛清された以上、こちらの作戦も漏れている可能性がある。高い金をかけて造った基地を自爆させるなど非生産的な作戦は中止すべきだ!」

「粛清されたからといってザフトが作戦を変更するとは限らん! 寧ろ我らが攻撃目標を変更したと思わせる策に利用する可能性もある!」

 

 各々の立場から様々な意見が出た結果、サイクロプスは結局設置することになり万が一ザフトがこの基地へ侵攻した場合従来の作戦通りに使用することになった。一方でザフトが狙う最有力候補たるパナマには生産が開始されたMSを配置して絶対死守することになった。

 

「この作戦によって戦争が早期終結に向かうことを祈ろう」

 

 連合将官の1人がそう言い締めくくり、作戦会議は閉幕するのであった。

 

 

 

 連合軍の会議で新たな反撃作戦が練られていた頃、ザフトの追撃を振り切ったアークエンジェルは太平洋を縦断してアラスカに向かっていた。原作ではキラとストライクを回収する為にアフリカに不時着したが、この世界ではアラスカに降下できなかったものの、少しずれた程度で済み太平洋に降下した。

 

 艦長代理のマリューは何とかザフトに見つからずここまでこれたことに安堵していた。

 

「何とか辿りつけそうね」

「そうだな。これで准将も少しは報われるだろう」

「ええ。第八艦隊の奮闘がなければ我らは今頃沈められていたでしょう」

 

 副官であるナタルの言葉に、マリューは戦場で散った恩師を思いだし顔を暗くする。

 第八艦隊は自分達を地球に降下させるため、旗艦と指揮官を失ったにも関わらず最後までザフト相手に奮戦してくれたのだ。そのおかげで自分達はここにいる。

 

「そう、暗い顔しなさんな。准将も軍人として本望だろう。もっと前向きにいくしかないだろう」

 

 ムウは恩師の死に落ち込むマリューの肩を持ってを励ます。

 マリューはムウの励ましに少し気を持ち直したのか顔を上げる。

 

「それにしてもザフトはオーブ近海以降追撃を仕掛けてきませんでしたね」

「そうだな。ザフトにとってそれほど俺達は重要じゃないのかもしれんな」

 

 奪取したG兵器で追撃を行ってきたザラ隊はオーブ近海で仕掛けてきたが、アークエンジェルが連合の領海に近づいたので撤退した。

 

「恐らく連合軍に見つかるまえに引き揚げたのでしょう。撤退した周辺は偶に連合の哨戒機の索敵範囲でもあるからな」

「何か最近のザフトはやけに末端まで組織的に動くようになったな。ちょっと前までは連携をあまりとらない者も多かったのにな」

「そうね。降下地点がもっと遠かった場合私達は沈んでいたかもしれないわ」

 

 ザフトは基本的に個々の能力が優れる為連携等はあまり取らず、卓越した個人能力を持って戦闘をすることを好んでいる。それ故に連携を持って袋叩きされたザフト兵もいるのだが、逆に相手を粉砕することの方が多いので、上層部は連携を重視することはなかった。

 しかし、連合がMSを配備したら連携で容易く撃破されること知っているキラは、上司の参謀次長であるアウグストにパイロット同士の連携が大切であることを根気よく説明した結果、進言を取り入れたアウグストが、将来連合のMSがチームの連携を持って挑んでくることを想定して、2人一組の小隊を組ませMS同士の連携を高める訓練をカリキュラムに組み込んだのだ。

 無論ナチュラルの真似事等と感情面で反発する者がかなりいたが、アウグスト参謀次長が「人的資源が連合より劣る以上生存率を上げる為にもやっておくことに越したことはない」と言い、ザフトでも連携について色々と研究がなされるようなった。

 

「こりゃ気合いを入れ直さないとこっちも危ないな」

「そうですね。上はすでに反撃作戦の準備をしているでしょうから、我らが基地についてもしばらくは待機が下されるでしょう」

「ここに来るのに苦労したから基地についたら久しぶりに休暇がほしいわね。特にクルーは休みなしで疲弊してるから」

 

 ヘリオポリスからザフトの追撃に悩まされた結果、クルーは緊張続きだったのでマリューはクルーの休暇申請をしてみようかと考えながら、アラスカ基地に向けて進路を取った。

 

 

 

 

 

 アフリカ戦線。この地域はザフトが今の所占領しているビクトリアのマスドライバーハビリスを守り、連合のアフリカ最大の拠点であるスエズを牽制する為にザフトはこの地域に大軍を張りつけていた。幸いジブラルタルと新プラント派であるアフリカ共同体国家の補給路ジブラルタルー北アフリカルートが存在するので、現地のザフト軍は物資不足には陥っておらず、軍事活動が停滞する事態にはなっていなかった。

 

「ザウートが多いな……ダコスタ君。バクゥはどうした?」

「例の作戦の為にバクゥが必要らしくそっちに優先的に回されているようです」

「ちっ。上の連中俺の出した書類を見たのか? 鈍亀なんぞ回されてもここを制圧できんのだぞ」

「しかし、バルトフェルド隊長。隊長が言った数はちゃんと揃えてくれたそうじゃないですか」

 

 しかし、送られてきたバクゥのMSの少なさに、砂漠の虎の異名持つ名将アンドリュー・バルトフェルドは愚痴を零し、彼の副官であるマーチン・ダコスタは彼を宥める。

 

「キラのおかげだろうな。あんなに若い坊主が現場をわかっているのに大人の連中が現実を見ていないとはな」

「プラントという閉鎖空間に住んでいるから仕方ないのでしょう。本国は情報封鎖によって地球がどの様な状況になっているかわかってないのであまり実感もありませんし」

 

 ダコスタの言葉を聞いて、和平の道は簡単ではなさそうだとバルトフェルドは改めて確信した。

 バルトフェルドの元にキラから事前に私的な手紙が来ていた。その手紙には「アフリカ戦線はなるべく手早く終わらせて戻ってきてほしい」とあった。

 

(クルーゼの奴が銃殺刑になって強硬派の勢いは衰えたが、穏健派が巻き返すには時間がかかる。俺もこの戦線を片づけない限り宇宙には戻れないだろうがな)

 

 バルトフェルドは現在この地でゲリラ鎮圧に手を焼いており、この調子だといつになったら宇宙に戻れるかわからないと心の中で呟いた。しかし、オペレーション・ウロボロス戦略や、将来スエズを制圧する作戦が行われる時が来たとき、この地を安定させることは戦略上必要なことである。

 

「さっさと終戦にこぎ着けたいものだな。戦争が終わったらコーヒーショップでも開こうかね」

「その時は一杯奢ってくださると嬉しいですね」

「いいコーヒーを入れてやるさ」

 

 バルトフェルドとダコスタは軽口を叩きながら、新たに届いた物資を確認するべく補給部隊の元に向かうのであった。

 

 

 

 

 キラは作戦前に休暇を言い渡されたので、同じく休暇を貰っていた恋人のジークリンデを誘って、街に出かけていた。

 周囲からは「リア充め……」「うらやましすぎるぞ!」「私もあんな優しそうな彼氏ほしいな」等罵詈雑言や羨望の眼差しを向けられていたが二人(特にジークリンデ)は軽く無視した。

 

「それで作戦参謀に配属になったの?」

「ああそうだよ。君も後日作戦参謀に僕の副官として配属になる予定。もちろん僕が頼んだ結果何だけど、君が嫌なら外すよ」

「いや、寧ろ望むところだ。将来の夫をサポートするのも妻の役目だからな」

「僕達恋人同士なだけで婚約はしていないんだけど……」

 

 すでに夫婦気取りなジークリンデにキラは突っ込みを入れる。相変わらず彼女は公私の使い分けがうまいとキラは思った。

 

「近いうちにそうなるさ。父上も随分乗り気だし、母上も諸手を上げて賛成してくれているしな」

 

 ジークリンデはそう言って誇らしげに胸を張った。男なら10人中9人は振り向くであろう豊かな胸を堂々とキラのいる方に突き出し、キラは直視しないように目を逸らす。

 

「今日は僕が奢るよ。最も君の口に合うかどうかはわからないけど」

「キラが選んでくれたのならどこでもいい。失敗して落ち込んだら私が慰めてあげるから問題ない」

「ありがとう。君は本当に優しいね」

「と、当然だ。それよりもさっさと行くぞ」

 

 キラが微笑みながら礼を言い、ジークリンデはそれを見て顔を赤く染めつつキラの手を握る。

 ジークリンデのかわいい表情を見てキラは満足し、彼女を連れて束の間の休暇を楽しむのであった。


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