ゼード…ピース依頼事務所の所長。過去に勇者として魔王を倒した経験あり。
ミュゼ…魔族の娘。今はピース依頼事務所に住み込みで働いている。
4月1日。今日は月が変わっただけではない。新たな生活が始まる節目の日だ。新生活を始める者、変わらずに日々を送る者。何にせよ、道を行き交う人が増え、世間が騒がしくなる日なのだ。まぁ、ピース依頼事務所は生憎と後者なので、これといった変化は見られない。
同居人はさっきまでファッション誌を読んでいたが、今は外出している。大方読み終えて、町をぶらぶらと散歩でもしているのだろう。サングラスは掛けずに行ったみたいだが、自分の町だ、問題は無いだろう、多分。
俺は俺でソファに寝転がりながら、時折冷え切ったコーヒーを啜っている。詰まる所、暇なのだ。この事務所は言ってしまえば、時間を持て余していることの方が多い。それでも成り立っているのは、そのたまに来る依頼が高報酬なのと、少しばかりの後ろ盾があるからだ。そうでなければ、こんなのうのうと生活できている訳がない。更にぶっちゃけると、俺は経営者向きの人間ではないだろう。労働よりも、こうしてのんびりと時間を浪費している方が性に合っている。
コップに残ったコーヒーを全て飲み干すと、お湯を沸かしに行くために上半身を起こす。その時、来客の存在を通知する呼び鈴が鳴る。
「うーい、待っててくださいねー」
立ち上がり、簡単にテーブルの上を片付ける。主にミュゼが置いていったファッション誌や、ミュゼが散らかしていった菓子の包み紙なんかを。あまり待たせるのも申し訳ないので、見てくれだけ整えて玄関の扉を開ける。
「おい、依頼だぞ」
扉を開けた先には子供が一人、ポケットに両手を突っ込みながら立っていた。
「ガキんちょは帰れ」
「待て待て!!依頼者の話くらい聞けよ!」
「こっちにも選ぶ権利ってもんはあるんだよ」
顔を見た瞬間に扉を閉めようとしたが、相手が全力で阻止してきた。俺は片手で扉を引っ張るが、子供は両手と全体重を使って抵抗している。俺もそこまで鬼ではないので、仕方無く負けてやり、中へ招く。
子供は七分丈のグレーのズボンに、半袖の赤Tシャツ。頭には紺の野球帽を被っている。4月に入ったとはいえまだかなり寒い。改めて、子供は寒さとは別次元に存在しているのだと実感する。少しも遠慮する様子は無く、ソファの背もたれに腕を掛けて、足を組みながら深く座っている。
「おい、何か出せよ」
「客でもないのに出すか」
「客だよ、客!」
「はぁ?金持ってんの?」
「持ってる持ってる。だから話聞けよ」
若干イライラしながら、俺も向かいのソファに腰掛けた。客だと言うからには、一応話は聞いてやる。
「……で、何のご用ですか?レイグ坊っちゃん?」
「気持ち悪い!」
「気持ち悪いとはなんだ!俺にとっては最上級のおもてなしだからな!」
「それが気持ち悪いんだよ!」
「……まぁいいや。それで、何?」
「依頼だよ、依頼」
「依頼、ねぇ……」
肘掛に肘を立てて頬杖をつく。少し目を瞑って悩んでいたが、「どうぞ」と声を掛けて言葉を促す。待ってましたと言わんばかりに、両手を前のテーブルに置いて身を乗り出しながら、レイグが話し始める。
「エノスの丘に洞窟あんじゃん?」
「あるね」
「あそこで遊んでたら、モンスターに時計取られちゃって。何とか取り返してくれねぇかな?」
「何で町の外まで遊びに行ってるんだよ」
「それは今関係ないから。どうなの、取り戻してくれんの?」
勝手に子供たちが町の外に行くのはどうなのだろうか。まぁ、これくらいの年頃は冒険心を持ってなんぼか。俺もそこまで厳しく言うつもりはないので、ここは大目に見ておいてやる。
「あーはいはい。一応依頼だからな、受けますよっと。……で、金は持ってんだろうな?」
「あ、あるよ!」
「どれくらい?」
「……200G」
俺はわざとらしくため息を吐く。そして、ゆったりと立ち上がるとレイグを見下ろす。
「足りねぇな。全然足りん」
「はぁ!?こんなもんじゃねぇの!!」
「魔族が居るんだろ?なら戦闘になるかもしれないから、その分も上乗せしてくれねぇとな。リスクには、それなりのリターンってものが必要なんだよ」
「…………」
レイグは黙って下を向いている。傍から見れば、依頼を受けてもらえなくて困っているようだが、こいつはそこを悩んでいるのではない。俺には分かる。心の中で笑みを浮かべると、表面上はやれやれと仕方なしに頭を掻く。
「……けどまぁ、今回だけ特別にその値段で引き受けてやってもいいぞ」
「本当か!?」
「あぁ。但し、条件がある」
「な、何だよ……」
レイグは引き攣った表情を見せる。そんなガキんちょに、俺は依頼を受ける条件を説明した。
「本来なら一から十までこっちがやるんだけどさ、それってさ正直大変なんだよ。だから、そこまでの道案内とか、どこら辺で取られたかってのを説明しについてくる、ってんなら受けてやるよ」
☆
僕は悪戯が好きだ。悪戯、というより誰かを驚かせるのが好きなのだ。その驚かせ方も、他の奴とはレベルが違う。ただ驚かせるだけなら、物陰に潜んで、飛び出すだけでできる。だけど僕は、もっともっと大掛かりなのだ。一回驚かせるのに、かなりの時間を掛けて準備する。何事も派手な方が見映えが良い。初めのうちは、比較的小規模だったが、今では準備に何日も掛けることもある。友達を集めて、仕掛けを作っている間も楽しいのだ。
しかし、周りの大人を驚かせて遊んでいるうちに、騙されてくれる人が居なくなってしまった。町の大人は、驚かせ尽くしてしまったからだ。例外は何人か居るが、大体は一回引っ掛かると警戒されてしまって、もう罠に引っ掛かりにくくなってしまうのだ。
そんな暇を持て余している時に、絶好の獲物がやって来た。年が変わるちょっと前に、この町へ引っ越してきた奴らが居る。男が一人、女が一人。そいつらは、"ピース依頼事務所"というのを開いているらしい。色々と下調べをして、計画を練って、どんな悪戯をするのか決めていた。計画段階で、かなりの時間が掛かってしまい、実行が遅くなってしまったが、ある意味ちょうどいいことに4月になろうとしていた。つまり、エイプリールフールである。一発かますには、うってつけの日だった。
本当は二人まとめて驚かせるつもりだったのだが、諸事情によりこいつだけになった。でも、依頼金が足りないと言われた時は、どうしようかとかなり焦った。受けてくれないことには、罠へおびき寄せることもできないからだ。とりあえずは、受けてくれることになって一安心だ。そもそも依頼した後は、僕も隠れて見ているつもりだったから問題は無い。
「案内くらいしてやるよ。ただ、金は後払いだからな。本当に見つけられるか分かんないし」
勿論、一銭も払うつもりなどない。念のために、200G用意しただけであって、渡してしまったら今年分の小遣いが無くなってしまう。
「あーはいはい。端から信用されてないのは知ってっからな、それでいいよ。
……で、だ。万が一、戦闘になるかもしれん。俺は戦うのには慣れっこだけど、お前はどうだ?言っとくが、そこでガキんちょのお守りしながら戦うなんて、俺絶対に無理だからな」
「はあ?依頼者を見捨てるってのか?」
「いやいや、目の前で死なれたら気分が悪い。だから特訓をすることにした」
「は……?」
言っている意味が分からない。こいつは何を考えているんだ?そんな表情をしていたのだろうか、男は僕を一瞥すると続けて説明をし始めた。
「だから、自分の身くらい自分で守れって言ってんの、アンダースタン?」
「いや……特訓ってなんだよ」
「稽古をつけてくれそうな奴がさ、タイミング良く来てるんだよ。ラッキーだな。ちょっと外で待ってろ」
「あ、ちょ――」
こちらの言い分を全く聞かず、階段を昇って行ってしまった。下から声を飛ばしたが反応は無い。
……何だか面倒なことになってしまった。ただ、エノスの洞窟に来てくれるだけで良かったのだ。モンスターが居るなんて嘘は、失敗だったかもしれない。もっとそれらしい嘘の方が、こんなことにはならなかったに違いない。とはいえ、断ったら依頼自体を無しにされかねない。仕方ないが、付き合うだけ付き合うしかなさそうだ。
外に出て約10分、はす向かいの空き地で待機していたが、待ちくたびれて欠伸をしていた。すると、漸く男が出てきた。
「おう、お待たせー。準備に時間掛かってな。ほれ」
そう言いながら男は、僕に何か投げ渡してきた。慌てて受け取ると、ずっしりと腕に吸い付いてくる。それは、木製の刀――。
「え、木刀?」
「本当は真剣の方がいいけど、いきなりは危ないだろ?」
「いや……は?」
「特訓してやるって言っただろ?簡単なもんだけどな。そいつで軽く戦ってもらうんだよ」
「戦うって……お前と?」
「お前言うな。所長だぞ、一応。それに戦うのは俺じゃない、こいつだ」
自慢げな表情を見せると、もったいぶったように尺を取る。満足したのか、口で鳴らしていたドラムロールを止めると、所長はさっと横に移動した。
そして、所長の後ろに居たのは――。
「…………」
――サイズも色も一般的な、ただの"ニワトリ"だった。
「……馬鹿にしてんの?」
「してないしてない。超強いから」
「いや……そんなこと言われても……」
「いいからいいから。武器を構えろって」
「えー……」
絵面的にどうなのだろうか。ニワトリに向かって木刀を構えているってのは。しかも戦えって。どこかしらの愛護団体から、訴えられてしまうのではないか。
そんなことを考えていると、ニワトリがトコトコとこちらへ歩いてくる。羽を開いて威嚇しているみたいだ。そのままの勢いで僕の腰辺りまで飛び上がり、タックルを仕掛けてきた。防御するくらいなら問題にはならないだろうと、木刀を水平にしてニワトリの接近を妨げる。
そして、ニワトリの身体と木刀がぶつかった瞬間、木刀が粉微塵になって吹き飛んだ。
「へ…………?ぐはっ!!?」
何が起きたのか分からない。手に握っていたはずの木刀は、柄の部分を残して弾け飛び、その衝撃で僕の身体も少し後ろへ飛ばされた。受け身もまともに取れず、背中から落下して、一瞬息が止まりかける。
「な、強いだろ?だから、遠慮なんてしなくていいからな」
「強過ぎだろ!どんな品種改良したら、こんな強さになるんだよ!!」
「このニワトリのスーさんは、魔族四天王の血を継いでるからな。めちゃくちゃ強い」
「馬鹿野郎!初心者に戦わせる相手じゃねーだろ!!何だよ魔族四天王の血を継いでるって!?ニワトリのどっからその血混ざったんだよ!!設定がめちゃくちゃだろ!」
「大魔法にも余裕で耐えるからな、スーさん?」
「ああ、勿論だとも!」
それに答えたのは、紛れもない、スーさんと呼ばれていたニワトリだった。
「お前、喋れるんかい!!つーか、大魔法を受ける機会なんてそうそう無いだろ!!何、耐えられるの!?」
「当たり前だ!なんせ、魔族四天王の血を継いでるからな」
「それはもういいって!!しつこいんだよ!!」
つっこみを入れつつ起き上がると、ニワトリは両足でステップを取りながら僕に向かって身構えている。腕が羽でなければ、シャドーボクシングでもしてそうな勢いだった。
「……え?何、まだやんの!?」
「当たり前だろ、それだけでレベルアップする訳ないからな」
「レベルアップって何だよ!!それに、木刀粉々になって砕け散ってんだけど?」
「もう、代えはないからな?」
「生身で戦えってか!?……って、おい!ニワトリこっちくんな!うわああああああああああ!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――
――2日前。
「旦那、今回も良いの入ってますよ」
「ん、いつもので」
「はいはい。相変わらず他の物には目もくれねぇっすね」
「そりゃあな。お前の品物は信用ならんからな」
町外れの廃墟。建物は多かれど、人の姿は殆ど無い。まぁ、俺たちの事務所の辺りも空き家が連なっていたりもするのだが。ここに来ると、まだ魔王が君臨していた頃を思い出す。生活していた営みはあちこちに見受けられるものの、それを使用する人が居ない。荒らされた形跡もあるが、魔族の仕業ではない。
魔王は最初に大陸の四ヵ所を襲い、そこの全てを根絶やしにした。……根絶やしは言い過ぎかもしれないが、それくらい酷く荒らされたものだ。この町は、その次に標的として挙げられた一つだった。その言葉を聞いた住民たちは、恐れをなして安全な地を求めて疎開して行ったのだ。……結局、この町は魔王の歯牙に掛からずに終わったが。
荒れているのは、大方火事場泥棒を働いた盗賊たちの仕業だろう。
そんな辺鄙な場所でこの商人の男、クランガンは出店を開いていた。出店と言っても、荷車の隣にレジャーシートを敷き、その上にゴロゴロと品物を広げているだけなのだが。"商人"というのも、正しい表現なのかは分からない。と言うのも、商品は並べているものの、客を招き入れるつもりなど毛頭ないのだろう。俺が来た時も、折り畳み式の椅子に座って本を読んでいた。そして、何よりこの恰好だ。黒いローブに身を包み、手には皮のグローブ、先の尖ったブーツ。フードまで被ってしまっているから、殆ど露出が無い。接客業とは一体何なのだろうか。商人よりも、黒魔術を使っていた方がビジュアル的にも合っている。
「どうぞ、今回も旦那のために仕入れておきましたよ」
そう言って奥の袋から取り出したのは、何十本という数のナイフ束だった。決して、品の良い物ではなく、一応切れれば良しという安物だ。その証拠に、大切な商品を取り扱っているだろうクランガンも、どこか乱雑に見える。
「おう、サンキュ。ちょうどストックが無くなっててな」
「全部使い果たすなんて珍しいっすね」
「まあ。節約して使ってるつもりではあるんだがなー」
「あっしとしてはどんどん使って、沢山買ってくれた方が嬉しいんすけどね」
「うちの財布事情も考慮してくれよ。けど、全部買うわ」
「毎度ありー!」
俺たちは馴れた手つきで、金と商品の交換を済ませた。購入したナイフを袖口にしまいつつ、俺はある疑問をクランガンに投げ掛ける。
「いっつも思うんだけど、何でこんなとこに店出してんの?大通りとかの方がもっと売れるんじゃない?」
「……あっしは人混みが嫌いでしてね」
「お前、商人だろ?」
そんなので、よくこの商売が成り立っているものだ。深く被ったフードも、もしかしたら客と目線を合わせないようにするための工夫なのだろうか。
「旦那も人混みが嫌いだから、あっしのとこに買いに来てくださるんでしょう?」
「ん。まぁ、そうだな。ナイフも安くしてくれてるし」
「お得意様が何人か居ますんで、あっしはそれで十分なんすよ。……ところで、旦那」
クランガンは急に声のトーンを落とす。そして、口元に手を当てて小声で話し始めた。俺も顔を近付けて、その声を聞き取る。
「旦那は、レイグって子供をご存知っすか?」
「ああ、あのガキんちょね。町でちょくちょく見掛けるけど。……それがどうした?」
「その子供がですね、エイプリールフールに旦那へ何か仕掛けているみたいなんすよ。罠とかを」
「へぇ。でも、たかが子供だろ?何をそんな大袈裟に」
「そこなんすけどね。旦那はこの町に住み始めて、まだ5ヵ月くらいじゃないですか。だから知らないのも当然なんすけど、このレイグは俗にいう悪戯っ子でして。しかも、その悪戯のスケールが大きいことで有名なんすよ。大人たちも手を焼いているみたいで」
「ほー、嫌いじゃないけどな。そういう悪ガキ。で、そのガキんちょが俺をターゲットに?」
「そうっす。悪行が知れ渡っているんで、新入りの旦那でしかエイプリールフールを楽しめないんすよ」
「成る程ね。どんなことしてくんだ?」
突然、クランガンがパッと顔を離したかと思えば、フードの下で口元を吊り上げてほくそ笑んでいる。
「旦那、こっから先は"別料金"っすよ」
俺は苦笑いしながら、殆ど見えないフードの下の顔を覗き込む。お得意様ですら許してくれないのか、下を向いて顔を見せないようにする。余程、他人と目を合わせるのが苦手らしい。
「ガキんちょの遊びのことまで金取んのかよ」
「勿論っすよ。情報もあっしの商品なんで」
「ったく、抜け目ねぇな」
「はい、毎度ありー!……て、旦那。足りねぇっすよ?」
「全部は買わん。場所だけ教えてくれりゃあいいよ」
「どうしてっすか?」
「罠まで全部知っちゃったら、俺もガキんちょも楽しくねぇだろ?」
「それはそれは。旦那も物好きっすね」
先の分かってしまっているショーほど、つまらないものはない。本当に良い物は何度見ても飽きないと言うが、折角なら最初は前情報無しで楽しみたいのだ。
「楽しまなきゃやってられないだろうが。ただでさえ雑用みたいな仕事なのに」
「おや、結構好んでやってると思ったんすけど?」
「うーん、悪くはないけどなー。で、どこに罠仕掛けてんだ?」
「エノスの丘あるじゃないっすか?」
「うん、あるね」
「そこの洞窟っす」
「……成る程ね。あそこ、あんま人来ないしな」
「中々楽しそうなこと企んでいるっすよ」
クランガンはニヤニヤしながら話し掛けてくる。こいつがそんなにウキウキしているくらいだ、拍子抜けする心配はないだろう。
しかし、何故事細かく知っているのだろうか。
「お前さ、そういう情報どっから仕入れてんの?覗き見?」
俺の問い掛けに対して、少し悩んだ仕草をする。そうして、人差し指を一本、口の前に持ってきて立てる。
「企業秘密っす」
☆
「ゼードーー」
軽く20分くらい経っていたのだろうか。商売の話から脱線して世間話をしていると、向こうからミュゼが歩いてきた。買い物へ出向いていたはずだが、その手には何も握られていない。
「おう、どうした?」
「売ってないわね。食洗機」
「え、どこにも?」
「ええ、エンゲまで行けばあるみたいだけれど」
「馬車出てないじゃん。歩けってか?」
「仕方ないでしょ。いつ入荷するかも分からないらしいし」
「うわー……。お前、タイミング良く食洗機売ってたりしない?」
「してる訳ないじゃないっすか!家電引っ張りながら商いしろって、それ何て拷問っすか!!」
「だよなー。えー、めんど……」
買い物一つで、何故そんな遠出しなければならないのだろう。電化製品は高級品であるから、近場に売っていないのも分かるが、よりにもよってエンゲとは……。
心底面倒そうにしていたのを見かねて、ミュゼがため息を吐きながら告げる。
「……私が歩いて買いに行ってくるわよ」
「お、サンキュー。じゃあ、頼むわ。……ってか、そもそもお前が欲しがってたんだし?」
「ちょっと。そのまま歩いて、食洗機持って帰れってこと?冗談じゃないわよ」
「は?俺にどうしろって?お前の方が力あるじゃん」
普通なら力のある男の役目なのだろうが、こいつに限っては俺よりも遥かに力持ちなのだ。だから、俺に手伝えることは行き帰りの話し相手になるくらいしかないだろう。しかし、ミュゼは一人で買い物をするのが好きらしく、それすらも邪魔になってしまうだろう。
「荷車でも調達して、迎えに来なさいよ。あんなもの持ったまま、段差上り下りするの私嫌だからね」
「……最初っから、お前が荷車持ってきゃあいいんじゃねぇですかね」
「空の荷車持って行くのって、何か恥ずかしいじゃない」
「その考えがよく分かんないけど、その恥ずかしいことを俺にさせようってのはよく分かった」
「恥ずかしくないならいいわよね?それに、買ったらアンタだって使うでしょ?」
「……はいはい。了解」
「なら、明後日の4時にエンゲに迎えに来てね」
そう言い残すと、他に用事でもあったのか走り去ってしまった。何から何まで忙しい奴である。
ああ約束してしまったものの、どうしようか。俺は目を細めながらミュゼを見送ると、魔法使いっぽい商人へ視線を移す。
「……お前、その荷車貸してくんない?」
「嫌っすよ!商売道具……ってか、移動手段っすよ!?」
「ちょっとだけだから」
「使うの明後日じゃないっすか!明後日までここに居座れってことっすか!?」
「うん」
「ぜっっったいに、嫌っす!!」
「ちぇー、けち――」
その時、肩に滴が落ちてきた。さっきまで、晴天だったのに天気が崩れたのだろうか。上を見上げずとも、地面には太陽が出ているから自分の影が伸びている。しかし、それを覆い隠すように巨大な影が現れた。
はっと、一つの仮定を思い浮かべると、受け身も取らずに後ろに転がる。クランガンは、俺の謎の行動にぎょっとしていたが、そんなことは気にしない。恥かしさよりも、命の方が大事なのだ。
俺が飛び退いた瞬間、空から大量の液体が降ってきた。クランガンは、更に驚いて椅子から崩れ落ちる。大量の液体は、地面の土に吸い込まれるどころか、むくむくと盛り上がり始めた。そして、2メートルほどの大きな塊になると、商人へ向けて声を掛けたのだった。
『にんげんめ……食べちまうぞ……』
「こら、やめい」
「あいたっ!」
俺は液体をはたく。手ごたえはあったが、ぷるんと大きく揺れて元の形状に戻ってしまった。
「な、何すかこいつは!?」
クランガンは完全に腰を抜かしてしまっているようで、立ち上がることができないみたいだった。液体はそんなのを無視して、俺に飛び掛かってきた。俺はまた横に跳んでかわす。
「勇者ー!!会いたかったぞー!!」
「"元"勇者だ。間違えるな。それに、今のお前に抱き付かれたら溺死するから!」
「そうか。では、これならいいか?」
液体はグニュグニュと蠢いてから、やがて男の人の姿になった。クランガンと全く同じ外見の。たった今、変身したこいつが偽物なのは承知してるが、どこからどう見たってクランガンそのものだった。
「何すかこいつは!!?」
クランガンは、余程混乱してしまっているのだろう。さっきから同じ反応しかできなくなっている。普通に考えれば当たり前である。突然空から、奇妙な液体が降り注ぎ、言葉を発したかと思えば、今度は自分と瓜二つの姿になっているのだ。初めて見る者には、刺激が強過ぎる。
どうやら液体の方は、依然としてそれに答えるつもりは全く無いようで、クランガンの姿になっても俺に飛び掛かってきている。このままでは、一向に話が進展しなさそうなので、俺が進行役を務めることにする。
「こいつはスライムのスーさんだ。見ての通り魔族で、こんなんでも一応四天王の一人だ。何でも変身できるんだ、凄いだろ」
「おっす」
クランガンにスーさんの紹介をすると、今度は俺と全く同じ姿に変わる。自分と同じ見た目の奴が隣に居るというのは、何とも気味が悪い。
一方で、そんなことクランガンのメモリー容量には入りきらなかったらしく、言葉にのみ反応する。
「こんな町の中に入り込んで大丈夫なんですか!?」
ごもっともである。俺はスーさんを尋問するかのように、グイッと顔を近づけて質問する。
「……どっから入り込んだ?」
「ベルに頼んで送ってもらったんだ」
「何しに来たんだよ」
そう質問すると、スーさんは何か思い出したのか手を叩いて、早口で話し始める。
「そうだ!聞いてくれよ、嫁が何度言っても私のプリンを食べてしまうんだ。これで三度目だぞ?名前だって書いてあるのに。……だから家出してきた」
「しょーもな!子供か!そんなことで時空歪めんな!」
「そんなこと言うな!」
「プリン一個で、モンスターに侵入される国ってどうなんすか……」
クランガンが茫然自失になり、うわごとのように呟いている。一般人代表のクランガンには、脳の処理が追い付かなかったみたいだ。
そして、スーさんは外野放っておけと言わんばかりに、勝手に話を進める。
「あ、それより!先程まで何か面白い話をしていたな」
「食洗機買いに行く話か?」
「違う違う、お嬢が来る前だ」
「エイプリールフールの話?……ってか、どこから見てたんだよ」
「それもベルの魔法で」
「何、俺本当に監視されてんの!?」
「あ……今のは聞かなかったことに」
「遅せーよ!!うわっ、油断できねーな」
常に見られているというのは気分がどうこうより、ゾッとする。特にやましいことはしていないが。
「どうせゼードのことだ、小僧に仕返しするつもり満々だろう」
「……勿論」
「それに私も加わっていいか?」
「お、何々?お前もこういう悪趣味なの好きだっけ?」
「そりゃあな……」
「自分で悪趣味って言っちゃうんすね……」
いつの間にか、クランガンが復活していた。そして、冷めた目で俺たちを見ている。その俺とスーさんは顔を見合わせると、黒い笑みを浮かべる。
「それはあっしには関係ないからいいっすけど、スー……さんはどうするんすか?人間に化けてでもいいかもしれないっすけど、不審がられないっすかね?」
「うむ、一理あるな!なら、こうだ」
スーさんはまたグニュグニュと形を変えると、今度はニワトリの姿になった。
「おぉ、成る程。これなら怪しまれねぇな」
「これで楽しめそうだ」
(余計怪しいんすけど、大丈夫なんすかね、これ……)
――――――――――――――――――――――――――――――――
エノスは隣町に行く途中の段丘地帯だ。近い、と言っても普段ここを通る人は殆ど居ない。段差が多く、馬車が通れないからだ。それに、そもそも隣町に行く必要が無いのだ。
隣町のエンゲは、海に面しているから船舶での物流が盛んだ。訪れれば、大体の物はそこで手に入る。でも、その品々は商人なんかの手によって、うちの町まで運ばれてきている。だからわざわざ、入ってこなそうな品物を買いに行ったり、エンゲの町自体に用がない限り、足を運ぶ意味がないのだ。だからこそ、僕はここの洞窟を使うことに決めたのだ。
「はあー……しんどー……」
「…………」
所長は早くも気だるそうに、段差を越えつつ歩いている。疲れている訳ではないようで、単にやる気の問題なのだろう。そして僕は、さっきからずっと目を瞑って唸っていた。予想外の事態を、どう対処しようか悩んでいたのだった。
「どうした、小僧?疲れたか?」
「お前のせいだ、お前の!!何で、ニワトリついて来てんだよ!!稽古つけてくれるだけじゃなかったのかよ!!」
「スーさんはな、忙しい中わざわざお前が心配だから来てくれたんだからな?」
「余計なお世話だ!!」
「余計なお世話ってことはないだろ。数が居た方が、時計盗んだ魔族も見つけやすいんじゃないのか?」
「そりゃ……そうだけど……」
そう言われると何も言い返せない。完全に誤算だ。まぁ、一匹増えたところで問題は無い……か?
そうして、僕は大きな洞穴の前で立ち止ると、二人……一人と一匹へ振り返った。
「ここ、ここだよ。この洞窟の中」
「では早速捜すとしよう。……どうした?」
ニワトリは別の方向を見ている。そちらに視線を移すと、所長が少し離れた崖を見ていた。目を細めて、妙に真面目な顔をしている。
「ここら辺にバラの花なんて咲いてたっけ?……いや、何でもない。入ろうか」
所長がそう言って、僕らは洞窟の中へ入っていく。
最後尾を僕が歩いている。先を歩いて、罠に引っ掛かったら元も子もないからだ。その前に所長が居て、何故か先頭をニワトリが歩いている。何であんなに偉そうなんだ。不思議とイラっとくる。
40歩進んだところで、前に気付かれないように立ち止まる。さあ、ここまではあちらのペースに乗せられていたが、ここから僕らのホームグラウンドだ!
目標地点にニワトリが乗ってもびくともせずちょっと焦ったが、すぐ後ろに居た所長が通ろうとした瞬間、足元の地面が崩れ始めた。僕たちが掘った落とし穴だ。中途半端な深さではなく、大人が頭まですっぽりと嵌るくらいの大きさだった。念には念を入れて、幅もかなり広く作ってある。そのため、先に進んでいたニワトリも巻き込んで大穴が口を開ける。
「おうっ!?」
所長は驚いて体勢を崩した。そのまま落とし穴に落ちる――。
カツーンという、突然洞窟内に響く金属音。音の聞こえた頭上を見ると、天井にナイフが突き刺さっていた。そのナイフに紐がくくりつけてあり、所長のコートの袖の中に繋がっていた。咄嗟にナイフを投げて落ちるのを回避したのか。見た目に反して頭の回転が早いらしい。
「あっぶねー……洒落にならんぞ、これ。……っておい、穴の中竹槍仕込んでんじゃねーか!怪我どころじゃ済まねーぞ!!」
振り子のように身体を揺らして、穴の淵へ飛び降りる。残念ながら、所長は落ちなかったか。
所長の陰で見えなかったが、前に居たニワトリも落とし穴に落ちたはずだ。
しかし、ニワトリも穴の底には居なかった。
バサッバサッ!
――ニワトリが羽ばたいて空中に浮いていた。ニワトリなのに。
(お前は飛んじゃ駄目だろ!!生き物の造りから変えないでくれる!?魔族四天王の血凄すぎだろ!!)
「大丈夫だったか、ゼード」
「あぁ、油断ならねーな。ガキんちょも怪我無いか?」
「うん……無い……けど…………」
納得がいかない。多少、思惑通りにいかないのは仕方ないにしても、これは別次元で酷い。
☆
その後も馬鹿共は、次々と罠を攻略していった。
「ん?何の音だ?」
「スーさん、後ろだ!でっけぇ岩が転がってくる!?」
「おお!映画で見たことあるぞ」
「何、感動してんだ!早く逃げろ!つーか、どこで映画なんて見てんだよ!」
「いや、こっちの劇場で見た」
「お前、結構頻繁にこっち来てるのな!」
轟音を立てて巨大な岩が転がってきている。僕は前もって壁のくぼみに隠れていたから、潰される心配はない。目の前を通り過ぎたが、これはかなりの大迫力だ。あんなのに轢かれたら、ひとたまりもないだろう。
しかし、眼前にまで岩が迫っているのにかかわらず、ニワトリは逃げようとする素振りさえ見せない。そして、そのまま迎え撃つように蹴りを放つ。力が拮抗しているように見えたが、やがて岩の高速回転が止まり、ジェンガの山が崩れるように砕け散る。
「さっすがー。鳥肌もんだよ」
「鳥だけにな!あっはっはっ!!」
(なら鳥らしくしろよ)
☆
ガシャガシャンと、天井から沢山の物が落ちてくる。
「ほいっと」
所長が袖口からナイフを二本取り出して、落下物を頭上で弾き飛ばす。弾かれた物は、そのまま壁へ突き刺さる。
「まぁ、こんなもんっしょ」
「「あ……」」
一つ引っ掛かっていたのか、遅れて落ちてきた。それが所長の頭に当たる。
「痛た」
――ノコギリの柄が。
弾き飛ばした物も、包丁や金鎚、鉄パイプと凶器盛り沢山だった。
「…………。あぶねー!!?これさっきから本気で殺りに来てるよね!!?」
(クリア……じゃないか、これは。運が良かっただけだな)
☆
「急に上から鉄製の檻が降りてきて閉じ込められたけど!?」
「私は隙間から通れるな」
(ニワトリは想定してねーよ!!)
☆
『助けてくださーい!』
「あ、穴の中に小娘が落ちてるぞ」
「……あれは無視だな」
(鬼か!!)
☆
暫く進んだが、こいつらは全く罠に掛かる気配が無い。それどころか――。
「いやー、なんかわくわくするな」
「お前、映画の見過ぎだろ」
どことなく楽しんでいるようにも見える。罠に掛からないもどかしさと、こいつらの能天気っぷりにイライラしてくる。上の奴らもそうなのだろう。罠のタイミングが雑になっている気がする。
そんなことを考えていた時だ。突然、所長が立ち止まる。
「……ぼちぼち、か?」
「何だ、もういいのか」
「あぁ、若干飽きてきた。ま、ガキどもじゃこんなもんっしょ」
「よし、じゃあ落とすぞ」
「くれぐれも、当てないようにな」
ニワトリが壁に向かって歩き始める。壁に足を掛けると、ガコンと鍵爪で埋まっていた50センチくらいの岩をもぎ取る。岩の無くなった壁は、ぽっかりと穴が空いてしまっている。そしてそのまま、真上にぶん投げた――。
物凄い轟音と共に、天井の石や砂、大きな岩の破片が降ってくる。しかし、降ってきたのはそれだけではなかった。
「「「うわああああああああ!!!」」」
上から三人の子供が落ちてくる。男子が二人に、女子が一人。
「キャッシ!ロー!メルド!」
「ずっと上に居たもんなー」
この洞窟は今居る通路の真上に、もう一つ空間があったのだ。こいつらは、上で僕たちと同じように洞窟を進み、タイミングを計って罠を起動させていたのだった。
「レイ!どうしよう……」
ローが僕に話し掛けてくる。その表情は、焦りと恐怖が見え隠れしている。
「えっと……」
僕もどうしていいか分からない。ネタばらしの前にバレてしまったのは初めてだったからだ。大抵の場合は、大目玉を食うので、ネタばらしをするのと同時に逃げるのだ。しかし、今の状況では逃げも隠れもできない。
そんな僕らを見下ろすように所長が近づくと、薄く笑いながら話し始めた。
「あー、安心していいぞ。最初から罠だって知ってたからな」
「え……はあ!?じゃあ何で?」
「何でって、お前らが折角俺のためにこんな楽しそうなもん用意してくれたんだ。知らないふりして、付き合ってやるってのが大人ってもんだろ?」
つまり、所長は始めから全部作り話だと知っていて、ついてきていたのだ。僕が唖然としていると、所長は更に悪い笑顔を浮かべる。
「お前らガキんちょは、エイプリールフールに盛大に嘘つこうって張り切ってるけどな、俺ら大人はいっつも嘘ついてんだよ。世の中、綺麗事だけじゃやってられねぇからな」
「うわ!!最低!!」
「何とでも言いやがれ。むしろ良かったと思うけどな。そんな歳から大人の汚い所が見られて。ガキんちょの間は中々気付けないからな…………何だよ、今良いところなんだか――ふへぃ!?」
所長が喋っている最中に、後ろから肩を叩かれていた。それを手で払いのけていたが、逆にその手を掴まれる。話の邪魔をされたからか、眉間に皺を寄せながら鬱陶しそうに振り返った。
けれども、そこに立っていたのはニワトリではなく、ミュゼさんが居た。
「何してんのよ……」
「え!?なんっ……何でお前、こんなとこに居んの!?ってか、どっから来た!!?」
よく見ると、さっきニワトリが岩をもぎ取った所から外の風景が見えた。どうやら、一枚壁を隔てて、すぐ外に繋がっていたらしい。
「アンタ、今何時だか分かる?」
「……いや、分からんけど」
「ちょうどここに、さっき拾った時計があるのよ」
「あ……」
あの時計は、依頼のゴールとして出口に置いておいた僕の時計だ。結果的に盗んだモンスターが、捨てていったという筋立てにするつもりだったのだ。だが、何故ミュゼさんが持っているのだろうか。
「それレイの――」
「あら、アンタら居たの?そう、じゃあ返すわ。落ちてたから拾っといてあげたわよ」
「あ、ありがとうございます……」
キャッシが思わず声を出す。たった今、僕たちの存在に気付いたのか、ちょっと驚いてる。そして、ミュゼさんが時計を投げて渡してくる。
「え、お前ら知り合いだったの?」
「何かここで頑張ってたから、岩とか運ぶの手伝ってあげたの」
「お前も一枚噛んでた訳か……って、何でここに来てたんだよ」
「あー、それね。……レイ、今何時?」
「え……」
ミュゼさんの声色が急に変わる。その声に身の毛がよだち、慌てて時計を見る。
「5時12分……です」
「そうなのよ」
「……何が言いたいんだよ」
「…………これ」
ミュゼさんが穴の外を指さす。そこには、大きな段ボール箱が置いてあった。穴を通らなかったから、外に置いてきたのだろう。それを見るや否や、所長の顔がみるみる青ざめていく。
「段ボール…………あれぇ、きょっ……今日だっけ?食洗機」
「ええ。ここまで歩いて持ってきたのよ」
「……お疲れ様」
「…………」
ミュゼさんは笑顔だ。恐ろしいくらいに。笑っているのに、身体の震えが止まらない。
「…………怒ってる?」
「ええ」
「……マジですまん」
「遅れ一分につき、一発殴るわ」
「72発ぅ!?原形残んねぇって!!」
「75よ」
「増えてんじゃねーか!!切りがいいからか!?……おい、ちょっと待てやめろ!スーさんどこ行った!?あの野郎逃げやがったな!……待って待って!待っ……ああああああああああああああああ!!」
洞窟内に響く鈍い音。連続で打ち鳴らされる音と同時に上がる悲鳴。
目の前で現在進行形に広げられる惨劇。目を背けたくなる光景。
しかし、固まった身体がそれを許さない。
僕たちはただ怯えて、存在感を消すことしかできなかった。
「…………アンタたち?」
「「はい!!」」
急にミュゼさんがこちらを振り向いて、声を掛けてきた。あまりの驚きに声が裏返ってしまう。僕ともう一人誰か返事をしたが、それすら分からないくらい、生きた心地がしていない。
それと、ミュゼさんの手元はなるべく見ないようにする。あそこには何も無いと、必死に自己暗示を掛ける。
「覚えときなさい。嘘ばっかついていると、そのうちツケが回ってくるのよ」
僕たちは壊れた人形が如く、首を縦に振る。
それから僕たちは、悪戯をする頻度が下がった。エイプリールフール経て、一つ学んだことがあったからだ。
ピース依頼事務所(ミュゼさん)に手を出してはいけない、と――。
初めましての方は初めまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
碓氷 修夜です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
明けましておめでとうございます。
執筆ペースが遅くて年が明けてしまいました。今年こそは皆様に見捨てられない程度のペースで書いていくというのを一つ抱負にしたいです。
さて今作ですが、登場人物が一気に増えましたね。固有名詞が多くなって皆様も混乱しているかもしれませんが、私自身も混乱しております。次回から前書きに登場人物紹介でも入れましょうかね。オリジナル作品で登場人物が増えていくというのは読みづらさも同時に増してしまいますからね。ただ、申し訳ないです、次回滅茶苦茶増えると思います。次回はいよいよ魔界に行こうかなと考えております故、登場人物が増えるのが確定なんですよね。でも、正直私がキャラの名前覚えるのが苦手なもので、そこの管理だけはしっかりしないとな、と思っております。
話が逸れましたね、今作についてです。今作はギャグメイン回でした。『月影テールライト』でも述べていましたが、改めて自分はギャグ書くのは苦手ですね。テンポが上手く掴めず、悩んで筆が止まる頻度が高かったです。しかし、これも私自身の挑戦でもありますから、時折ギャグ回も交えていきます。回を追う毎に、ギャグセンスもランクアップできればな、と思っております。
長くなりましたが、ここいらで締めさせていただきます。
改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございました。
今年も宜しくお願い致します。