【完結】 人間存在のIFF <改> 【IS×戦闘妖精・雪風】   作:hige2902

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「なんだ、どうなっている。ラジェンドラ! アプロ、おまえ、食ってる場合か」

 

 Ωスペースからスリップアウトする際、これまで経験したことのない強い振動にラテルは叫んだ。

 

<不明です> とラジェンドラ。対コンピュータフリゲート艦の知生体。

 

「死んだらお菓子は食べられないぜ」 大きな赤い口の中で魚型チョコレートを跳ねさせる大きな黒い猫。アプロ。 「かりかりするなよ。食えよ、ラテル。このチョコ、カルシウムも取れるって」

 

 ひょいと投げられた一回り小さな茶色いサンマを握りしめる。 「知らんぞ、どうなっても」

 

「おれたちがどうにかできる問題じゃないと思うんだけどなあ」

<スリップアウト。通常空間へ出ます>

「ほらね」

「無事なのが悔しい」

 

 原因不明の振動が収まり一安心。と三人が思ったその時、白い光が彼らを包んだ。なんだこれはと叫ぼうと思うが声が出ない。眩しすぎて瞼の上からでも目が焼けそうだ。

 

 一秒か二秒ほどでその現象は収まる。目を開き、唖然。

 

 溶けたサンマのチョコを手から垂らしラテル。 「ここはどこだ」

 

「なんだ、この星はまるで知らん」

「ラジェンドラは!」

 

 ラテルとアプロは空を見上げるが、青い空が広がるだけ。

 

「アプロ?」

「だめだ、応答しないよ」

「ラジェンドラが消えてしまった……」

「簡単にくたばるようなやつじゃないよ。ラテル、行こうぜ」

 

 アプロが指差した方を見ると街があった。ようやくこの場所が小高い丘だと気づく。

 

「なんというか……ずいぶん古臭い街だな」 歩き出す。

「田舎星だな。うまい料理は期待できないかも。せっかくパーティーに招待されたってのに」

「おれのスーツはおろしたてだぜ。しかしこの星の自然はすごいな、見たことがないものばっかりだ」

「変なのはインターセプターがコンピュータに反応しないってこと」

「なに、本当だ。幸い自動攻撃機能は生きてるな」 ラテルはブレスレット型のインターセプターをチェックし、その手に握る溶けかけたサンマに気がついた。口に放り込む。甘い。

 

「少し不安になってきたぞ……なんだあれ。ラテル見ろよあれ、あの車。地面を走ってる。これっぽっちも浮いてない。昔話だ……ラテル? どうした、変な顔しちゃって」

「んぐ、この、骨があるなら、そう言えよ」 喉のあたりをこねて言った。

 

 黒猫はにゃははと笑って駆る。 「行こうぜ、ラテル。原住民にここがどの惑星か聞き込みだ。刑事ごっこだ」

 

 文句を言いたかったが、喉に引っかかった骨が溶けるまでは我慢することにして、アプロを追いかけた。

 

 

 

「アプロ……インターセプターが反応しないわけだ。この星の技術レベルは恐ろしく低い。こんな星がまだあったなんて」 通行人の多い表通りを避け、路地裏で相談。

「レベルが低すぎてインターセプターが作用しないなんて。海賊たちがこの手段を使ったら……別に問題はないな。うん」

「とにかく現地の警官を頼ろう。ここがどこかだけでも確かめないと」

「無理だと思うけどな、おれ」

「なんで?」

「なんとなく。ここはおれたちがいた世界じゃないのかもな」

「あのときみたいな現象が起きてるってこと?」

「よくわからん。ラテル、あれ警官じゃないか? 聞いてこいよ」

「いつものことだが、なんだかよくわからんな。おまえの言うことは」

 

 まあいいさとラテルは表通りに出て、警官に歩み寄る。

 

「失礼。海賊課だ。ここはどこだ」 背広をめくり、腰の大出力レイガンを見せる。

 

 若い警官は話しかけてきた男のつま先から頭のてっぺんまで眺めて言った。

 

「なんだって?」

「聞こえなかったのか? ここはどこだ。宇宙標準座標点で答えてくれると助かるんだが」

「いやその前」

「海賊課」

 

 若い警官は油断なくラテルを視界に収めたまま、無線をとりだした。

 

「自らを海賊と名乗る不審者を発見。おもちゃに見えるが、腰に銃器の様なものを……」

「いや、海賊課。課を忘れてもらっては困るよ。無線は正確にな」

 

 “行こうぜラテル。この星はおかしい”

 

 二人以外には聞き取れない高速言語。いつのまにかアプロが足元にいた。

 

 “海賊課の存在自体知らないみたいだ。嫌がらせにしては手が込みすぎてる。そうでないにしてもこの場を去った方がいい”

 

 たしかにおかしかった。海賊課を相手に物おじしないのは海賊くらいなものだ。目配せし、同時に走る。

 

「あ、待てこの」

 

 “アプロ、おれたちを追いかけてくるぞ。海賊課のおれたちを。勇気があるってもんじゃない、海賊だってやりはしない”

 “またあのときみたいなことが起きたのかな。今回は早く帰れるといいな。この世界の飯はまずそうだし”

 

 路地を曲がる。追って来たところを、威力を絞ったラテルのインターセプターでショックを与え、気絶させた。

 人目を避け、そのまま路地裏を歩く。

 

「あいつ、海賊になったらいいよ。とんでもない肝してる」 とアプロ。 「ここは本当に別世界かな」

「言葉は通じたが、可能性としては否定できんな。あるいは、この星は田舎すぎて海賊の被害を受けたことがない。だから海賊課なんて知らない」

「じゃあおれたちの給料は誰が払ってくれるんだ? 商売あがったりだ。うー、海賊に会いたいよ」

「まるで乙女だな。で、かたっぱしからハートをレーザーで撃ち抜くんだろ。しかし腹がへったな」

「レストランを探そうぜ。そういや田舎の酒はうまいらしい、たしかめよう。天然の水がどうとか……」

「しかし金がない。金貨じゃだめか」

 

 じゃらりと財布の中身を確認する。通貨として役立つか不安だった。海賊課も知らないような星だ。両替も利くかどうか。海賊課特権も効かないに違いない。

 

「獲物がいなけりゃ稼げないからなあ」 しょんぼりとアプロ。すると突然。

 

「銀行強盗だー!」

 

 表通りから。二人は顔を見合わせ、駆けだした。賊は賊だ。

 

 

 

 大きな銀行の前には人だかりができていた。どけどけと割って入る。

 

「近づくんじゃねえ! 中には人質がいるんだぞ!」

 

 一目でそれとわかった。マスクをした男が入り口で、銀行員と思われる中年男性に銃を突きつけている。

 

 ラテルは野次馬の一人に聞いた。

 

「何があったんだ」

 野次馬は強盗から目を離さず答える。 「見てのとおり強盗さ。立てこもっているんだ。警察は呼んだが、まだこない」

「何か要求はあったのか」

「ないと思うぜ。それより、どうなっちまうんだろうな」

「この世界……もとい国ではああいったやつを捕まえたら懸賞金をもらえるのか」

「はあ」 野次馬はラテルの顔をしげしげと見て、困ったように笑った。 「そりゃあ金一封くらいはあるんじゃないか」

 

 “決まりだ。アプロ” 高速言語。

 “警察に横取りされる前にやっちまおう”

 

 言うが早いか黒猫が跳んだ。首のインターセプターからレーザーが奔り、強盗の持っている銃を撃ち抜く。あっけにとられている隙にラテルがレイガンの銃把でポカリ。

 

 入り口の強化透過材でできた扉をインターセプターで開こうとし、作用しないのを思い出して威力を絞ったレイガンで射撃。突入。銀行の構造と人質、強盗の位置情報はインターセプターの環境探査によって把握している。

 

 正面にカウンター。目を引いたのはその奥にある純金で造られた巨大な金庫の扉、もう開いている。観葉植物。真っ赤な絨毯。品のいい調度品。大銀行らしい。高級ホテルのエントランスのよう。

 

 強盗の一人が叫んだ。 「わっなんだ、おまえたちは!」 銃を向ける。

 

 “アプロ、殺しはまずい。警察に引き渡さんにゃならん”

 “げー”

 

 アプロは叫び声を上げた強盗に、大きな赤い口を開いて飛びかかる。強盗はおどろき、持っていた銃を投げ捨てて逃げようとするも組みふされる。

 

 他の強盗が反応する前に、ラテルはレイガンを精密射撃モードに切り替え、次次に腕や銃を狙い無力化。一瞬で五人を片づける。インターセプターの自動攻撃システムは殺意に反応してショックレーザーを放ち、追加で三人を気絶させた。

 

 同時に一緒のデスクの影に滑り込む。ラテル、マガジンを交換し、気がつく。この世界にはエネルギーマガジン自体が存在しないかもしれない。一気に心細くなった。

 

 “ありゃ、捕まったやつがいる。これ、使ってみろよ”

 

 そんなラテルの心情を察してかアプロが先ほど飛びかかった強盗が持っていた拳銃をよこす。すると、野太い声が響いた。

 

「そこの机に隠れてる二人、いや一人と一匹! 出てこい! ……この女がどうなっても知らんぞ」

 

 ラテルとアプロは素直に従う。金髪の少女のこめかみに銃を突きつける強盗。にかまわず先ほど受け取った銃で狙いをつけ、引き金を引く。敵より早く撃つ自信があった。が、安全装置。当然知るはずもなく。

 

「あれ、撃てん」

「なにやってんだよ」

「くっ、トリガーが動かない。なぜだ。だから原理のわからない武器なんて使いたくない」

 

 驚く強盗。

「こ、こいつ正気か。人質がいるってのに、信じられん。やばすぎる。悪魔的」

 

 意外に度胸のない強盗は少女を突き放し、金庫の中に逃げ込んだ。重そうな音を立てて扉が閉まる。ひと段落と言ったところ。人質の一人、銀行の支配人が足を震わせ、近づいて言った。

 

「いやあ、助かりました。あいつらも袋のねずみですな」

「そうかな」 ラテルは旧式の銃を放り投げ、レイガンの銃口にインクリ―ザ―を装着する。これにより威力は跳ねあがるのだ。

 

 “ラテル! 驚いた。あいつ、金庫に通じる地下道を掘ってた。そこから逃げ出す算段だ。こんな手、古典的なんてもんじゃない原始的だ”

 “この騒ぎは時間稼ぎか” 言語を戻し、支配人に告げる。 「さがっていてください、金庫の扉をぶち破る」

「いやちょっとあんた、あれは純金でできていて、当行の象徴で」

 

 ラテル、無視してぶっ放す。金の扉、ぶっ壊れる。中にいた強盗、その衝撃でぶっ倒れる。

 

「運び出されるすんででしたな。危ないところだった」 額の汗をぬぐいラテル。

「こいつに飯をおごらせようぜ。銀行を救ったんだ。恩に着させよう」 おなかをさするアプロ。

 

 遅れてやってきた警察官 「強盗はどこですか! みなさん伏せて!」 支配人は顔を真っ赤にして。 「こいつら!」 とラテルとアプロを指差す。警官たちはしたがい、二人に銃を向ける。

 

 “なんでおれたち?” とラテル。

 “わからん金の扉を壊したのがまずかったのかな”

 “たかが金だぜ? それに敵は海賊……いや、おれたちの常識は通用しないんだったな。おれらしくもない。こういうのはおまえの役割なんだが”

 “きっとあの支配人、中身より財布に金をかけるタイプのやつだ。出世しないな”

 “ひとまず逃げよう。この世界ではおれたちを守ってくれる組織はない”

 

 豪華なシャンデリアを撃ち、目くらまし。裏口に駆けだす。路地を曲がる、すると細い腕が手招きしていた。こちらです、と先ほどの少女。黒塗りの高級車が。

 乗れということだろう。後部座席に乗り込む。運転席にはいかにもな執事、助手席に先ほどの少女。地面を走る車に違和感。

 

 

 

「先ほどは危ないところをありがとうございます。あなたがたは?」

「おれたちは、あー、警察。一般には知られてないかもしれないような感じの」

「まあ、そうでしたの」 バックミラー越しにぱっと花が咲いたような顔。 「わたくし、ああいった映画の様な場面ははじめてで、とてもその……お食事のついでに、もしよろしければお話を聞かせていただけません? とっても興味があります」

 

 “ラテル、ちょうどいい、昼飯をおごらせよう。しかしこの子、ちょっとおかしいぜ”

 “おまえにだけは言われたくないだろうよ”

 

 ラテルとアプロは当面の問題、空腹を片づけるため、少女と昼食を共にすることにした。

 なんでもセシリアと名乗った少女はISとかいう、この世界のスポーツ競技の選手候補らしい。実弾を使った好戦的なルールは古代競技ベースボールをほうふつさせた。

 

 そこで二人は今後の金銭を稼ぐため、自分たちの持っている知識。レーザーに関するものを一部提供することにした。ラテルの持っているようなレイガンの情報は渡せないが、この世界にとっては革新的なものに違いなかった。

 

「ところでお嬢さん。この国はなんていう名前かな」 おかなしな質問と承知で尋ねる。

 

「ブリテンですわ」 少女は怪訝な表情で答えた。

 

 ラテル、やはり知らない地名に頭を悩ます。

 アプロ、料理のことで頭がいっぱい。舌舐めずり。

 

 

 

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