ちょっと投稿時間をずらしてみました。
それではどうぞ。
いつものように夕食を二人で食べて、黒歌はソファで雑誌を読んでいる。
最近、彼女は洋装に興味が出てきたらしく熱心に勉強している。余裕が出てきたからこそ、新しいことに関心を持つのだろう。
「シリウス、何見てるにゃ?」
体をこちら側にひねり聞いてくる。
「うん? 『依頼』だよ」
パソコンの画面を黒歌に見せる。
冥界には正規の「依頼」と裏の『依頼』がある。
正規の「依頼」は、悪魔なら悪魔領内で起こることに関することだけだ。他の種族に関わるものは一切存在しない。
だが、裏の『依頼』は別だ。『依頼』を受ける者は二通りいる。仲介者に登録しておいて仕事を
『依頼』の仕組みはこうだ。
まず、依頼者は仲介者に報酬の金額を言う。この報酬の金額で難易度が決まる。全て金額で決まるわけだ。報酬の受け取りに関しては前金として半額はらう。達成後に残りをもらう。もちろん『ハズレ』も存在する。依頼内容と異なっていたり報酬に合わない難易度だったなんて日常茶飯事。だが依頼を見分ける力も必要なことだから文句はいえない。こんな滅茶苦茶な仕事だが報酬も法外な値段なため増えることはあっても減ることはない。仲介者は仲介料さえもらえば依頼者や被依頼者間で起こる揉め事に関しては不干渉だ。だから、仲介者は良く選ぶ必要がある。腕のいい仲介者についてもらえば煩わしいもめごとも減る。
そして今回の依頼は、
『この場所にある
「ふ~ん。で、どうするにゃ?」
「どうしようかな」
罠ということも十分ありえる。
***************
バン!
部室に乾いた音がこだました。音の発生源は兵藤の頬だ。
思いっきり平手打ちされていた。
部長の顔もかなり険しい。
「何度言ったらわかるの? ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」
シスターにまた会った兵藤は今度こそ助け出そうとしたみたいだが堕天使に邪魔され叶わなかった。
シスターを助けるために教会へ殴りこみにいくことを提案した。もちろん、却下。その決定に不満がある兵藤は部長に詰め寄り叩かれた。
それでも奴の目は諦めていない。
「なら、俺一人でもいきます。やっぱり、儀式ってのが気になります。堕天使が裏で何かするに決まってます。アーシアの身に危険が及ばない保障なんてどこにもありませんから」
「あなたは本当にバカなの? 行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ? それがわかっているの?」
部長は冷静さを振る舞いながら、諭すように兵藤へ言う。
「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なの! 玲とはわけが違うのよ。それを自覚しなさい!」
「では、俺を眷属から外してください。俺個人であの教会へ乗り込みます」
「そんなことできるはずないでしょう! あなたはどうして分かってくれないの!?」
これは平行線だろう。
正しいのは部長だ。悪魔としてなら。でも、転生悪魔である兵藤にとって悪魔としてのアイデンティティなど皆無に等しい。だから、人間としての価値観が働く。兵藤は割り切って二者択一できる器用な性格をしていない。
「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てられません!」
「・・・・・・それはご立派ね。そういうことを面と向かって言えることはすごいことだと思うわ。それでもこれとそれは別よ。あなたが考えている以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないの。何百年、何千年と睨み合ってきたのよ。隙をみせれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」
「敵を吹き飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」
「・・・・・・・・・」
睨み合う二人。
「あの子は元々神側の人間。私たちとは根底から相容れない存在なの。いくら堕天使のもとへ降ったとしても私たち悪魔と敵同士であることは変わらないわ」
「アーシアは敵じゃないです!」
兵藤は強く断言する。
「だとしても私にとっては関係のない存在だわ。イッセー、彼女のことは忘れなさい」
姫島先輩が部長に近づき、耳打ちする。
部長の顔がどんどん険しいものになっていく。
何か不足の事態が起こったのだろう。
兵藤をちらりと見たあと、今度は部室にいる全員を見渡すようにいった。
「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」
その言葉に慌てる兵藤。
「ちょ、ちょっと待ってください! まだ話は終わってーー」
言葉を遮るように、部長は人差し指を俺の口元へ。
「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、ひとつ。あなたは『
兵藤は部長の問いを静かに肯定し、頷いた。
「それは大きな間違いよ。『兵士』には他の駒にはない特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」
俺も詳しくは分からないが確か『
兵藤もそれを聞いて目が輝いている。
緩んでいる兵藤の頬に手を添える部長。
「もうひとつ
--想いなさい。
それだけ言い残すと部長は姫島先輩と共に魔方陣からどこかへジャンプした。
兵藤は、じっと自分の腕を見つめている。
大きく息を吐き、意を決した表情で部屋を出て行こうとする。
「待って」
木場が兵藤を呼び止める。
「僕も行くよ」
「なっ・・・・・・」
木場の言葉が予想外だったのか固まる兵藤。
「僕はアーシアさんをよく知らないけれど、キミは僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕はキミの意志を尊重したいと思う部分もある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」
普段の『王子』などと呼ばれている木場からは考えられない憎悪に染まった顔をしている。
よく見てきた『復讐者』の顔。
今はまだ対象が見つかっていないから何もないがいざとなったら、なりふりかまわず復讐に走るだろう。グレモリー眷属は、闇を抱えている奴が多過ぎる。
「でもいいのか? 部長はダメだって言ってたじゃないか」
兵藤の問いに「やれやれ」と表情を浮かべる。
「部長もおっしゃっていただろう? 『私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、王以外の駒に変ずることができるの』って。これって、遠まわしに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる陣地と認めた』ってことだよね」
「あっ」
兵藤はやっと気付いたようだ。
「部長はキミに行ってもいいって遠まわしに認めてくれたんだよ。もちろん、それは僕にフォローをしろって意味合いだと思うけど。部長に何か考えがあるのだろうね。じゃなければ、キミを閉じ込めてでも止めると思うよ」
木場は苦笑する。
立場上「助けに行きなさい」とは言えないからな。
搭城が兵藤の裾を引っ張る。
「......私も行きます」
「なっ、小猫ちゃん?」
「・・・・・・二人だけでは不安です」
普段は無表情で誤解されやすいが彼女はとても他者思いの出来た子だ。ただ兵藤のように率直な感情表現が出来ないのだ。
「で、お前はどうするんだ? 白澤」
「今回はパスだ。俺が行っても足手まといになりかねん」
「ま、まぁお前なら足手まといになるなんて思わないが......。無理にというわけでもないし。分かった、じゃあ行こう小猫ちゃん」
「えっ、僕は?」
慌しく三人は出て行った。