では、どうぞ。
「行ってきます」
と、俺が言うと前までは「にゃ~」だったが、今日からは
「いってらっしゃい、シリウス」
になっている。なんか夫婦みたいでちょっと照れる。黒歌も若干顔が赤い。
今日の朝に八坂さんに電話をした。黒歌を保護してもらえるかの確認の電話だ。
八坂さんというのは、京都を取り仕切っている妖怪の統領だ。九尾の狐で、本当の姿はかなり大きいらしい。
三年間本当に良くしてもっらた。八坂さんの娘の九重ちゃんには、本当の兄妹のように接してもらった。
よく、「絶対シリウスの嫁になるのじゃ!!」と言ってくれていた。あれぐらいの年の女の子にそう言われると可愛くて仕方がない。
八坂さんは、本当に良い女性だった。俺が京都に初めてきた時に、「お主・・いや、謙吾がどういう風に生きてきたかは、アグリッパから聞いておる。何も心配することはない。神々には、既に話を通してある。これからは、ここが謙吾の家じゃ!」そう笑って言ってくれた。
俺も最初は、本当に不安だった。妖怪は、許してくれたとしても、京都で祀られている神々が許してくれるかは分からないからだ。なぜなら、悪魔、堕天使、天使は人間界で好き勝手しすぎたからだ。三大勢力のせいで、信仰する者がいなくなり忘れられた神だって大勢いるのだ。でも、京都で祀られている神々は許してくれた。八坂さんの人徳なのだろう。
悪魔は、気に入った者は力ずくでも下僕にしようとするため他種族からの評判はすこぶる悪い。だから、最初は挨拶をしてもあまり挨拶してくれなかった。時には、物を投げられたりもした。
だから、俺は掃除をしたり、妖怪の子供たちの面倒をみたりしてとにかく積極的に行動した。そのおかげか、京都に移住して一年程経つとかなりの妖怪が好意的ではないにしろ、受け入れてくれたように感じた。
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完全に受け入れて貰ったのは、幸か不幸かあの事件おかげだろう。俺が、中学三年の春先だった。突然、北欧の神ロキが訪ねてきたのだ。八坂さんに会わせろと言ってきたみたいだ。理由を聞いても八坂さんにしか話せないの一点張りで渋々八坂さんに会わせたみたいだ。
そして、ロキが来てから小一時間経ったぐらいだろうか。
九重ちゃんと戯れていると背筋が
ゾクッ!?
とするような力が八坂さんとロキのいる部屋から感知できた。俺は、九重ちゃんを屋敷にいる女性に預け急いで部屋へ向かった。
そこには、魔力が殆どない八坂さんがいた。
「八坂さんッ!」
「謙吾ッ、来てはならぬ!!」
八坂さんに駆け寄ると部屋の中には、薄ら笑いを浮かべているロキがいた。
「こいつが悪いんだよ。ここの神々を殺すから邪魔をするなと言いに来ただけなのにあろうことか断りやがったんだ。神の言うことが聞けないなら罰を受けるのは、当然だろ?」
さも当然かのように言った。
奴を殴ってやりたかったが八坂さんの方が優先なので治療を続行していた。
「もう興醒めだ。今日は、帰るとするか。あぁ、土産は残していく。じゃあな、妖怪」
そう言って奴は、いなくなった。
その後外から
「オオオオオオオオオォォォ!」
と獣の雄叫びのような声が聞こえて来た。
慌てて外に出てみると20メートル程の巨人がいた。
「・・・あれは・・・ヘカトンケイルじゃな」
八坂さんが肩を貸してもらいながら歩いてきた。
「龍王クラスでないと倒すのは、難しいじゃろ。
わらわが万全であれば・・・」
と悔しそうに呟いた。
「俺が行くよ八坂さん」
「駄目じゃ!死ぬ可能性もあるんじゃぞ!まだ、百年も生きていない若僧はそんなことせんでいい」
殺気混じりのち強い口調で言ってきた。
だが、俺は引き下がるわけにはいかなかった。
「もう、ウンザリなんだ。見送る側は。後悔ばかりだ、
俺の人生は。でもあの頃とは違う。力も付けた。だから、俺は俺の出来ることをする」
八坂さんは、複雑そうな顔を浮かべていた。
俺は、ヘカントケイルの方へ走って行こうとすると
「謙吾ッ!必ず帰ってこい」
と、八坂さんが言ってくれた。
俺は、振り返り頷いた。
とりあえず、周囲の被害を抑える事が最優先しなければならないことだ。
「
その言葉と同時に、霧が現れ建物を覆っていく。
世界の輪郭を不明瞭に変えていった。
建物も植物も、大気も全てが銀色の混沌に塗り潰されていく。
銀色の濃霧にの中に浮かび上がったのは、巨大な眷獣の影だった。眷獣の全身を包むのは灰色の甲殻。
禍々しくも分厚いその装甲は、動く要塞と呼ぶに相応しい。
亡霊の霧に覆われた世界に、眷獣の咆哮が響き渡る。
これで、魔力が尽きるまでは被害はない。
「オオオオオオッッッッ!!!!!!」
ヘカトンケイルは、俺によって周囲が霧になっていることに気がついたのかこちらを睨みつけて、邪魔するなと言わんばかりに咆哮してきた。
八坂さんから優れた再生能力を持つと言われていたので、様子見はなしだ。
「
出現したのは、前後に頭を持つ一体の巨龍だった。
緩やかに流動してうねる蛇身と、鉤爪を持つ四肢。すなわち『双頭龍』。
龍に向かってヘカトンケイルが魔力を纏わせた拳を振りかざす。魔力を纏わせているので大きな拳が迫ってくる圧力だ。まともに受ければ、五大龍王といえどただでは済まない威力を持っている。
だが、その力が奮われることはなかった。
龍達が、それぞれ巨大な
龍達は、
見た目の派手さも、騒々しさもない。
だが、凶悪さでいえば群を抜く。
彼らの顎に喰われた空間は、この世界から消失する。
いわばこの世界そのものに、回復不能のダメージを与える眷獣なのだ。
だが、既に再生しつつある。右側全ての腕を喰ったのだが殆ど元通りだ。
龍達は今度は後ろから体を喰らおうとしたが、ヘカトンケイルは先ほどの攻撃から学んだのか体を捻ってかわしボディーブローを叩き込んだ。
拳がめり込み双頭龍は、飛ばされていく。
俺は、須佐能乎で身を守りながら戦闘を見ていた。
「ッッッッ!?、なんていう身のこなしだ。あの体格であの速度・・・さすが神話の怪物だ」
「GYAAAAAAAA」
双頭龍は、怒りの咆哮を上げてヘカトンケイルに襲いかかる。
だが、また避けられる。
(奴の動きを押さえない限り勝てないか・・・。魔力もかなり消費した。そろそろ決めないと、こちらがやばい。
三体同時にスサノオなんてやったことないが・・・やらなきゃ負けるッ!)
俺は、覚悟を決めて三体目の眷獣を出現させた。
「
溶岩の肉体を持つ巨大な
大地から無限に湧き上がる溶岩自体が眷獣の本体だ。
俺も須佐能乎を完成体にした。
ヘカトンケイルの足下から溶岩の杭を打ち込む。
「オオオオォォォ!!」
「クソッ!、何つう力だ!」
何十本もの高熱の溶岩の杭を打たれながらも、こちらに歩こうとしてきており徐々にだが、こっちに進んできてい
る。
すぐさまヘカトンケイルをコルタウリ・スキヌムに押さえつけさせる。高熱の杭が効いているのか、動きが鈍ってきていた。
「
俺は、須佐能乎の矢に天照を付与させ心臓に向かって放った。黒炎がヘカトンケイルの身を焼いていくが膨大な魔力によって相殺されていく。俺の魔力もかなり消費された天照は燃費が非常に悪く連発は出来ない。しかも、眷獣も同時に出現させているため結構キツイ。
迦具土命は、相殺されてしまったが上手く分厚い胸板を燃やし、心臓を露出できた。だが、早くも再生し始めている。
「やれ!双頭龍!」
龍達が、大顎をあけてヘカトンケイルの胸に喰らいつき大きな風穴を開けた。
そして、再生する事もなく腕先、足先から灰になったように崩れていった。
俺は、須佐能乎を解除し眷獣を消した。
霧が晴れるとそこには、見慣れた風景が広がっていた。
ヘカトンケイルは、本来ギリシャ神話ですがお気になさらず。
連絡事項
諸事情により最大で十一月末まで更新が遅れます。
楽しみにして頂いている方申し訳ありません。