偽物ハリー・ポッターの運否天賦   作:紺南

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ハリーポッター(偽)と賢者の石
ハリー・ポッター 再会する


遠く、南の島。

バカンスと言うにはあまりに質素で、観光地と言うにはあまりに絶壁なそこ。

そこでは台風の影響か、酷い嵐が吹き荒れていた。

小屋の外では風の吹く音が止むことなく、雨漏りで垂れた水がバケツに滴り落ちる。

 

ベッドやソファなどの高尚な物はダーズリー夫妻とその子が使っており、今ハリーが寝ているのは床。

砂や埃で覆われた地面にごろ寝しているのだから寝られたものじゃない。

せめてもの情けで所々に穴の開いた掛け布団は与えられたが、正直在ってもなくても大差ない。

こんな所で寝るのならば、まだ階段下の物置部屋の方が数段ましだと実感せざるを得なかった。

 

ハリーはため息を吐く。

 

そもそも家から遠く離れ、こんな絶壁の小島にまで来たのは謎のフクロウ大突撃があったからだ。

毎日昼夜問わず手紙を持ったふくろうたちの爆弾攻勢。

一時家を埋め尽くすほど手紙が溢れかえったが、バーノンは頑として手紙の中身をハリーに見せることはしなかった。

それでもあの手紙類はハリーに向けて送られていたことぐらいは気づいていた。

 

そう言えばあれは何だったのだろうと今更ながらに疑問に持つ。

 

不可思議なことには常日頃から慣れ親しんでいるとはいえ、あのふくろうたちはいつもの不可思議とは少々毛色が違った。

どこか他人の意志を感じる。自分が如何こうしようとした結果ではない。

もし、誰かが一生懸命送っていたのだとしたら随分ご苦労なことだが、結局ハリーは一度も手紙を手にしていないのだから、無駄と言う他ない。

 

紙もインクもふくろうも無駄だ。

このご時世にそんな無駄を許容できるとは随分寛容なのだなとハリーは思った。

 

そんな意味のない考えを巡らせている間に嵐は強くなる。

外で雷鳴が轟き、ほぼ同時に室内が明るく照らされる。

近くに雷が落ちた。その事実と共に、大きな影が雷光を遮っていた。

 

驚き振り返ると同時にドアが半ば壊されながら開いた。

 

「こんな所までにげちょるとは、まったく驚きだ」

 

視界一杯に広がる巨体。

それは雨に濡れながら、なんとか小屋に入ろうと苦心している。陰になっていて顔は見えない。

ハリーは出来る限り壁際に寄りながら、逃げ道を探して視線を右往左往させる。

 

唯一の出入り口は巨体によって塞がれている。

ぼろ小屋だから壁に思いっきり体当たりしたら破れるだろうか。

仮に破れてもここは絶海の孤島である。この島から逃げる術はない。

唯一の脱出手段はボート。それを漕ぐためのオールはバーノンが持っていた。

 

ハリーは諦めた。生まれてから11年。短い人生だった。

 

「何だ貴様は!?」

 

バーノンが唾をまき散らせながら絶叫する。

その勇気は称賛に値するものだった。

妻のペテュニアと息子のダドリーはバーノンの背後で抱き合いながら小さく震えている。

 

「おうおう、お前さんがバーノン・ダーズリーか。初めましてだな」

 

少々不機嫌に言って、巨体の持ち主は暖炉の前に座り込んだ。少しの間ごそごそと何かしていたと思ったら、次の瞬間には暖炉に激しい炎が灯っている。

一番近くにいたバーノンはもちろんのこと、ダドリーとペテュニア、ハリーの身体も驚きで跳ねる。

 

「これでいい。さって、ハリーはどこだ? ハリー!」

 

火を点けた後、立ち上がり4人を振り返った巨体に遂に名を呼ばれ、ハリーは無信教ながら神へと祈る。

 

――――どうか、来世はもうちょっと長生きできますように。

 

瞑目し手は胸の前で合わせる。

そんなハリーの様子をコガネムシのような眼で怪訝そうに見つめる影一つ。

 

「お前さんがハリーか。……何しちょるんだ?」

 

「やるなら一思いにやってください」

 

困惑の色を浮かべる巨体。

「分からん」そう呟きながら懐から箱を一つ取り出す。

床に置かれたそれを今度はハリーが怪訝そうに見つめる。得意そうに巨顔が笑った。

 

「誕生日おめでとう、ハリー」

 

「……わお」

 

箱の中はぐちゃっと潰れたバースデイケーキ。彩は赤。

元はしっかりとした形をしていたのだろう。尻にでも潰したか。

 

「……あの、えっと」

 

「うん? 礼ならいらん。ハリーの誕生日を祝うのは当たり前のことだからな」

 

「あー、と。だ、誰ですか?」

 

言いながらも若干失礼じゃないかなと心の隅で思う。

こんな経験は何回目になるか、相手はハリーの事を知っているようだがハリーは彼の事を知らない。

いや、正確には知ってはいるのだが、よくは知らなかった。

実際に会うのはこれが10年ぶりとなる。

 

「ああ。さすがに覚えとらんか。俺の名前はハグリッド。ルビウス・ハグリッドだ」

 

「僕はハリー。ハリー・ポッター」

 

「知っとるとも。よーくな」

 

さすがはハリー・ポッター。有名らしい。

にこやかな笑みを浮かべるハグリッドとは対照的にハリーは曖昧な笑顔を浮かべた。

 

「さあ、ハリー。知っとると思うが、今日はホグワーツへの入学案内を持ってきたんだ」

 

「どこ?」

 

「ホグワーツだ。噂ぐらいは聞いたことあるだろう? ほれ、魔法学校の」

 

「知らないなぁ」

 

ハリーの目線は斜め左上へ。どこまで行ってもハグリッドが視界の隅をちらちらと動く。

もじゃ毛が鬱陶しくて仕方がなかった。

 

「知らん? そんなわけなかろう。え? お前さんの両親が魔法使いだってことも知らんのか!?」

 

「魔法……。ファンタジーだね」

 

「…………ダーズリー!!」

 

ハグリッドが吠える。吠えられたバーノンは手に構えていたオールを落し、ダドリーは頭からケーキに突っ込んだ。盗み食いをしようとしていたらしい。

 

「どういうことだ!? なぜハリーがホグワーツの事を何も知らん!?」

 

「ふ、ふん。なぜ知らせる必要がある。ハリーは普通に生活させると、あの日誓ったんだ! お前らみたいな妙な輩とは違う、普通の人間にな!!」

 

「おまえ……!!」

 

ハグリッドは怒り、バーノンを凄まじい眼力で睨みつける。

バーノンは辛うじて睨み返しはしたが、その足はがたがたと震えていた。

やがて、バーノンから視線を外したハグリッドは、ハリーに言い聞かせる様な口調で言葉を発する。

 

「ハリーよく聞け。お前さんは魔法使いだ」

 

「ファンタジー……」

 

「嘘じゃない! お前さんの両親が魔法使いだった。お前さんも魔法使いに決まっとる。それもそんじょそこらの魔法使いじゃねえ。偉大な魔法使いになれる。お前さんにはその才能がある」

 

「事故で死んだ両親がなんだって?」

 

「ダーズリー!!!」

 

また、ハグリッドが怒鳴る。

 

「事故で死んだ!? ジェームズとリリーがか!? そんなこと絶対に有り得ん! 殺されたんだ、『名前を言ってはいけないあの人』に!」

 

「ぼく、もう付いていけないよ」

 

ハリーは『名前を言ってはいけないあの人』という単語が出た途端に理解を放棄した。

何故だか、遠い昔の古傷を抉られるような感覚に襲われたからだ。

 

「とにかく、ハリーは9月1日にホグワーツに入学せないかん。ダンブルドアもそれをお望みだ」

 

「おーけー。用件はそれだけ?」

 

「いんや。お前さんはこれから俺と一緒にダイアゴン横丁で買い物だ。杖や教科書を買いにな」

 

「わお。何だか香ばしい響きが……」

 

「ハリーはいかさんぞ!」

 

二人、話が纏まりかけていたところでバーノンが口を挟む。

曰く、

 

「ハリーを貴様らと同類にはさせん! ただでさえ頭がおかしいんだ! お前らと関わると余計におかしくなる!!」

 

ということらしい。

度重なる予想だにしない事態に堪忍袋の緒がはち切れていたハグリッド。

持っていた傘をバーノン――――の後ろでケーキを舐めていたダドリーに向けた。

 

閃光が走る。

 

「ぷぎぃ!?」

 

「ダドリーちゃん!? ダドリーちゃん!?」

 

閃光が収まった時、豚のごとくケーキを貪っていたダドリーはそこには居らず、変わりに可愛らしい子ブタが一頭いた。

 

「ダドリーをどこにやった!!」

 

「そこに居るだろ。ほれ」

 

指し示されたのは子ブタ。

つまり、そういうことらしい。

 

「まさか、これが……?」

 

「わお。魔法ってホントにあったんだ?」

 

「さっきからそう言っとる。話聞いてたんか?」

 

「正直、あんまり」

 

にっこりと笑うハリー。つられてハグリッドも笑顔になる。

 

「まあ、行くなら早く行こうよ。どこだっけ? 横丁?」

 

「ダイアゴン横丁だ」

 

魔法をその眼で見られ、少しハイテンションになったハリーは立ち上がる。

ハグリッドを伴い、二人は小屋から外に出た。後ろからはバーノンの雄たけびとペテュニアの叫びが木霊する。

それを聞いて「そう言えばダドリー豚になったままだ」と思い出したハリーがハグリッドに問いかけた。

 

「ダドリーは直さなくていいのかい?」

 

「ダドリーって言うと、あの子供か。まあいい薬になるだろう」

 

確実に魔法に対するトラウマは植え付けられただろう。

果たしてそれが薬になるかは疑問だが、ハグリッドが直さないのならハリーにはどうにもできない。

案外、このまま豚として一生を送るのも悪くないのではなかろうか。

少なくとも家畜として食われることはないだろうし。元々豚みたいなものだったし。

 

 

崖下に下りて、二人はボートの所まで到着した。

しかしボートを漕ぐためのオールがない。バーノンの足元に転がったままだ。

 

どうするのだろうとハグリッドを窺うと、ボートに乗れと指示が出た。

言われた通りにボートに乗る。ハグリッドも後に続き、水面すれすれにまで沈んだボートを傘で何度か小突く。

 

小突かれたボートは独りでに動き出し、まるでモーターでも付いているかのような速度で先に見える岸に向けて走り出した。

 

「魔法って便利だねえ」

 

「そうだろう? お前さんもこれから勉強するんだ」

 

ハグリッドの言葉にハリーは嬉しいやら悲しいやら、複雑な気持ちで近づく岸を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

ダイアゴン横丁はロンドンにある。

それを聞いたハリーはならば地下鉄だと、最寄り駅に移動した。

道中を巨体故に目立つハグリッドと共に移動し、券の買い方やお金の価値が分からないハグリッドを指導して、ようやく目的の地へ辿り着いた。

 

「ハグリッド、これは?」

 

「これは漏れ鍋っちゅうパブだ。宿屋を兼ねとる」

 

「ふーん」

 

「どれ、ちょっと挨拶していくか」

 

ハグリッドに肩を掴まれ、ほぼ無理やりに漏れ鍋の中へ。

中には頭の禿げた老人が新聞を読んでおり、ドアの開いた音に「いらっしゃい」と言いつつ、ハグリッドの姿を視界におさめた。

 

「やあ、ハグリッド」

 

「ああ、トム久しぶりだな、え?」

 

「本当に久しぶりだ。今日は飲んでいくんだろう?」

 

「悪いが、仕事でな。この子を」

 

ぐいっとハグリッドの身体に余計に密着する。

 

「案内せにゃいかん」

 

その言葉に残念そうな顔をしたトムは、ハリーの額に目を走らせた途端、表情が一変する。

 

「ハグリッド……。まさかこの子は……!」

 

眼が驚愕に見開き、手がわなわなと震える。

 

「そうだ。ハリーポッターだ」

 

「おお。おお……。なんと、なんと光栄な。この子があの……!」

 

がっしり握手し、手が上下に揺れる。

ハリーは有名だなあ、とハリーが内心で思った。

 

周りでそれぞれ酒を飲んだり、思い思い話に花を咲かせていた客も、ハリーの元へ殺到した。

順々に挨拶をしていく。

 

「お会い出てきて恐悦至極。これほどの喜びは他にございません」

 

「僕もうれしいよ。恐悦かは置いておいて」

 

「ああ、ハリーポッター。私のこと覚えておいでですか?」

 

「いつだか飴くれたかな?」

 

あまりに殺到するものだから、段々とハリーの対応もおざなりになって行く。

何とか全員と挨拶を済ませ、最後に頭にターバンを巻いた男が近づいてきた。

 

「は、ハリーポッター。お、お会いできて、こ、ここ、光栄です」

 

ハリーはあまりにその男が言葉につっかえる物だから、まじまじと顔を見てしまった。

ハリーに顔を見られ、男は少し視線を逸らす。

 

「わ、私はホグワーツで教師をしています。ご、ご存知ですかな?」

 

「いいや、知らないね」

 

ハリーがハグリッドに視線を送ると、ハグリッドは今気づいた様子で男に挨拶した。

 

「クィレル先生、これは気づかなんだ」

 

ハグリッドが大声で男の言ったことの真偽を証明する。

変わった先生がいるのだなと、ハリーは思った。

 

「ハリー、こちら今年度から『闇の魔術に関する防衛術』の先生を務めるクィレル先生だ」

 

「よろしく」

 

ハリーが差し出した手をクィレルは掴まず、ぎこちない笑みを浮かべて「よ、よよろしくお願いします」と言った。

 

「ああ、クィレル先生、皆も。すまんがこの後ハリーは買い物せないかんのでな。この辺でお暇するとしよう」

 

「オーケー。急がなくちゃね。時間もないし」

 

ハリーの言葉に、群がっていた人々は名残惜しそうに道を作ってくれた。

それは漏れ鍋の裏に繋がっている。

 

「あっちかい、ハグリッド」

 

「ああ」

 

道の先は裏庭に繋がっており、そこからはどこへも道は繋がっていなかった。

眼前には壁が広がる。

 

「この先だ」

 

「先って言ってもレンガしか見えないけど?」

 

ハグリッドの指さす先は壁。

聞かれた言葉に素直に答えたハリーに「すぐに分かる」と言い残して、ハグリッドは傘でその壁を突く。

何度か突かれた壁は、やがて独りでに動き出し先に続く道が出現した。

 

「わお。魔法使いってこういうの好きだね」

 

いい加減驚かなくなったハリーはとりあえず口でそれだけは言っておき、眼前に新しく広がった景色に感嘆した。

とんがった帽子や魔法使いらしいロープを着た人々でにぎわい、見たことのない店店が存在するそこ。

 

「ここがダイアゴン横丁だ」

 

「へえ」

 

ハリーは言いたいことがあるものの、それは口には出ずただただ意味のない言葉しか漏れない。

 

見えるところにいる人間は全員魔法使いなのだ。

その現実を認識すると、なんだか痺れるような感覚が全身を貫いた。

 

「ああ、そうだ買う物買わなきゃ」

 

我に返りハグリッドに貰った入学案内を読む。

それには鍋や教科書、杖など必要な物が列挙されている。

しかし考えてみればハリーはお金を持っていなかった。

 

「ハグリッド、僕お金持ってないんだけど」

 

「それなら心配いらん。お前さんの金はあそこにちゃんとある」

 

ハグリッドの指さす先、一際大きく一際目立つ建物。

グリンゴッツ銀行と書かれていた。

 

「小鬼が運営しとる。ホグワーツの次に安全な場所だ」

 

「へえ」

 

ハグリッドの説明に、ハリーの口を出たのはそれだけだが、内心では「銀行より安全な学校って言うのもどうなの」と考えていた。

 

「じゃあまずあそこ行こうか」

 

「おう」

 

グリンゴッツにはたくさんの魔法使いが出入りしており、おそらくダイアゴン横丁で一番繁盛していることが窺えた。

そこに二人は入っていく。

 

入って真っ先に目に入ったのは受付に座る背の低い鬼のような生き物だった。

あれが小鬼なのかと、ハリーは驚きを顔には出さずただ用心深く小鬼を注視する。

 

そしてグリンゴッツを半ばまで歩いて、ハグリッドがハリーに耳打ちした。

 

「こいつらが小鬼だ。人間とは考え方が違う。あまり関わり合いにならん方がええ」

 

「考え?」

 

「主に所有権についてだな。詳しくは知らんが」

 

どう違うのか、ハリーの内で蛇のような姿をした好奇心が首をもたげる。

しかしそれを使うのは今ではないだろうと、無理やりに大人しくさせた。

やけに体力を使う作業だった。

 

「ハリーポッターさんの金庫に用がある」

 

ハグリッドが数ある受付の内の一つ。一人の小鬼に話かける。

小鬼はハグリッドを見て、次にハリーに目を向けると意味の窺えぬ声を漏らした。

 

「鍵はお持ちですかな?」

 

「ちょっと待ってくれ。ここに――――」

 

ごそごそと堅い物が当たる音を鳴らしながら、ハグリッドは金色の鍵を取り出した。

 

「確かに」

 

「それともう一つ用がある」

 

一枚の羊皮紙を小鬼へ渡した。

 

「……例の金庫の、例の物について、だ」

 

「……承知しました」

 

果たして何のことを言っているのか。

またもやハリーの好奇心が首をもたげた。

今度はハリーにそれを抑える気はなく、蛇は時を見て聞いてやろうと前傾姿勢になりながら跳びかかる準備をした。

ハリーは是非とも跳びかかってくれと蛇を応援した。

 

 

 

 

 

ハリーの金庫の中には見たことのない金貨が山の様に入っていた。

それをハグリッドが「このぐらいあれば足りるだろう」と全体から見て少しの量を袋に入れてくれ、ハリーは袋と金庫の鍵を受け取りながら、これ一枚でどのくらいの価値なのかを考えていた。

 

「713番金庫に到着しました」

 

次にハグリッドが用があると言った金庫へ到着。

その金庫はハリーの金庫の様に鍵を使って開けるタイプではなく、小鬼が触れることで初めて開くタイプのものだった。

中には粗末な布に包まれた小さな『何か』が一つだけ入っており、ハグリッドがそれを手にした時に堅い音がした。

懐にしまったそれの詳細をハリーが尋ねたが、ハグリッドは「このことは誰にも言わんでくれ」と念を押しただけで詳しいことは何もしゃべらない。

腐っても大人なのだろうと、ハリーは蛇をいったん大人しくさせる。

しかし蛇の眼は機会をうかがって爛々と輝いており、ハリーの脳内もいくつかの推測を弾きだすぐらいには活発に動いていた。

 

何だろう。固形物であることは確かだ。それに小さい。

魔法界のことを何も知らないハリーが推測したとしても当たることはまずない。しかしだからこそ推測のしがいがあるのではないかと、深く深く、ハリーは内に潜り込んでいく。

 

頭の中で考え事をしている間に銀行を後にし、鍋や教科書はハグリッドに言われた店で、言われた通りの物を上の空で購入した。

そして、ついに杖を買えば買い物は終わりと言う段階になって、ようやくハリーは思考の海から目覚めた。

 

「杖か。杖ならオリバンダーの店が一番だな」

 

少し行ったところにオリバンダーと書かれた店が見えた。

あそこかい、とハリーが尋ねるとハグリッドは頷く。

 

「ちょっと先に行っててくれ。俺は買い物を済ませてくる」

 

「オーケー。終わったら店の前で待ってるから急いで行っておいで」

 

ハグリッドと一旦別れ、ハリーは一人オリバンダーの店に入る。

店内は天井まで続く棚がひしめき合っており、それにはびっしりと細長い箱が詰まっていた。

 

店主を探してハリーはカウンターの前まで歩くが、それらしい姿が見えない。

「いないのか?」そう思いながらハリーは「すいませーん」と大声で呼んだ。

 

すると奥の方からガタガタと木と木とが擦れる音が聞こえ始め、それは段々近づいてくる。

数刻前の出来事を思い出し、反射的に出口を振り返ったハリー。

 

外には多くの魔法使いが歩いている。日は高く昇り周囲は明るい。

まあ大丈夫だろうとハリーは音の正体を迎え撃つことに決めた。

数秒待って、現れたのは梯子に掴まった一人の老人だった。

老人は例にもれずハリーの額の傷を目に収めた後、好意的な声音で言葉を発した。

 

「これはこれは、ポッターさん。貴方がこの店に訪れるのを首を長くしてお待ちしてましたよ」

 

「そう? でも僕の方が首は長いと思うよ」

 

好奇心の蛇を思いながら、冗談のようにハリーは返した。

それをオリバンダーはどう受け取ったのか、愛想に近い笑いをして一つの箱を取り出す。

 

「杖をお買い求めですかな?」

 

「そう。ホグワーツへ入学するのに必要なんだって」

 

「そうでしょうとも。では、まずはこれを」

 

箱の中には一本の杖が入っていた。

まさか周りの箱全て杖なのかとハリーは驚き、一瞬店内を見渡す。

 

そしてハリーは眼前の杖を手に取り、まじまじとそれを見た。

手に伝わる感触はひんやりとして堅い。どこか違和感を感じるそれをハリーは一度振ってみた。

 

杖の先にあった箱が飛び散る。

 

「合わんようじゃの」

 

驚き、ぴたりと動きの止まったハリーの手から杖を回収してオリバンダーはあっけらかんと言った。

箱が飛び散ったことなど気にしてもいない様子でオリバンダーは次の箱を持ってくる。

 

ハリーは慎重にそれを手にし、今度は何もない床に向けて振る。

床板が割れ、基礎が見えた。

 

「駄目じゃな」

 

オリバンダーはそれを見るとすぐに梯子に掴まり店の奥へ向かった。

ハリーは杖を箱に戻しながら俊敏なおじいさんだと思った。

 

10秒もせずに戻ってきたオリバンダーの手には一つの箱。

しかし先ほどまでとは違い、どこか緊張した面持ちだった。

 

「これを――」

 

声が少し震えている。それを聞いて取ったハリーは怪訝げに杖を手に取った。

その杖からは今まで感じ取っていた違和感がなく、ひんやりとした手触りの中に温かみが感じられた。

振るまでもなく杖の先からは火花が散る。まるで杖がハリーを歓迎するかのようだった。

 

「ああ、やはりそうか……。……不思議なこともあるものじゃ」

 

「……そうですね」

 

オリバンダーが呟いた言葉の意味をハリーは聞かなかった。代わりに同意の言葉を発した。

何が不思議なのか。今も杖の先から溢れている火花のことではないのは分かっている。

運命とはかくも残酷であるとハリーは知っていた。

 

「ハリー、ハリー!」

 

聞こえた声にハリーは振り向く。

ドアの隣にある窓の先で、ハグリッドが籠に入った白いフクロウを抱えながら立っていた。

 

「ハッピーバースデイ、ハリー!」

 

綺麗なフクロウをひけらかす様に掲げる満面の笑みのハグリッドに、ハリーは初めて心の底からの笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

ホグワーツ特急が出発するのはキングス・クロス駅の9と四分の三番線だと案内には書いてあった。

ハリーは「どこだよそれは」と9番線辺りをうろちょろしながら、とうに別れたハグリッドに恩讐を飛ばす。

 

歩き疲れてしまい、休憩がてらベンチに腰掛け、感情を落ち着けながら9番線を見ていたハリーは、10番線と9番線の間の柱の数が4本あることに気づき、ようやく9と四分の三番線の謎に気づいた。

 

試しに3本目の柱に手を置いてみると、手は柱を透過し、その先のないはずの空間に入り込む。

ようやく見つけられた四分の三番線にハリーは喜び、しかし時間のないことを自覚しているため、急いでそこへ入り込んだ。

 

入り込んだ先には一瞬前までいた場所と何ら変わりのない駅があった。

だがそこにいる人間は揃いも揃って魔法使いらしい個性的な格好をしていたので、疑う余地もなく、ここが9と四分の三番線だとハリーは確信する。

 

黒煙を上げ、今にも発車しそうなホグワーツ特急にハリーは乗り込む。運よく無人のコンパートメントを発見した。

どうか最後まで誰もこのコンパートメントに来ませんようにと、ハリーはドアにてるてる坊主を設置する。それにとくに意味はない。

 

そして買ったばかりの制服を早くも着こみ、いつでもホグワーツに乗り込める準備をした。

どんなものだろうと、ハリーがガラスに映る己の姿を吟味していると、ついにホグワーツ特急が動き出す。

窓の向こうでは子を見送りに来た親が一心不乱に手を振っていた。半分泣いている母親もいた。

 

子もそれに応えるように手を振っているのだろうと、ハリーはその光景を想像し、親はともかく子は可愛らしいものだという感想を持つ。

 

徐々に離れる駅には何の感慨もなく、ハリーはすぐに窓から目を離し、ホグワーツで使う予定の教科書を開いた。

そこには今までの11年間はおろか、かつての人生でも見たことのない魔法の呪文が並んでおり、これからこれを学ぶんだと考えると気持ちが昂ってしまう。

しかし同時に、ホグワーツでの生活の先にあるものを考え、自然と高ぶった気持ちは沈静化した。

胸の奥の薄暗いそれを振り払うようにハリーは教科書を読み込み、時には杖を振り、魔法を試してみた。

案の定、杖の先からは火花が散るだけだったが、それでも『魔法らしい物』を使えている感覚にハリーは夢中で杖を振る。

30分も繰り返し、微かな倦怠感と眠気がハリーを襲った。

 

ダーズリー家と共に遠くへ逃げるための旅は碌に休めたものではなかった。

思う存分に休めなかった分の疲れが今になってどっと来たらしい。

 

ハリーは眠気を堪え、教科書を読み込むか迷ったが、こんな状態では頭も働かないだろうと、眠ってしまうことに決めた。

ローブを掛け布団の様に使い、椅子の寝やすい位置を探って目を閉じる。

普段は眠るのに時間がかかるタイプなのだが、この時ばかりは本当に疲れていたらしく、すぐに夢の中へもぐりこんでいった。

 

ホグワーツに着き、周りが騒がしくなるまでハリーは眠り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

霞む瞼を擦り、ハリーは特急を降りる。

夢で見た、見知らぬ女の子にほっぺを突かれる感触を思い出しながら少しばかり上機嫌で行く道を探る。

遠くからハグリッドの「いっちねんせーい!! いっちねんせーい!!」と叫ぶ声が聞こえ、行くべき道は容易く見つかった。

 

「一年生は俺のとこに集まれ! おーう、ハリー!!」

 

手を振ってきたハグリッドに、特急の謎のことで文句を言ってやろうと一年生の波をかき分けるが、あまりに高く厚い波にハリーはすぐに諦め、手を振り返すにとどまった。

 

「一年生は俺と一緒にボートでホグワーツだ。なあに安心しちょれすぐに着く」

 

ハグリッドが安心させるように大声でそう言った。

言葉通り、今日はいつだかの様に風吹き波高い空模様ではなく、男子が一人落ちたことを除けば順調な船旅だったと言えよう。

 

道中でも、ハリーはぎゅうぎゅうと詰められた船の上で教科書を読み込んだ。

半分船から身を乗り出しながらそんなことをするものだから、周りの生徒はハラハラとハリーを見つめる。

もし落ちそうになったら助けられるように、すぐ近くでその時を待ち構えた生徒が何人もいた。

しかし、およそ自分の注意していなかった所から人が落ちたりしたものだから、岸に着くときにはその生徒たちは少し憔悴した様子だった。

 

そんなことをあずかり知らぬハリーはホグワーツの外観を眺め、しきりに感嘆の声を上げる。

ダイアゴン横丁を見たときも驚いたものだが、今目の前にある城はそれよりも数段上の驚きだ。

妄想の中にある中世の城そのままの姿でとても大きい。一体中はどうなっているのだろう。

期待に胸が膨らむ。

 

「ハグリッド、ご苦労様でした」

 

「ああ、マクゴナガル先生」

 

ホグワーツに呆気にとられる生徒達。それを歓迎するかのように城の扉が独りでに開き、中から魔女が一人姿を現した。

マクゴナガルと呼ばれたその魔女はハグリッドに労いの言葉を掛け、一年生たちを一瞥する。

 

「ここからはわたくしが引き継ぎます。あなたは大広間に行かれるとよいでしょう」

 

「へえ。ではお願いしますだ」

 

ハグリッドは言われるがままホグワーツの中へ入っていく。姿が見えなくなる直前、ハリーに向けてウインクを飛ばした。

入れ替わる様にマクゴナガルが一年生たちに言葉を発する。

 

「さて、みなさん。まずはご入学おめでとうございます」

 

その凛とした言葉に皆が注目する。

 

「これから皆さんはホグワーツの生徒として7年を過ごすことになり、これからその7年間をどの寮に所属するかを決める組分けが行われます」

 

生徒たちがにわかに騒がしくなる。

 

「しかしどの寮に所属しようとも、皆さんがホグワーツの一生徒と言う事には変わりありません。相応しい振る舞いを心掛けるようにしてください」

 

遮る様に声を大きくして行われた入学前の心構えはそこそこに、マクゴナガルは一年生を名前順に整列させた。

そしてそれを維持させたまま一年生はホグワーツへと入っていく。

 

道中では煌びやかなシャンデリアや大理石の階段、半透明な幽霊がお出迎えする。

 

「やあやあ、新入生諸君ご機嫌はいかがかな?」

 

「今年も可愛らしい子らが来たものね」

 

「我々は君らを歓迎する」

 

壁からにょきにょきとそんなことを言いながら現れる幽霊たち。

時にすぐ横や足元から現れたりするものだから、悲鳴が引っ切り無しに響く。

 

「こっちへ」

 

マクゴナガルにしてみては慣れたもので、己の前を飛ぼうが上を飛ばれようが、幽霊たちに軽く挨拶をするだけでずんずんと進んでいく。

そして変ないたずらを仕掛けてくる幽霊や動く絵画、石像なんかを経て、ようやく新入生たちは大広間へ辿り着いた。

そこでは四つの大きなテーブルに座る在学生たちが居り、それを越えた向こう側の上座には教師と思しき大人たちが複数座っていた。

ハグリッドが端で存在豊かに座っていたし、ハリーが漏れ鍋で会ったクィレルもその中にいる。相変わらずおどおどとした様子を見せていた。

 

マクゴナガルは新入生を上座のすぐ近くまで連れて行き、その場で待つように指示を出した。

そして教師陣と在校生の間、一際目立つ場所に一脚の椅子と古びた帽子を用意する。

 

椅子は立派な物であったが、その上に置かれた帽子は継ぎ接ぎだらけでぼろ臭い。

あんなもの用意してどうするのだろうか。ハリーは訝しむ。

 

訝しんでいる間にマクゴナガルはどこからとなく長い羊皮紙を取り出した。

そして大きな声で言う。

 

「ハンナ・アボット!」

 

人の名前だろうか。

呼ばれたらしい女の子が一人、一年生の群れから抜け出し、恐る恐ると言った風体で椅子の方へ歩く。

促され、座った女の子。その頭にマクゴナガルは帽子を被せた。

するとその帽子は突如喋り出した。どこに口があるのか、というか本当に喋っているのかはわからない。

帽子は何やら独り言を呟いた後に、広間にいる人間に聞かせるように大声で叫ぶ。

 

「ハッフルパフ!」

 

聞きなれない単語に、ハリーは「なに?」と聞き返した。

しかしそれはごく小さい声だったので帽子の元へ届かず、周りの新入生たちも反応を見せない。

アボットは嬉しそうに笑いながら4つのテーブルの内の一つに駆け足で向かった。

元々そこにいた在校生たちは彼女を歓迎している。

 

そんな微笑ましい様子を見ながら、ハリーは「ふむ」と顎を擦って考えた。

そして至った結論は簡単だ。

「様子見しよう」

マクゴナガルは次々と読み上げる。

 

「マイケル・コーナー!」

 

彼はレインブンクローとか言われ、アボットとは違う席に座った。

 

「ドラコ・マルフォイ!」

 

彼はスリザリンだった。また違う席に座る。

 

「ミレイ・フォーザン!」

 

何だか白い子はグリフィンドール。4つの内、まだ誰も座っていなかった最後のテーブルへ。

 

「ハーマイオニー・グレンジャー!」

 

グリフィンドールと言われ、同じく言われた女の子と同じ席に座った。

そこまで見れば大体分かる。加えて在校生と新入生のひそひそ声から、この意味の分からない行いは組分けの儀式と呼ばれるらしく、端的に言えばただのクラス分けらしかった。

そう言われて見れば、記憶の奥底に似たような記憶が埋没しているような気にもなるから人とは不思議だ。

 

「ハリー・ポッター!」

 

ついに己の名が呼ばれる。

一瞬広間はしんっと静まり、次いであちらこちらでひそひそ声が発生。

ハリーは自分に向けられる好奇の視線を自覚しながら、けれど目線はまっすぐ前に向けて組み分け帽子の所まで歩く。

生徒のみならずほとんどすべての教師までハリーに注目している状況に、居心地の悪さを感じながら椅子へと座った。

 

椅子の直ぐ近くに立っていたマクゴナガルは、ハリーを感情の読めぬ眼で見つめ、少しばかりぎこちない手で帽子を被せてきた。

帽子はすぐに独り言を発し始める。

うーむとか、難しいとか。これはこれは、とか。

 

ちょっとそれ聞こえないところでやってほしいと思うハリー。

頭上から聞こえる中年声を気にせずにはいられない。いいからさっさと決めろよと言うのが正直な気持ちだった。

 

「スリザリンか……、ハッフルパフか……、はたまたグリフィンドール……。レインブンクローは、なしとして」

 

その三つの組にはどういう違いがあるのか。

それぞれ適性と言うものがあるのだろうけど、三つの適性を持ち合わせている人間もそうそういるものではないだろう。

ちょっとばかしハリーの自尊心が満たされる。

 

「さて、困った。難しい。実に難しい。こういう時は本人の意思を確認するに限る。ハリーや、どこがいい」

 

まさか聞いてくるとは思わなかった。

ハリーは考える。

若干の沈黙の後に、

そもそもどこがどれだか知らないし。

そうハリーは答えた。

 

「そうかね。では簡単に。ハッフルパフ、誠実な者がつどう。グリフィンドール、勇敢な者の溜まり場。スリザリン、勇敢でしかし利己的。けれど義に厚い者たち。さあ、どこがいい?」

 

ハリーは瞑目する。

 

ハッフルパフの誠実さ。なるほど。確かに適性はあるだろう。

しかしハリーは知っている。誠実とは他者から見ればただの美味しい餌でしかないのだと。

誠実は言葉を変えればただのお人好しだ。そこに付け入る人間は山のようにいる。

さて、それを知っているハリーがハッフルパフに入ったらどうなるか。周りにいる生徒は全員格好の餌食である。

卒業するまでの7年間。捕食は続くだろう。

そんなことになれば人として終わってしまいそうでならない。

 

グリフィンドールの勇敢さ。

勇敢と言えば聞こえは良いが、勇敢と無謀は紙一重。

勇気を発揮した結果が良い物であれば勇敢で、悪い物であれば無謀だ。

そして、勇敢であるには相応の知恵が不可欠である。

それを考えて、周りを見てみる。そこには11歳の子供がひしめき合っているのだ。

彼ら彼女らにその知恵があるだろうか。なさそうだ。これから少しずつ学んでいくのだろうが、今の彼らはただの無謀な子供でしかない。

そして無謀な子供ほど利用しやすいものはない。僕のために死んでくれと、裏で糸を引く悪役のごとく真顔で言いかねない。

自重せずに行動したらそういうことを言う機会も多分あるだろう。

 

以上のことを鑑みて、スリザリンが一番だとハリーは思う。

利己的な人間が多く集まるスリザリンなら、おそらく歯止めが利くはずだ。

慎重な性格が却って悪い方向に突っ走ってくれる。寮友たちと仲良く出来るかは分からないが、牽制しあう未来なら容易く見える。

そんな未来が見える分、スリザリンが一番いい。そう思うのだ。

 

心は決まった。理屈もつけた。納得もしている。

ならば後は伝えるだけだ。スリザリンにしてくれと。

 

ハリーは目を開けた。

眼前にはじっと己を見ている幾多の生徒がいた。

組み分け帽子の言葉が聞こえていたのかは定かではない。

しかしあまりに長い組み分けに訝しむ者はでてきているだろう。

見えるだけで、数人の生徒が声を潜めて話し合っていた。

 

それは教師も同じだ。

振り向けないので見ることは出来ないが、背後からも微かに話し声が聞こえた。

隣に立つマクゴナガルなどは若干顔を青くしている様に見える。

どれだけ焦れているのか。

 

だがそれもすぐに終わる。

ハリーは視線を生徒たちを滑らせ己の頭上にある帽子へと向けた。

しかし言葉を発する暇もなく、その視線はすぐに生徒の元に戻った。

 

なぜだろう。滑らせた生徒の中に一人、気になる子がいたのだ。

好きとか嫌いとかそう言う感情ではなく、単純に何かが目に留まった。

 

ハリーはその生徒を探して見つめる。あちらもハリーのことを見つめていた。

目が合っていることに気づいているのかはわからない。

けれど逸らしもせずにじっと見つめていた。「随分白いな」と言うのは先ほども抱いた印象だったか。

そうして見つめ合って数瞬。始めと同じように、ハリーの方から視線を逸らした。

 

そして一つ深く呼吸する。

吐き出して、今度こそ組み分け帽子に言った。

 

「じゃあ、グリフィンドールで」

 

ハリーポッターを取ったぞ!

そんな声が広間に木霊するのは組み分け帽子の宣言から数瞬あとのことである。

 

 

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