ぼくのかんがえた さいきょーの かんたい   作:変わり身

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この作品は己の趣味妄想を何も考えず文章にした物です。ごめんね。


潜水艦

――建造、残り時間??:00:00。

 

新しく艦娘を作ろうとしたらまたこの数字である。

何なんだよもう。ナデシコさん達が完成し、ドックが空いたと思えばまたこれだ。もう呪われているとしか思えず、祈祷師の呼び出しを半ば真剣に考えた。

 

「あ、それなら私呼びましょうか? 私のウリの一つにクルーの国籍に合わせたお葬式をするっていうのがありまして、その伝手で」

 

至れり尽くせり、と言えるのかそれは。

そんな通りがかりのナデシコさんの提案に冗談だよと手を振りつつ、工廠勤めの妖精さんのサックス指揮官&グランパ掌帆長に詳しい話を聞く。

 

ナデシコさんら三人の経験を積んだおかげか、表記が無くとも建造終了までの大まかな時間を予測できるようになったのだ。

それによると大体二週間。早ければ一週間半後には全ドックの建造が終了するらしく、その短さから言って駆逐艦か潜水艦となるそうな。

 

……あの、高速建造につきましては……。

おずおずとそう問いかければ、まるで鬼のような表情を向けられる。はい、出すぎた真似を致しました。何にも知らない若造は引っ込んどきます、はい、はい。

 

どうにもこの鎮守府の妖精さんは己の仕事に何か凄い情熱を持っている人が多いな。それともどの鎮守府もそうなのかしら。

工廠から叩き出された俺は溜息を吐き、暇つぶしにアイテム屋さんをぶらついた。

 

……そういえば、あなたも艦娘ですよね? どうです、俺の艦隊に……え? 正式配属されるまではヤダ? ああそう。

 

 

 

 

「提督っ! それでは出撃してきます!」

「待っててね、アキト! 暁の何とかに相合傘を書き込んでくるから!」

「行ってきます」

「…………」

 

出撃の時間。思い思いの言葉を残し大海原へと向かう四人を大手を振って見送る。隣りに立つ天河くんがゲンナリしているが、無視無視。

 

それにしても随分と賑やかになったものだ。五月雨さんと二人だけでヒーヒー言ってた頃が早くも遠い昔のようで、思わず感慨深くなる。

まぁ順調なのはいい事だろう。俺は五月雨さん達の背が消えるまで見送った後、天河くんと別れ執務室へ戻る。

どうせグラビティブラスト一発でほぼ終わる以上出す指示も仕事もロクにありゃしないが、提督である以上あそこが俺の居場所なのだ。

 

さて、通信妖精さんに頼んでその活躍を見させて貰うか――そう歩き始めた時、「あ、そういや」と天河くんに呼び止められた。

 

「何か本営からウチに通信届いてたっすよ。そっちの機器が反応しないんで、仕方なしにこっちに連絡してきたみたいっす」

 

そう言えば本営へ繋がる専用通信はおろし金でスクラップにして放置したまんまであった。

当然それきり何一つ連絡はとっておらずこれは怒られるかとも思ったが、話を聞く限りでは特に気にしていないらしい。何でも数ヶ月連絡のない提督も多いらしく、その辺りを一々気にしていても始まらないのだとか。

 

では何故今更? 疑問に思ったが、まず間違いなくナデシコさん達の事だろうと思い当たる。

グラビティブラストを禁止させて普通に演習には参加させていたし、その時に本営が気に留めたのかもしれない。図鑑に載ってないあたり、かなり希少な艦娘っぽいもんなぁ。

 

「じゃ、確かに伝えたんで」天河くんはそう言っていそいそと食堂へと戻っていく。多分ラーメン作りの練習をするのだろうが、絶対ナデシコさん達の為だぞ、あれ。

でもそういうのって何か良いよね。俺だったら……美味く茶を淹れる? いやそれ提督の仕事じゃ無い気もするけど。

しかしそれはそれで良い案だ。思い立った俺は足取り軽く歩き去り、早速執務室に4つのティーカップを用意したのであった。

 

通信? 何でしたっけそれ。

 

 

 

 

ナデシコさん達の様子を見に本営の視察官が来るらしい。

 

すわ接収かと身構えた俺だったが、特にそういった思惑は無いようだ。何でも彼女達を図鑑に載せる為の軽いインタビューをしたいのだとか。軍属、おい軍属。

『深海棲艦との戦いなんて意味分からんまま割となぁなぁに推移してますし、別に勝利に貪欲な訳でもないですからね』とは通信先のオペ子の言だが、それでは我々は何の為に戦っているのだろう。

 

哲学。

軍人特有の悩みに付け込まれた俺だったが、お茶を美味しそうに飲む五月雨さんの笑顔を見たら何かどうでも良くなった。結局そんなもんである。

 

 

まぁそんな事はさておき、そろそろ建造終了のお時間だ。五月雨さん達は入渠中の為、俺一人でのお出迎え。

今回かかった時間は約9日間。ナデシコさん達に比べればまだ短いが、それでも中々の期間である。

 

うーむ。やっぱ使ってるドックに異常があるのかな。俺に与えられた工廠のドックは二つしか解放されていないが、他の場所を開放すればそれも変わるだろうか。

せっかくだから後で申請してみるか。そう思いつつドックの扉の端に印字された北斗七星とかいう謎の文字を引っ掻いていると、眩い明かりが目に刺さる。

 

さて、今度はどんな艦娘さんかな。俺は光の中から現れる彼女達を待ち――そして、二人の女性がその姿を表した。

 

 

「――お初にお目にかかります。強襲揚陸潜水艦、TDD-1トゥアハー・デ・ダナン。他所からはトイ・ボックスとも呼ばれていました。よろしくお願いしますね」

 

 

一人は十代中頃の北欧系少女、トゥアハー・デ・ダナンさん。

あどけなさの残る顔立ちと、大きく「だなん」と書かれた本営指定のスク水。資料で見た他所の潜水艦とほぼ同じ特徴を持つ儚げな美少女だ。

……しかしその瞳に宿る利発さたるや十代の少女のそれでは無く、経験豊富な司令官の物。どこかナデシコBさんと似た雰囲気が感じられ、思わず襟元に乱れが無いか確認。いや、だらしない服装だとすぐに気づいて指摘するからさ、あの娘。

 

「ふふ、大丈夫ですよ。ちゃんとキッチリ着こなされていますから」

 

するとそんな俺の様子に気づいたのか、ダナンさんは口元に手を当てクスリと笑う。とりあえず愛想笑いを返して照れ隠し。

ともあれ、彼女に関しては物腰も柔らかで他の艦娘達とも仲良く出来そうだ。俺はホッと溜息を吐き――――んで、もう一人、なんだけど。

 

 

「――火星独立戦線活動拠点、シールドシップの夜明けの船だ。一応潜水艦の括りとなっちゃあいるが、我々はそんな小さな枠には収まらんよ。そこんとこ、よーっく心に刻んどきなよ」

 

 

ダナンさんと共に現れた艦娘。夜明けの船というらしい彼女は、何というか、その――オバサン、であった。

 

年は四十代かそれ以上。アッシュグレイの髪を無造作にまとめ軍服らしき服を纏う、資料で見た他所の潜水艦とはほぼ違う特徴を持つワイルドな女性だ。

胸だけでなく色々な場所の肉付きが良く、雰囲気と合わせて肝っ玉母さんという言葉が浮かんだ。……艦娘?

 

「ガッハッハ! 確かに娘って年にゃ見えないだろうねぇ! まぁちゃんと本分は果たしてやるから、ドーンと構えときなァ!」

 

バッチコーン!と豪快に背中を叩かれ、ゲホゲホとむせる。

 

正直疑問だらけの夜明けの船さんではあるが、貫禄は凄まじい物がある。ダナンさんもそうだし、潜水艦って皆こうなのかな。

……いや、単に彼女達が特殊なだけだな。やはり二人の情報の無い図鑑を投げ捨てそう思う。ホントどうにかならんかなこれ。

 

まぁそれはともかく、頼りになる仲間が増えた事には違いなかろう。現状でも戦力的には十分以上ではあるのだが、ダナンさん達が加われば俺の艦隊は轟沈という単語から更に縁遠くなる筈だ。

俺は鼻歌歌いのステップるんるん。何やら談笑している二人に上機嫌で歩み寄り――。

 

「にしても、ダナンだったかい? 随分とけったいな格好してるねぇ、アンタ」

「え、そうなんですか? こういう格好が潜水艦として礼儀だって聞いたんですけど」

「へぇ。まぁ潜水って意味じゃあ間違っちゃいないがねぇ……」

「機能的にも理に適っていますからね。そうだ、おば様ももしよろしければ――」

 

――全力のダッシュで割り込み、ダナンさんの言葉を断った。

 

もしその姿を誰かが見ていたら、それは世界滅亡を阻止する英雄が如く映ったかもしれない。

俺は二人の戸惑いの声を受けつつ、グイグイと強引にその背を押し続けたのであった。

 

……他の水着ならともかくさ、やっぱスク水はキツイと思うんだ。色んな意味で。ね?

 

 

 

 

『敵航空機を確認、アウトレンジから迎撃致します。各艦頭上に注意してください』

『こっちも衝角で一つ落とした! 時間稼ぎはもういいだろう、離脱するッ!』

『離脱確認、射線クリアー! 全部まるっとオッケーオッケー! いま必殺のぉ……!』

『――グラビティブラスト、発射』

 

ゴウ、と。鎮守府近隣海域の一角に一筋の光が迸り、敵艦隊との交戦が完了する。

戦績は勿論S判定。被弾した者も居らず、完全無欠の大勝利である。

 

いやはや、ニューカマーズの性能はどんなものか。五月雨さんやナデシコさん達との相性はどんなものか。

それらを確認する為の軽いテストのような出撃だったが、望外の好成績だ。チームワークも悪くなく、本当に初対面なのかとちょっと疑う。

 

『わぁ、まさか被弾ゼロで抑えられるなんて思ってませんでした!』

 

通信妖精さんから聞こえる五月雨さんの感激に猫吊るし共々頷く。

 

そう、一撃必殺の砲台に変なバリアと一見完璧に見えるナデシコ級だが、実を言うとそうでもない。

何でも真空状態では無い為エネルギーの運用に難が生まれているらしく、機能に一部制限がかかっている状態なのだ。俺には意味分からんけど。

 

その為砲撃のチャージに少しの隙が生まれ、強烈な攻撃だとバリアも抜かれる事がままある。

これまではその時間稼ぎに五月雨さんやユーチャリスちゃんの航空機(なのか? 何か黄色い虫みたいな奴)が必死に頑張っていたのだが、数発の被弾は避けられなかった。

しかし新たな二人の潜水艦が加わった事で、その部分をぴったりと埋められたようだ。

 

トマホークミサイル等を主要武器とした鬼射程のダナンさん。そして絶対物理防壁発生装置とかいう得体のしれないもので最高速度700km/h以上(アホか)で動きまわり、衝角戦法で敵を撹乱する夜明けの船さん。

超遠距離からの迎撃・牽制と超近距離の突貫・囮としてはこれ以上無い程の適任である。むしろ天職と言っても過言ではない。

 

これならもう並大抵の海域では轟沈する事もあるまいて。望外の結果に満足し、存分に慢心を満喫しようとした俺であったが――唯一、五月雨さんの事が気にかかる。

 

言っちゃ何だが、この布陣だと五月雨さんは旗艦でありながら明らかな力不足だ。なまじ真面目ないい娘さんであるだけに、囮という役目も奪われ変な劣等感を抱いてしまうかもしれない。

ナデシコBさんの時とは状況が違う。俺は懐きかけた慢心を放り捨て、そっと彼女の表情に陰りが無いか注視する。と。

 

『それでは、そろそろ鎮守府に帰港しましょう。シールドをお持ちの夜明けの船さんを先頭に、皆さん追随してくださーい!』

『はーい、五月雨お姉さん! ほら、皆も返事返事!』

『…………』

『……はーい』

『ふふ、はーいっ』

『引率の教師かね私は……』

 

何やら意外な程に明るかった。それ所か個性的な艦娘達を意外な程に良く纏め、旗艦として引っ張っている。

まぁユーチャリスちゃん以外は「敢えて引っ張られている」感じではあるが、それは認められている事と同義だろう。多分。

 

「五月雨かい。ま、実力としちゃ一番下だが、それを受け入れながら不貞腐れずに研鑽してるからね。見どころはあるんじゃないかい」

 

とは後日聞いた夜明けの船さんの言である。聞く話では戦闘中も全く油断せず、ユーチャリスちゃんと一緒に周囲を警戒したり、夜明けの船さん達の戦闘を観察し勉強しているらしい。

そしてその前向きさやひたむきな姿勢は好感を抱くべきものであり、旗艦としてこれ以上無く相応しい魅力であるとの事だ。

 

――提督、ナデシコBさんに負けないよう、私も頑張りますねっ!

 

成程。つまりは、以前のその言葉を守り続けて居るという事か。ならば俺の心配は杞憂であると言う事で、ほうと安堵の息を一つ。

夜明けの船さんという貫禄ある女性に自慢の秘書艦を褒められた事にニヤついていると――傍らの猫吊るしがサラサラと灰になっている事に気がついた。

 

どうした、そんな日を浴びた吸血鬼みたいな有様で。そう問えば、「ヨゴレにそんな話はキツイよぅ」と返り、思わず失笑。

フフン、俺にカスを見る瞳を向けた報いのようだな。軽く小馬鹿にしつつ猫吊るしの灰を集めようと手を伸ばし、しかしスカッと空を切る。

 

一体何故……と疑問に思うべくもない。そう、気づけば俺の身体も灰と化して居たのだ。ぐわああ。

 

 

 

 

「――ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン少佐だ。出迎え、感謝する」

「青葉です! 今日は新型の艦娘さんのお話、よろしくお願いします!」

 

数日後、件の視察官がやって来た。

これぞ正に軍人! といった感じの毅然とした女性だ。その背後には青葉と名乗る艦娘が控えており、元気よく頭を下げている。カメラやマイクを握っている辺り、彼女が取材担当なのだろう。

 

そして更に後方にもう一人下士官と思しき少年が立っているのだが、直立姿勢のまま微動だにしない。

軍人としての規範的とも言える態度だが、緩い鎮守府しか見たことのない五月雨さんは疑問に思ったらしい。おずおずと手を上げ、問いかけた。

 

「えっと……すいません、あちらの方は?」

「ああ、私の特別な部下だ。未だ融通の聞かん坊やだが貴官らへ危害は加えんと誓おう、護衛の一人として扱って貰いたい」

 

何分、少々厄介な身の上なのでな。ふみこ少佐はそう言って軽く口端を上げる。

 

厄介? 今度は俺も混じって首を傾げたが、すぐに思い出した。

そう言えばふみこという名は聞いた事がある気がする。何だっけ、確かかつて空軍の魔女集団、ヴァルキューレ部隊の長を務めた経歴を持つ凄い人とか何とか。

それならば護衛も納得ではある。あるがしかし、何故そんな人がわざわざこんな任務に来たのだろう。

 

「少し、私の勘が囁いた。それを確かめに来た……といった所だ」

 

おお、意味は分からないけれど、何か格好いいぞ。

まぁ俺としてはこちらに敵意が無いのならばどんな目的でも構わない。一先ず頷き疑問の全てを流すと、ナデシコさん達を集めてある客室へと案内する。

 

「あのぉ、提督さん。この光子力鎮守府は我々からしても謎の多い場所なのですが、変わった施設等があるのでしょうかぁ?」

 

そうして途中青葉さんの好奇心旺盛な質問にぽつぽつと返す内、客室に到着。こちらへどうぞと扉を開け放ち、彼女達を招き入れ――。

 

「…………」

 

入ってくれない。

何故かふみこ少佐は僅かに驚いた様子で立ち止まり、ぱちくりと瞬き室内を見つめている。

 

するとその様子に疑問を持ったのか、背後に控えていた少年が俊敏な動きで銃を取り出し、彼女を庇うように前に出た。俺も彼を追って部屋へと振り返り。

 

「……あれ? アンタ……」

「…………はぅぅ」

「わあぁ!? ダナンさん、鼻血、鼻血!」

 

ふみこ少佐と見つめ合い、訝しげな表情を浮かべる夜明けの船さん。そして少年――カシム軍曹の姿を見て、ボタボタと鼻血を垂らすダナンさん。

そんな二人の様子に、俺は猫吊るしと一緒に首を傾げた。

 

 

 

 

「あー、と。もしかしてアンタ、ニャンコポンかい? 大分印象違うから分かんなかったよ」

「……まさか、またあなたと――いや、厳密には違うのかしら。何とも奇妙な再会ね、封印したままにすればよかったわ……」

「ハッハッハ、まぁ乗ってない世界もあったがね」

 

どうやら、ふみこ少佐と夜明けの船さんは既知の間柄であったらしい。

直前までの軍人口調を乱し、たおやかな女性口調で話す彼女は微妙な表情を浮かべ、こめかみをトントンと叩く。そうは見えないが、余程衝撃的であったらしい。

 

……いや、元艦艇の艦娘と既知? それって凄くおかしくないか?

疑問が脳裏をよぎるものの、しかし考え込む余裕は無い。ちらりともう一方に目を向ければ、こっちではダナンさんとカシム君が何やらイチャこいていた。

 

「あの、もしよろしければ、お名前を聞かせて貰っても良いでしょうか」

「は、はっ。カシム軍曹であります」

「サガラさんですか、良いお名前ですね……ええと、ソースケさんとお呼びしても……?」

「はっ? いえ、カシムですが……?」

 

ああ、何か既視感。

思わず室内に控えるナデシコBさんを見ると、素知らぬ顔で目を逸らされる。いや、そういう反応した時点で、もうね?

 

まぁ、今はそんな事はさておいて。俺は場を鎮める意味を込めて柏手を打ち鳴らし、こちらに注意を向けさせる。

何やら色々と縁めいた物があるらしいが、とりあえず図鑑用の取材を終わらせた後にしよう。手早くそう告げると、俺はポカンとした様子の青葉さんの肩を叩いたのであった。

 

 

「……ここでは、あのような者ばかり建造されるのか?」

 

で、ナデシコさん達の取材が始まり、ナデシコさんとユーチャリスちゃんがアキトアキトとやかましい事この上ない中。隣に座りそれを眺めていたふみこ少佐がポツリと零す。

 

あのような者、というのが何を指すかは今更考えるまでもないな。うんそうですと頷けば、彼女は静かに目を閉じた。眉を寄せ、疲れたような表情だ。

一体どうしましたと問いかけると、彼女曰くこの鎮守府に居る艦娘は本来であれば呼ばれるべきでは無い存在なのだそうな。でしょうね。

 

……あれ、でも何でふみこ少佐はそんな事知っとるんじゃろか――そんな疑問を乗せた眼を送れば、彼女の瞳がユラリと光る。

その「触れちゃいけませんよ」感たるや半端なもんじゃ無く、眼に乗った疑問をそのまま目ビームの燃料にくべ非ぬ方向へ射出し痕跡隠滅。命って大切だよね。

 

「ふ……危機回避の勘は中々と見える。愚鈍ながら長生きをする人種だな」

 

お褒め頂き恐悦至……いや褒められてねぇなこれ。

 

ともかく、俺は危険を犯してまで秘密に迫る気は微塵も無い。

現状だってナデシコさん達を始め艦娘達の正体も含め色々と気にはなるが、まー皆いい娘だし。だったらそれで結末としようじゃないか。疑問を全て投げ捨てた俺は、黙って取材鑑賞へ戻る事にした。

 

「は、はい、成程。ナデシコ級の皆さんはアキトさんという人が大好きであると! 分かりました、では次は潜水艦の方々どうぞぉ!」

 

どうやら丁度ナデシコ級の三人の取材が終わったらしく、続いて同じ新しい艦娘である潜水艦達へ移る所のようだ。

青葉さんはどことなく引きつった表情を浮かべながらナデシコさん達の背を押し込むと、せっせとダナンさん達を促した。お疲れ様ですホントに。

 

……しかし、そういえば俺もまだ彼女に関しては完全に人柄を把握していないんだよな。いい機会だ、果たしてどんな事を喋ってくれるのかなとその内容に気を割いて。

 

「ではダナンさん、まずは自己紹介の方から!」

「はい、トゥアハー・デ・ダナンです。フリーの潜水艦で、好みの男性は任務に実直で頬にバッテン傷のある男性です」

 

何言ってんだろね。俺んちこんなんばっかりか。

 

「……えー、そういう事ではなくてですね、艦娘としてのあれやこれやを」

「あら、そう言えばそこにピッタリの方が居ますね。その、どうですか……?」

「は、はっ? その、一体どういう事か、自分にはよく……!」

 

何つーか、完全にターゲットしたらしいなあの娘。

あんな可愛い娘に迫られるとか、やっぱいいなぁ。そうダナンさんにアピールされるカシム君を羨望の視線で見つめていると――ガタン、と隣のふみこ少佐が立ち上がる。

何気なく顔を見れば、そこには不敵とも怒りとも取れる表情が浮かんでいる。そして彼女は俺に「失礼する」と残すと、ダナンさんの下へ歩いて行った。

 

「……総統、国光、光太郎、ついでに金に続くいい男だ。そう簡単には――」

 

何やら小声で言っているが、なんのこっちゃ。

そうしてダナンさんと小競り合いを始めたふみこ少佐を見ていると、何時の間にか近くに来ていたらしい夜明けの船さんがボソリと呟いた。

 

「……アイツのいい男漁りの趣味も変わってないねぇ……」

 

…………。

 

とりあえず足元に居た猫吊るしと見つめ合い、俺は自分の顔を指差す。「ハッ」と鼻で笑われた。

むいーっと彼女の頬を引っ張ったが、どこもおかしくはないのである。畜生。


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