ぼくのかんがえた さいきょーの かんたい   作:変わり身

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突撃艦+α

 

――密着! 謎多き秘海、光子力鎮守府の実態に迫る!

 

そんな見出しが踊っていたのは、本日の朝刊。本営から発行される情報雑誌の一コーナーであった。

どうやら以前ふみこ少佐のとこの青葉さんから受けた適当な取材が、まかり間違って形になってしまったらしい。

驚きで吹いた茶で猫吊るしを濡らし、むせ返りつつ慌てて目を通す。

 

――我らが艦娘達の帰るべき家、鎮守府。数多く存在するそれらの中で、特に情報の少ない光子力鎮守府という秘境がある。ワレアオバは極秘ルートから未知の跋扈する彼の場所へ――。

 

云々かんぬん、連々至極。

怒った猫吊るしにポコスカやられながら読み進めてみたものの――まぁ、誠に残念ながら、大した事は書かれていなかった。

 

精々が新しい艦娘が生まれた、ホウメイさんのラーメンが美味しい、土産の光子力煎餅が美味かった――そんな雑事を仰々しく語っているだけで、半ば食べ歩きレポートの様相だ。

仕事の無い俺がサボってるだの窓際閑職だの、青葉さんに愚痴ってしまった給料下がるような話は一切書かれておらず一安心。猫吊るしをタオルで拭きつつほぅと息を吐いた。

 

「提督っ! おはようございます、今日は何を――って、どうしたんですか?」

 

そう元気よく部屋に入ってきた五月雨さんが俺達の様子を見て首を傾げた。どう説明すべきか考えたが、とりあえず雑誌を差し出し丸投げておく。俺の特技は遠投です。

当の五月雨さんは言われるがまま開かれたページに目を通し、何となく察してくれたようだ。ふむふむと頷きつつ、何故か慎重にこちらの様子を窺って。

 

「……えっと、提督ですら秘匿の心配をする程、この鎮守府には知られちゃまずい秘密がある……ので、しょうか」

 

違った。何か真面目な方向に勘違いされていらっしゃる。

というか「提督ですら」の部分に決して褒められない信頼感が見えた気がするのだが、俺は泣けば良いのだろうか。

 

……いやまぁ、彼女の言う事もあながち間違っていなかったりするけども。

 

「え……やっぱり曰くとか、あるんですか……?」

 

そんな俺の呟きを聞き取ったのか、五月雨さんの慎重の中に僅かばかりの好奇が灯る。怖いもの見たさというやつだろうか。

 

まぁ、とにかくあれだ。簡単にいえば、ここは沢山のよく分からん物の入れ物なのだ。

まだ深海棲艦というよく分からん奴らとの戦いが始まったばかりの頃。俺達人間はそれに対抗するため、大量のよく分からん物を生み出した。

オーバーズシステム?とかシロガネドライブ?とか、何か知らんが当時は優秀なオツムが多く、結構大層な物が開発されてたらしい。結局はその前に艦娘という存在が確立してしまい全ボツになった訳だが。

 

で、そうして生み出しかけたよく分からん物達は、当然日の目を見ること無く殆どが廃棄される運びだったのだが、それは勿体無いんじゃねーのと貧乏性の誰かが言った。

そうしてその気になったら研究再開してみよっか的な感じになり、現状出来上がっちゃってた物全てを一箇所に纏め、光子力とかいうこれまたよく分からんものでラップしたのである。いやー、フワッフワ。

 

「そ、それがここなんですか? といいますか、どうしてそんな場所に鎮守府を……」

 

何かいい感じの土地だったから、貧乏性ついでに鎮守府もおっ建てたらしい。まぁ俺以外の提督が着任してない所を見ると、無駄金使っちまった感が半端ないけど。

俺が言うのもなんだが上から下まで適当な事極まりなし。そう言ってカラカラと笑っていると、ではどうして俺はここに来たのかと問いかけられた。

 

いやこちらとしては辞令でとしか答えられないのであるが――まぁ、何となくその理由は分かる。きっとやたら疑問をそのままにしたがる適当加減を買われたのだろう。

下手にやる気あったり野心とかあるとほら、何か掘り起こして変な事やらかしかねんし。例えば同期のダイゴウジとかエスカルゴンとか、悪い奴じゃないけどぜってーロクな事しねーよあいつら。

 

「……あの、それって大丈夫なんですか? 私に話しちゃったりして……」

 

良いんじゃないの別に。情報統制受けて無いし、特に問題ないさ。なぁ?

 

そう猫吊るしに目を向ければ、奴は青葉山の雑誌を大きく広げていた。そして指差したるはある一文、「特に情報の少ない光子力鎮守府という秘境が……」。

……おっとー? やっぱ秘密にしといた方が良いかもしれない。察した俺は慌てて五月雨さんの肩に手を添え、脂汗と共に他言無用を念押しする。

 

「……あ、これって二人だけの秘密ですよねっ?」

 

すると何やらニコニコ顔になった五月雨さんだったが、隣で自分の顔を指差す猫吊るしの姿が見えないのだろうか。

ともかく秘密にしてくれるようで一安心。ついでに賄賂の意味も込め、秘蔵の高級茶葉をご開封。

 

……しかし、あれだな。振り返って思ったが、そりゃまともな艦娘さんなんて出る訳無いよねぇ。俺はしみじみ思いつつ、ヤカンの火を入れた。

そろそろオサレなポッドに買い換えるかなぁ。

 

 

「――ステルス戦艦、ヘルズゲート・アタッカーでーす! にゃ~んと科学と魔導の愛の子! ラメ入りペプシマンですら穴だらけにする凄い子だけど、この姿だと満足に性能発揮できませ~ん! ふざけんなコラ!」

 

「――スタンドアローン・スペースシップ、ダッカー号。種類としては突撃艦や強襲艦とかになるのかな? まぁ、よろしく頼むよ」

 

はい。いや、はいじゃないが。

とりあえず一気に4ドックでの建造を行い資材をすっからかんにした13日後。内2つのドックから出てきた彼女達は、それはそれは個性的な格好をしていた。

 

まずヘルズゲート・アタッカーちゃんというごっつい名前の少女。まるで魔女のような羽飾りの付いた帽子とマントを身に纏う、やたら騒がしい女の子である。

腰に差しているのは……フルーレかレイピアか、艦娘としては珍しく刀剣武器を携えているのが目に付いた。そういうのは時の政府寄りな気もするが、まぁ細かい事は言うまい。

それより魔導だとか性能発揮できないとか、そっちの方が気になる。特にラメ入りペプシマンの下りとか意味分かんなくて逆に興味あるわ。

 

……んで、お次のダッカー号さんだが、こちらは最早人間かどうかも疑わしい風体だ。

やたらメカメカしいSFチックな衣服。その隙間に覗く肌は灼熱に炙られたかのような赤みを持ち、黒と青の二色しか無い眼球の他に額に大きな眼が一つ。宇宙人と表現するのがしっくり来る感じである。

それにスペースシップとかいってたし、ひょっとしてこれガチな奴かな。ああ、うん。火星がどうのこうの言ってた夜明けの船さんが居るからね。今更だけども。

 

まぁそれはそれとして、俺も彼女らに自己紹介やら何やら話しつつ執務室へとご案内。

遠征任務に就いているボクっ娘二人とユーチャリスちゃん、ダナンさん以外のメンバーと一足お先の顔合わせである。

 

「新しい仲間の方ですね、よろしくお願いしますっ!」

「わぁ! 見て見てBちゃん、目が3つあるよ、3つ!」

「ゲキ・ガンガーに似たような人居ましたね。ともあれよろしく」

「何の知類か分からんね。ま、今の私は天辺じゃないから試験はパスだ。これからよろしく頼むよ」

 

言わずとも分かるだろうが、上から五月雨さん、ナデシコさん、ナデシコBさん、夜明けの船さんの順だ。

やはり特殊な外見をしているダッカー号さんが珍しいのか、ひっきりなしに話しかけている。しかしそこに嫌悪というか、そう言った感情は無く、何らかの覚悟をしていたらしい彼女は目をパチクリとさせた。

 

「あ、ああ、どうも。……何か調子狂うな、素直に受け入れられるのは」

 

艦艇時代、素直に受け入れられない事があったのだろうか。まぁ仲良しなのは良い事だ。

片やヘルズゲート・アタッカーちゃんも特に問題なく受け入れられたようで、特にナデシコさんとの相性が良さそうだ。そわそわと彼女の周りをうろつきつつ、キラキラと目を輝かせている。

 

「にゃ~ん……それってバリア? エネルギーフィールド? ねぇねぇ」

「え? うん、ディストーションフィールドって言うの。空間を歪曲させてるとっても凄いバリアなんだよ!」

「ほーほーにゃ~る……ちょっと突撃してみておk?」

「おけ? ……オッケー!」

 

――バッ、と。そんな意味不明の提案を聞いた瞬間ナデシコさんは大手を開き、ヘルズゲートちゃんの艦装が展開した。

導力炉より溢れ出る燐光の全てが推進エンジン部分へと集合。その回路を焼き付かせながら鮮烈なるプラズマ電光を発生させ――いや、何してんの君たち。

 

「いやっふゥーーーー!! ワタシバリアに突っ込むの大好きぃぃぃぃぃッ……!!」

「いよーっし、バッチコー――!」

 

俺が止める前にヘルズゲートちゃんは奮進炎を上げて突撃し、バリアに激突。数秒だけ火花を立てて拮抗、後、音を立ててバリアをブチ抜きナデシコさんの豊満なバストに飛び込んだ。

しかし当然ながら爆発的な推進力がそれで収まる筈もなく。彼女達は二人仲良く音速を越えた速度ですっ飛び、壁に人型の穴を開けつつ外へとフライハイ。

 

無茶苦茶しやがる。俺も衝撃波にフラつきつつ慌てて彼女達を追って壁穴を覗き込み――「あいたたた……」背後に何とも形容しがたい音を立てて二人が落ちた。どうやらボソンジャンプで未来から帰ってきたらしい。

 

「わ、だ、ダメですっ!」振り向く直前、そう五月雨さんに目隠しされた辺り、おそらく中破か大破にはなったのだろう。

ともかく一体何が起こったというのだ。とりあえず猫吊るしに入渠申請の書類を書かせながらヘルズゲートちゃんに問いかければ、何でも彼女はバリアを貫く事に全身全霊をかけるタイプの女の子なのだそうだ。意味分かんねぇ。

 

「にゃ~ん……ナデシコさん、ごめんね? バリア見るとつい抑えが効かなくなっちゃって……」

「だ、大丈夫大丈夫。ナデシコ級はナナフシ以外じゃ墜ちません、ぶいっ!」

 

幸い当事者達に引っ掛かりは無いようで安心したが、だからと言ってこれは無いんじゃなかろうか。

ヘルズゲートちゃんにやるなら外でやってねと軽く言い含めていると――夜明けの船さんとダッカー号さんのやたら真剣そうな会話が聞こえてきた。

 

「中々の突撃じゃないか……安全性無視すりゃ私超えてるかもしれないねぇ」

「ええ、ボクもゲスジャークに溶岩にと数々の突貫をしてきましたが、あそこまでの凄い特攻は……」

 

艦娘さんって皆こんなのばっかりなのかな。確かに特攻作戦とかよく聞くけどもさぁ……。

 

いや、今はそんな事は良い。とりあえず早い所直してきなさい。

俺はナデシコBさんに二人をボソンジャンプで入渠の付き添いを頼み――え? バリア的なもんが無いと危ない? ヘルズゲートちゃん持って無いの? ああ、あるんだ、じゃあ良かった――送り出すと、この場に居る皆総出で部屋の掃除を開始する。

さて、まぁ、ともかくとして。何とも個性的な娘が来たものだが、皆と上手くやれそうでよかった。執務室に開いた美少女型の穴を掛け軸で隠しつつそう頷いた。

 

……もしかして五月雨さんにも突撃願望とかあったりするのかしら。

ふと思い立った俺は五月雨さんに向かってナデシコさんよろしく手を開いてみた。彼女より先に猫吊るしが飛びついてきた。

お前じゃねぇよ。いや抱きしめるけども。

 

 

ヘルズゲートちゃん達二人は、残りの四人ともおおよそ問題なく打ち解けたようだった。

何故かイオニアちゃんがダッカー号さんの姿を見て臨戦態勢に入った一幕もあったが、仲間だと分かるとすぐに態度を軟化した。「何がフラグかなぁ」とか何とか言っていたが、さて。

 

とりあえずチーム編成をどうするかな。

四つ動かしたドックの内残り二つはまだいつ完了するかも分からんし、どんな娘が来るかもまだ分からん。まぁ焦って決める事も無いか。

 

なので腕鳴らしも兼ねて、適当な海域を回ってみる事にする。試しに夜明けの船さん、ヘルズゲートちゃん、ダッカー号さんの三人で突撃パーティーを組んでみたりして。

 

『野郎ども! 私に続きなァ、突っ込むよ!』

『にゃんッだコラー! ワタシは女の子だってばYO! さておき臨界暴走大突撃ィィィ!』

『ボクが先頭の方が良いと思うんだけど――まぁ良いか。ドリル展開、二人に続くよ!』

 

まんま海賊じゃないか。

後でバンエルティア号ちゃんもこの輪の中に入れてみるかなぁ。食堂でワンダフルラーメンを啜りつつそんな夢想をする日々である。

 

「……にしても結構人増えたっすね、ここも」

 

そうして空になった丼を置きあー美味かったと小さくゲップをしていると、何時の間にか近くに来ていた天河くんがそう言った。

その後ろには本日非番のユーチャリスちゃんが連れ添い、彼の服の端を握っている。まるで兄と妹と言った風情だ。

 

で、なんだっけ、ここが賑やかになったって話か。まぁ最初の一ヶ月くらいは妖精さんと設備勤めの人除けば五月雨さんと俺の二人しか居なかったからね。それに比べれば賑やかにもなっただろう。

 

「俺らなんて昼時でも暇してましたからね、あん時に比べりゃ大分忙しいですよ。まぁ今でも手空きの場合多いすけど」

 

ホウメイガールズなんてあんまり暇すぎてアイドルやってますからね。そう言ってテレビを付ければそこにはヒルナンデスに出演中の彼女達の姿。マジかよ。

 

「これって他のとこも同じ感じなんすかね」天河くんが何気なくそう質問するが、多分違うと思う。

風のうわさでは、他所の鎮守府は周期的に行われる大規模進軍に熱を上げる提督が多いらしい。そしてその準備として資材集めに練度上げにと日々てんてこ舞いなのだとか。

俺も一回だけ参加してみようかなぁと思った事があったが、当時はナデシコさん達が居なかった為に早々に諦めた。流石に五月雨さん一人ではあらゆる意味で不可能だったもの、あれ。

 

当時のヒーコラ言っていた頃を思い出し遠い目をしていると、ユーチャリスちゃんが静かに丼を回収していく。どうやら天河くんの力になるべくお手伝いをしているようだ。

 

「……ああ、ユーチャリスっすか? 良いって言ってるんすけど、どうしてもって。まぁ、ホウメイガールズ居ない時は助かってるけど――うおッ!? ちょ、何すか、おわッ!?」

 

相変わらず妬ましい男である。嫉妬の炎が導くままに彼の脇腹にチョップを突き込む。

 

それにしても、随分と楽しそうにお手伝いするもんだ。まっこと分り辛いが、ユーチャリスちゃんの纏う空気がどこか楽しげなものとなっている。

そうして辿り着いた厨房でホウメイさんに頭を撫でられ、気持ちよさそうに目を細めるのだ。これ戦うよりこっちの方が合ってるんじゃないか?

 

と言っても艦娘として呼ばれてくれたって事は戦うつもりであるのだろうし、俺が変に気を回しても余計なお節介となるだけか。

彼女の保護者的な立ち位置である天河くんやナデシコさんが何か言ってきたら、その時に改めて考えよう。俺は思考を放棄し、天河くん突きに精を出したのであった。

 

「……男を突いて精を出すって、なーんかホモっぽいなぁ」

 

すると少し離れた場所に座るアイテム屋さん(明石さんと言うらしい)がそう零したが、何言っとるんだアンタ。俺は手元にあった濡れタオルを遠投した。

 

 

そういや装備の開発ってやった事無いな。その事に気がついたのは、とある護衛任務に遠征部隊を送り出し一息ついた後の事だった。

 

イオニアちゃん、バンエルティア号ちゃん、ユーチャリスちゃん、そしてダッカー号さんとダナンさんの遠ざかる背を見てドラム缶持たせた方が良かったのかとふと思い、芋づる式に思い出したのである。

皆武装がイオニアちゃんを除き強力なものばかりだったので気に留めた事は無かったのだが、一つくらいは何か作った方が良いのだろうか。今更ながら検討する。

 

「そうですね。出来れば一回くらいやって頂けるとこちらとしても嬉しいのですが……」

 

通りすがりの大淀さんにもそう言われたし、やってみるかね。

俺は執務室に戻りかけたその足で工廠に向かい、妖精さんに声をかけた――のだ、が。

 

「こんなコトも! こんなコトもー!」

「せつめいを、せつめいをー!」

「ママ……つぎのやすみにもどるよ……」

「わかいモンはなっとらん! なっとらーん!」

 

ウリバタケ班長以下全ての妖精さんがてんてこ舞い。何やら残り二人の建造に手間取っているらしく、手の開いてる子は居ないようだった。一体どんな人が来るんだろう、逆に不安だわこれ。

ともかく、こんなんじゃまた後でにした方がいいかな。俺は少々の落胆を隠しつつ工廠を後にして、

 

「ひ、いひひひひぃ……ひひひひぃ! な、なにか、ごようかぁぁい……?」

 

片レンズのメガネを掛けた何となく不気味な妖精さんに声をかけられた。こんな子居たっけかな。まぁいいか。

とりあえずドクターと名乗るその妖精さんに装備開発の話を持ちかけた所、快く引き受けて頂けた。そりゃもうこちらが引く程に。

 

「ひひひひぃ! モテモテ回路ぉぉぉ! ドリルゥゥゥ! いひぃ! ぃいひひひひひひひぃぃぃぃぃ……!」

 

ドクターは高笑いを上げつつギュインギュイン回転するドリルを振り上げ、開発資材の山へ突貫。火花の雨を生み出し始めた。

へー、装備ってこんな風に出来るんだ。感心しつつ頷く内に、あれよあれよと装備完成。それはそれはいいキチ笑顔で出来上がったものを差し出される。

 

「超電ッ磁ぃぃぃぃ……すずらぁぁぁぁぁぁぁぁん……! ひぃぃぃぃぃっ! いひひひひひひひひぃ――!」

 

ドクターはそれだけ言うと詳細も何も説明せずに逃げるように立ち去った訳だが、超電磁鈴蘭って何だよ。ナントカナントカ式弾とか、そういうんじゃないのか。

俺は半ば呆然としつつ、渡された得体のしれない物を眺めた。うむ、見れば見るほどよく分からんな、これ。ホントに武器か?

 

「……にゃ~ん? 提督、こんなトコで何してんの?」

 

しげしげと眺め続けていると、突然肩口から声がして思わず背中を震わせる。

見ればヘルズゲートちゃんが好奇心を湛えた表情でこちらを覗き込んでいた。どうも暇して鎮守府内を散歩していたらしい。

 

そうだ、艦娘ならばこれが何なのか分かるかな。俺は彼女に振り返りつつそれを見せ――――。

 

「え? なになに、エロ本か何か――にゃあああああああああああッ!?」

 

――た、瞬間殴られる勢いでそれを毟り取られ、砲身に詰めたかと思うと超高速で射出した。当然超電磁鈴蘭とやらは空気分子との摩擦でプラズマ化。工廠の壁に大穴を開けた。は?

 

一体何してくれてんの! せっかく作って貰ったのにあんまりだ!

そう抗議の声を上げると、ヘルズゲートちゃんは人をも殺せそうな目でギヌロとこっちを睨む。あ、いえ、何でもないっす、ハイ。

 

「こ、これ作ったキチはどこいった!?」

 

その凄まじい剣幕にシュバッとドクターの消えた方向を指差すと、彼女はナデシコさんに突撃した時と同じく音速を越えた速度ですっ飛んだ

パァン! 空気の破裂する音と共に強烈な衝撃波が発生し、もんどり打って床を転がった。痛い。

 

――いひひひひぃ! いぃぃぃひひひひぃ……!!

――こんな所まで湧きやがってこのキチドクタァァァァッ……!!

 

……超電磁鈴蘭とは一体何だったのだろうか。腰を擦りながら思う。

とてつもない疑問が胸中に渦巻いたが、それが解消される事は無さそうだ。まぁいつもの事だから気にしねーけど。

 

 

何かダッカー号さんに気になる人ができたらしい。無論その相手は俺じゃないんだけどな。何時もの事何時もの事

 

ダナンさんから聞いた話だと、どうも先日の護衛任務の際に船に乗り合わせた小学校の教師といい感じの仲になりかけたそうな。話では難易度ノーマルプレイで9時間位のドラマがあったようだが、知るかそんなの。通りで帰ってくるまで時間かかった筈だよ。

これまでの娘達と違い「い、いやそんなんじゃないから!」と照れ臭さを滲ませている辺りまだ有情だろうか。しかしこれはこれで見ていてむず痒くなり、俺の嫉妬がマックスハート。

 

あんまりにも羨ましかったので腹いせに彼女単独で新しい任務を課してやった。

簡単な資源輸送の遠征任務。何かついでに目的地の近くに小学校があった気もするが、それは全く関係がないエレメントである事をここに明記しておく。ケッ。

 

「むぐっ……ええと、ぁ、ありがとう……」

 

良いからさっさとお行きなさい。俺は何故かこちらに礼を言うダッカー号さんをしっしっと執務室から追い払い、大きな羨望の溜息をつきつつ扉をバタム。

全く、この鎮守府には俺に対するフラグが足りない。そう憤りつつ猫吊るしを頭の上に乗せた、ら。

 

「わくわく」

「……わく」

 

何時の間にか部屋に居たナデシコさんとダナンさんが何かを期待する目でこっちを見ていた。

分かった分かった分かりました。俺は流れるように観念し、本日は休みと決定しお触れを出した。デートでもアプローチにでも好きに行くがよろしい。

 

「やったー! 行ってきまーす」

「すいません、では私も……」

「いきなり休みにするとは呑気なものですね……イオニアさん、一緒にどこか行きますか?」

「ふむ……ホウメイとでも話し込みに行くかねぇ」

 

……まぁ皆楽しそうだし、これはこれで良いか。三々五々に散っていく皆の笑顔に俺の嫉妬心が萎む。我ながら単純である。

 

そうして俺もバンエルティア号ちゃんとイオニアちゃんから一緒にどこか行かないかと誘われたが、残念ながらもう少しで新たな艦娘が建造完了する時間だ。

それを見届けるのが提督の仕事だと泣く泣く断り、皆を大手を振って見送った。部屋の残るのは俺と猫吊るし、五月雨さんの何時もの面子。

 

「…………」

 

…………。

 

「……えへへ」

 

…………。

 

……工廠、一緒に行く?

 

「はいっ! 勿論!」

 

 

 

 

例によって例の如く、工廠には妖精の死骸が散乱していた。

 

まぁドック4つを同時に動かした俺も悪いとは思うが、適度に休憩を取るよう休み時間とか設けていた筈なんだけども。

全員が全員どこか満ち足りた様子でミイラになっている辺り、きっとのめり込み過ぎて無視してたのだろうな。ありがたいやら呆れるやら、何とも。

 

とりあえず五月雨さんと猫吊るしと一緒に全員回収、纏めて医務室に放り込み、改めてドックを見る。残り時間00:00:00、どうやらちょうど完成していたようだ。

 

……だけどこれ、バンエルティア号ちゃんとイオニアちゃんを招いた3番4番ドックなんだよな。

また変わった娘さんが来るのかしらん。何となくワクワクしながらドックの開閉ボタンの前に立ち、4番ドックを五月雨さんと猫吊るしに任せ、俺は3番を解放する。

 

――プシュゥゥゥゥ……。

 

途端、同時に開いた扉から燐光と共に謎の煙が漏れ出した。今までに何度も見た艦娘さんの顕現だ。

俺はその眩しさに軽く目を眇め、不思議と高揚する気分のままにドックの中より現れる丸い人影に注視して…………。

うん?

 

「……丸?」

 

だよね。そこおかしいよね。しかしそんな疑問を相槌を返す間もなく光は払われ――そして、俺達の眼前にそれが姿を表したのである。

 

 

「――戦艦ハルバート。フフフ、いよいよ私も艦娘か……」

 

「――天かける船、ローアだヨォ。艦娘カァ、よく呼んでくれたネェ。ブラボー、ブラボー!」

 

 

「……ん?」

「……エッ? ゲェッ!?」

 

――何か格好いい仮面を被った青い一頭身と、魔法使いの衣装を纏った黒い一頭身。

 

ダッカー号さん以上に人間離れした容姿の上、何故かお互い睨み合いを始めた彼女達――声の感じからしてひょっとすると片方男か? 艦娘とは一体。

ともかくそんな目の前に展開された意味不明の状況に、俺と五月雨さんの思考は揃って機能不全を引き起こす。

 

いやぁ。確かに変わった娘が来る事を期待してた面もあったが、流石にこれは行き過ぎじゃないですかね。

その疑問に答えるように暇した誰かが光子力バリアを割る音が聞こえたが、何の意味も無かった。




何も考えずにね。ねっ。

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