六畳一間に魔王と勇者   作:ゲキガンガー

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どうも御無沙汰しております。

ちょっと仕事の方と体調の方で長らく執筆の方ができませんでした。
楽しみにして頂いている方いましたら誠に申し訳ありません。

作品を未完のまま投げ出すのは流儀に反すると思うので、最後まで書き上げますのでその点だけは安心してください。




第二章「魔王と魔王」③

 

「ほ、本当にこっちでいいの?」

「う、うん。確かこっちであってる」

 迷路のようなところをぐるぐるとさまよう。人気からどんどん遠ざかっていく。

「そう、確かこっちだった」

「ほ、本当?」

 どこかおかしい。美咲は何となくではあるが違和感を感じていた。誰かを追っているというよりは、どこかに連れて行かれているという感じがした。そして、その感覚というものは意外にも正しかったのだという事を、美咲は後ほど知らされる。

「え?」

 たどり着いた場所は広い空間だった。そこには神社があった。朽ち果てたような神社。随分と昔に建てられたが、すでにその存在は忘れられているのだろう。参拝に人が来ている様子がない。

「そう、私はみたの。行方不明者があの神社に連れて行かれるのを」

 おかしい。

 ・・・・・・・どうしてそこまでわかっているのならば彼女は助けないのだろうか。そこまでわかっていながら助けなかった理由。

 そんなもの唯一ではないだろうか。

 彼女が一連の誘拐事件のーー。

 そう、その事実に行き当たった。ただ、それは美咲自身もまた行方不明者の仲間入りを果たす予感がしただけだった。

「ねぇ・・・・・・・田村さん」

 そう、柳沢さんは言う。

「え?」

「どうして誘拐犯は誘拐をしていたんだと思う? 身代金が目的だったとしたら、そういう要求をするわよね。それとも要求が趣味だった、とか?」

「わ、わからないよ。そんな事・・・・・・」

「私は犯人には別の理由があったと思うの。それはそう、きっと。そうね、生け贄ね。それはきっと神や悪魔に捧げるような」

 急に怖い雰囲気になった。美咲は思わず後ずさる。

 そして、柳沢は迫ってくる。目が赤く光った。それは人の目ではない。きっと別の何かだ。

「そう、田村さんはその生け贄の仲間入りを果たすのよ。そう、素敵でしょう? ふふふ」

 そういって笑う。そして迫ってくる。

「い、いや」

「あっはははははは!」

 柳沢は壊れたように笑いだす。そして、何かの力を発動しようとした。

「やめろ!」

 突如。声がする。

「ちっ! 何者だ!」

「ーー何となく、定番のお約束シーンといった感じじゃのぉ。この前、ぼーっと見ていたテレビアニメでこのような展開をみた覚えがある」

 と、やる気がなさそうに魔王。

「お前は少しはやる気をだせ。ネトゲ取り上げるぞ」

「仕方ないの。ネトゲの為に本気を出すか。ネトゲの為に」

「貴様等、一体何のようだ?」

「質問に質問で返すのはどうかとも思うが、それはこちらの台詞じゃ。貴様、誰の差し金でこのような真似をした」

「ーーそれは」

「まさか自発的に行っていたわけではあるまい。ただの女子生徒が誘拐事件をそれも連続して起こすとは思えない。裏から誰かが操っていると考えるのが妥当じゃ」

「ーーそれじゃ」

「それも恐らくは、こちら側の世界の存在ではない。違う世界の存在じゃ」

「なんだと・・・・・・って事は俺たちと同じ存在。ここではない、別の世界から来た存在って事か」

「恐らくはだがーー」

「くっ」

 少女ーー柳沢は想定外の自体に戸惑いを隠せなかったようだ。

 ーーしかし。

 突如、明後日の方向から黒い光が差し込んできた。

「なっ!」

「上出来。そう、もう上出来。木偶にしては上出来だわ。木偶、その役目を解いてあげる」

 突如、空から声が聞こえてきた。

 すーっ。

 柳沢の目から急速に光が失われた。

 バタン。

 そして突如、地面に崩れ落ちた。それはまるで、いや、糸の切れた操り人形そのものだった。

「柳沢さん!」

 美咲は崩れ落ちた柳沢に駆け寄る。そして抱き抱える。完全に意識を失っていた。

「何者じゃーーと問うまでもないが」

 空から現れたのは少女だった。ふわふわとした服。まるでフランス人形のような格好をしている。幼女と少女のどちらとも言えない位の齢に見えた。白い肌、そしてウェーブがかった髪。怜悧な表情は人間味というものを感じさせなかった。

 そしてその傍らにいるのはタキシードのような服を来た男だった。こちらは青年といった程度の年齢に見える。だが、まともな人間であるとは思えないので、実際のところは不明である。

 どことなく、その男からは執事のような印象を受けた。

「お久しぶりですね。お姉さま」

 少女はスカートの裾を持ち上げ、律儀に、そして優雅に挨拶をした。

「なっ!」

 勇者は驚きを隠せなかった。

「お前、妹がいたのか?」

「うむ・・・・・・・そういえば、いたな。忘れておった」

「忘れるか普通、そんな事」

「うるさい。色々とあったんじゃ。色々と」

 魔王の妹という事は、少女ーー彼女もまた魔族である事だろう。

「久しぶりだな。妹よ。確か名はレヴィアタンといったな」

「ええ。そうですわ、お姉さま。レヴィアはお姉さまに再び出会え、大変嬉しく思っております」

「そうか。余は毛ほども嬉しいとは思ってないが」

「そんなお姉さま。つれないですわ」

 そう軽い笑みを少女ーーレヴィアは浮かべる。さほど気にしていない様子だった。そんな事どうでもいいのだろう。

「ーーさて。それより聞きたい事が山ほどあるのじゃが」

「はい。なんでしょう? お姉さま」

「まず、先程放っていたのは魔力じゃな?」

「はい。さようでございますが、なにか?」

「この世界に魔力は使えないはずじゃ。魔素(マナ)が存在せぬのだからな。いわば、酸素のない状態で火を起こそうとするようなものじゃ。燃料がなければいくら熱を放っても、火は起こらない。しかし、なぜ貴様は魔力を使う事ができる」

「お姉さま、少し考えればわかる事じゃありませんか? この連続誘拐事件、わたくしが道楽で起こしたとでもお考えですの?」

「そうじゃな。そういわれればそうじゃ。理由があるとするのが普通じゃ」

「そう、全ては簡単な事。この世界には確かに魔素(マナ)がありません。しかし、それは表向きの事。わたくし達はこの世界にも魔素に非常に近しい存在がある事を発見しました。そう、それは人間の生きる力、命といってもいい存在です。その力を奪い、蓄えれば魔力を使う事が出来る。その結論に至ったのです」

「そしてこの誘拐事件を起こしたのか?」

「はい。さようでございます。何か問題でもありますか? 魔王だったお姉さまからすれば、この程度の事、ただの戯れに過ぎないと思いますが。それともこの世界に来て、随分とお甘くなったのでしょうか? くすす」

 そういって笑う。

「・・・・・・そうか。それで、もうひとつの質問をいいか?」

「はい。なんでしょうか?」

「なぜこの世界に来た? 余を連れ戻しにでもきたのか?」

「いえ。違いますわ、お姉さま。なぜそのような事をわたくし達は、しかもこんな回りくどい方法でしなければならないんですの。答えは簡単です。あなたの存在があると迷惑なんです」

「迷惑?」

「あなたーー前魔王であるルシファーは勇者と共倒れになった。ユグドラシルではそういう事になっているんです。それはわたくしとしましても非常にまずい事なのです。そう、ユグドラシルの支配権は新なる魔王であるわたくし、レヴィアタンのものとなったのです。そうですよね? ベルゼバブ」

「はい。その通りです。ユグドラシルの新たな支配者はレヴィアタン様のものとなりました」

 そうかしづき、ベルゼバブは答える。

「そう。そうなのです。しかし、どうやらかつての魔王であるルシファーはどうやら異世界に紛れ込み、存命している様子。それはわたくしとしましても、非常にまずい事なのです。ユグドラシルに支配者は二人もいらない」

「余を消しにきたという事か?」

「まあ、つまりはそういう事ですね。ご理解いただけたでしょうか。そして、それはさほど難しい事ではありません。魔力のないあなたを消す事など魔力さえあれば簡単な事です。そう計画し、わたくし達は人間を集める事にしました。そして、命の力を集め、魔力へと変換していったのです」

「・・・・・・そうか」

「そうですわ。さぁ、お姉さま! ここでその存在を跡形もなく消してさしあげますわ!」

 魔力が増大していっている。

「くそっ」

 勇者もまた、かつての力を失っている。打つ手は既に存在していなかった。

 ーーしかし。くるべき衝撃はやってこなかった。

「どうやら、邪魔が入った様子」

 そう、興がそがれた様子でレヴィアタンは言った。

「それではお姉さま、次に会う時が命日となる事でしょう」

 そう霧を放ち、レヴィアタンとベルゼブブは姿を消そうとした。

「まて! またんか! コラ!」

「馬鹿! 見逃してもらってるのに追いかけるな!」

「くっ、人を小馬鹿にしおって、我が妹ながら腹が立つ奴」

 魔王はさぞ立腹した様子だった。

 程なくして、なぜレヴィアタンが姿を消したのかが判明した。

 どうやら周辺を警備していた警察が駆けつけたのだった。

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