しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
第三章「魔王城現る」
「ちぃっ! くそ! この愚図め! なにをやっておる! 余が死んでしまっただろうが!」
魔王ルシファーはまたもやパソコンの前にかじり付いている。勇者はそれを遠目に眺めているだけだ。だが、いつもの様子とは異なっている。
なんだか銃のようなもので撃ち合っている。勿論、ゲームの中での話ではあるが。
「何をやってるんだお前は?」
「うるさい! 気が散るだろうが! くそ、死んでしまったろうが! あーっ、もう」
魔王はそういってうなだれた。どうやら負けてしまったらしい。
「勇者よ。少しは気をきかせんか。余はコーラが飲みたい。ついでに肩をもんでくれんか?」
「俺はお前の召使いかなにかか!」
「いっ、いたい! 何をするか、余の頭をぐりぐりするな! 痛いではないか!」
勇者はぐりぐりとする。ぐりぐりと。
ちなみに魔王がやっていたのはFPSというゲームである。どうでもいい話ではあるが。
「まったく、呑気にしてる場合か!」
「ふん。この数日、何もなかったのではないか。きっと余の事を見逃して元の世界ーーユグドラシルに帰ったのだろう」
「それはあまりに楽観的すぎるだろう」
「ーーそうじゃな。それに、なんだかよくない気配を感じる」
「気配?」
「そう、気配じゃ。なんだか良からぬ事が起こる気配がする。そう、力が一カ所に集まっている気がする」
「あの二人の仕業か?」
「わからん。だが、そうと考える方が自然じゃろう。それより、貴様も何か対策を考えてこんか! このままでは余達はただの犬死にになるぞ」
「わ、わかった。考えてくる」
勇者はそういって外に出た。
外に出たはいいが、する事などない。仕方なく歩く。
歩く事は思考をまとめるのに役立つ。考える時は立ち止まっているよりも歩いた方が効率的だ。
ただ散歩しているだけでは埒があかない。勇者が向かったのは古書店だった。少しは何か役に立つ情報があるかもしれない。
そこには伝記だとか、民俗学が書かれた本がいくつか並んでいた。
しかし、どれも役に立ちそうな情報が載っていない。
だめだ。このままでは。
いや、ひとつだけ方法はある。ひとつだけではあるが。
だが、それは敵がやっている方法と同じではないか。そんな非道な真似、かつての勇者であった自分が出来るはずがない。するべきではない。
何か方法が。
そんな時、ひとつのページが見についた。写真だ。それは剣の写真だった。そこには一振りの剣が映っていた。ある神社の祠に展示されているものらしい。普通、日本の剣というのは刀である。そこに映し出されているのは西洋刀だった。不自然だった。
何よりそれは勇者にとっては見覚えのある剣だった。
それはエクスカリバーと呼ばれる剣だった。
そう、あの時、魔王との最終決戦で使い、どこかに消えていった剣である。恐らくは次元の狭間に吹き飛びこの世界に流れ着いたのだろう。
あの剣には魔力が蓄積されている。
そう、それがあれば勇者はかつての力を使う事ができるはずだ。
一筋の光明が差し込んできたような、そんな気分だった。
勇者は必要な情報をメモし(買うお金がない為)勇んでそのアパートに戻った。