もうしばらく続きます。
「あっ、菊池さん」
アパートに帰ってきた時の事だった。美咲が掃き掃除をしていた。
「美咲ちゃん」
勇者ーー誠司は肩で息をしながら帰ってきた。
「どうしたんですか? そんなに急いで」
「ちょっと急用があって」
「急用?」
美咲は首を傾げる。
「そうだ。美咲ちゃん」
「はい? なんでしょうか?」
誠司は一枚の紙を見せる。
「ーーこの神社、どこにあってるか知ってる?」
「神社ですかーーこれは。ああ、ここから近くの神社です」
「どっちの方角?」
「えっと、ここから南西に五キロ程いったところです」
美咲はその方角を指さす。
ーーと。
ゴゴゴゴゴ。
突如、地震と同時に地響きがした。
「きゃっ!」
倒れそうになる美咲を勇者は支える。
「大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます。大きな地震でしたね」
「やっときたか! この馬鹿者! のろまが!」
そう、珍しく外に出てきた魔王が言った。
「どうしたんだ?」
「いいから、部屋に入ってみろ。そしてテレビを見るがいい」
「テレビ?」
「いいから!」
魔王に手を引っ張られ、勇者は自室に戻った。
「これを見て見ろ!」
そう、魔王は
それはテレビの緊急放送だった。
突如、街の真ん中に大きな柱のようなものが立っていた。いや、それは柱というよりは塔だった。大きな建造物。しかし、それは明らかにこの世界の物質でできたものではなかった。アナウンサーが慌てた様子で実況をしている。
そしてそれは勇者にとってもなじみのあるものだった。
「魔王城・・・・・・・・どうしてこんなことに」
「恐らくは魔力を使い、次元の壁を破ったのであろう。やつめ。レヴィアタンめ。ユグドラシルだけではなく、この世界までも支配しようというのか」
あきれた感じで魔王ルシファーは言う。
そしてどこかへ向かおうとする。どこか、というのは正しくない。魔王城へ向かったのだ。
「待て、どこにいくつもりだ!」
「決まってるだろう! 愚妹を止めにじゃ!」
「お前は魔力を切らしているんだろう。そんなことしても返り討ちに合うだけだ」
「ーーしかし、余が向かうしかなかろう。他に手段がない」
「どうしてお前が行くんだ? かつてユグドラシルを滅ぼそうとした魔王であるお前が」
「確かに、余はユグドラシルを滅ぼそうとした魔王じゃった。しかし、この世界に来て素晴らしい出会いがあった。そう、ネトゲとか、ネトゲとか、ネトゲとか。そう、ネトゲとか」
ネトゲしかなくないか。そう脳内でつっこみたくなる。
「さらには食べ物もおいしく、住みよい。そして優しい人々もいる。そう、余はこの素晴らしい世界を壊したくない。そう強く思ったのじゃ」
「ーー止めても無駄みたいだな」
「ああ・・・・・・ネトゲーーいや、この素晴らしい世界の為に余は向かおう。そう、決戦の地、魔王城に!」
「・・・・・そうか、ネトゲの為か」
「また会おう勇者よ。再び会った時、また贅沢三昧でぐーたらな生活を遅らせてもらおう。さらば! 勇者よ!」
魔王は魔王城へ向かった。
ーーともかく、勇者もまた別の場所へ向かうことになった。
ーーしかし、その時勇者は使い魔により、自分たちの行動が筒抜けになっていたということを知る由もなかった。