「レヴィアタン様」
そこは魔王城の中核だった。真っ黒な空間だ。その中、王座に座っているのはレヴィアタンだった。体が小さい為、えらく不釣り合いな様子だった。
「……どうした? ベルゼブブ」
かしづいたような格好になるベルゼブブ。
「はい。実は一応でありますが、連中に使い魔を放っておきました」
「ほう。それで?」
「何やらよからぬ事を考えている様子。かつて勇者だったものはこことは異なる場所へ向かっています。そして、あの魔王、いえ、元魔王ルシファーはこちらに、魔王城へ向かっています」
「そうか……全く馬鹿な姉ですね」
くすくすと微笑すら浮かべるレヴィアタン。
「何か策があるのかもしれません」
「まあ、そう考えるのが打倒なところでしょうね。無策で突っ込んでくるとは考えづらいです。ベルゼブブ、策を打ちなさい」
「はい、了解しました。魔王レヴィアタン様」
そういって、ベルゼブブはどこかに姿を消した。
「はぁ……はぁ……」
勇者は駆け上がる。そう、美咲に教えてもらった神社の方へ。
「後もう少しだ……」
そう、後もう少しで神社へたどり着く。その神社にはかつて勇者が愛用していた聖剣エクスカリバーがある。
それを手に入れられれば、勇者はかつての力を取り戻す事ができるはずだ。
「はぁ、はぁ」
なんとか頂上までたどり着いた。
ーーと。
突如、空間のねじれのようなものを感じた。今の世界と異なる世界が繋がる。
「まっ、まさか!」
唐突にそいつは姿を現す。
ライオンのような頭。ドラゴンのような頭。
キメラだ。
何度となく闘った、勇者にとっては馴染みのあるモンスターだ。
「偶然か! ……いや、偶然というにはタイミングが良すぎる」
作為のようなものを感じる。明らかに作為的なタイミングだった。
「そうだ! その通りだ!」
どこからか声が聞こえる。
「き、貴様は!」
声は聞こえる。あのベルゼブブとかいう男の声だ。
しかし、声だけだ。どうやらその場には居合わせていない様子だ。
「私達はお前達の事を見逃したわけではない。力を失っているとはいえ、危険人物には違いないからな。使い魔を放っておいたんだよ。お前たちに気づかれないようにな」
見ると、鳥が一匹空を待っていた。仕込んでおいたのだろう、使い魔として。
「どうやらよからぬ事を考えていると思ってな。このキメラを召喚しておいたんだよ。どうだ? 勇者よ。かつての力を失った貴様には十分すぎる程の脅威であろう。もはやお前の相手になど、この私が出向く必要などない」
「くそっ」
勇者は吐き捨てる。
「グガアアアアアアアアアアアアア!」
キメラが奇声をあげてこちらに飛びかかってきた。
絶体絶命のピンチだった。