放っておくと未完のまま終わってしまう可能性がある為。
今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
「くっ」
魔力をつかえない魔王は早速苦境に陥っていた。
まず最初に現れたのはガーゴイルだった。よく石造に化けているモンスターだ。
普段なら何て事のないモンスターも今の魔王にとってはいかんともしがたい難敵となる。
瞬く間に窮地に陥った。
「く、……これまでか」
「ふふふふ……なんてざまかしら。何か策でもあるのかと思ってきたら、なんて無様なのかしら。お姉さま。くすくすくす」
「貴様は――レヴィアタンか」
嘲笑と共に現れたのはレヴィアタンだった。
「無策で突っ込んでくるなんて……頭がどうかしているんじゃないですの? お姉さま」
「ふん。わざわざ余の前に現れてくるとは。これこそが余の策だとは思わんか? 無策を演じて油断を誘う」
「まさか……そんなわけがないでしょう。そんなもの見苦しい言い訳ですわ」
そういって、嘲笑をする。
「まったく、私たちがヒントを与えたではないですか。この世界には確かに魔素は存在しない。しかし、奪えばいいのです。人間の命を。てっきり、あなたも同じ事をしてくると踏んでいたのですか。見当違いですね」
「ふん。見当違いだったか。そいつは残念じゃったな」
「ええ。随分と甘くなられた様子」
「……そうか、余は甘くなったか」
「ええ。甘いですわ、お姉さま。そんな甘いお姉様はやはり魔王には相応しくありません。魔王の座はお姉様ではなく、やはりこの私、レヴィアタンにふさわしい」
「ぐっ」
「このような下級モンスターにやられるなどかつての魔王の名折れ。私――新たな魔王であるこの私、レヴィアタン自らの手で介錯してさしあげますわ」
そういったレヴィアタンの手は突如、剣のような形状となる。鋭利な刃物そのものになった。
「――さて、最後に言い残す事はありませんか?」
「――そうじゃのう。もっとゴロゴロしてネトゲ三昧の生活を送りたかった」
「ふっ。元魔王にしてはさえない台詞ですわね。安心していってください。あなたを始末した後、この世界もユグドラシルも私が掌握し、真の支配者、真の魔王になってさしあげます」
そういって、魔王は剣を降り下ろそうとした。
――と。
キィン。
という甲高い音がした。
「……なんともお約束な展開じゃの」
あきれたような口調で言った。レヴィアタンの刃を突如現れた勇者は受け止めた。その手には聖剣エクスカリバーがしっかりと握られている。
「……なんとか間に合ったか。無事か? 魔王」
「無事に見えるか? 見えたら眼科にいけ」
「……その通りだな」
そうって勇者は笑う。
「貴様は、勇者……なぜです? なぜ敵であった魔王を庇うのです?」
「……さぁ、なぜだろうな」
「ちっ。ベルゼブブのはず、対策はしているといったのに、どういう低落ですか。あの役立たずめ。いったいどこで何をやっているのです。どうでもいい時はいて、必要な時いないなんて、従者としてなんたる愚劣さ」
「御託はいい。さっさと始めようぜ」
勇者の力は完全に戻っている。そう、今なら魔王といえども遅れを取りはしないだろう。
こうして、最後にして最大の闘いが始まった。