しばしお付き合い頂ければ幸いです。
「くっ」
それは長く、拮抗した闘いだった。幾多もの攻撃の応酬が続いた。時には剣を用い、時には魔法を使い。闘いは互角かと思われた。しかし、長い闘いの末に、その拮抗は破れた。
レヴィアタンは膝をつく。勇者もまた満身創痍ではあるが、勝負は決しようとしていた。
「どこにいるのです?ベルゼブブ・・・・・・・なにをやってるのですか!」
もはや力なく、助けを求めるよりなかった。
「ーーまったく、思ったより使えないな、この小娘は」
カツカツカツ。
遠くから足音がする。
現れたのはベルゼブブだった。姿形は今まで通りだが、どことなく、高圧的な雰囲気を放っている。今まではおとなしく付き従っていたのだが、態度が大違い、正反対とも言えた。
「なんです? いまなんとおっしゃいました」
「使えないと言ったんだよ、使えないと。小娘。何のために俺がお前に幼少の頃から付き従っていたと思っている?」
「な・・・・・・・」
「お前みたいな小娘に誰が好き好んで付き従うか。お前は先代の魔王の血を受け継ぐものだったからな。魔王ルシファーが亡きものとし、お前が魔王として王座についた時、暗殺をしてやろうとかねてから計画していたんだ。しかし、とんだ邪魔が入ったようだな」
そういって、ベルゼブブは不適に笑う。
「ーーなんだ、その余裕の表情は?」
そう勇者は聞く。
「なに、簡単なことよ。どの道、この小娘ーーレヴィアタンは俺が殺す予定だった。そして、魔王ルシファーもな。それに、勇者よ。お前もまたレヴィアタンと闘い消耗しきっている。倒すのは簡単だろうよ。この世界の言葉でいうと『漁夫の利』ってやつだ。はっはっはっは、はっはっはっは!」
そう高笑いをする。
「ただ、ネズミ相手だったとしても俺は全力を尽くす主義でね。見せてやる。この魔王城の新の姿を!」
「なっ!」
闇の底から何か不気味な力が流れ込んでくる。黒い霧に包まれていく。
それはそう、魔界。この世界自体を魔界に変えていっているのだ。
魔素で満ちていく。
「そしてこれが私の本当の姿だ!」
ベルゼブブの体が膨張する。膨れ上がる。体積が何十倍にもなる。
それは巨人だった。
不気味な巨人だ。
「どうだ? これが私の本当の姿だ。この姿で貴様たちをひねりつぶしてやろう」
そう、真の姿になったベルゼブブは笑う。
「くっ、ここまでか」
勇者は死を覚悟した。
「逃げろ、勇者よ」
魔王はベルゼブブに立ち向かう。
「なっ、死ぬ気で逃げる時間を稼ぐ気か」
「馬鹿が、そんなわけあるか。いいから逃げろ、レヴィアタンをつれて」
「しかし」
「いいからいかぬか、この馬鹿者が!」
魔王に気圧され、勇者は駆けだした。もはや意気消沈してしまったレヴィアタンを抱き抱えて。
「死ぬなよ、魔王」
「ーーなに、心配するでない」
そして、魔王ルシファーはベルゼブブに立ち向かっていった。
「ふはっははっは。まさかあの魔王だったあなたが自ら身を呈して時間を稼ごうとは」
「ーーおかしいか?」
「はっはっはっは。たいそうおかしいです。いえ、しかしまあ、ただの無駄死に終わりますが」
「ーーそうか。しかし余はそうなるとは思わんがな」
「ーー何を根拠に」
「馬鹿が、まだわからんか、やれやれ」
魔王ルシファーはあきれたような声で言う。
「は、なにを?」
「ここは人間の世界ではない。魔界に近いというわけだ。そして魔素(マナ)もある。つまり、余の力を発揮する上で何の障害もないわけだ」
「なっ、しまった!」
「見せてやろう! 余の真の力を」
魔王は本来あるべき姿を発揮した。強烈な魔力が魔王城を支配する。
「そしてベルゼブブ、貴様の敗北じゃ!」
そう、そして最後の闘いが始まった。