「勇者よ。余は腹が減った。早く馳走を用意せい」
「勇者よ。余は退屈じゃ。早く雑誌を買ってこい」
「勇者よ。余はお風呂に入りたい。早く用意せい」
なし崩し的に六畳一間のボロアパートに住み始めた魔王。今日一日ごろごろして漫画を読み、テレビをぼーっと見ている。たまに立ち上がる時など用を足す時くらいのものだ。要求は全て勇者に押しつけている。
「・・・・・・・・・・」
「なんじゃ。無言で余をにらみおって。不服そうだな。余に使えるという名誉ある役職を与えてやってるというのに」
「なにが栄誉ある役職だ! 少しは身の回りの事くらいしろ!」
「な、なぜ魔王である余がそのような事をしなければならない」
「今のお前なんて魔王でも何でもない。ニートだ! ニート!」
「なんじゃ、そのニートとは」
「働きもせず、ふらふらしてる奴の事だ」
「つまりは怠け者のろくでなしの事じゃな。なんとふがいない。そんなずくのない愚か者はこの世界にも存在するのか」
「お前の事だ! お前の!」
「なに? 余の事じゃと? た、確かに余は今日一日、暇をもてあそんでいたが、いつもこんな感じで過ごしてたぞ? 身の回りの事は全て家臣が行ってたし、仕方なかろう」
「仕方ないわけないだろうがこの居候! 仕方なく匿ってやってるんだから自分の事くらい自分でやれ!」
「なっ、それぐらい当たり前だろうが。余もそれくらいできる」
「じゃあ、俺に頼るな。後、住ませてやるんだから少しは生活費を入れろ。①身の回りの事は自分でやる②最低限稼ぐ、それがここに住まわせる最低限のルールだ」
「ーーしかし、どうやって稼ぐのだ?」
「そんなの知るか。自分で考えろ。俺は夕刊のアルバイトがあるんだ。そういうわけでお前につきあってる暇ない」
「ぐっ、わかった。余も働けばいいのだろう! それくらいできるわ。ぷんすか」
魔王はそういいつつ、起こった様子で部屋を出ていった。勇者もまたしばらくしてアルバイトに出向く事になる。
「あっ。菊池さん」
その時、大家の娘、田村美咲とはちあう。学校の帰りなのだろう。今は制服を着ている。どこかすまなそうな顔をしているのはなぜだろうか。
「よ、余計な事言ってるかもしれないですけどい、今部屋から出てきたのは彼女さんですか?」
「え? いやーー」
そうか。世間一般からすればそういう判断をされるのだろう。それが普通なのかもしれない。
「き、綺麗な人ですね。お人形さんみたい」
そうか。以前とは異なり、風呂にも入り身なりも整えたのだから、そういう認識をされるのだろう。以前は完全な浮浪者か、家出少女であったのだが。
「あ、あの・・・・・・・その、うちってアパートの壁が凄い薄いんで」
「ああ、そうだけど」
隣の物音がやたら聞こえてくる。流石は激安物件だ。敷金礼金なしで三万円はここら辺いったいではここくらいである。その分悪条件も多く、防音性もお察しだ。
「よ、夜とか、気をつけてくださいね」
そう、頬を赤くして言われる。
「い、いや待て。俺とあいつはそういう関係じゃない」
「え? じゃあ、どういう関係なんですか?」
「い、妹だ」
とりあえず適当に嘘をついておいた。肉親であるという設定にしておけば、特別男女関係を疑われないだろう。
「へ、へー。菊池さん妹さんいたんですか。名前はなんていうんですか?」
「え?」
「え、名前です。私変な事言いました?」
妹の名前を言えないなんていう事は普通はありえない。
あいつはルシファーとかいったな。
る、る、る。
「瑠璃亜だ」
「へ、へー。おしゃれな名前ですね」
「あ、ああ」
今思いついたとは流石に言えない。
「ーーところで、なんかこの近くで行方不明者が出たみたいなんだけど」
これ以上つつかれてボロが出てもあれなので話題を返る。
「は、はい。物騒ですよね。私の学校からも何人かでていて、学校からも気をつけるように言われてるんです」
「そ、そうか。美咲ちゃんも気をつけてね」
「は、はい。ありがとうございます。気をつけます」
「じゃあ、俺は仕事いくから」
「がんばってくださいね」
そういって、誠司は家を出た。
オリジナル作品の執筆結構ブランクがあったんですが、やっと感覚戻ってきたのでこれからは安定して書けると思います。
たぶん、できるだけ毎日更新します。