記憶を失った乙坂有宇が諦めず、記憶を取り戻そうとする+厄介事に巻き込まれる物語にする予定です。
この作品はpixivにも投稿してあるのであしからず。
心地の良い風が体を包み込む。重い瞼を開けると、ゆらゆらと風に揺らされている白いカーテンがあった。
どうして僕は寝ているのだろう。なぜ体中がこんなにも疲れているのだろう。でも、どうしてこんなにも嬉しいのだろう。
色んな疑問が頭を過ぎって何も考えられなくなり、僕はジッとただ揺れているカーテンを眺めていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ようやくお目覚めですか。」
ボーッとカーテンを眺めていると、声が聞こえた。反対側に顔を向けると、そこには赤い制服を着た銀髪の可愛らしい女の子が座っていた。
「お疲れ様でした。約束、守ってくれたんですね。」
約束。その言葉が心の中に響いた。そうだ、僕は約束をしたんだ。それがどのような内容で、誰と交わしたのかは忘れてしまったのだけれど、それを必死にやり遂げようとしたことは覚えている。
そうか、僕は約束を守れたんだね。
僕はその女の子と話をする為に体を起こそうとしたが、全身に針が刺されるような激痛が走り、つい「痛た…」と声を出してしまった。
するとその女の子が僕の体をソッと優しく支えてくれた。
「命に別状はありませんよ。でもしばらくは安静にしていてください。」
「はぁ…」
どうしてこんな怪我をしたんだろう。そういえば、この女の子は誰なのだろうか。見覚えはないけど、どこか懐かしい。そんな気がした。
「ところで、あなたは?」
僕がそう問い掛けると、女の子はビックリした表情を見せた。がすぐに納得した表情を見せる。
「そう来ましたか…。そりゃそうですよね、何千何万という能力を奪った訳ですから、脳への負担は半端ないものでしょう。喋れるだけマシってものです。」
俯きながらそんなことを話していた彼女が顔を上げ、僕の方を見て微笑みながら、
「私はですね…あなたの恋人です!」
僕は驚いた。初めて会った人からあなたの恋人だと言われれば、誰でも驚くだろう。
でも彼女の目は透き通ってまっすぐしていて、嘘をついているようには見えなかった。
「恋人?見覚えもないのに?」
でもさっき、ようやくお目覚めですか。と僕に言った。ということはずっと様子を見ていてくれたのだろう。見ず知らずの人ならそんなことはしてくれないはず。この女の子は誰なのだろう…。何も思い出せない。自分の名前さえも。
「傷つくなぁ…思ってたよりも。」
女の子はシュンとしてしまい、また俯いてしまった。
そんなに悲しそうな顔をしないでおくれ…僕まで悲しくなってしまう。
「僕は今、君を悲しませた?」
「そうですよ。だって同じクラスで、生徒会で高校生活を送り、恋人になる約束もして、出ていった人ですから。」
そうか、僕はこの女の子と色んな思い出を作っていったんだね。でも…
「ごめん、何も思い出せない…。…!」
僕は右手の横に何かが置いてあることに気が付き、咄嗟に視線をそちらの方へ向けた。
そこにあったのは、ボロボロになった単語帳だった。
「その単語帳…私が作ったんですよ。最後まで持っていてくれたんですね。役立ちましたか?」
「えっ、これを…君が…?」
「はい」
そうか…この単語帳は彼女が作ってくれたものだったのか。
「これは僕にとって、お守りみたいな物だったんだ。ずっとこれは手放せないでいた。こんなにボロボロで…破れかけているのに。」
何故かこれを見ると、約束を守って帰らなきゃって思うんだ。どんな約束だったかも覚えていなかったくせに…。頑張れって囁いて来るんだ。この単語帳が、僕の心の支えになっていたんだ。
「ありがとう…ございます。それであなたがこうして帰って来られたなら、本望です。」
彼女の目はうるうるとしていて、今にも雫がこぼれ落ちそうだった。
「また、悲しませた?」
「いえ…嬉しいだけです。それだけです。」
嬉しいのに泣きそうになっているなんて、どういうことなのだろう。
僕は彼女の手に掌を重ねた。
「よくわからないけど、泣かないで。」
「無理ッス…。」
彼女はそう言うと重ねていた僕の手を優しく握ってくれた。彼女の手は暖かく、悲しいという感情は感じられなかった。
「乙坂有宇くん…おかえりなさい」
おかえりなさい。僕はその言葉を聞いた途端、心が抱きしめられるような暖かさを覚えた。
僕は帰って来れたんだ。この人との約束を守れたんだ。自然と嬉しい気持ちが込み上がってくる。
そして、僕はこう言った。
「ただいま。」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「そういえば、あなたの名前は?」
僕はまだ彼女の名前を聞いていなかった。名前を聞くことで何か思い出せるかも知れないと思った。
「どうせなので自己紹介をしましょう。友利奈緒ッス。星ノ海学園であなたと同じクラスで、一緒に生徒会に所属していて能力者の監視をしていた仲間です。まあ、あなたが全世界の能力者の能力を奪ってくれたおかげでもうその必要はないんですけどね。」
友利奈緒。それが彼女の名前らしい。でも記憶を思い出すことは出来なかった。やはりそう簡単には無理か。僕は記憶をどうしても取り戻したい。自分の為にも、そして彼女の為にも。
「ああそうだ。あなたが目を覚ましたことを皆さんに報告しにいかないといけません。」
奈緒は立ち上がり、僕に向かって会釈をした。
「また来ますからね。」
そう言って奈緒は病室から出ていった。
さて…どうしたものか。思い出したくても記憶は戻らない。何か方法はないだろうか。
当時の僕が好きだったものや趣味はなんなのだろう。それで思い出す可能性だって0では無いはずだ。あるいは時間が経てばいつか戻るかも知れない。
僕は立ち上がろうとするとまた激痛を感じ、体を引いてしまう。
「とりあえずは、リハビリをしっかりして早く学校生活に復帰できるようにしないと。」
頑張って続きも書きまする!
Twitterはコチラ→ @atora_ad